月の魔女と聖剣

空流眞壱

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対公爵 対邪神

第179話 表と裏

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月の魔女と聖剣

第179話 表と裏

 貴族連合軍が辺境近くまで来ていると言う情報に、ガーゼルベルトは斥候を放って裏付けを取っていた。現状、貴族連合軍は要塞まで数日のところまで来ているのは掴んでいる上に、行軍速度が歩兵中心のためかそこまでの速度がない。騎兵を中心に出来なかったのは、馬を養うだけの余力があまりないからだろう。

「公爵たちめ、貪欲すぎて拙攻に過ぎる。兵站が間に合ってなかろう。彼女が作った要塞を歩兵だけで落とせるわけがあるまいに」

「伯父様、こちらの配置完了しましたわ」

「カタリーナ、相手がもう近くまで来ているようだ。だが、5万とは言え歩兵だけでこの要塞を落とせると思っているのか…」

 ガーゼルベルトとしては、この要塞の頑丈さはこの国のどの砦よりも上だと知っている。それだけにただの歩兵にここを抜くことが出来るとは思っていなかった。攻城兵器があろうとも聖鋼の正門を破壊できるとはとてもじゃないが思えなかったのだ。

「彼女が作ってくれたこの要塞にかけて、辺境の地に彼らを入れることはしません」

「相手の補給を考えれば、10日持たせればこちらの勝ちだろう。歩兵だけならば、極星騎士団でかき回すことも可能だ。兵士の数で、戦が決まるわけでは無いことを奴らに味わって貰うとするか」

 沙更が作った辺境大要塞インビジブルに、辺境の兵士と騎士たちが配置について貴族連合軍を迎え撃つ準備は着々と進んでいた。既に配置についたのもそうだが、要塞内の備蓄庫に矢や食料などを次々に運び入れて籠城戦の構えを取る。

 はるばる遠征してきた貴族連合軍を平野で迎え撃つのは兵士数の関係上厳しい。沙更が作り上げた辺境大要塞インビジブルの頑丈さを上手く使って、ここで敵を迎撃するのが一番被害が少ないとガーゼルベルトとカタリーナは分で動いていたのだ。


 ガーゼルベルトとカタリーナが表で籠城戦の構えを取っているのとは別に、沙更たちは貴族連合軍の裏を通るかたちで王都側に動いていた。エアウォークで加速した上での街道を避けての行動に、貴族連合軍もその動きをつかめてはいなかった。

 そもそも、辺境から王都まで道なき道を行けるのは沙更の探知魔法のおかげである。高濃度の魔力に下手なモンスターは怯えてその場から動かなくなるからだ。それに関しては邪神も同じである。

「邪気が近い。そろそろ遭遇します」

「異世界の邪神を相手って、無茶を押し通さないと厳しいよね」

「だが、俺らじゃなければ邪魔することすら叶わねえだろ。流石に覚悟は決めてあるぜ」

「ここで止めなければ、この国が終わりかねないな」

「これだけの邪気を振りまけるなんて、神としても高位じゃないの!」

 ヘレナは流石に察したらしく顔色が悪い。なまじ神官として能力を持っているからこそ、邪神の力を感じてしまっているようだ。沙更はもっと直接的に感じていたりするのだが、それでも臆したりはしない。そもそも月女神の器を持っている為か神の力を冷静に判断出来るようになっていた。

 邪神と戦う場所は辺境より離れた何も無い場所が一番。となれば、貴族連合軍が行軍する裏をかくしか方法が無い。だが、そこに関しては一度ならず二度も同じ事をやっているだけに、気取られる心配はしていなかった。
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