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生徒会室にて お茶会

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エリナさんのお茶と、パウエル君のよもぎ餅で早速お茶会が始まりました。

エリナさんとマロンさんが、もちもちのよもぎ餅の食べ方に苦労していると、パウエル君がさりげなく胸元のポケットから懐紙と布に包まれた和菓子切と呼ばれる竹楊枝を取り出しました。

「和菓子切?」

私は思わず口に出して言ってしまいました。案の定、グスタボ君以外の皆んなポカンとした顔で何の事か分からない様子でした。そんな中、パウエル君だけはニヤリとして言いました。

「‥やっぱり、チョコ先輩は日本人の転生者でしたね。タロットカードの話をマロンから聞いた時から、怪しいと思ってましたよ。あっ、マロンには僕の前世の話とかはもうしてあります。」


やっぱりパウエル君は日本人の転生者でした!‥‥それよりも今、マロンって呼び捨てにしてましたね。

「パウエル君、今マロンって呼び捨てにしてましたよね。つまり、呼び捨てにするほど仲良くなられたんですね。」

私はマロンさんとパウエル君の関係が発展してる予感がして、はしたなくも聞いてしまいました。顔を赤くしたマロンさんには睨まれてしまいましたが‥‥。

「あっ、つい‥‥すみません。」

私はパウエル君とマロンさんに謝りました。

「ちょっと、チョコ先輩‥っていうか、気にするのそっちなの!?日本人とか転生とかのワード、皆んな気にならない?」

あっ、パウエル君の口調が王子から一般的な日本人の若者言葉になってしまってます‥‥。

「パウエル君、口調が王子から日本人の若者になってしまってますよ。‥‥それに、日本人とか転生者って言うなら、ここにもう一人いますから。」

「えーっ‥‥まさか、いや何となくそんな気もしたけど‥グスタボ先輩も転生者だとか?」

パウエル君、さすが鋭い。当たりです。

「ピンポーン、正解よ。」

グスタボ君がそう言うと、パウエル君がヒーヒー言って笑い出しました。

「ピンポーンって、アハハハ、ノリが古っ。グスタボ君って、結構年配の日本人からの転生者?」

グスタボ君がパウエル君の耳をつまみ、引っ張って怒りました。

「パウエル、あんた生意気!私は地球からこっちに来た時は50代の女だったわよ。悪い?あんたこそ日本で何歳の時にこっちに来たのよ。」

「30 歳。」

ゲボッ、グホッ。

マロンさんとエリナさんがお茶でむせて咳き込んでいます。30歳というワードがいけなかったんでしょうか?いや、それともグスタボ君の50代のワードに驚いたのでしょうか?

とりあえず、私も地球からこっちの世界へ来た時の年齢を言った方が良さそうなので、言うことにしました。

「あの、私はたぶん25歳です。」

「アハハハ、転生者の三人共皆んな10代の子いないんだ。アハハ、ハァ、笑える。」

私も年齢を言ってみたら、パウエル君に笑われてしまいました。まぁ、確かに20代後半から50代の男女が、中学生レベルの学校で制服着て10代のフリをしてるのは、笑えますが。

「パウエル様、お言葉が乱れてますわよ。」

おっ、パウエル君、早速マロンさんに叱られてます。‥マロンさん、結構真面目な方の様です。おてんばで真面目‥‥。

「アハハハ、パウエルってば、マロンに叱られてる。アハハ、もうマロンの尻にひかれてる、アハハハ。」

グスタボ君‥イタコのおばのようにお口が悪くなってます。しかも、パウエル君と犬猿の仲になりそう!?

グスタボ君とパウエル君が言いあってるのを無視して、私とエリナさんはお互いの近況などを話していました。

エリナさんは、赤組の備品管理を任されているそうです。それに念力で開かずの扉を開けたりして、大活躍?しているそうです。ソード先輩の高等貴族学園の剣術大会の応援にも積極的に行っているみたいです。

エリナさんによると、グスタボ君も治癒や浄化の力で怪我人の手当てや魔物の簡単な呪いを解いたりして、活躍しているようです。一部で聖女様と言われているそうです。

モアさんやサトル君はどうしてるかしら?

「ところでチョコ、マカロン王子と会ってる?手紙出してる?」

エリナさんが核心をついて来ました。‥あんまり話したくない話題だったんですけど。

「‥‥全く会ってないし、手紙のやり取りもしてないです。」

「それって‥どうなの?ソード先輩が言うには、マカロン王子の横をいつもべったりジューン王女が貼り付いてるそうよ。最初はまわりもジューン王女をはしたないって非難してたらしいけど、今では当たり前の風景になってるってよ。それにお二人が婚約してるって噂も出てるのよ。」

「‥うっ、エリナさぁーん、どうしよう。会いたいけど、邪魔したくないし、会えないと不安だし。」 

「チョコ、自分の事をまた占ってみたら?何かヒントが見つかるかもよ。」 


「‥実はあれから私、自分とマカロン様の恋の行末を占ったの。出たのは「司祭」ってカードの正位置なんだけどね。

現在の状況は、常識やルールに縛られ過ぎてる状態なんだって。あと、マカロン様が女の人の罠にかかるらしいの。地球でいうところのハニートラップね。

アドバイスとしては、何があっても信念を貫いてルールを守ってねって事らしいの。」
 

「うん。マカロン王子もチョコも真面目だから、夏休みでも無い限り、絶対に学園の勉強や生徒会を優先させて毎日忙しくしてるものね。そりゃ会う暇ないわよね。チョコは週末は占い処にいってるし、マカロン王子も将来の為の勉強だってあるし。つまり、二人共真面目過ぎるのよ。

マカロン王子の女の人による罠の話はとりあえず置いといて、まずは会えなくてもできる交流をしましょうよ。」

「何があるんだろう、文通かな。‥‥地球なら携帯電話やビデオ通話で、お互いに会えなくても、好きな時に顔を見て話せたのにな。」

「チョコ、それって良いかも。魔道具で、通話や映像を送る事のできるものがあるかもしれないわ。一度街へ出て買い物がてら、魔道具を見に行きましょうよ。」

「私も行きたい!」
「僕も行きたいです。」
「私も行って良いですか?」

‥‥エリナさんと私の二人で話してたつもりになってましたが、どうやら皆んな途中から私達の話に聞き入っていたようです。

それで、結局週末に皆んなで街へ買い物に行くことになりました。

私もその日は占い処はお休みする事にしました。
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