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辺境伯対他貴族
第76話 他貴族への牽制
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月の魔女と聖剣
第76話 他貴族への牽制
商業ギルドのギルドマスターを捕らえた事で、ひとまず商業ギルドを通じた他貴族の嫌がらせはなりを潜める格好になった。カタリーナとしても、一回こちらの行動を他貴族たちに示す必要があった。
1000年もの間の平和で、貴族たちの意識は低下している。辺境の地位も今となっては変わってしまっているのだとカタリーナも気づいてしまっていた。そう、もう昔とは違う。古代遺跡からのモンスターにおびえる日々にさようならを告げていたのだから。それに気づいている貴族達はそう多くはない。
気づいているのは多分王家くらいだろう。辺境伯という特殊な地位、そしてその力は王家にも劣らないほどになっていた。1000年の間に、王家の力は失われたが辺境伯の力はそのままどころか強化されている。それは、外敵がいるかいないかの差が大きすぎたのだ。
カタリーナからの報告を受けて、沙更たちは商業ギルドからの干渉を抑え込んだことにほっとしていた。懇意にしているお店を潰されるわけにはいかなかったが、下手に表に出る訳にもいかなかったからだ。
「カタリーナ様が助けてくれたから、なにかしらでお返ししないといけないかな」
「セーナちゃん、考えすぎじゃない?」
「頼りにしてしまっているんですから、動いて貰ったからにはお返ししないと気持ちの問題です」
そこのところは沙更らしいと言うしかない。ミリアとしても、そこは理解しているから一応言っているに過ぎない。だが、平民が辺境伯にお礼といって何が出来るかと言ったところなのだが、そこは沙更だけに凄い物が出てきそうな気がして少し怖いのも確か。
異世界の知恵は、この世界の知恵を遙かに超える。沙更の知恵と月女神から受け継いだ魔力を掛け合わせた結果が途方もないものだと言うのを理解出来ているのは、多分荒野の狼の面々だけ。沙更自身、セーナに託されたこの体のことがなければ、ここまでミリアたちに肩入れすることもなかっただろう。
「沙更さん、セーナちゃんは起きませんか?」
「セーナちゃんはもう起きています。が、外に出たくないって…」
「そう…」
「セーナちゃんは精神的にボロボロですし、前に出る気はないと思います」
セーナ自身既に天涯孤独の身の上になってしまっている。沙更が支えていなければ、とっくに倒れていただけにセーナ自身が表に出る気が無いのはミリアも理解出来た。魂が癒えたとは言え、精神の修復に時間がかかる。この世界にいる意味を失ってしまっているだけに、沙更に託したのも理解出来るものだった。
辺境に戻ってきてから一週間ほどが既に経っているが、冒険者ギルドで荒野の狼が受ける様な依頼は張っていなかった。一人前と称されるDランク冒険者への依頼はあれど、CランクやましてやBランク冒険者への依頼は相当の大事であるが故に、今の辺境では考えられないことでもあった。
冒険者の先輩であるミストヘイムも依頼から戻ってきて、ここ数日休暇を取っていたが今日冒険者ギルドに顔を出していた。
「後輩たち、久しぶりだね。戻ってきているのは聞いていたが、こうやって会うのは久しぶりだから」
「「「「「お久しぶりです」」」」」
「1年前、モンスターの氾濫を食い止めて切ってから依頼も歯ごたえが無くなったがそれが良いことなのだろうよ」
そう言えるのは、それだけそれ以前が過酷だった裏返しであった。
第76話 他貴族への牽制
商業ギルドのギルドマスターを捕らえた事で、ひとまず商業ギルドを通じた他貴族の嫌がらせはなりを潜める格好になった。カタリーナとしても、一回こちらの行動を他貴族たちに示す必要があった。
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カタリーナからの報告を受けて、沙更たちは商業ギルドからの干渉を抑え込んだことにほっとしていた。懇意にしているお店を潰されるわけにはいかなかったが、下手に表に出る訳にもいかなかったからだ。
「カタリーナ様が助けてくれたから、なにかしらでお返ししないといけないかな」
「セーナちゃん、考えすぎじゃない?」
「頼りにしてしまっているんですから、動いて貰ったからにはお返ししないと気持ちの問題です」
そこのところは沙更らしいと言うしかない。ミリアとしても、そこは理解しているから一応言っているに過ぎない。だが、平民が辺境伯にお礼といって何が出来るかと言ったところなのだが、そこは沙更だけに凄い物が出てきそうな気がして少し怖いのも確か。
異世界の知恵は、この世界の知恵を遙かに超える。沙更の知恵と月女神から受け継いだ魔力を掛け合わせた結果が途方もないものだと言うのを理解出来ているのは、多分荒野の狼の面々だけ。沙更自身、セーナに託されたこの体のことがなければ、ここまでミリアたちに肩入れすることもなかっただろう。
「沙更さん、セーナちゃんは起きませんか?」
「セーナちゃんはもう起きています。が、外に出たくないって…」
「そう…」
「セーナちゃんは精神的にボロボロですし、前に出る気はないと思います」
セーナ自身既に天涯孤独の身の上になってしまっている。沙更が支えていなければ、とっくに倒れていただけにセーナ自身が表に出る気が無いのはミリアも理解出来た。魂が癒えたとは言え、精神の修復に時間がかかる。この世界にいる意味を失ってしまっているだけに、沙更に託したのも理解出来るものだった。
辺境に戻ってきてから一週間ほどが既に経っているが、冒険者ギルドで荒野の狼が受ける様な依頼は張っていなかった。一人前と称されるDランク冒険者への依頼はあれど、CランクやましてやBランク冒険者への依頼は相当の大事であるが故に、今の辺境では考えられないことでもあった。
冒険者の先輩であるミストヘイムも依頼から戻ってきて、ここ数日休暇を取っていたが今日冒険者ギルドに顔を出していた。
「後輩たち、久しぶりだね。戻ってきているのは聞いていたが、こうやって会うのは久しぶりだから」
「「「「「お久しぶりです」」」」」
「1年前、モンスターの氾濫を食い止めて切ってから依頼も歯ごたえが無くなったがそれが良いことなのだろうよ」
そう言えるのは、それだけそれ以前が過酷だった裏返しであった。
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