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第2話 勇者対先代魔王と、その顛末
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わたしは過去を覗き込んだ。
『ふはは、甘いわ! 闇の槍よ!』
『くっ、さすが魔王ね! ディンク、回復をお願い!』
『わかりましたアオイ。御神の癒しの光よ、勇者アオイを照らしたまえ』
『過去知』の術法で覗き込んだ過去において、魔王っぽい化け物と、あの死にかけていた少女が戦っていた。魔王っぽい化け物は、本当に魔王だったらしい。そして少女は勇者だそうだ。何かいかにもありがちな、剣と魔法のファンタジー世界だった。
ちなみに余談だが、ファンタジーと言うのは空想とか幻想とか言う意味であり、ファンタジーがイコール剣と魔法の世界、というわけではない。世の中には、幻想の域にまで至った科学、と言うよりも科学っぽい題材を扱った、サイエンスファンタジーと言う物も存在するのだ。これも略称は、サイエンスフィクションと同じくSFだが。
それはともかくとして、勇者には仲間が3人ほど付き従っていた。1人は先ほど勇者を魔法で回復させた、いかにも神官っぽい青年。1人は黙々と魔法攻撃で支援する、魔法使いっぽい青年。そして最後の1人は勇者と並んで剣を振るっている、いかにも戦士っぽい青年だった。
だがわたしの目には、勇者一行の連携が微妙な物に見えた。なんと言うのか、魔法の支援は今一歩タイミングが遅く、戦士は腰が引けていてその攻撃は牽制以上にはなっていなかった。何か勇者1人だけが必死になっている、そんな雰囲気があったのだ。
なんと言うべきか、勇者のパーティーにしては何やら挙動が怪しい。
やがて光り輝く勇者の剣が、魔王の胸板を貫く。
『ぐ、ほっ!』
『これで、終わりよ!』
だが魔王はにやりと笑う。わたしの耳には、魔王の思念が聞こえた。
(魔王召喚魔法陣よ、わが命を糧として起動せよ! ……くくく、わしが盗み出させた勇者召喚魔法陣を改造した、魔王召喚魔法陣。現れる新魔王は、わしよりも強大になることは必定! 新たな魔王に踏みつぶされるが良いわ。これがわしの命をもってする、最後の報復よ!)
『何を笑ってるのよ、魔王!』
『く、くく。我が死すとも、いつの日か新たな魔王が現れる。その魔王が地上を滅ぼすのを、我は冥府の底から見て、嘲笑って、や、ろう、ぞ。は、ははは、はははは! ぐふっ……』
わたしはあきれ返った。『いつの日か新たな魔王が』と言うが、お前が死に際に召喚したんじゃないか、魔王よ。『いつの日』もくそも、あるものか。……と言うか、わたしが新たな魔王!? ……冗談だろう?そんな大役は、ウチの大首領様とかに任せるべきだろう。
と、そこへ勇者の声が響く。
『終わった……。長かった……。やっとこれで、これで元の世界に帰れる……』
最後の方は、涙声になっていた。勇者は俯いて、両手で顔を覆った。そして次の瞬間、その唇から苦悶の叫びが漏れる。……わたしはなんとなくそれを予想していたため、驚きはしなかった。
『ぐっ!?』
『悪いな、アオイ』
背中から勇者を剣で貫いたのは、勇者の仲間であったはずの戦士だ。剣の切っ先は、勇者の心臓に達しているだろう。勇者は茫然自失しつつ、戦士に問いかける。
『ジャン、な、なんで……』
『あー、ちょっとばかり国に人質を取られてるんだわ、俺たち。すまんな』
ちっとも悪いと思っていなさそうな口調で、戦士は笑いながら言う。それに続けて、魔法使いが淡々と言葉を発した。
『どうせ貴女を元の世界に返すことは不可能なんです。国は魔王ゾーラムを確実に倒すため、勇者召喚の魔法陣に手を加えたんですよ。……勇者を召喚する際に与えられる力を水増しする様に、とね。
で、勇者の力を水増しする代わりに魔法陣から削られたのが、帰還の術式と帰還先の世界座標を記録する箇所だったんです』
『ぐ……。あ……』
『わたしたちは最初から、貴女が魔王ゾーラムを倒したら、不意をついて貴女を殺すことを命じられていたんですよ。そのためにわたしたちは貴女に付けられたんです。魔王を倒すほどの者が、万一復讐に来たら大変ですからね。聞こえてますか?』
魔法使いの青年は、抑揚の無い声で言った。だが、いかに平板な声であっても、その裏にある嘲りは隠せない。……少々むかっ腹が立った。
『……』
『死にましたか。ディンク、聖剣を回収してください。勇者以外に聖剣を持ち運べるのは、神官である貴方だけですからね』
『……神よ、お許しを』
『へっ、何をいまさら。お前も同じ穴のムジナだってことを忘れんな。確かに家族を人質に取られちゃいるが、鞭だけじゃなしに飴もたっぷり与えられてるだろうがよ。金銭に地位に名誉ってな?さ、いくぜ』
戦士が先頭に立って、謁見の間を出ていく。わたしがそのまま見ていると、勇者の身体を弱い光が包む。どうやら微弱な回復魔法の様だ。勇者が死ぬに死にきれず、足掻いているのだろう。
だがそんな弱い回復魔法では、貫かれた心臓を修復することなどできないはずだ。やがて回復魔法の光が途切れる。だがその僅かな回復は、無駄にはならなかった。その回復魔法は、ほんのちょっとだけではあるが、彼女の生命を保たせたのだ。
そして幾ばくかもしないうちに、身長3mはある恐ろしい化け物が謁見の間に入って来た。身体のあちらこちらに角や棘や刃が突き出ており、背中には大きな翼の様な物が生えている。更には全身に、眼の様な生体レーザー発生器官や生体熱線砲、生体粒子ビーム砲が……。
えーと。……わたしだった。
そう言えば、わたしは改造人間としての戦闘形態のままであった。一応潜入活動などもできる様に、人間形態になることも可能ではあるのだが。
この後のことはわたし自身が知っている。見るべきものは見た。わたしは『過去知』の術法を打ち切った。
『ふはは、甘いわ! 闇の槍よ!』
『くっ、さすが魔王ね! ディンク、回復をお願い!』
『わかりましたアオイ。御神の癒しの光よ、勇者アオイを照らしたまえ』
『過去知』の術法で覗き込んだ過去において、魔王っぽい化け物と、あの死にかけていた少女が戦っていた。魔王っぽい化け物は、本当に魔王だったらしい。そして少女は勇者だそうだ。何かいかにもありがちな、剣と魔法のファンタジー世界だった。
ちなみに余談だが、ファンタジーと言うのは空想とか幻想とか言う意味であり、ファンタジーがイコール剣と魔法の世界、というわけではない。世の中には、幻想の域にまで至った科学、と言うよりも科学っぽい題材を扱った、サイエンスファンタジーと言う物も存在するのだ。これも略称は、サイエンスフィクションと同じくSFだが。
それはともかくとして、勇者には仲間が3人ほど付き従っていた。1人は先ほど勇者を魔法で回復させた、いかにも神官っぽい青年。1人は黙々と魔法攻撃で支援する、魔法使いっぽい青年。そして最後の1人は勇者と並んで剣を振るっている、いかにも戦士っぽい青年だった。
だがわたしの目には、勇者一行の連携が微妙な物に見えた。なんと言うのか、魔法の支援は今一歩タイミングが遅く、戦士は腰が引けていてその攻撃は牽制以上にはなっていなかった。何か勇者1人だけが必死になっている、そんな雰囲気があったのだ。
なんと言うべきか、勇者のパーティーにしては何やら挙動が怪しい。
やがて光り輝く勇者の剣が、魔王の胸板を貫く。
『ぐ、ほっ!』
『これで、終わりよ!』
だが魔王はにやりと笑う。わたしの耳には、魔王の思念が聞こえた。
(魔王召喚魔法陣よ、わが命を糧として起動せよ! ……くくく、わしが盗み出させた勇者召喚魔法陣を改造した、魔王召喚魔法陣。現れる新魔王は、わしよりも強大になることは必定! 新たな魔王に踏みつぶされるが良いわ。これがわしの命をもってする、最後の報復よ!)
『何を笑ってるのよ、魔王!』
『く、くく。我が死すとも、いつの日か新たな魔王が現れる。その魔王が地上を滅ぼすのを、我は冥府の底から見て、嘲笑って、や、ろう、ぞ。は、ははは、はははは! ぐふっ……』
わたしはあきれ返った。『いつの日か新たな魔王が』と言うが、お前が死に際に召喚したんじゃないか、魔王よ。『いつの日』もくそも、あるものか。……と言うか、わたしが新たな魔王!? ……冗談だろう?そんな大役は、ウチの大首領様とかに任せるべきだろう。
と、そこへ勇者の声が響く。
『終わった……。長かった……。やっとこれで、これで元の世界に帰れる……』
最後の方は、涙声になっていた。勇者は俯いて、両手で顔を覆った。そして次の瞬間、その唇から苦悶の叫びが漏れる。……わたしはなんとなくそれを予想していたため、驚きはしなかった。
『ぐっ!?』
『悪いな、アオイ』
背中から勇者を剣で貫いたのは、勇者の仲間であったはずの戦士だ。剣の切っ先は、勇者の心臓に達しているだろう。勇者は茫然自失しつつ、戦士に問いかける。
『ジャン、な、なんで……』
『あー、ちょっとばかり国に人質を取られてるんだわ、俺たち。すまんな』
ちっとも悪いと思っていなさそうな口調で、戦士は笑いながら言う。それに続けて、魔法使いが淡々と言葉を発した。
『どうせ貴女を元の世界に返すことは不可能なんです。国は魔王ゾーラムを確実に倒すため、勇者召喚の魔法陣に手を加えたんですよ。……勇者を召喚する際に与えられる力を水増しする様に、とね。
で、勇者の力を水増しする代わりに魔法陣から削られたのが、帰還の術式と帰還先の世界座標を記録する箇所だったんです』
『ぐ……。あ……』
『わたしたちは最初から、貴女が魔王ゾーラムを倒したら、不意をついて貴女を殺すことを命じられていたんですよ。そのためにわたしたちは貴女に付けられたんです。魔王を倒すほどの者が、万一復讐に来たら大変ですからね。聞こえてますか?』
魔法使いの青年は、抑揚の無い声で言った。だが、いかに平板な声であっても、その裏にある嘲りは隠せない。……少々むかっ腹が立った。
『……』
『死にましたか。ディンク、聖剣を回収してください。勇者以外に聖剣を持ち運べるのは、神官である貴方だけですからね』
『……神よ、お許しを』
『へっ、何をいまさら。お前も同じ穴のムジナだってことを忘れんな。確かに家族を人質に取られちゃいるが、鞭だけじゃなしに飴もたっぷり与えられてるだろうがよ。金銭に地位に名誉ってな?さ、いくぜ』
戦士が先頭に立って、謁見の間を出ていく。わたしがそのまま見ていると、勇者の身体を弱い光が包む。どうやら微弱な回復魔法の様だ。勇者が死ぬに死にきれず、足掻いているのだろう。
だがそんな弱い回復魔法では、貫かれた心臓を修復することなどできないはずだ。やがて回復魔法の光が途切れる。だがその僅かな回復は、無駄にはならなかった。その回復魔法は、ほんのちょっとだけではあるが、彼女の生命を保たせたのだ。
そして幾ばくかもしないうちに、身長3mはある恐ろしい化け物が謁見の間に入って来た。身体のあちらこちらに角や棘や刃が突き出ており、背中には大きな翼の様な物が生えている。更には全身に、眼の様な生体レーザー発生器官や生体熱線砲、生体粒子ビーム砲が……。
えーと。……わたしだった。
そう言えば、わたしは改造人間としての戦闘形態のままであった。一応潜入活動などもできる様に、人間形態になることも可能ではあるのだが。
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