月の魔女と聖剣

空流眞壱

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閑話2 反辺境伯派の誤算

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月の魔女と聖剣

閑話2 反辺境伯派の誤算

 リエットと荒野の狼の面々が街道を馬車を包んだエアウォークで爆走している頃。王都では、反辺境伯派の会合が行われていた。そこに入った街道襲撃失敗の報は、出席した貴族達を落胆させた。

「挟み撃ちにしたはずだろう?何故失敗した!?」

 疑問を呈した貴族に、連絡に来た男が答える。

「挟み撃ちをする後ろの部隊が到着する前に、待ち伏せした部隊を蹴散らされました。ほんの僅かな時間で蹴散らされて逃走されたと」

「なっ、騎士が相手でも互角の戦いが出来るはずだぞ!?それが何故!?」

「相手が悪すぎました。例の辺境最強の冒険者パーティーを護衛に付けたようです」

 その答えに、反辺境伯派の貴族達がざわつく。アランをけしかけたのも子爵領を破壊したのもここに居る貴族達が画策したこと。その目論見をあっさりと打ち破られたのは記憶に新しい。あの戦で、多大な影響を与えた冒険者たちが今回のリエット襲撃の最大の壁になろうとは思いもしなかったのだ。

 辺境がモンスターの氾濫に襲われて、荒廃してくれればと思ったのはここの貴族達だがそうはならなかった。辺境の冒険者がモンスターの氾濫を鎮めたからだ。しかも、大罪人である月女神の眷属を始末したとなればその話題が王国を駆け巡らないわけがない。

 反辺境伯派の貴族は、その報に戦慄した。あのガーゼルベルトすら敵わなかった亜神を人間が倒せるなどと思いも寄らなかったからに他ならない。そして、その強さを持つ冒険者が辺境にいると言う事は王国最強だと言っているに等しかった。

 千年前からの怨敵を討ち果たした功績を持つ冒険者達が護衛となれば、下手な貴族の私兵ごときでは太刀打ちすら出来ない。相手の武器は最低ラインが魔鉄、下手すれば聖鋼とくれば厳しい物があった。

 魔鉄の武器ならばなんとか出来るかもしれないが、魔鉄の武器を集めているとなれば宰相のガーゼルベルトが出張ってくるのが目に見えていた。かと言って、ミスリルや聖鋼以上の武器は滅多に出回っている物では無い。金で買いあさろうとすれば足が着いてしまうのだ。

「くっ、これ以上の戦力増強は厳しい。財政的にそこまでのお金を使うことが出来ん。他の者たちも似た形だろう。何処の領地もそこまで金に余裕がある訳ではないのだ」

「しかも下手に使えば、ガーゼルベルトの思う壺か。あの老人め、宰相から降りようとせん上にこちらを締め付けてくる。マムシのような奴だからな」

 反辺境伯派は集まりとしてはかなりの数になるが、勢力自体はほどほどでしかない。ガーゼルベルトは王家への忠誠を誓っている上に、数少ない高位貴族たちがバックアップに回っていた。千年の絆は伊達ではないと言う事だろう。

「こうなったら、王都の前で盛大に待ち伏せるとしようじゃないか。兵力もそこに集中しろ」

 反辺境伯派のリーダーがそう言うと他の貴族達もそれに従う。新興貴族が多いせいかお金はある程度あるが、貴族の常識に欠ける。そこを狙われているとは反辺境伯派は理解していなかった。
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