レベル1からレベル100-即死魔道士成長物語-

コサキサク

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第76話 嫉妬

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 レベル49、いよいよ待ちに待ったレベル50まであと少しというところまで来た。しかし、今はレベル上げが思うように進められない。二年生の前期の一般教養のテストが近づいていたので、勉強の方が忙しいのだ。
 とはいえテスト期間も悪いことばかりではない。相変わらず国語以外の成績が壊滅的なリリイは、僕を頼ってくれているのだ。テスト期間はリリイと一緒に勉強できる。
 うちのクラスは、頭のいいやつが多い。トイは学年トップだし、リャ、ポールトーマス、キャサリン、カランド、ワープマンは僕より成績が上なのだ。つまり僕は一般教養の成績はクラス7位で、下から数えた方が早い位置にいる。しかもリリイは国語はできるのでクラス8位なのだ。7位が8位を教えているとはなんとも不思議な状況である。
 なぜリリイが僕をあてにしているかというと、トイはクイズ作成魔法を使ってくるので間違えるとダメージを受けるトラップ付きの問題を出して来るから面倒だし、リャは計算式を完全に端折って答えだけ弾き出すタイプで教えるのに向いてない。ポールトーマスはネルの勉強を見てやるので手一杯だし、キャサリンはショウを見ている。カランドは音楽学校、ワープマンは戦士学校があるので超忙しいのだ。リリイが頼れるのは僕しか残っていない、という見も蓋もない理由である。
 だけど、理由なんてなんでもいい。リリイと過ごせる機会があるだけで十分だ。
「ねえ、リリイ、ロビーで勉強ばかりだと飽きちゃうし、街の図書館で勉強でもしない?」
「あら、いいわね。そうしましょう」
 リリイは、勉強の気晴らしになることだと圧倒的に乗り気になることがわかってきた。とにかくリリイと出かけることになった。一応学生なんだから、勉強にかこつけて出かければ良いことに、ようやく気がついた僕だった。

 図書館に向かう道中で、ばったりアレンとあった。
「アレン! どうしたの?」
「図書館で勉強です」
「そうなんだ。僕たちもだよ」
「あの、そちらは?」
 アレンは、僕の横にいるリリイを見つめた。
「えっと、クラスメイトのリリイだよ」
「なるほど、こちらが……はじめまして、アレンです。キルルさんの学校の話を聞く際に名前は伺っていました」
 アレンが丁寧に挨拶した。
「リリイ、この子はアレン、僕の友達なんだ」
 リリイもアレンに挨拶した。アレンと共に図書館に向かう。
 僕とリリイは図書館の自習用の机に座り、勉強を始めた。アレンは図書館の本を物色したいようで、僕たちの側を離れた。
「ねえ、キルル。あの子、式典の時に飛び降りた子じゃない?」
「あ……気づいてたの?」
「ええ、見た目は覚えていたから。今は元気に過ごしているのかしら?」
「うん」
「そう、ならよかった」
 本当はアレンは今も死ぬ気満々であるが、リリイにはこう言うしかない。
 勉強を始めよう……と思った瞬間、図書館の中で爆発するような音が聞こえた。図書館にふさわしくない叫び声が響き渡る。アレンが僕たちの方へ向かって走ってくる。

「アレン、何があったの」
「向こうで、変な色の肌の人が暴れています」
 アレンが指差した方へ向かうと、赤色の肌の男が暴れていた。
「ええい! ここにある本は読んだことがあるものばかりだ! つまらん! つまらん!」
 人型モンスターだった。知能の高いモンスターは、知識欲が満たされないと暴れだすという困った性質をしているのだ。
 くそ、よりによってレベル49の時に人型モンスターに遭遇なんて、なんてタイミング悪いんだ。レベル50なら、あの人型モンスターを即死させられたのに!
 僕が悔やんでいる間に、リリイは呪文を唱え出した。なんと土のゴーレムを二体作り出し、人型モンスターをゴーレムで挟み撃ちをした。
人型モンスターは本棚の角に追いやられ、本棚に体をぶつけると、人型モンスターの頭上に分厚い図鑑が雪崩れ落ちた。人型モンスターは完全に気を失ってしまった。リリイは間髪入れずに草魔法で蔓を生み出し、人型モンスターをぐるぐる巻きにして、さらに、風魔法を使って落ちた図鑑を本棚に戻した。
「これでいいかしら。あとは人型モンスターの対処が得意な魔道士におまかせしましょう」
 あれだけ魔法を乱発しておきながら、涼しい顔でリリイが言った。
「な……すごい」
 隣で見ていたアレンが呆気に取られている。
「ああ、リリイは魔法はすごく才能あるんだ。うちの学校でトップなんだよ」
「……もしかして、僕の飛び降りを風魔法で妨げたのって、リリイさんですか?」
 僕は思わずアレンを見た。

「そうなんですね」
 しまった。表情で悟られてしまった。自分の自殺の邪魔をした人間なんて、いい印象なわけがない。それも、アレンは風魔法のせいでゆっくり地面に落ちたことがトラウマになっているのだ。
「僕、あの人嫌いだな……」
 アレンは思っていることを隠しもせず呟いた。
「え、えっと、アレン、落ち着いて」
 僕は慌てたが、
「心配しなくても、あんな強い魔法使い、僕じゃ太刀打ちできないし、何もしませんよ。ただの嫉妬です。僕が欲しかったもの、全て持っているんですから」
「アレン……」
 僕も、アレンの気持ち、多少はわかる。僕も
できることなら、一般魔法も使いたかった。多彩な魔法が使えるのは羨ましい限りだ。
 即死魔道士の僕は一般魔法が全く使えなくて、蘇生魔道士のリリイは一般魔法が全てレベル100で才能抜群ってどうなってるんだろう。一応対の魔道士だというのに、僕の分が悪いのはちょっと腑に落ちない。なんて、よく考えているのだ。
 だから、アレンにかける言葉が見つからなかった。
 
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