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第17話 お披露目会
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僕はその後も、少し授業を受けたあと自主勉強し、校庭の雑草を即死魔法を除去して回る日々が続いた。
それにしても、僕の現状の地味さには笑ってしまいそうになる。一般教養の授業中に、窓から校庭で行われる一般魔法の授業を見たのだが、みんな手から火を出したり竜巻を起こしたり、実に華やかで楽しそうだ。この校内で一般魔法が全く使えないのは僕一人だけだ。他のみんなは色んな魔法が使えるのに、僕は即死魔法しか使えない。適性検査で即死魔法の適性が見出されたあの日、僕は劣等感から開放された気でいたが、この学校に来てもなお、劣等感を感じずにはいられなかった。
せめて、即死魔法の精度だけは上げなければと、僕は、魔法陣の書き方や、できるだけ早く魔法を発動する方法を積極的に学んだ。
僕には、即死魔法しかないのだ。
そんな気持ちでひたすら即死魔法を使い続け、入学から一ヶ月たったころ、僕はレベル3に上がった!
「みなさん、素晴らしいお知らせです。うちのクラス全員特殊魔法がレベル2になりました!」
ある日のホームルームで校長先生が言った。
「今年の特殊クラスは、全員着実に成長していますね。素晴らしいです。ホームルームもきちんと出席してくれてますし、先生、とても嬉しいです。そこで、明日のホームルームでお披露目会をしようと思います」
「お披露目会? 皆の前で魔法を使うんですか?」
学級委員のポールトーマスが尋ねた。
「そうです。皆さんが今使える特殊魔法をみんなの前で披露してください。こういうのって、実はレベルの低いうちしかできない楽しみなんですよ。レベル100になってしまうと、とても披露できないのっぴきならない魔法もあるのでね」
校長先生の言う、「レベル100になるとのっぴきならない魔法」は、僕の魔法のことだと察した。レベル100の即死魔法を皆の前で披露となると、誰か一人殺さないといけない。蘇生魔道士リリイが蘇生してくれることを前提にすればできなくもないが、お披露目目的でそこまでやるのはまずいだろう。
翌日、ホームルームでお披露目会が行われた。
発表順はまず今レベル2の者が発表、そのあとレベルが高い順に発表となる。
最初の発表は、レベル2の生徒の中で出席番号が一番前の音楽魔道士カランドだ。カランドは、手持ちのバイオリンを構える。
「では一曲」
「ちょっと待って。それ聞いたらどうなんの」
クイズ作成魔道士トイが尋ねた。
「目が覚めて頭が冴えます」
カランドは、そう答えた後一曲演奏した。結構疾走感のある曲だ。
聞き終わったときには、皆シャキっとしていた。いつもほぼ寝ている退化魔道士ネルまでもがシャキっとしている。すごい。
「このあとのホームルームも皆さん集中できますね。とても素晴らしいです」
校長先生はカランドを褒めた。たしかにこれはありがたい。みんな拍手した。
次の発表は簡略魔道士リャだ。リャもレベル2だ。
「一瞬だからよく見ててね!」
そう言った直後、リャは左手から水、右手から火を出した。
「え? 一般魔法は同時発動できないはずじゃ……」
トイが言うと、
「同時じゃないよ、火魔法は水魔法よりちょっと遅く発動してるんだ」
リャが答える。
「呪文も唱えず即魔法が発動できるのはさすが簡略魔道士ですね。将来はさらに多くの種類の魔法でこれができるでしょう。素晴らしいです」
校長先生が褒め、これもみんな拍手した。
次は、笑わせ魔道士ショウだ。ショウもレベル2だ。
「えっと、ダジャレを言って笑わせます。……ネコが寝込んだ」
すると、全く面白いと感じていないのに、口角が上がり、「あははは」と言う乾いた笑い声が出た。30秒ほど、クラスメイト全員の乾いた笑い声が教室に響いた。とても不気味な時間だった。
「素晴らしいですね。皆さん、落ち込んだらとりあえずショウさんのところを訪ねましょう」
校長先生がコメントしたあと、みんな真顔に戻り拍手をした。笑わせ魔法ってレベル100になったらどんな感じなんだろうか。なんか怖い。
レベル2の人の発表が終了したので、レベル3の人が名簿順で発表になった。次は複合魔道士ポールトーマスだ。
ポールトーマスは呪文を唱えると、小さな砂嵐が起こった。
「土魔法と風魔法の複合魔法ですね。王道的なところがあなたらしいですね。あなたはどの魔法もバランスよく勉強していて素晴らしいです」
と校長先生はコメントした。これにも一同拍手。
「はい、次は即死魔道士キルルさん」
僕の番が来た。僕は、校長先生に断って花壇から拝借した一輪の薔薇の花を、花瓶に差して出した。
「これを、枯らします」
僕は呪文を唱えた。呪文が終わった瞬間に花は茶色く変わり、変色した花びらが地面に散った。
「素晴らしい。これはこれでドライフラワーとして飾れそうですね。いつも花壇の雑草除去ありがとうございます」
と校長先生は言った。みんなも拍手していたが若干顔が強張っていた。即死魔法レベル100を想像したんじゃないかと思われる。
「次は瞬間移動魔道士ワープマンさん。レベル3ですね」
校長先生がワープマンの名前を言うと、ワープマンは席を立って、
「はい」
と返事した瞬間、もうみんなの前に立っていた。みんなが呆気に取られていると、
「戻ります」
と言った直後に姿を消し、自分の席に座っていた。
「大変素早い発表で素晴らしいの一言です」
と校長先生もシンプルに締めくくった。みんなも拍手した。能力と合理性を同時に考えていて感心してしまった。
次は、変身魔道士キャサリンだ。彼女はすでにレベル4だ。
キャサリンはみんなの前に立つと、
「片目だけ大きくします」
と言って、呪文を唱えた。すると、片目だけ大きくてぱっちりした目になった。もう片方の小さな目とは大きく違っていた。みんながおおーと感心して声を上げる。
キャサリンは、もう一度呪文を唱えた。すると小さい方の目もぱっちり大きな目に変わった。またしても歓声が上がった。
キャサリンは、目一つ変えたところで未だに醜い少女の域であったが、目を大きくしたことでだいぶ可愛く見えた。
しばらくすると、キャサリンの顔はもとに戻った。
「素晴らしいですね。あなたも変身魔法の会得、とても頑張っていますね」
校長先生が褒めたあと、みんな大きく拍手した。見ていて楽しい発表だったと思う。
「ここから少しレベル上がります。次は退化魔道士ネルさん。レベル6です」
ネルは金魚鉢を持ってみんなの前に立った。金魚鉢にはカエルが一匹泳いでいる。
「このカエルを、オタマジャクシにします」
といって呪文を唱えた。すると、カエルにしっぽが生え、手足が縮み、オタマジャクシになった。
「素晴らしい。ネルさんもこの一ヶ月でレベル1上がりましたね。今までとは比べ物にならないぐらい頑張っていますね。どうかこの調子で頑張ってください」
校長先生のコメントのあと、みんなも拍手した。
次は蘇生魔道士リリイだ。もうレベル10だ。入学して一ヶ月でレベル10って、一体何したらそこまでレベルが上がるんだろうか。
「あの、キルルさんがさっき使った薔薇を借りてもいいですか」
とリリイは言った。なるほど、僕が枯らした薔薇を蘇生するんだなと察した僕は、手元に置いていた枯れた薔薇をリリイに手渡した。
「ありがとう」
リリイは僕に礼を言うと、呪文を唱えた。すると、薔薇は、一瞬で息を吹き替えした。僕がここに持ってきたときより色艶が良くなっている。
「素晴らしい! あなたは、今年の入学者の中でぶっちぎりで成績トップです。先生何も言うことありません」
校長先生はリリイを大きく褒めた。みんなも大きく拍手する。
「最後はクイズ作成魔道士トイさん。レベル12ですね」
「はーい。実はもう仕込んであります。みんなの部屋の入口にクイズを用意しました! 正解しないと入れません!」
「なんだって!?」
一同びっくりした。
「トイさん……できればここで発表してほしかったんですが、しょうがないですね。みんなつきあってあげましょう。トイさんもここ一ヶ月でレベル2上がってますね。素晴らしいです。あなたの魔法は相手ありきですものね。たくさんクラスメイトができて本当によかったですね」
校長先生がコメントし、ホームルームは終了した。
それにしても、僕の現状の地味さには笑ってしまいそうになる。一般教養の授業中に、窓から校庭で行われる一般魔法の授業を見たのだが、みんな手から火を出したり竜巻を起こしたり、実に華やかで楽しそうだ。この校内で一般魔法が全く使えないのは僕一人だけだ。他のみんなは色んな魔法が使えるのに、僕は即死魔法しか使えない。適性検査で即死魔法の適性が見出されたあの日、僕は劣等感から開放された気でいたが、この学校に来てもなお、劣等感を感じずにはいられなかった。
せめて、即死魔法の精度だけは上げなければと、僕は、魔法陣の書き方や、できるだけ早く魔法を発動する方法を積極的に学んだ。
僕には、即死魔法しかないのだ。
そんな気持ちでひたすら即死魔法を使い続け、入学から一ヶ月たったころ、僕はレベル3に上がった!
「みなさん、素晴らしいお知らせです。うちのクラス全員特殊魔法がレベル2になりました!」
ある日のホームルームで校長先生が言った。
「今年の特殊クラスは、全員着実に成長していますね。素晴らしいです。ホームルームもきちんと出席してくれてますし、先生、とても嬉しいです。そこで、明日のホームルームでお披露目会をしようと思います」
「お披露目会? 皆の前で魔法を使うんですか?」
学級委員のポールトーマスが尋ねた。
「そうです。皆さんが今使える特殊魔法をみんなの前で披露してください。こういうのって、実はレベルの低いうちしかできない楽しみなんですよ。レベル100になってしまうと、とても披露できないのっぴきならない魔法もあるのでね」
校長先生の言う、「レベル100になるとのっぴきならない魔法」は、僕の魔法のことだと察した。レベル100の即死魔法を皆の前で披露となると、誰か一人殺さないといけない。蘇生魔道士リリイが蘇生してくれることを前提にすればできなくもないが、お披露目目的でそこまでやるのはまずいだろう。
翌日、ホームルームでお披露目会が行われた。
発表順はまず今レベル2の者が発表、そのあとレベルが高い順に発表となる。
最初の発表は、レベル2の生徒の中で出席番号が一番前の音楽魔道士カランドだ。カランドは、手持ちのバイオリンを構える。
「では一曲」
「ちょっと待って。それ聞いたらどうなんの」
クイズ作成魔道士トイが尋ねた。
「目が覚めて頭が冴えます」
カランドは、そう答えた後一曲演奏した。結構疾走感のある曲だ。
聞き終わったときには、皆シャキっとしていた。いつもほぼ寝ている退化魔道士ネルまでもがシャキっとしている。すごい。
「このあとのホームルームも皆さん集中できますね。とても素晴らしいです」
校長先生はカランドを褒めた。たしかにこれはありがたい。みんな拍手した。
次の発表は簡略魔道士リャだ。リャもレベル2だ。
「一瞬だからよく見ててね!」
そう言った直後、リャは左手から水、右手から火を出した。
「え? 一般魔法は同時発動できないはずじゃ……」
トイが言うと、
「同時じゃないよ、火魔法は水魔法よりちょっと遅く発動してるんだ」
リャが答える。
「呪文も唱えず即魔法が発動できるのはさすが簡略魔道士ですね。将来はさらに多くの種類の魔法でこれができるでしょう。素晴らしいです」
校長先生が褒め、これもみんな拍手した。
次は、笑わせ魔道士ショウだ。ショウもレベル2だ。
「えっと、ダジャレを言って笑わせます。……ネコが寝込んだ」
すると、全く面白いと感じていないのに、口角が上がり、「あははは」と言う乾いた笑い声が出た。30秒ほど、クラスメイト全員の乾いた笑い声が教室に響いた。とても不気味な時間だった。
「素晴らしいですね。皆さん、落ち込んだらとりあえずショウさんのところを訪ねましょう」
校長先生がコメントしたあと、みんな真顔に戻り拍手をした。笑わせ魔法ってレベル100になったらどんな感じなんだろうか。なんか怖い。
レベル2の人の発表が終了したので、レベル3の人が名簿順で発表になった。次は複合魔道士ポールトーマスだ。
ポールトーマスは呪文を唱えると、小さな砂嵐が起こった。
「土魔法と風魔法の複合魔法ですね。王道的なところがあなたらしいですね。あなたはどの魔法もバランスよく勉強していて素晴らしいです」
と校長先生はコメントした。これにも一同拍手。
「はい、次は即死魔道士キルルさん」
僕の番が来た。僕は、校長先生に断って花壇から拝借した一輪の薔薇の花を、花瓶に差して出した。
「これを、枯らします」
僕は呪文を唱えた。呪文が終わった瞬間に花は茶色く変わり、変色した花びらが地面に散った。
「素晴らしい。これはこれでドライフラワーとして飾れそうですね。いつも花壇の雑草除去ありがとうございます」
と校長先生は言った。みんなも拍手していたが若干顔が強張っていた。即死魔法レベル100を想像したんじゃないかと思われる。
「次は瞬間移動魔道士ワープマンさん。レベル3ですね」
校長先生がワープマンの名前を言うと、ワープマンは席を立って、
「はい」
と返事した瞬間、もうみんなの前に立っていた。みんなが呆気に取られていると、
「戻ります」
と言った直後に姿を消し、自分の席に座っていた。
「大変素早い発表で素晴らしいの一言です」
と校長先生もシンプルに締めくくった。みんなも拍手した。能力と合理性を同時に考えていて感心してしまった。
次は、変身魔道士キャサリンだ。彼女はすでにレベル4だ。
キャサリンはみんなの前に立つと、
「片目だけ大きくします」
と言って、呪文を唱えた。すると、片目だけ大きくてぱっちりした目になった。もう片方の小さな目とは大きく違っていた。みんながおおーと感心して声を上げる。
キャサリンは、もう一度呪文を唱えた。すると小さい方の目もぱっちり大きな目に変わった。またしても歓声が上がった。
キャサリンは、目一つ変えたところで未だに醜い少女の域であったが、目を大きくしたことでだいぶ可愛く見えた。
しばらくすると、キャサリンの顔はもとに戻った。
「素晴らしいですね。あなたも変身魔法の会得、とても頑張っていますね」
校長先生が褒めたあと、みんな大きく拍手した。見ていて楽しい発表だったと思う。
「ここから少しレベル上がります。次は退化魔道士ネルさん。レベル6です」
ネルは金魚鉢を持ってみんなの前に立った。金魚鉢にはカエルが一匹泳いでいる。
「このカエルを、オタマジャクシにします」
といって呪文を唱えた。すると、カエルにしっぽが生え、手足が縮み、オタマジャクシになった。
「素晴らしい。ネルさんもこの一ヶ月でレベル1上がりましたね。今までとは比べ物にならないぐらい頑張っていますね。どうかこの調子で頑張ってください」
校長先生のコメントのあと、みんなも拍手した。
次は蘇生魔道士リリイだ。もうレベル10だ。入学して一ヶ月でレベル10って、一体何したらそこまでレベルが上がるんだろうか。
「あの、キルルさんがさっき使った薔薇を借りてもいいですか」
とリリイは言った。なるほど、僕が枯らした薔薇を蘇生するんだなと察した僕は、手元に置いていた枯れた薔薇をリリイに手渡した。
「ありがとう」
リリイは僕に礼を言うと、呪文を唱えた。すると、薔薇は、一瞬で息を吹き替えした。僕がここに持ってきたときより色艶が良くなっている。
「素晴らしい! あなたは、今年の入学者の中でぶっちぎりで成績トップです。先生何も言うことありません」
校長先生はリリイを大きく褒めた。みんなも大きく拍手する。
「最後はクイズ作成魔道士トイさん。レベル12ですね」
「はーい。実はもう仕込んであります。みんなの部屋の入口にクイズを用意しました! 正解しないと入れません!」
「なんだって!?」
一同びっくりした。
「トイさん……できればここで発表してほしかったんですが、しょうがないですね。みんなつきあってあげましょう。トイさんもここ一ヶ月でレベル2上がってますね。素晴らしいです。あなたの魔法は相手ありきですものね。たくさんクラスメイトができて本当によかったですね」
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