月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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フィリエス家の内情と戦

第274話 孤児院に戻って

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月の魔女とよばれるまで

第274話 孤児院に戻って

結局、報酬はまた今度会った時にと言う事で先送りすることになった。パウエル達にしてみれば、大金貨一枚でも十分なほどなのに、それを10枚出すとカタリーナが言ったからだ。それをガーゼルベルトも支持する格好になったことで困ったことになってしまった。

確かに、あれだけの治療をこの世界の人間の魔法で受けたらその位の金額はするとは思う。だが、沙更はそれを魔力だけで済ませてしまう。

それに、魔力なら使ったとしてもすぐに回復するから、そこまでの報酬を貰って良いのか分からないのだ。

「流石に大金貨十枚は貰えない。そんなに凄い治療をしたつもりはないんだけど」

そもそも沙更は異世界の知識の上で治療をしている為、それが凄いことと言う認識がない。魔力だけの治療だが、この世界の治療水準を遥かに超えてしまっている。

他の治癒士に同じ真似が出来る訳もなく、沙更のみが出来る事であった。それを知るミリアとかにしてみれば正当な報酬と言えなくもない。

「セーナちゃんよかったの?」

「少なくても私は貰えません。リエット様の治療も治療費貰ってませんし、そもそもあれでお金を取ろうと言うのもどうかなと。実際、治療費よりも欲しいものを貰ったのて問題ありません」

沙更からしてみれば、ジークに貰えたウエストエンドの在住許可証が報酬だと思っていた。だから、それ以上を求めなかったが本音のようだ。それで報酬が終わりのはずもなかったのだが、その認識は沙更の中になかったからに他ならない。

「確かにわたくしの治療に代価を渡していませんでした。それに、ジークが出したあれで治療費の報酬にされてしまうと心苦しいです」

「私としては、あれで十分な報酬なのですが駄目ですか?」

「幼い治癒士様が欲しがらないのはわかっています。でも、ここだけは譲れません。だから、今回の報酬は頑張りますから」

リエットとしてもフィリエス家としても、沙更への報酬がその程度で済む問題ではない。他の貴族たちにも体面を取り繕う必要もある。

一旦、孤児院に帰ることで頭を冷やして貰えればと思う。貴族側が、報酬を出したくても平民側が保留する。そういう点ではかなり変わっていると言って良い。多分、本来は逆なのだと思う。平民側が欲しがり、貴族側が渋るのだろうが今回は完全に逆転してしまっていた。

本当ならば、文句を言わずに受けるのが本来なのだが、渡す側はもっと多くの報酬をとなっているので恐縮する他なかった。

馬車に揺られ、戻ってきた孤児院にホッとする沙更。流石に気疲れもすると言う状況だっただけに、戻ってこられた安堵感は相当に強かった。

孤児院を襲撃してくるかもと思ったが、流石に中級暗殺者を退けているだけに仕掛けては来なかったらしい。時期を見計らっているようにも見えるが、今でなければ問題はなかった。
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