月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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領都へ

第146話 辺境伯の屋敷にて8

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月の魔女とよばれるまで

第146話 辺境伯の屋敷にて8

沙更の願いに、ジークの権限で許可を出すのは簡単だった。実際、そこらの裁量は辺境伯から譲り受けている。それ故に、その願いを叶えることは簡単であった。

が、それではジークとして恩を返したことにならないことを思い出して少しばかり優遇することに決めたのだった。

「貴女が、ウエストエンドに住むことを私こと家令ジークが許可しましょう。そして、貴女が困った時には私を名を使うことを許可します。それくらいしたとしても、貴女からの恩を返しきれるとは思っていませんがね」

その返答に、リエットもメアリーも驚いた顔をした。無論、冒険者側であるパウエル達もだ。

ジークの名を使う許可を貰うと言うのは、最大の賛辞であったから驚かれるのは当然の話だった。それだけのことを沙更がしていたからこそなのだが。

「ジーク、そこまでしてもらっても良いの?わたくしからジークに、この娘にどんなお礼ができるかしらって尋ねるつもりだったのよ?」

「私の名などそこまで大した事はありませんよ。ウエストエンドならば若干の便宜がはかってもらえる程度のことです。それに、この程度では恩を返せたとは思っておりませんので」

そんな二人のやりとりを聞きつつ、沙更本人は気まぐれで助けただけなのに、ここまでもらって良いのかなと思っていたりした。

それでも目的は達成できた。ウエストエンドに住む許可を貰えたことは一番大きい。開拓村出身の人間に、ウエストエンドで住む許可を貰えることは滅多なことが無い限り、ありえないことだったからだ。

「ジークさん。ウエストエンドに住む許可をくださってありがとうございます。これが無かったら、私はまた流れなければなりませんでした」

「いいえ、お嬢様を助けて貰ったことと先ほどのお菓子のレシピのお礼には到底及んでは居ませんよ。今はお礼が思い浮かびませんが、また何かの際に心ばかりの物を用意すると致しましょう」

ジークはそう言うとメアリーが呆れた顔をしていた。

「ジークさんがこんなにお礼をするのは貴女が初めてよ。それに、お嬢様が戻ってきたことでここもかなり変わるわ。だから、ありがとうね」

メアリーにそう言われ、沙更は頷いた。その気持ちは素直に受け取ることにしていたし、拒む物でもない。

そこにリエットも深々と頭を下げた。

「小さい治癒士様、助けてくれてありがとうございました。こうやって、屋敷に戻ってこれて感謝をしています」

「リエット様、幼い私に頭を下げる必要はありませんよ。生み出した魔法の効果を調べるために助けたことに、そんなに感謝されてしまうとこちらとしては心苦しいのです」

沙更として、そう言っておく。対したことはしていないと言うか、魔法の実験に使ったことにして、そのことを相殺しようとして失敗したみたいな感じである。

そんな沙更を冒険者四人は苦笑していた。助けられたのは沙更の魔法が対応出来たからに他ならない。精神を癒やす魔法など、この世に存在していないのだから。
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