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第71話 闇
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「あっ! そういえば!」
僕が急に叫んだので、みんながこっちを見た。今は食堂で夕食を食べている。王宮から学校に帰ってきて、みんな一息ついているところだった。
「『闇飴』食べるの忘れてた!」
「闇飴」とは僕が遠足のお菓子に買ったおやつだ。結局遠足中に食べる機会がなかった。
僕は鞄から闇飴を取り出した。
「飴だし、まだ傷んでないよね」
「その袋、何か書いてある」
僕の対面にいたトイが、闇飴の袋を指さして言った。トイが机に身を乗り出して袋に近づき説明を読む。
「『食べてみるまで、味、効能は謎。100個に1つの確率でレベルが1アップする当たり飴が入っている(ただし有効なのはレベル80未満まで)』だってよ!」
「えー! すごい! 食べよう!」
僕は食いついた。だけど闇飴は5粒しか入っていなかった。
「えっと、みんな食べたいよね? どうやって決めよう?」
僕は、こんなものみんな欲しがるかと思ったのだが、そうでもなかったようで、
「私は、いいわ」
リリイが真っ先に断った。遠慮したと言うより、味がわからないものを食べるのに抵抗があるのだと察した。リリイは明らかに偏食で、食堂でも食べるものが偏っている。
「えっと、欲しい人?」
僕が聞くとトイとショウとネルが手を上げた。
「あと一人……」
「いないなら、もらう」
ワープマンが手を上げた。というわけでこの五人で運試しになった。
闇飴を食べる前に、みんなでレベルを測った。
「よし、じゃあ、食べよう」
飴を受け取った5人で一斉に食べた。
「……おいしいね」
「うん」
みんなゲテモノのような味を覚悟していたからか、少し拍子抜けしながらも飴を舐める。
食べ終わったあと、食べたメンバーでもう一度レベルを測ると、なんと僕のレベルが1上がっている。レベル44から45になった!しかも、ワープマンも1つレベルが上がっていた。49から50になっていた。しかも一般魔法もすべてレベル1ずつ上がっていた。
「おおー! 当たり引いてる! いいなあ! しかも、2個も当たりって!」
このときは喜んだ。だけど、これは僕にとってもワープマンにとっても悲劇を生んだ。
「キルル、キルル、起きろ」
いつもはカランドの音楽魔法で目を覚ますのに、今日は誰かの声で起きた。
目を覚まし、ふと見上げるとベッドの横にワープマンが立っていた。
「ワープマン!! なんでここに!……ううっ」
慌てて起き上がると、吐き気が襲ってきて俯いた。
「いや、ホームルームが過ぎても部屋から出てこないから心配して見に来たんだよ。大丈夫か?」
「うう、具合、悪い……」
「先生読んでくるから待ってろ」
ワープマンが消えて、校長先生を連れてすぐに戻ってきた。
「なるほど? 昨日全ての魔法のレベルが上がる飴を食べたんですね」
「はい」
横たわるしかない僕の代わりにワープマンが受け答えしている。
「キルルくんは、一般魔法が使えないんで、一般魔法のレベルを上げるための力がダメージになったみたいですね。まあこれは時間薬のやつです。回復するまで寝てるようにね」
「はい」
僕は弱々しく返事した。
校長先生が話す横で、ワープマンは僕の部屋に並ぶ剥製を苦々しい顔で眺めている。
まずい。校長先生はともかく、ワープマンにこの部屋を見られてしまった……
「ワープマン、頼む、これは、見なかったことにげっほげっほおえええ」
「あ、ああ、……昨日レベル50になったから、ドアを抜けて瞬間移動できたんだけどな。やっぱり人の部屋って無断で入るもんじゃないな……勉強になったよ」
ワープマンは、レベル50になると、壁を無視して瞬間移動できるようになるらしい。よりによって、昨日あの飴を食べたためにレベル50になり、この事態になってしまったのだ。僕もあの飴さえなければ寝込まずに済んだものを……
「まあ、それにしてもすごい部屋ですねキルルくん、見事に死体づくめですね。クロまでいるじゃないですか」
校長先生はなぜか笑っていた。
「うーん、部屋のヤバさだけなら旧即死魔道士の上を行く勢いですねえ。キルルくん、あんまり内に溜め込むのも良くないですよ」
「は、はい」
「旧即死魔道士」の上を行く要素があることにちょっとショックを受けたが、この日は具合が悪くて悩むどころではなかった。
魔法のレベルが上がることはいいことなのだが、辛いこともある。ワープマンも瞬間移動魔道士であるばかりに今日みたいに人の秘密を知る機会が多く、結構辛い人生を送ることになる。
そして僕も魔法のレベルが上がるにつれ、悩みは増えていくのだ。
僕が急に叫んだので、みんながこっちを見た。今は食堂で夕食を食べている。王宮から学校に帰ってきて、みんな一息ついているところだった。
「『闇飴』食べるの忘れてた!」
「闇飴」とは僕が遠足のお菓子に買ったおやつだ。結局遠足中に食べる機会がなかった。
僕は鞄から闇飴を取り出した。
「飴だし、まだ傷んでないよね」
「その袋、何か書いてある」
僕の対面にいたトイが、闇飴の袋を指さして言った。トイが机に身を乗り出して袋に近づき説明を読む。
「『食べてみるまで、味、効能は謎。100個に1つの確率でレベルが1アップする当たり飴が入っている(ただし有効なのはレベル80未満まで)』だってよ!」
「えー! すごい! 食べよう!」
僕は食いついた。だけど闇飴は5粒しか入っていなかった。
「えっと、みんな食べたいよね? どうやって決めよう?」
僕は、こんなものみんな欲しがるかと思ったのだが、そうでもなかったようで、
「私は、いいわ」
リリイが真っ先に断った。遠慮したと言うより、味がわからないものを食べるのに抵抗があるのだと察した。リリイは明らかに偏食で、食堂でも食べるものが偏っている。
「えっと、欲しい人?」
僕が聞くとトイとショウとネルが手を上げた。
「あと一人……」
「いないなら、もらう」
ワープマンが手を上げた。というわけでこの五人で運試しになった。
闇飴を食べる前に、みんなでレベルを測った。
「よし、じゃあ、食べよう」
飴を受け取った5人で一斉に食べた。
「……おいしいね」
「うん」
みんなゲテモノのような味を覚悟していたからか、少し拍子抜けしながらも飴を舐める。
食べ終わったあと、食べたメンバーでもう一度レベルを測ると、なんと僕のレベルが1上がっている。レベル44から45になった!しかも、ワープマンも1つレベルが上がっていた。49から50になっていた。しかも一般魔法もすべてレベル1ずつ上がっていた。
「おおー! 当たり引いてる! いいなあ! しかも、2個も当たりって!」
このときは喜んだ。だけど、これは僕にとってもワープマンにとっても悲劇を生んだ。
「キルル、キルル、起きろ」
いつもはカランドの音楽魔法で目を覚ますのに、今日は誰かの声で起きた。
目を覚まし、ふと見上げるとベッドの横にワープマンが立っていた。
「ワープマン!! なんでここに!……ううっ」
慌てて起き上がると、吐き気が襲ってきて俯いた。
「いや、ホームルームが過ぎても部屋から出てこないから心配して見に来たんだよ。大丈夫か?」
「うう、具合、悪い……」
「先生読んでくるから待ってろ」
ワープマンが消えて、校長先生を連れてすぐに戻ってきた。
「なるほど? 昨日全ての魔法のレベルが上がる飴を食べたんですね」
「はい」
横たわるしかない僕の代わりにワープマンが受け答えしている。
「キルルくんは、一般魔法が使えないんで、一般魔法のレベルを上げるための力がダメージになったみたいですね。まあこれは時間薬のやつです。回復するまで寝てるようにね」
「はい」
僕は弱々しく返事した。
校長先生が話す横で、ワープマンは僕の部屋に並ぶ剥製を苦々しい顔で眺めている。
まずい。校長先生はともかく、ワープマンにこの部屋を見られてしまった……
「ワープマン、頼む、これは、見なかったことにげっほげっほおえええ」
「あ、ああ、……昨日レベル50になったから、ドアを抜けて瞬間移動できたんだけどな。やっぱり人の部屋って無断で入るもんじゃないな……勉強になったよ」
ワープマンは、レベル50になると、壁を無視して瞬間移動できるようになるらしい。よりによって、昨日あの飴を食べたためにレベル50になり、この事態になってしまったのだ。僕もあの飴さえなければ寝込まずに済んだものを……
「まあ、それにしてもすごい部屋ですねキルルくん、見事に死体づくめですね。クロまでいるじゃないですか」
校長先生はなぜか笑っていた。
「うーん、部屋のヤバさだけなら旧即死魔道士の上を行く勢いですねえ。キルルくん、あんまり内に溜め込むのも良くないですよ」
「は、はい」
「旧即死魔道士」の上を行く要素があることにちょっとショックを受けたが、この日は具合が悪くて悩むどころではなかった。
魔法のレベルが上がることはいいことなのだが、辛いこともある。ワープマンも瞬間移動魔道士であるばかりに今日みたいに人の秘密を知る機会が多く、結構辛い人生を送ることになる。
そして僕も魔法のレベルが上がるにつれ、悩みは増えていくのだ。
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