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第30話 リリイの母親2
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リリイの家の前の呼び鈴を鳴らすと、リリイが出てきた。
「リリイ!」
「キルル! キルルまで来てくれたの!」
リリイは髪を切ったらしく、白銀の髪は耳の下辺りまで短くなっていて、ふんわりしたショートヘアーになっていた。緑の半袖のワンピースを着ている。一ヶ月ぶりのリリイの姿に僕のテンションは上がっていた。
「今度はどなたなの」
奥から綺麗な女の人が出てきた。リリイと同じ白銀の髪と白い肌をしている。
「私の母よ」
「ど、どうも……」
リリイのお母さんだと思うと緊張して固い挨拶になった。リリイのお母さんは、かなり若く、リリイのお姉さんでも通用しそうだった。多分僕のお母さんよりだいぶ年下だろう。
「あなたもリリイのクラスメイト?」
「ええ、『即死魔道士』のキルルよ」
リリイが紹介する。
「『即死魔道士』!? この子が?」
リリイのお母さんは明らかに驚いていた。僕に近づいてきてまじまじと顔を見つめる
「らしくない雰囲気の子ね。『即死魔道士』はおっかないイメージしか無かったから驚いたわ。ご両親の教育がいいのかしら……リリイ、お茶を出しなさい。もう少しこの子と話したいわ」
リリイははいと返事をしてお茶の準備に行った。お茶って母親の方が出してくれるイメージがあったから、僕はこのやりとりに少し驚いた。
「こちらにいらっしゃい」
僕とワープマンは来客用であろう部屋に通された。リリイがお茶を持ってくるのも待たずにリリイのお母さんは話し始めた。
「キルルくんだっけ。私と同級生だった『即死魔道士』は『人殺しバンザイ殺しまくるぜイエーイ』的なやつだったけど、君はそういう感じではないわね。だけど、殺生が苦手なら『即死魔道士』ではいられないはずだから、穏やかさ一辺倒はありえないわね。内に秘めているタイプかしら」
なんだか見透かされている感じだ。僕はどう返していいかわからず、言葉が出なかった。
「なんでわざわざ家に来てくれたのかしら?」
「それは、その、僕が『即死魔道士』のレベル100を目指す上でリリイさんが近くにいないと困るからです。それと、せっかくクラスメイトになれたのにこのままお別れなんて嫌です」
「たしかに、即死魔法は失敗すると術者が死ぬからね。特に失敗率が高いレベル80ぐらいのときはいないと困るわね」
リリイのお母さんも蘇生魔道士だからその辺はすんなり理解してくれた。
「君が即死魔法のレベル100を目指すのはなんのため?即死魔法なんておっかない魔法、どうしてそこまでしてレベル上げたいの?」
「それは……」
それは、あいつらを殺すためだ。だけど、もう一つある。
「それは、『即死魔法』は僕の唯一の才能だからです」
「ほほう?」
「僕は、力も弱くて、運動も苦手で、要領も悪くて、勉強はできなくもないけど普通でした。適性検査で即死魔法の素質を見つけてもらうまで、能力的には取り柄がなかったんです。今も即死魔法以外の魔法は使えません。だから即死魔法だけが僕の誇りなんです。たとえおっかなくても、それが僕の才能なら、僕はそれを伸ばしたいんです」
「なるほどね。うん。わかったわ」
リリイが部屋に入って来た。僕たちにお茶を出したあと、席に着いた。
「リリイ、どう? そろそろ学校に行きたくなってきたんじゃない?」
リリイのお母さんがリリイに唐突に聞いた。
「え……」
「どうなの? 今どう思ってるのかおっしゃい」
「私、キルルの魔法のことまで頭になかったわ。自分のことばかりで、ごめんなさい。それに、学校よりここの方が居心地がいいというだけで、学校が嫌なわけではないの」
すぐそこでお茶を入れていたから、僕達の話は聞こえていたようだ。
「そんなことだろうと思ってたわ。さ、友達と学校に戻りなさい」
「え? お母様、もうあんな学校には行くなってさっき……」
「元カレが校長なんてびっくりするでしょ。つい言っただけよ。この二人を見る限り、同級生の子はいい子そうだし、あいつはあいつなりにちゃんと先生やってるんでしょう。まあよしとするわ。学校に行ってらっしゃい」
「は、はい!」
よかった!問題は無事解決した!リリイが学校に帰ってくる!
「今すぐ学校に戻りたいところだけど、リリイは俺の魔法で移動できないんだよね。どうする?」
ワープマンが聞いた。
「馬車に乗るしかないわね。手配してあげるわ」
リリイのお母さんはリリイの村の戦士の馬車を手配してくれた。
「それじゃ、うちのリリイをよろしくね」
「はい」
僕とリリイとワープマンの三人は馬車に乗り、出発した。
このまま三人で帰るものと思っていたが、少し進んで休憩のために立ち寄った小さな村にいたとき、ワープマンが思わぬことを言い出した。
「なあ、キルル、リリイと二人になりたくないか?」
「え!?」
「俺、正直言って馬車の旅なんてまどろっこしくてやってられないよ。瞬間移動魔法で今すぐ王都に戻りたい。もう魔道士学校も戦士学校も授業始まるし。だけどリリイ一人で馬車じゃ可哀想だし、二人で帰ってきなよ。キルルにとってもいい話だろうと思うけど」
「あ、あはは……」
「あれ? 嫌?」
「いや、ワープマンにまで気持ちがバレてるなんて、と思って……ワープマンは、あんまり他人に恋愛にまで関心持たないタイプだと思ってたから」
「それよく言われる。人に関心なさそうって。そんなことはないんだけどな。ていうかキルルがわかりやすいんだけど。まあ、頑張れよ」
ワープマンは、向こうで休んでいたリリイに話かけに行ったかと思うと、すぐ消えてしまった。本当に瞬間移動魔法で先に王都に帰ってしまったのだ。
ここから王都まで、馬車だと十日かかる。なんと、十日の旅をリリイと二人きりで行くことになってしまった。ど、どうしよう!?
「リリイ!」
「キルル! キルルまで来てくれたの!」
リリイは髪を切ったらしく、白銀の髪は耳の下辺りまで短くなっていて、ふんわりしたショートヘアーになっていた。緑の半袖のワンピースを着ている。一ヶ月ぶりのリリイの姿に僕のテンションは上がっていた。
「今度はどなたなの」
奥から綺麗な女の人が出てきた。リリイと同じ白銀の髪と白い肌をしている。
「私の母よ」
「ど、どうも……」
リリイのお母さんだと思うと緊張して固い挨拶になった。リリイのお母さんは、かなり若く、リリイのお姉さんでも通用しそうだった。多分僕のお母さんよりだいぶ年下だろう。
「あなたもリリイのクラスメイト?」
「ええ、『即死魔道士』のキルルよ」
リリイが紹介する。
「『即死魔道士』!? この子が?」
リリイのお母さんは明らかに驚いていた。僕に近づいてきてまじまじと顔を見つめる
「らしくない雰囲気の子ね。『即死魔道士』はおっかないイメージしか無かったから驚いたわ。ご両親の教育がいいのかしら……リリイ、お茶を出しなさい。もう少しこの子と話したいわ」
リリイははいと返事をしてお茶の準備に行った。お茶って母親の方が出してくれるイメージがあったから、僕はこのやりとりに少し驚いた。
「こちらにいらっしゃい」
僕とワープマンは来客用であろう部屋に通された。リリイがお茶を持ってくるのも待たずにリリイのお母さんは話し始めた。
「キルルくんだっけ。私と同級生だった『即死魔道士』は『人殺しバンザイ殺しまくるぜイエーイ』的なやつだったけど、君はそういう感じではないわね。だけど、殺生が苦手なら『即死魔道士』ではいられないはずだから、穏やかさ一辺倒はありえないわね。内に秘めているタイプかしら」
なんだか見透かされている感じだ。僕はどう返していいかわからず、言葉が出なかった。
「なんでわざわざ家に来てくれたのかしら?」
「それは、その、僕が『即死魔道士』のレベル100を目指す上でリリイさんが近くにいないと困るからです。それと、せっかくクラスメイトになれたのにこのままお別れなんて嫌です」
「たしかに、即死魔法は失敗すると術者が死ぬからね。特に失敗率が高いレベル80ぐらいのときはいないと困るわね」
リリイのお母さんも蘇生魔道士だからその辺はすんなり理解してくれた。
「君が即死魔法のレベル100を目指すのはなんのため?即死魔法なんておっかない魔法、どうしてそこまでしてレベル上げたいの?」
「それは……」
それは、あいつらを殺すためだ。だけど、もう一つある。
「それは、『即死魔法』は僕の唯一の才能だからです」
「ほほう?」
「僕は、力も弱くて、運動も苦手で、要領も悪くて、勉強はできなくもないけど普通でした。適性検査で即死魔法の素質を見つけてもらうまで、能力的には取り柄がなかったんです。今も即死魔法以外の魔法は使えません。だから即死魔法だけが僕の誇りなんです。たとえおっかなくても、それが僕の才能なら、僕はそれを伸ばしたいんです」
「なるほどね。うん。わかったわ」
リリイが部屋に入って来た。僕たちにお茶を出したあと、席に着いた。
「リリイ、どう? そろそろ学校に行きたくなってきたんじゃない?」
リリイのお母さんがリリイに唐突に聞いた。
「え……」
「どうなの? 今どう思ってるのかおっしゃい」
「私、キルルの魔法のことまで頭になかったわ。自分のことばかりで、ごめんなさい。それに、学校よりここの方が居心地がいいというだけで、学校が嫌なわけではないの」
すぐそこでお茶を入れていたから、僕達の話は聞こえていたようだ。
「そんなことだろうと思ってたわ。さ、友達と学校に戻りなさい」
「え? お母様、もうあんな学校には行くなってさっき……」
「元カレが校長なんてびっくりするでしょ。つい言っただけよ。この二人を見る限り、同級生の子はいい子そうだし、あいつはあいつなりにちゃんと先生やってるんでしょう。まあよしとするわ。学校に行ってらっしゃい」
「は、はい!」
よかった!問題は無事解決した!リリイが学校に帰ってくる!
「今すぐ学校に戻りたいところだけど、リリイは俺の魔法で移動できないんだよね。どうする?」
ワープマンが聞いた。
「馬車に乗るしかないわね。手配してあげるわ」
リリイのお母さんはリリイの村の戦士の馬車を手配してくれた。
「それじゃ、うちのリリイをよろしくね」
「はい」
僕とリリイとワープマンの三人は馬車に乗り、出発した。
このまま三人で帰るものと思っていたが、少し進んで休憩のために立ち寄った小さな村にいたとき、ワープマンが思わぬことを言い出した。
「なあ、キルル、リリイと二人になりたくないか?」
「え!?」
「俺、正直言って馬車の旅なんてまどろっこしくてやってられないよ。瞬間移動魔法で今すぐ王都に戻りたい。もう魔道士学校も戦士学校も授業始まるし。だけどリリイ一人で馬車じゃ可哀想だし、二人で帰ってきなよ。キルルにとってもいい話だろうと思うけど」
「あ、あはは……」
「あれ? 嫌?」
「いや、ワープマンにまで気持ちがバレてるなんて、と思って……ワープマンは、あんまり他人に恋愛にまで関心持たないタイプだと思ってたから」
「それよく言われる。人に関心なさそうって。そんなことはないんだけどな。ていうかキルルがわかりやすいんだけど。まあ、頑張れよ」
ワープマンは、向こうで休んでいたリリイに話かけに行ったかと思うと、すぐ消えてしまった。本当に瞬間移動魔法で先に王都に帰ってしまったのだ。
ここから王都まで、馬車だと十日かかる。なんと、十日の旅をリリイと二人きりで行くことになってしまった。ど、どうしよう!?
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