月の魔女と聖剣

空流眞壱

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辺境伯対他貴族

第92話 辺境伯の屋敷に向かって

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月の魔女と聖剣

第92話 辺境伯の屋敷に向かって

 冒険者ギルドで貰った依頼の報奨金が大金貨4枚に膨れ上がったことに、パウエルとしても首をかしげていた。高すぎるのである。

「ウエストエンドで受けたときには大金貨1枚と金貨20枚だったのが大金貨4枚か…。一気に膨れ上がったな」

「その件については、辺境伯カタリーナ様から連絡を頂いております。思った以上に盗賊の数が多かったことで、報償を見直したからと」

「盗賊団を片っ端から叩き潰したからな。街道沿いの領主からお金を巻き上げたわけじゃないだろうが、こちらへの手出しを止められた事も含めてなら納得できなくはない」

 エリィの言葉に、パウエルは推測を交えつつも納得は出来ていた。沙更の推測だと、街道沿いの領主はカタリーナに手出しはしないことを書面で交わすことになったのだろうと読む。そもそもウエストエンドまでの街道沿いの領地の領主に力はあまりないから尚更であった。

 カタリーナとしても味方にする事は無いが、敵対しないようにと言う事なのだろう。高位貴族との武力衝突で、下手に横やりを入れられては困ってしまうから。

 王都の冒険者ギルドも高位冒険者の遠征で未だに帰路にも入っていないことから、中堅以下しかいない状態で依頼の消化も滞っているような感じがした。オーク大発生時も遠征中だったが、未だに帰ってきていないらしい。遠征先から今度は海の向こうの大陸での戦争に参加しているのだそうだ。

 前回会ったグレイドも今では海の向こうらしい。こちらが落ち着いているから暴れられないとみたのか、それとも戦場を見るために動いたのかはパウエル達には分からない。エリィから、今は出ていると言う事と高位冒険者たちも一緒にいる事を聞けただけであった。

 依頼の完了の手続きを終え、報奨金を貰ったところでそのままカタリーナが王都に所有している屋敷に戻ることにした。ジークが護衛に入ったままでは、カタリーナが動けなくなってしまう。辺境での補給も無事終えたことだし、王都の状況が完全に悪化している状態では王都での買い物はまずもって見込み薄であった。

 冒険者ギルドの側はまだ大丈夫そうだが、スラムに近い方ではもう治安の悪化が著しい為、犯罪が多発している状況になっている。下手に近寄れない位となれば、王都から逃げ出す民も出るほど。この国が貴族のためにあると言うのを露骨に示してしまっていた。

 平民街から貴族街へ入るときの検問も厳しくなっていたが、パウエル達は辺境伯の勲章を持っている。貴族街に入るのに、それが役に立った。一種の身分証明書代わりになったのである。基本的に、貴族が自分の家の紋章を他人に持たせるというのはその人間を後ろ盾していますよと言う証であり、その人間が貴族と繋がりがあると知らしめる物であった。
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