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第59話 アレン
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「うん、飛び降りたの、あの子だよ」
スーに小声で言った。
「そうか、わかった」
スーも小声で返事をすると、少年を手招きして呼び寄せた。
その少年は、見るからに暗そうな子だった。表情が暗く、肩を落とすかのような姿勢の歩き方でこちらに来た。髪はくせ毛なのかうねっていて、僕達と同様に小柄。だけど賢そうな顔立ちをしている。
少年は僕の姿を見て会釈したあと、スーに促され、スーの正面の席に着いた。僕はスーの左隣に座った。僕の斜め前に座った少年は、
「こんにちは、アレンと言います」
と自己紹介をした。
「この人は僕の友達のキルル。キルルは魔力ゼロの人にも優しいから君に紹介したくてさ」
と、スーは僕の説明をした。アレンは、僕をじっと観察したあと、
「キルルさんは、国立魔道士養成学校の方ですよね」
僕の腕章を見て質問してきた。
「そうだよ」
「国立魔道士養成学校って、魔法がレベル100まで上がる人しか入れない所じゃないですか。そんなエリートな人がどうしてこんな所に」
「いや、それは……」
僕が魔力ゼロの人に親近感を持ってしまう理由は、魔力ゼロの可能性を感じながら15歳まで過ごしていたから、そして今もみんなが使える一般魔法とは無縁であるからだ。しかし、一般魔法が使えないとなると、なんの魔法の素質があるのかという話になり、特殊魔道士であることを話さざるを得なくなってしまう。特殊魔道士まで話してしまうと、じゃあどんな特殊魔法を使えるのかと言う話になり、結局即死魔道士であることまで話すことになってしまいそうだ。まずい。
「キルルは一種類の魔法以外はさっぱり使えないんだよ。だから、全く使えない人の気持ちも多少わかるのさ」
僕が困っているとスーがうまいこと説明してくれた。
「ああ、僕、国立魔道士養成学校の中では、結構肩身狭いんだ。一種類の魔法しか使えないのって、多分校内で僕だけだし。だから受けれる授業も少なくてここに遊びに来る暇まであるしね」
「……なるほど、エリートでもいろいろあるんですね」
アレンは一応納得してくれたようだった。
僕は、飛び降りのこと、アレンに聞きたい。だけど、ぶしつけに聞くのはまずいだろう。どこから話せばいいだろう。
「アレン、君、この間建物から飛び降りてるよね?」
迷っていたらスーが単刀直入に聞き出した。
「知ってたんですか」
さっきまで暗い表情で話していたアレンもさすがにこれには驚いて目を見開いている。
「僕、たまたま飛び降りたところ、見てたんだ。そして、僕の横にいた友達が、君が地面に激突しないように風魔法を使って軌道を変えたんだ」
僕がそう説明すると、
「なるほど、やけに軽症ですんだのは、そういうことだったんですね」
アレンは静かに答えた。
「ねえ、アレン、魔法が全く使えないのがショックなのはわかるけど、なんで飛び降りまでしたんだい。魔力ゼロなこと、誰かにからかわれでもしたの?」
スーが尋ねると、アレンは首を降った。
「僕は、魔法使いになりたかっただけです。ただそれだけです。僕の故郷の村は戦士はほとんどいなくて身の回りは魔法使いばかりでした。親も兄弟も親戚も、皆レベルの高い魔法使いだったので、僕も当然魔法使いになるとばかり思っていました。村には中学校より上の学校は魔法学校しかなかったし、魔法が使えない場合どう生きていけばいいのかわからなくて……」
なるほど、想定外のことでショックが大きかったのか。
「飛び降りのあと、ここの学校の校長先生が僕を訪ねてくれて話を聞いてくれまして、この学校に入学を勧めてくれたので、入学しました。この学校は魔力ゼロの生徒も割といるからと。故郷に帰るのは正直辛いので、ここにいるという感じです」
そうか、この学校は、魔力が少ない、もしくはゼロだった子のための受け皿になっているのか。一応そういう場所があることに安心した。適性検査の結果が思わしくなかった子がどこに行くのか、気になっていたから。
「アレン、そのうちキルルと三人でどこか遊びに行こうよ。王都は面白いもの沢山あるし、魔法以外にもやりたいこと、そのうち見つかるって」
スーがそう言うと、僕も横で頷いた。
「はい。ありがとうございます」
アレンは固い表情のままだったが、そう返事をした。
とりあえず、今は飛び降りたときほどまずい心理状態ではなさそうで、少しほっとしながら、遊びの予定を立てた。
スーに小声で言った。
「そうか、わかった」
スーも小声で返事をすると、少年を手招きして呼び寄せた。
その少年は、見るからに暗そうな子だった。表情が暗く、肩を落とすかのような姿勢の歩き方でこちらに来た。髪はくせ毛なのかうねっていて、僕達と同様に小柄。だけど賢そうな顔立ちをしている。
少年は僕の姿を見て会釈したあと、スーに促され、スーの正面の席に着いた。僕はスーの左隣に座った。僕の斜め前に座った少年は、
「こんにちは、アレンと言います」
と自己紹介をした。
「この人は僕の友達のキルル。キルルは魔力ゼロの人にも優しいから君に紹介したくてさ」
と、スーは僕の説明をした。アレンは、僕をじっと観察したあと、
「キルルさんは、国立魔道士養成学校の方ですよね」
僕の腕章を見て質問してきた。
「そうだよ」
「国立魔道士養成学校って、魔法がレベル100まで上がる人しか入れない所じゃないですか。そんなエリートな人がどうしてこんな所に」
「いや、それは……」
僕が魔力ゼロの人に親近感を持ってしまう理由は、魔力ゼロの可能性を感じながら15歳まで過ごしていたから、そして今もみんなが使える一般魔法とは無縁であるからだ。しかし、一般魔法が使えないとなると、なんの魔法の素質があるのかという話になり、特殊魔道士であることを話さざるを得なくなってしまう。特殊魔道士まで話してしまうと、じゃあどんな特殊魔法を使えるのかと言う話になり、結局即死魔道士であることまで話すことになってしまいそうだ。まずい。
「キルルは一種類の魔法以外はさっぱり使えないんだよ。だから、全く使えない人の気持ちも多少わかるのさ」
僕が困っているとスーがうまいこと説明してくれた。
「ああ、僕、国立魔道士養成学校の中では、結構肩身狭いんだ。一種類の魔法しか使えないのって、多分校内で僕だけだし。だから受けれる授業も少なくてここに遊びに来る暇まであるしね」
「……なるほど、エリートでもいろいろあるんですね」
アレンは一応納得してくれたようだった。
僕は、飛び降りのこと、アレンに聞きたい。だけど、ぶしつけに聞くのはまずいだろう。どこから話せばいいだろう。
「アレン、君、この間建物から飛び降りてるよね?」
迷っていたらスーが単刀直入に聞き出した。
「知ってたんですか」
さっきまで暗い表情で話していたアレンもさすがにこれには驚いて目を見開いている。
「僕、たまたま飛び降りたところ、見てたんだ。そして、僕の横にいた友達が、君が地面に激突しないように風魔法を使って軌道を変えたんだ」
僕がそう説明すると、
「なるほど、やけに軽症ですんだのは、そういうことだったんですね」
アレンは静かに答えた。
「ねえ、アレン、魔法が全く使えないのがショックなのはわかるけど、なんで飛び降りまでしたんだい。魔力ゼロなこと、誰かにからかわれでもしたの?」
スーが尋ねると、アレンは首を降った。
「僕は、魔法使いになりたかっただけです。ただそれだけです。僕の故郷の村は戦士はほとんどいなくて身の回りは魔法使いばかりでした。親も兄弟も親戚も、皆レベルの高い魔法使いだったので、僕も当然魔法使いになるとばかり思っていました。村には中学校より上の学校は魔法学校しかなかったし、魔法が使えない場合どう生きていけばいいのかわからなくて……」
なるほど、想定外のことでショックが大きかったのか。
「飛び降りのあと、ここの学校の校長先生が僕を訪ねてくれて話を聞いてくれまして、この学校に入学を勧めてくれたので、入学しました。この学校は魔力ゼロの生徒も割といるからと。故郷に帰るのは正直辛いので、ここにいるという感じです」
そうか、この学校は、魔力が少ない、もしくはゼロだった子のための受け皿になっているのか。一応そういう場所があることに安心した。適性検査の結果が思わしくなかった子がどこに行くのか、気になっていたから。
「アレン、そのうちキルルと三人でどこか遊びに行こうよ。王都は面白いもの沢山あるし、魔法以外にもやりたいこと、そのうち見つかるって」
スーがそう言うと、僕も横で頷いた。
「はい。ありがとうございます」
アレンは固い表情のままだったが、そう返事をした。
とりあえず、今は飛び降りたときほどまずい心理状態ではなさそうで、少しほっとしながら、遊びの予定を立てた。
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