112 / 211
第二王子との邂逅
第104話 リエットの護衛と荒野の狼の動き
しおりを挟む
月の魔女と聖剣
第104話 リエットの護衛と荒野の狼の動き
リエットに呼ばれ、朝と同じように辺境伯の馬車に乗り学園を後にする沙更とリエット。
「治癒士様、初めての学園はどうでしたか?」
「私の魔法であそこまで驚かせるとは思っていませんでした。やはり古代魔法はもう既に伝説の彼方なんですね」
「あれだけ使える治癒士様が凄いだけです。教諭の方々の魔法も年々弱くなっているというのは、魔力が大地から失われてから久しいからと言われていますし、驚くことでもないかと…」
リエットは弱くなっていく魔法の件を知っていた。ある程度学園に通っていれば、その手の話は聞くことが出来る。それだけに推論はすぐに作ることが出来たようだ。
「今となれば、月女神様が戻ってきたことで徐々に大地に魔力が増えていくのでしょう。今は辺境のみですが、月の魔力が大地に戻れば、古代文明と同じくらいの魔法が使えるようになるのかもしれません」
「大地に魔力が戻るのに後数年、人間に魔力が戻るのはもっと後でしょう。現代魔法の使い方では古代と同じ事は出来ませんから」
そこまで話をしたところで、リエットに沙更から話しかける。
「リエット様、平民のクラスでは今の状況にかなりの不満を持っているようです。極星騎士団だけで治安を維持している状態なのは分かりますが、もうちょっと寄り添ってあげられませんか?」
「治癒士様の要望でもそれは厳しいと思います。大伯父様が無策で動くわけが無いのです。王都がここまで治安が悪化したのは大伯父様のせいではありません。高位貴族達が領地に戻ったことから治安を維持できるだけの人材を回収してしまった事にあります。結局、極星騎士団で治安維持をするのは許容量を超えてしまっているのです。王国騎士団も今では使い物になりません」
「リエット様、貴族が平民の上でいられるのは義務を果たしている間だけです。王族ですらないがしろにしている状態では長くは持ちません。そこは分かって欲しいです」
沙更はそこまで言うとそれ以上は言わないことにした。どちらにしろ、ガーゼルベルトが治安維持の指揮を執っているのは言うまでも無いことだからだ。そこに他の貴族達が力を貸すこともないのも分かりきっていたし、ガーゼルベルトもそれを望まない。
貴族がすべてを決めてしまうのも悪手な気が沙更にはしていた。異世界を知るからこそそう思うのだろう。とは言え、カタリーナやガーゼルベルトの施策をすべて批判する気はない。人間だからこそ、抜ける部分もある。ガーゼルベルトの優先と沙更の優先は違う物であるし、人が思うことの全てを叶えることなど出来はしないのだから。
沙更とリエットが馬車で動いている間、荒野の狼の面々も馬車の上などに乗っていた。御者席には慣れた御者がいる為に乗れず、屋根の上に乗っていたのだ。
「今の所大丈夫そうだね、襲撃されるかもと思ったんだけど」
「動いてくるやつはいない。さっきからセーナちゃんが魔力を周囲にまき散らかしてる上に、その濃度が濃すぎる」
「今の状態で動けるやつは人間じゃねえな」
「そうね、これだけの魔力を現代の人間が取り込んだら、体内魔力バランスが崩れて暴走するのが目に見えてるわ。幸い私たちはもう慣れたから起きえないけれど」
荒野の狼の面々はそう言って、馬車の周りを見れば魔力の残滓が見える。魔力が可視化されている時点でどれだけの濃度の魔力をまき散らかしたかは想像出来てしまう程。モンスターですら避ける程の魔力を感じて、下手な人間が動けるはずもなかった。
第104話 リエットの護衛と荒野の狼の動き
リエットに呼ばれ、朝と同じように辺境伯の馬車に乗り学園を後にする沙更とリエット。
「治癒士様、初めての学園はどうでしたか?」
「私の魔法であそこまで驚かせるとは思っていませんでした。やはり古代魔法はもう既に伝説の彼方なんですね」
「あれだけ使える治癒士様が凄いだけです。教諭の方々の魔法も年々弱くなっているというのは、魔力が大地から失われてから久しいからと言われていますし、驚くことでもないかと…」
リエットは弱くなっていく魔法の件を知っていた。ある程度学園に通っていれば、その手の話は聞くことが出来る。それだけに推論はすぐに作ることが出来たようだ。
「今となれば、月女神様が戻ってきたことで徐々に大地に魔力が増えていくのでしょう。今は辺境のみですが、月の魔力が大地に戻れば、古代文明と同じくらいの魔法が使えるようになるのかもしれません」
「大地に魔力が戻るのに後数年、人間に魔力が戻るのはもっと後でしょう。現代魔法の使い方では古代と同じ事は出来ませんから」
そこまで話をしたところで、リエットに沙更から話しかける。
「リエット様、平民のクラスでは今の状況にかなりの不満を持っているようです。極星騎士団だけで治安を維持している状態なのは分かりますが、もうちょっと寄り添ってあげられませんか?」
「治癒士様の要望でもそれは厳しいと思います。大伯父様が無策で動くわけが無いのです。王都がここまで治安が悪化したのは大伯父様のせいではありません。高位貴族達が領地に戻ったことから治安を維持できるだけの人材を回収してしまった事にあります。結局、極星騎士団で治安維持をするのは許容量を超えてしまっているのです。王国騎士団も今では使い物になりません」
「リエット様、貴族が平民の上でいられるのは義務を果たしている間だけです。王族ですらないがしろにしている状態では長くは持ちません。そこは分かって欲しいです」
沙更はそこまで言うとそれ以上は言わないことにした。どちらにしろ、ガーゼルベルトが治安維持の指揮を執っているのは言うまでも無いことだからだ。そこに他の貴族達が力を貸すこともないのも分かりきっていたし、ガーゼルベルトもそれを望まない。
貴族がすべてを決めてしまうのも悪手な気が沙更にはしていた。異世界を知るからこそそう思うのだろう。とは言え、カタリーナやガーゼルベルトの施策をすべて批判する気はない。人間だからこそ、抜ける部分もある。ガーゼルベルトの優先と沙更の優先は違う物であるし、人が思うことの全てを叶えることなど出来はしないのだから。
沙更とリエットが馬車で動いている間、荒野の狼の面々も馬車の上などに乗っていた。御者席には慣れた御者がいる為に乗れず、屋根の上に乗っていたのだ。
「今の所大丈夫そうだね、襲撃されるかもと思ったんだけど」
「動いてくるやつはいない。さっきからセーナちゃんが魔力を周囲にまき散らかしてる上に、その濃度が濃すぎる」
「今の状態で動けるやつは人間じゃねえな」
「そうね、これだけの魔力を現代の人間が取り込んだら、体内魔力バランスが崩れて暴走するのが目に見えてるわ。幸い私たちはもう慣れたから起きえないけれど」
荒野の狼の面々はそう言って、馬車の周りを見れば魔力の残滓が見える。魔力が可視化されている時点でどれだけの濃度の魔力をまき散らかしたかは想像出来てしまう程。モンスターですら避ける程の魔力を感じて、下手な人間が動けるはずもなかった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界子供ヤクザ【ダラムルバクト】
忍絵 奉公
ファンタジー
孤児院からスラムで育ったバクト。異空間収納と鑑定眼のダブルギフト持ちだった。王都西地区20番街では8割を縄張りとする先代のじいさんに拾われる。しかしその爺さんが死んだときに幹部同士のいざこざが起こり、組は解散。どさくさにまぎれてバクトが5・6番街の守役となった。物語はそこから始まる。7・8番街を収めるダモンとの争い。また後ろ盾になろうと搾取しようとする侯爵ポンポチーコ。バクトは彼らを越えて、どんどん規格外に大きくなっていく。
没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました
藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。
逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、
“立て直す”以外の選択肢を持たなかった。
領地経営、改革、そして予想外の縁。
没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。
※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる