レベル1からレベル100-即死魔道士成長物語-

コサキサク

文字の大きさ
9 / 138

第9話 スーとの出会い

しおりを挟む
 養成学校の寮に入ってから約二週間たった。両親は先週故郷の町に帰って行った。寮に入って気がついたことなのだが、僕は朝弱く夜更かし好きらしい。実家にいた頃は母さんが起こしてくれているからわからなかった。養成学校の中でも特殊クラスは個性尊重を理念にしているため、寮の規則も緩く、特に起床時間や消灯時間が決まっていない。夜に街を徘徊してもいいらしい。

 僕は最近夜の王都を一人で徘徊するのに凝っていた。故郷の町は田舎だったから、夜はただ真っ暗で出歩いてもしかたなかったが、王都は夜になっても街灯も建物の明かりも多くついており、賑やかだった。夜の街は昼の街以上に新鮮で、僕はすっかり夜の王都が気にいってしまった。

 今の僕は国立魔道士養成学校の腕章をつけている。僕はまだ魔法を習得する前だが、そんなのは、見た側にはわからない。この腕章を見た者は明らかに警戒してくる。おかげで夜の王都を一人で徘徊できていた。

 こうやって、王都の街を歩く度、もし、あの適性検査の日、僕になんの才能も見つからなかったらどうなっていたのかと考えていた。考えてもわからなかったし、あまり考えると暗い気持ちになるから途中でやめてしまうのだけれど。

 店と店の間を通り過ぎようとしたとき、喧嘩のような声が聞こえた。声のした方を見ると、僕と同じぐらいの年の少年が、数人の少年からボコボコに殴られていた。助けたかったが、僕の腕力では太刀打ちできないし、魔法もまだ使えない。だけど、殴っている方が僕に気づき、
「やべえ、国立の魔道士がいる」
と、僕の腕章に反応して去っていった。その場には殴られていた少年だけが残った。 

「大丈夫?」
 僕は話しかけた。
「大丈夫じゃないけど、助かったよ。ありがとう」
 僕は特に何もしていなかったけど、その少年は礼を言った。
「国立魔道士養成学校か、いいなあ。その学校、すごく魔法の才能ある人しか入れないんだよね」
 と、少年は呟いた。

「僕、こないだの適性検査で魔法の才能、全くないって言われたんだ。どの魔法も才能ゼロ。魔法は欠片も使えないって」

 僕はその言葉を聞いて、目を見開いた。

「君、さっき殴られてたのって、もしかして、それが原因?」 
「そうだよ。元々力が弱いし、のろまだったからいじめられていたのに、魔法までダメってわかってもう最悪」

 この少年は、僕が恐れた事態に立たされている身なのか。僕がもし、才能がないとなっていたら今ごろこうなっていたかもしれない。

 そう思うと、とても他人事とは思えなかった。

「僕は、キルル。君は?」
「スー」
 スーは小柄で、丸い眼鏡をかけていた。僕も小柄だけど、スーはさらに小柄だった。
「キルルは、何かの魔法がレベル100まで上がるんでしょ? 何の素質があったんだい?」
「僕は、即死魔法」
「即死魔法? なにそれ!?」
「相手を即死させる魔法だって。特殊魔法の一種らしい」
「即死! すごい! 超かっこいい!! いいなあ!」
 スーは感激していた。
「僕もこれから授業を受けるから、まだなにも使えないよ」
「才能があるだけでもかっこいいよ!……いいなあ。即死魔法が使えたら、あいつらのこと、殺せるのに」
 スーは呟いた。

 僕は、その言葉に反応した。

「殺してあげようか?」

「え?」

「今すぐは無理だけど、僕が人を即死させる魔法を覚えたら、あいつらのこと殺してあげようか?」
「……いいの?」
「うん。僕も、適性検査受けるまでは、チビでのろまだからっていじめられてた。精霊が見えないから魔法もできっこないって言われて、ずっといじめられてたんだ。こないだ適性検査でたまたま特殊魔道士の才能が見つかったから助かったけど、僕は、君の気持ち、すごくわかるんだ」
「ほんとに!? じゃあ、殺して! やった! ありがとう!」

 そうだ。ほんとうは、思っていた。即死魔法の才能があると知ったあの日、僕は心底喜んだ。

 即死魔法があれば、僕をいじめていたやつらを殺せる、と。

 いや、殺してやるって。

 僕はすぐにスーと意気投合した。特殊クラスのみんなとも馴染みかけてはいたが、それ以上にスーと気が合った。その日以降、僕は昼間スーと過ごすようになった。

 スーは王都で暮らしているから、すぐに自宅に呼んでくれた。スーの部屋に行ってすぐ気がついたのだが、スーは毒物や、残虐な拷問の本や、スプラッタ系の本のコレクターだった。
「毒物でも使ったらあいつら殺せるかなって」
スーは結構サラッと話した。
「あと、この本、面白いんだよ! キルルも読んでみない?」
 僕は興味本位でスーが貸してくれたの小説を読んだ。スーの本は、見事なまでに復讐ものとスプラッタ物が揃っていた。

 僕はその本を夢中になって読んだ。と、いうのも、僕が今まで過ごした町には、こんな本なかった。田舎町だったから、大ベストセラー本しかなかったし、その大ベストセラー本は、主人公がやたら優しかったり、理不尽な目に合っても相手を許すような、ペラペラの綺麗事しか並んでいなかった。どれもこれも気に入らなかった。だから僕は魔導書は好きだけど小説は好きじゃないと思っていた。だけど、スーの持っている小説はなんて痛快で面白いんだろう。

 僕は残虐なものが大好きだったようだ。ただ単に気づく機会がなかったらしい。

 僕はさらに即死魔法を身につけるのが楽しみになった。明日、南の地方の式典と適性検査がある。そしたらいよいよ授業が始まる。
































しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...