月の魔女と聖剣

空流眞壱

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第二王子との邂逅

第104話 リエットの護衛と荒野の狼の動き

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月の魔女と聖剣

第104話 リエットの護衛と荒野の狼の動き

 リエットに呼ばれ、朝と同じように辺境伯の馬車に乗り学園を後にする沙更とリエット。

「治癒士様、初めての学園はどうでしたか?」

「私の魔法であそこまで驚かせるとは思っていませんでした。やはり古代魔法はもう既に伝説の彼方なんですね」

「あれだけ使える治癒士様が凄いだけです。教諭の方々の魔法も年々弱くなっているというのは、魔力が大地から失われてから久しいからと言われていますし、驚くことでもないかと…」

 リエットは弱くなっていく魔法の件を知っていた。ある程度学園に通っていれば、その手の話は聞くことが出来る。それだけに推論はすぐに作ることが出来たようだ。

「今となれば、月女神様が戻ってきたことで徐々に大地に魔力が増えていくのでしょう。今は辺境のみですが、月の魔力が大地に戻れば、古代文明と同じくらいの魔法が使えるようになるのかもしれません」

「大地に魔力が戻るのに後数年、人間に魔力が戻るのはもっと後でしょう。現代魔法の使い方では古代と同じ事は出来ませんから」

 そこまで話をしたところで、リエットに沙更から話しかける。

「リエット様、平民のクラスでは今の状況にかなりの不満を持っているようです。極星騎士団だけで治安を維持している状態なのは分かりますが、もうちょっと寄り添ってあげられませんか?」

「治癒士様の要望でもそれは厳しいと思います。大伯父様が無策で動くわけが無いのです。王都がここまで治安が悪化したのは大伯父様のせいではありません。高位貴族達が領地に戻ったことから治安を維持できるだけの人材を回収してしまった事にあります。結局、極星騎士団で治安維持をするのは許容量を超えてしまっているのです。王国騎士団も今では使い物になりません」

「リエット様、貴族が平民の上でいられるのは義務を果たしている間だけです。王族ですらないがしろにしている状態では長くは持ちません。そこは分かって欲しいです」

 沙更はそこまで言うとそれ以上は言わないことにした。どちらにしろ、ガーゼルベルトが治安維持の指揮を執っているのは言うまでも無いことだからだ。そこに他の貴族達が力を貸すこともないのも分かりきっていたし、ガーゼルベルトもそれを望まない。

 貴族がすべてを決めてしまうのも悪手な気が沙更にはしていた。異世界を知るからこそそう思うのだろう。とは言え、カタリーナやガーゼルベルトの施策をすべて批判する気はない。人間だからこそ、抜ける部分もある。ガーゼルベルトの優先と沙更の優先は違う物であるし、人が思うことの全てを叶えることなど出来はしないのだから。

 沙更とリエットが馬車で動いている間、荒野の狼の面々も馬車の上などに乗っていた。御者席には慣れた御者がいる為に乗れず、屋根の上に乗っていたのだ。

「今の所大丈夫そうだね、襲撃されるかもと思ったんだけど」

「動いてくるやつはいない。さっきからセーナちゃんが魔力を周囲にまき散らかしてる上に、その濃度が濃すぎる」

「今の状態で動けるやつは人間じゃねえな」

「そうね、これだけの魔力を現代の人間が取り込んだら、体内魔力バランスが崩れて暴走するのが目に見えてるわ。幸い私たちはもう慣れたから起きえないけれど」

 荒野の狼の面々はそう言って、馬車の周りを見れば魔力の残滓が見える。魔力が可視化されている時点でどれだけの濃度の魔力をまき散らかしたかは想像出来てしまう程。モンスターですら避ける程の魔力を感じて、下手な人間が動けるはずもなかった。 
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