レベル1からレベル100-即死魔道士成長物語-

コサキサク

文字の大きさ
46 / 138

第46話 声

しおりを挟む
……寂しい……


……愛されたい……


……殺したい……

 
……もっと……たい……


 僕はハッと目を覚ました。いつもはカランドの音楽魔法が聞こえてくるまで起きないのに、夜中に目を覚ましてしまった。寮の部屋は地下だから、外を見て時間帯を把握することができない。壁にかけている時計を見るとまだ午前四時だった。
 なんだろう、さっきの夢。「もっと殺したい」と言っていた気がする。夢と言うより自分の心の声のような気がするが……
 クロは僕の胸元ですやすや眠っていた。最近、クロに対して欲望を話しまくっていたのがまずかっただろうか。もっと殺したいだのリリイに抱かれたいだの……。
 少し不安になったが、そのときはあまり深く考えず寝てしまった。

 僕は、このところ、モンスター情報室が発信しているモンスター退治依頼を元に、モンスターをひたすら殺してレベルを上げていた。王都の外にモンスターを倒しに行くときはクロも連れて行くことにしていた。もし王都の外で自分の手に負えない数のモンスターが出たらクロも一応戦力になるだろうと思った。
 
 とはいえ僕もだいぶレベルが上がってきていて、倒せるモンスターの数が増えていたため、王都の外を一人でうろうろしてもほぼ問題ない。
 この日も、王都の付近で大量発生していたモンスターを殺す予定で王都周りの草原を徘徊していたのだが、モンスターを発見するなりクロが急に鳴きだした。
「クロ、どうしたの」
「ニャー! ニャー!」
 ジャケットの中で手足をバタバタしている。
「……殺したい?」
「ニャーオ」
「わかったよ。爪のキャップ外すときは大人しくしてよ」
「ニャーオ」
 爪のキャップを外してやり、クロを地面に降ろしてやると、クロは自分より大きな体の犬のようなモンスターに向かって走り出し、飛びかかった。相手のモンスターはクロの爪の毒で苦しむ。しかし、痙攣しているだけで、死んではいない。クロも僕も首を傾げたが、モンスターは数分後に動かなくなった。
「クロって相手が死ぬまでそこそこタイムラグない?」
「ニャー」
 そんなもんだと言いたげだ。だけど、クロもさっき首傾げてなかったか……? 

 クロは最近、僕のモンスター退治についてくると、殺させろ殺させろと催促するようになっていた。しかし、威力が今ひとつなのが気にかかっていた。

 寮に帰ると、校長先生が話しかけてきた。
「キルルさん、即死魔道士としての依頼が来ましたよ」 
「はい、なんでしょう!」
 たまに、即死魔道士として殺しの依頼が学校を通して来ることがある。
「飼い犬が飼い主を噛み殺す事件がありまして、飼い犬の殺処分が決定しました。殺処分の依頼が来てますよ」
 おお、犬を殺せるなんて!動物殺しの依頼は何回か受けたことがあるが犬は珍しい。僕は内心嬉しかったが、顔に出ないように気をつけながら
「はい、受けます。場所はどこですか」 
 と言った。 
「……キルルさん、ソクシクロネコモドキ連れ歩いてるんですか?」 
「え?」
 しまった。校長先生にクロを連れ歩いてるのがバレてしまった。
「もうソクシクロネコモドキの警告は取り下げてますから、くれぐれも市民に被害は出さないでくださいね」
「はい」

「ごめんね、クロ、ちょっと部屋で待ってて。校長先生に釘刺されたばかりなのにクロ連れ歩くのはちょっと……ね」 
「ニャーオ」
 僕は、クロを部屋に置いて犬の殺処分に向かった。クロにはああ言ったが、こういう珍しい依頼でクロに殺させろとか言われても困るので置いてきたというのが本当のところだ。

「そーれがさ、その殺処分の犬が野犬みたいな大きくて獰猛そうなのでさ、野犬殺してるのとあんまり感覚変わらなかったよ。なんかちょっと残念」
「ニャーオ」
 僕は自室でクロに愚痴った。


 僕はまた、夢を見た。


……寂しい……


……愛されたい……


……殺したい……

 
……もっと……たい……


……もっと……


……食べ……たい……


 


 




 

 


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...