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第79話 新しい呪文
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週末、モンスター料理店の店員のガントさんに付き添い、モンスター退治に行くことになった。
ガントさんの他にあと二人、店員さんがついてきた。二人ともガントさん同様に大柄で、傷だらけだ。
王都の西の門から外に出た。西の門の近くには小さな森がある。様々なモンスターが出ると言われていて、むやみに近づかないように学校から注意が出ている場所だ。
僕たち魔道士の学生は、レベル上げのためにはモンスター退治も必要なわけだが、それでも「立ち入るな」と警告が出ている所なのだ。森に入るのは少し不安だ。
「あの、僕、今のレベルだと大きいモンスターせいぜい一匹しか倒せないですけど、大丈夫ですか?」
森に向かってずんずん歩くガントさん達に話しかける。
「ああ、大丈夫だ。いつも俺たちがやっていることだから」
ガントさんは前を向いたまま答えた。
森に入る。森の木々は枝や根がうねうねと曲がっていて、今まで見た木とは別物に見えた。葉っぱの色も王都の街路樹とは違って、深い緑色をしている。地面は苔が生えていて、少し湿っているようだった。気をつけないと転んでしまいそうだ。
頭上から不気味な鳥の鳴き声が聞こえてくる。モンスターだろうか。木々の間から見える空もどこか暗く、雲で覆われていた。
正直、怖い。魔道士になったと言っても、こんな空間には来たことがない。この間遠足で通ったダンジョンは、クラスのみんながいたし、先代の校長先生が作り出したものだったからどこか安心できた。だけどここは違う。正真正銘の危険な場所だ。
「この先にモンスターの巣があるんだ」
ガントさんが言う。少し進むと、洞穴が見えた。大人が余裕で入れる大きな穴が空いている。中は暗くて見えない。
「あれだ。よし、突撃するから、キルルくん、身構えてね」
「え?」
ガントさんが、近くにあった岩を持ち上げ洞穴の中に投げ込んだ。鈍い音と共に、明らかに何かの生き物の鳴き声が聴こえてきた。悲鳴のような、「キエエ」という声。
「来るぞ」
ガントさんの言葉とほぼ同じタイミングで、巨大な鳥が飛び出してきた。僕たちに向かって一直線に向かってきた。僕はガントさんに腕を捕まれ、即座に後退した。ガントさんが助けてくれたからよかったものの、あの場にそのままいたら鳥と激突するところだった。一瞬の出来事で、心臓がバクバク言い出した。鳥は、僕たちを仕留め損ねたことに気づいてこちらを見ている。鳥は、大人の人間並の体長で、鮮やかなピンク色に鷹のような目、人を丸呑みしそうな巨大なくちばしがある。人間以上に太くたくましい二本足で立っていた。間違いなく今まで見た中で一番大きいモンスターだ。
「キルルくん、あれ、殺せるかい?」
ガントさんの言葉で僕は我に返った。一瞬、僕の心は子供のようになり恐怖で震えていた。しかし今の僕は即死魔道士だ。あの鳥のモンスターがもう一度僕たちに向かって来る前に、殺すんだ!
即死魔法の呪文を唱える。今までと違う、新しい呪文だ。
鳥のモンスターは、目玉が飛び出すような驚いた表情をしたあと、真っ直ぐに地面に倒れ込んだ。
「やったか!?」
ガントさんが、鳥のモンスターに駆け寄る。
「おお、本当に死んでる! すごい魔法だな!」
ガントさんが僕に向かって笑いかけた。僕はほっとしたと同時にひざまずいた。
「おい、大丈夫か」
ガントさんの仲間が心配しだす。
「新しい呪文を使うと、慣れるまでは体力が切れやすくて。今までもこんな感じだったので、大丈夫です。しばらくすれば治るので」
「そうか、しかし、長居は無用だから、すぐ出よう」
ガントさん仲間は僕をおぶった。ガントさんは鳥のモンスターの死骸を担いでこっちにきた。目的は果たしたので、早々に森を出た。
森を出たときには、僕は普通に歩けるぐらいに回復していた。
「キルルくん、ありがとう。おかげで今日の仕事は楽だったよ。モンスターも傷一つなくて綺麗なもんだ。夜、解体ショーやるけど、来れるかい?」
「はい、見に行きます」
僕は、王都に戻ると、夜まで自室で休んだあと、モンスター料理店に向かった。
ガントさんの他にあと二人、店員さんがついてきた。二人ともガントさん同様に大柄で、傷だらけだ。
王都の西の門から外に出た。西の門の近くには小さな森がある。様々なモンスターが出ると言われていて、むやみに近づかないように学校から注意が出ている場所だ。
僕たち魔道士の学生は、レベル上げのためにはモンスター退治も必要なわけだが、それでも「立ち入るな」と警告が出ている所なのだ。森に入るのは少し不安だ。
「あの、僕、今のレベルだと大きいモンスターせいぜい一匹しか倒せないですけど、大丈夫ですか?」
森に向かってずんずん歩くガントさん達に話しかける。
「ああ、大丈夫だ。いつも俺たちがやっていることだから」
ガントさんは前を向いたまま答えた。
森に入る。森の木々は枝や根がうねうねと曲がっていて、今まで見た木とは別物に見えた。葉っぱの色も王都の街路樹とは違って、深い緑色をしている。地面は苔が生えていて、少し湿っているようだった。気をつけないと転んでしまいそうだ。
頭上から不気味な鳥の鳴き声が聞こえてくる。モンスターだろうか。木々の間から見える空もどこか暗く、雲で覆われていた。
正直、怖い。魔道士になったと言っても、こんな空間には来たことがない。この間遠足で通ったダンジョンは、クラスのみんながいたし、先代の校長先生が作り出したものだったからどこか安心できた。だけどここは違う。正真正銘の危険な場所だ。
「この先にモンスターの巣があるんだ」
ガントさんが言う。少し進むと、洞穴が見えた。大人が余裕で入れる大きな穴が空いている。中は暗くて見えない。
「あれだ。よし、突撃するから、キルルくん、身構えてね」
「え?」
ガントさんが、近くにあった岩を持ち上げ洞穴の中に投げ込んだ。鈍い音と共に、明らかに何かの生き物の鳴き声が聴こえてきた。悲鳴のような、「キエエ」という声。
「来るぞ」
ガントさんの言葉とほぼ同じタイミングで、巨大な鳥が飛び出してきた。僕たちに向かって一直線に向かってきた。僕はガントさんに腕を捕まれ、即座に後退した。ガントさんが助けてくれたからよかったものの、あの場にそのままいたら鳥と激突するところだった。一瞬の出来事で、心臓がバクバク言い出した。鳥は、僕たちを仕留め損ねたことに気づいてこちらを見ている。鳥は、大人の人間並の体長で、鮮やかなピンク色に鷹のような目、人を丸呑みしそうな巨大なくちばしがある。人間以上に太くたくましい二本足で立っていた。間違いなく今まで見た中で一番大きいモンスターだ。
「キルルくん、あれ、殺せるかい?」
ガントさんの言葉で僕は我に返った。一瞬、僕の心は子供のようになり恐怖で震えていた。しかし今の僕は即死魔道士だ。あの鳥のモンスターがもう一度僕たちに向かって来る前に、殺すんだ!
即死魔法の呪文を唱える。今までと違う、新しい呪文だ。
鳥のモンスターは、目玉が飛び出すような驚いた表情をしたあと、真っ直ぐに地面に倒れ込んだ。
「やったか!?」
ガントさんが、鳥のモンスターに駆け寄る。
「おお、本当に死んでる! すごい魔法だな!」
ガントさんが僕に向かって笑いかけた。僕はほっとしたと同時にひざまずいた。
「おい、大丈夫か」
ガントさんの仲間が心配しだす。
「新しい呪文を使うと、慣れるまでは体力が切れやすくて。今までもこんな感じだったので、大丈夫です。しばらくすれば治るので」
「そうか、しかし、長居は無用だから、すぐ出よう」
ガントさん仲間は僕をおぶった。ガントさんは鳥のモンスターの死骸を担いでこっちにきた。目的は果たしたので、早々に森を出た。
森を出たときには、僕は普通に歩けるぐらいに回復していた。
「キルルくん、ありがとう。おかげで今日の仕事は楽だったよ。モンスターも傷一つなくて綺麗なもんだ。夜、解体ショーやるけど、来れるかい?」
「はい、見に行きます」
僕は、王都に戻ると、夜まで自室で休んだあと、モンスター料理店に向かった。
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