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プロローグ
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今日もいい天気だ。
姉川 瑞斗はいつも通り窓際の席に座り、いつも通り空を飛ぶ鳥を眺めながらそんなことを思っていた。
彼は滝前高校に通うごく普通の高校生……と言うには少しばかり必要な能力に欠ける若干変わり者な高校二年生だ。
一体何が欠けているのかと聞かれると、彼を知る者は口を揃えてこう言うだろう。
──────────『社交性かな』と。
まず第一に、瑞斗には友人が居ない。いや、正確には一人いるが、誰にだって人生で一人くらい心を許せる者に出会う機会はある。
そう考えればその数がどれほど少なく、社交性と言うには明らかに足りていないということは理解して貰えるはずだ。
そして第二に、彼は授業中はほとんど起きておらず、休み時間もまた然り。友人が居ないことへの悩みすら感じていないのだ。
もちろん初めは感じていたものの、寝たフリをするうちに早寝が得意になり、今ではプロフィールがあれば趣味の欄に昼寝と書くほど。
それゆえ、クラスメイトの間では『起きている姉川に話しかけるとしばらく睡魔に呪われる』と妙な噂が立っていたりする。
最後に三つ目の欠損物だが、これが最も変わっている部分と言えるだろう。それが『恋愛への関心』だ。
彼はネットでエロい広告が流れれば手を止めるし、18禁ゲームをこっそりダウンロードしたりもする。ただ、どれだけ美しい女性を見てもときめいたりしないどころか、自分好みのスタイルでなければ全くと言っていいほど心を動かされない。
要するに、姉川 瑞斗はぼっち満喫型の恋愛無関心な人間ということだ。
「みーくん、あーそーぼ!」
それゆえ、可愛い幼馴染が頻繁に話しかけてこようとも、メスを取り合って争うカラスを見て『メスのために面倒事を起こすなんて変わってる』と首を傾げるだけ。
そのうち瑞斗の幼馴染……小林 花楓が不満そうに頬をふくらませて、ようやく彼も視線をそちらに向けた。
「なに?」
「なに? ……じゃないよ! 遥々幼馴染がお話に来てるのにぃ……」
「遥々って、教室の端と端でしょ。5歩で辿り着く程度じゃん」
「私は7歩かかったもん!」
「はいはい、花楓は僕より背が低いからね」
「むっ、昔は私の方が大きかったのに……」
「いつのこと言ってるの」
瑞斗の身長が花楓より小さかったのは小学校3年生までの話で、それ以降はぐんぐんと突き放すように伸びている。
今ではそれぞれ172cmと152cm、頭ひとつ分はゆうに超えているはずだ。
それに今となっては、追い越してからの付き合いの方が長い。彼からすれば、今さら背の低さに悩んでいた頃の記憶を掘り起こさないで欲しかった。
「それはそうと、遊ぼうよ!」
「遊ぶって例えば?」
「……じゃんけん?」
「子供か」
「じゃあ、あっち向いてホイもする?」
「追加すれば大人の階段登れると思ったら大間違い」
「私、ガラスの靴落とすようなヘマしないもん」
「どこに怒ってるの。っていうか、そのネタ今の子が分かるか微妙だからね」
確かに少し前、『大人の階段のぼr~♪』という歌を使ったCMがあったような気もするが、自分たちでもギリギリの年代だろう。
彼はそんなことを思いつつ、「最初はグー」と言いながら既にパーを出しているおバカさんの右頬を軽くつねってやった。
「ふぇ……」
「答えはNO、遊ばないってこと」
「Uを付けたら─────────」
「カードゲームでもダメ。どうしてもなら他の人を当たって、僕は今から寝るよ」
「いじわる、昔は沢山遊んでくれたのに……」
「もう高校生なんだから、いつまでも幼馴染にベタベタしてないで欲しいだけ」
「……そっか、わかった」
しゅんと肩を落として自分の席に戻っていく花楓が、「幼馴染だからじゃないもん……」と呟いた声が瑞斗の耳に届くことは無かったそうな。
姉川 瑞斗はいつも通り窓際の席に座り、いつも通り空を飛ぶ鳥を眺めながらそんなことを思っていた。
彼は滝前高校に通うごく普通の高校生……と言うには少しばかり必要な能力に欠ける若干変わり者な高校二年生だ。
一体何が欠けているのかと聞かれると、彼を知る者は口を揃えてこう言うだろう。
──────────『社交性かな』と。
まず第一に、瑞斗には友人が居ない。いや、正確には一人いるが、誰にだって人生で一人くらい心を許せる者に出会う機会はある。
そう考えればその数がどれほど少なく、社交性と言うには明らかに足りていないということは理解して貰えるはずだ。
そして第二に、彼は授業中はほとんど起きておらず、休み時間もまた然り。友人が居ないことへの悩みすら感じていないのだ。
もちろん初めは感じていたものの、寝たフリをするうちに早寝が得意になり、今ではプロフィールがあれば趣味の欄に昼寝と書くほど。
それゆえ、クラスメイトの間では『起きている姉川に話しかけるとしばらく睡魔に呪われる』と妙な噂が立っていたりする。
最後に三つ目の欠損物だが、これが最も変わっている部分と言えるだろう。それが『恋愛への関心』だ。
彼はネットでエロい広告が流れれば手を止めるし、18禁ゲームをこっそりダウンロードしたりもする。ただ、どれだけ美しい女性を見てもときめいたりしないどころか、自分好みのスタイルでなければ全くと言っていいほど心を動かされない。
要するに、姉川 瑞斗はぼっち満喫型の恋愛無関心な人間ということだ。
「みーくん、あーそーぼ!」
それゆえ、可愛い幼馴染が頻繁に話しかけてこようとも、メスを取り合って争うカラスを見て『メスのために面倒事を起こすなんて変わってる』と首を傾げるだけ。
そのうち瑞斗の幼馴染……小林 花楓が不満そうに頬をふくらませて、ようやく彼も視線をそちらに向けた。
「なに?」
「なに? ……じゃないよ! 遥々幼馴染がお話に来てるのにぃ……」
「遥々って、教室の端と端でしょ。5歩で辿り着く程度じゃん」
「私は7歩かかったもん!」
「はいはい、花楓は僕より背が低いからね」
「むっ、昔は私の方が大きかったのに……」
「いつのこと言ってるの」
瑞斗の身長が花楓より小さかったのは小学校3年生までの話で、それ以降はぐんぐんと突き放すように伸びている。
今ではそれぞれ172cmと152cm、頭ひとつ分はゆうに超えているはずだ。
それに今となっては、追い越してからの付き合いの方が長い。彼からすれば、今さら背の低さに悩んでいた頃の記憶を掘り起こさないで欲しかった。
「それはそうと、遊ぼうよ!」
「遊ぶって例えば?」
「……じゃんけん?」
「子供か」
「じゃあ、あっち向いてホイもする?」
「追加すれば大人の階段登れると思ったら大間違い」
「私、ガラスの靴落とすようなヘマしないもん」
「どこに怒ってるの。っていうか、そのネタ今の子が分かるか微妙だからね」
確かに少し前、『大人の階段のぼr~♪』という歌を使ったCMがあったような気もするが、自分たちでもギリギリの年代だろう。
彼はそんなことを思いつつ、「最初はグー」と言いながら既にパーを出しているおバカさんの右頬を軽くつねってやった。
「ふぇ……」
「答えはNO、遊ばないってこと」
「Uを付けたら─────────」
「カードゲームでもダメ。どうしてもなら他の人を当たって、僕は今から寝るよ」
「いじわる、昔は沢山遊んでくれたのに……」
「もう高校生なんだから、いつまでも幼馴染にベタベタしてないで欲しいだけ」
「……そっか、わかった」
しゅんと肩を落として自分の席に戻っていく花楓が、「幼馴染だからじゃないもん……」と呟いた声が瑞斗の耳に届くことは無かったそうな。
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