レベル1からレベル100-即死魔道士成長物語-

コサキサク

文字の大きさ
64 / 138

第64話 ダンジョン

しおりを挟む
 遠足の日、僕たち特殊クラスの面々は、王都の南門の前に整列していた。
「今日は絶好の遠足日和ですねえ」
 雲ひとつない空を見上げて校長先生が言った。ピエロの校長先生は青空の下が恐ろしく似合わないなと思った。
「全員揃ってますね。じゃあ、出発しますよ」
 僕たちは校長先生に導かれ歩き出した。最初は舗装された道を歩いていた。
「道中でモンスターが現れたら皆さんで倒してくださいね。先生は手出ししません」
「はーい」
 ちょこちょこ現れるモンスターをみんなが手分けして倒していく。去年の夏休みの合同帰省のようにポールトーマスが上手く指揮をとっていた。僕は一日に使える魔法の回数が限られているため、ここでは魔法は使わないように言われた。今はまだ遠足の序盤であり、目的地がわからない段階だからだ。
「王都から南に向かってるけど、この先って何があるの?」 
 南地方出身のリリイに聞いた。
「この先だと……近くに小さな村があるぐらいだけど……」
 荷物は日帰り遠足の量でよいと言われていたし、そんなに遠くには行かないはずだ。恐ろしいモンスターが出るような森などもこのあたりにはない。だとするとどこに行くんだろう。

 道から少しそれたところに、小さな小屋があった。看板から見て宿のようだ。
「皆さん、目的地はあの宿です」
 と校長先生は言った。
「宿泊地が宿じゃなくて、目的地が宿……?」
 ポールトーマスを始め、皆が怪訝に思った。今日は泊りがけの遠足ではないはずだけど……。
 宿についた。その宿は、かなりボロい建物で、人が住んでいるとはとても思えないところだった。窓は割れていたし、建物は蔦で覆われている。
「ドアが開きませんね」
 ドアも蔦に覆われ、開きそうにない。
「先生、ここ中に人いるんですか?」
 トイが聞くと、校長先生は、
「いますよ」
 と答えたが、このドアから宿主はどうやって出入りしているのだろうか。
「蔦、枯らしましょうか」
 僕が聞くと、校長先生ではなく生徒同士で決めろと言われたので、ポールトーマスが指示した。
「キルル、頼むよ。あまり魔力使いすぎないでね」
「わかった」
 僕は即死魔法を狭い範囲で発動した。ドアの周りの蔦が枯れて茶色く変色する。みんなで枯れた蔦をどかして、ようやくドアが開いた。
 ドアを開くと、中は真っ暗で何もない空間だった。明らかに普通の宿じゃない。みんな身構えて警戒した。
「おおー! みんな、よく来なすった!」
 暗闇から突然おじいさんが現れた。真っ白なあごひげを地面まで伸ばした、二百歳ぐらいに見えるおじいさんだった。枯れ木なのかロッドなのかよくわからない枝を手に持っている。
 いきなりのおじいさんの登場に皆びっくりはしたが、おじいさんはものすごくにこにこしていたため、警戒が薄れてしまう。
「校長先生、お久しぶりです」
 そう言ったのは、校長先生だった。
「ほほ、もうわしは校長先生じゃないぞ」
 おじいさんはにこにこしたまま答えた。
「皆さん、この方は、先代の校長先生ですよ」
 校長先生が僕たちに向けて紹介した。
「ええー! じゃあ、このおじいさんも特殊魔道士ですか?」
「ほほ、ご名答。わしは『地形変更魔道士ツチカベ』じゃ。みんなはどんな魔法を使うんじゃ? ダンジョンを作ってやるから、その力、わしに見せておくれ」
 おじいさんは手に持った枝をかざした。
 突然、何もなかった部屋に、地下に続く階段が現れた。
「ほれ、ダンジョンができたぞ。みんなおいで」
 みんなで階段を下った。階段も、周りの壁も冷たく、降りる度に温度が下がっていくのを感じた。
 階段を下った先の部屋には、大きな怪獣のようなモンスターが唸っていた。今まで見たことない大きさだ。
「ほほ、急に地形を変えたから地底モンスターが怒ってしもうた。みんな退治しておくれ。わしは年だから倒せん」
 おじいさん、いや先代の校長先生はそう言った。さっき下ってきた階段はもうなかった。つまりもう出口がない。

「先代の校長先生、出口がないですが!?」
 ポールトーマスが聞くと
「ほほ、力を見せとくれと言ったろう。出口も自分たちで探すんじゃな。がんばれよー」
 先代の校長先生はにこにこして言った。
「相変わらずスパルタですねえ」
 校長先生が先代の校長先生に向かって言った。
「お前が生温いんじゃ。自分がスパルタ教育できないからって、隠居のわしを頼るな」
「老人なんて、頼られなくなったら張り合いなくなってすぐ死にますよ」
「だまらっしゃい」
 先代の校長先生は校長先生を吹き飛ばした。
 校長先生は、壁にぶつかって倒れ、動かなくなった。
「ほうら、もう先生はあてにならんぞ」
 先代の校長先生は僕たちに言った。
「え? 校長先生死んでませんよね?」
 トイが聞くと、
「多分な。まあ死んだらこいつはそれまでってことじゃ。お前らもな。ほら、怪獣が来るぞ」
 振り返ると、怪獣は僕たちに今まさに襲いかかろうとしていた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...