月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

文字の大きさ
113 / 365
領都へ

第103話 盗賊相手の迎撃戦1

しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで

第103話 盗賊相手の迎撃戦1

沙更の魔法で援護されているとはつゆ知らず、盗賊たちは土レンガの家に女性達が居るのを見て、勝手にテンションを上げていく。

「おお、悪くねえスケばかりじゃねえか」

「おっ、若い娘もいるぜ。こりゃ、冒険者蹴散らしておいしい思いできるんじゃねえ!?」

そう言って、パウエル達に仕掛けていく盗賊たち。言うまでも無く、弓矢を持った盗賊たちが次々と矢を放ってくる。

が、矢がパウエル達の前で何かに弾かれるように向きを変えてしまう。ウィンドプロテクションの効果で、パウエル達の範囲5m以内ならば、飛び道具を防いでくれる。

それを見た盗賊たちは、驚くしか無い。

「なっ、矢が届かないだと!?くそっ、魔法士がいるな。そいつから蹴散らせ!!」

盗賊たちのリーダーがそう指示を出したところで、沙更が動く。元々、パウエル達にお任せする気は一切無い。元々、パウエルたちに重戦士はいないことから、実は一番防御力のある沙更がやるのが一番だった。敵を引きつける囮役をやるには、魔法士という職業は狙われやすく、重要な役どころでもあったから。

盗賊たちが魔法士を探そうとすると同時に、沙更がウィンドカッターの魔法で次々と遠距離攻撃を仕掛ける。音速の風の刃は、盗賊たちを次々と切り飛ばしていく。

腕を切られた者、胴を切られて絶命した者、首を切られて倒れ伏した者。その末路は様々だが、問題は初級魔法のウィンドカッターの切れ味ではないと言うこと。余りに切れすぎる為に、盗賊たちは浮き足立ってしまう。

流石にここまで、沙更が魔法で混乱を演出してしまうとパウエル達もそこで動かないわけには行かない。パウエルはヘレナを守ると言う意識もある為に動かないでいたが、逆にミリアとガレムが派手に動く形になった。

「さてと、ここまで状況演出されちゃうとね。セーナちゃんに悪い気しかしないよ」

「セーナちゃんに負担をかけるのはちげえしなあ。それじゃあ、一暴れと行こうぜ!」

速度のミリア、力のガレム。双方共にアイスジャイアントとやり合った経験から、盗賊程度では確実に引けを取らないレベルまで引き上げられていた。

沙更のウィンドカッターの恐怖に付け加え、ガレムが前線に出てくれば炭素鋼の斧で、鉄のダガーごと盗賊の胴体をねじ切っていく。力任せだが、効果的な一撃で相手の命を刈り取っていく辺り、敵対する盗賊たちを震え上がらせるには十分だった。

斧を振るえば命を刈り取られる。大振りのように見えて、ガレムは斧をちゃんとコントロールしていた。ついでに言えば、マイティアップのおかげで盗賊たちの動きが鈍く見えていたのもある。

「おらおら、死にたい奴から掛かってこい。この程度で俺を止められると思うなよ!!」

次々と胴体を割られて倒れていく盗賊たち。50人で囲んだはずが、既に半数は倒れていると言う凄惨さだ。

一方、ミリアはマイティアップに生来の素早さを生かして、白の直刀の間合いと盗賊の短剣の間合いを瞬時に見切って一刀のもとに斬り伏せていく。

二人が動き出したことで、盗賊のリーダーは顔をしかめることになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

黒豚辺境伯令息の婚約者

ツノゼミ
ファンタジー
デイビッド・デュロックは自他ともに認める醜男。 ついたあだ名は“黒豚”で、王都中の貴族子女に嫌われていた。 そんな彼がある日しぶしぶ参加した夜会にて、王族の理不尽な断崖劇に巻き込まれ、ひとりの令嬢と婚約することになってしまう。 始めは同情から保護するだけのつもりが、いつの間にか令嬢にも慕われ始め… ゆるゆるなファンタジー設定のお話を書きました。 誤字脱字お許しください。

追放された万能聖魔導師、辺境で無自覚に神を超える ~俺を無能と言った奴ら、まだ息してる?~

たまごころ
ファンタジー
王国一の聖魔導師アレンは、嫉妬した王子の策略で「無能」と断じられ、国を追放された。 辿り着いた辺境の村で、アレンは「ただの治癒師」として静かに暮らそうとするが――。 壊れた街を再生し、疫病を一晩で根絶し、魔王の眷属まで癒しながら、本人はただの村医者のつもり。 その結果、「あの無能が神を超えた」と噂が広がり、王と勇者は頭を抱えることに。 ざまぁとスカッとが止まらない、無自覚最強転生ファンタジー開幕!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

処理中です...