召喚魔王様がんばる

雑草弁士

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第7話 ゼロ誕生と怪しい魔族

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 そして数日が経過する。現状ゴーレム、生きた鎧リビングアーマー彫像怪物リビングスタチューの量産は順調だ。

 魔王城は既に5分の1が解体され、建材がストーンゴーレムの素材になっている。そして更地になった跡地では、我が親衛隊長たるアオイが、完成したゴーレム、生きた鎧リビングアーマー彫像怪物リビングスタチューを相手にして、戦闘訓練を行っている。

「うーむ、戦闘訓練か。……わたしもやった方がいいんだろうがなあ。しかし……」

 実のところ、わたしが訓練しなくてはいけないのは術法とかだけじゃない。この肉体を用いた戦闘についても、きちんと訓練を積んでおかなければならないんだ。

 一応わたしの補助頭脳には、戦闘プログラムがインストールされているから、いざという時でもある程度は戦える自信がある。だが戦闘プログラムに頼りきりでは、この改造人間としての肉体をフルに用いて戦闘することは困難であることも明らかなんだよね。

 実際、秘密結社『JOKER』においては、完成した改造人間は普通であれば、徹底した基礎訓練を行う事になっている。自分の身体の性能をしっかりと自覚し、それを十全に扱うためだ。だがわたしは改造の完了直後に召喚されたため、その大事な基礎訓練を受けていないんだよねえ……。

 だからわたしの身体感覚は、改造前の人間の物に非常に近いままなのだ。まあ改造の際にいくらかは微調整が入っているから、完全に人間そのままでは無いのだが。これではちょっと、その身体能力を完全に扱いきる事は望めないだろう。まずいよね。

 更に言えばわたしは魔王召喚の召喚魔法陣により、意図せずに強大な力を付与されている。訓練をせずに放置しておいたなら、その力を持て余し、振り回されるに決まっているのだ。たとえばうっかりコップを握りつぶしたり、ドアノブを無造作に千切り取ったり。

「……ただなあ。ゴーレムとかが相手じゃあ力の差がありすぎて、訓練の意味ないんだよなあ。アオイに頼むのも、やっぱり危険だしなあ。アオイは武器防具ありで、こっちは素手で……。
 いや、わたしは全身破壊兵器だった……。うっかり反射的にレーザー光線とか撃っちゃったら、アオイでも避けられないだろ。どっかに適当な訓練相手、いないかなあ」
「魔王様、何やってるの?」
「ん? ちょっと小休止して考え事だよ? んあ~っ!」

 戦闘訓練を終えたアオイが、わたしのところに歩いて来つつ声をかけてくる。わたしは適当に返事をして、大きく伸びをした。

 アオイはわたしの足元にある、横たわった『鎧?』に見える物に目を向けた。

「ふーん。……あれ? これ、生きた鎧リビングアーマー? でも、見た目からして今までつくってたのと少し違わない?」

「ん。実は生きた鎧リビングアーマーとは違うんだよ。特に中身が、ね。錬金術系の魔道の術と、この世界の魔法を駆使して、色々小細工をしてみたんだよ。そうだな……。もうちょっとだし、完成させてしまうか」

「小細工? 仕込み武器でも付けたの?」

「仕込み武器もついてるけれど。でも大事なのはそこじゃないんだ。……よし、完成! 充電チャージ開始!」

 横たわる『鎧?』の周囲に赤紫色の光が集い、その周囲に魔法陣を描く。『鎧?』の顔面、目にあたる部分が、明るく黄色く輝いた。かすかにブウン……と言う音がする。

 次の瞬間、『鎧?』の全身がガタガタと音を立てて震え、そしてゆっくりと大地に立ち上がる。次の瞬間、その『鎧?』はアオイを驚かせる行動に出た。

「オハヨウゴザイマス。当機ハ戦闘ドロイド試作ゼロ号機デス」

「しゃべった!?」

「うむ、ごくろう。貴様を今後、『ゼロ』と呼称する。貴様の役割は基本的に、ゴーレム、生きた鎧リビングアーマー彫像怪物リビングスタチューで編制された部隊の指揮官だ。
 配下となる者たちを指揮統率し、よく監督せよ。基本的な判断は、貴様にインストールしてある部隊指揮教本に従え。ただし判断に困ったら、ただちにわたしかここにいる親衛隊長アオイの指示を仰げ。
 ではゼロ、行け」

「了解イタシマシタ」

 ゼロは見事な敬礼をする。そして他のゴーレムや生きた鎧リビングアーマー彫像怪物リビングスタチューの集団の方へ歩み去って行った。

 わたしは思念で全てのゴーレム、生きた鎧リビングアーマー彫像怪物リビングスタチューに、ゼロが命令系統上でわたしとアオイの次に来ることを通知する。アオイは唖然としてゼロを見送った。

「……何、あれ?」

「わたしは元の世界では、世界制覇を狙う悪の秘密結社『JOKER』の一員だったと言っただろう?『JOKER』では一般の戦闘員として、鍛えた普通の人間の他、アンドロイドや戦闘ドロイド、ロボットなども使っていたのさ。
 そのロボット類の設計図は、わたしが記憶している。中でも戦闘ドロイドは色々使えて便利だからね。制作してみた。頭脳面でも今後の教育次第ではあるけれど、大事に使っていけば、かなり頭が良くなるはずだよ」

「へ、へえぇ……。なんかファンタジーって言うより、SFっぽい……」

「くくく、今更だろう」

 笑いながらアオイの頭を撫でたわたしは、くるりと向きを変えると虚空に向かって話しかけた。

「さて、そろそろ見物はいいだろう? 姿を現したらどうだね?」
「!!」

 そのわたしの言葉に、アオイは今までの緩んだ雰囲気を一変させ、帯剣を抜き放ってわたしが見ている方向に向かって構える。それとほぼ同時に、空間から滲み出るように人影が湧き出てきた。

 肌の色は青く、髪は黒の長髪を背中で縛っている。その耳は長くはなかったが若干先端が尖っている。そしてその瞳は血の様な紅色だった。アオイは呟く。

「魔族……!」
「おやおや、僕の『パーフェクト・ハイド』の魔法を見抜くとは……。恐ろしいお方だ。……参考までに、どうやって見破ったのかをお訊ねしても?」

 わたしはその魔族の青年の問いに、何でもないように答えた。

「何、その魔法は姿を隠すだけでなく気配や存在感まで消してしまう物だがね。いささか効果が強力過ぎた。普通ならば君の周囲の自然にも、風や水、草木や大地などに気配や存在感はあるんだがね。
 だがそんな自然の気配の中に、まるで切り取ったかの様に君を中心にした球体状に、何も気配の無い空間が存在するんだ。逆にそこに何かがあると全力で叫んでいるような物だよ」

「……なんと。完全と言われたこの魔法に、そんな欠点が……。いや、勉強になります」

「で、だ。そうは言ってもわたしの知識からすれば、この魔法はとんでもなく高度な代物だ。これを使える魔法使いは、魔族でもそうはいない。
 となると君は先代魔王に仕えた大魔導師の、ダウム・デ・リーガン……なわけは無いか。大魔導師はわたしの親衛隊長をやってくれている、この勇者アオイに討たれたはずだからね。
 と、なれば……。君はその一番弟子、ザウエル・リーグハルトあたりかな?」

 魔族の青年は、目を見開いた。そしてその口が、こらえきれない笑みに歪む。

「く、くくく。その通りです。わが名はザウエル・リーグハルト、先代大魔導師の一番弟子にして、当代の大魔導師を襲名した者です。勝手に、ですがね。
 ああ、それと……。同時に魔王軍魔道軍団軍団長の座も、勝手に受け継がさせていただきました」

「ほう……。まあ、かまわんよ。わたしも勝手に魔王を襲名したクチだからね。では改めて。魔王ブレイド・JOKERだ」

 ごくり、と唾を飲み込む音が聞こえた。ザウエルと名乗った魔族の青年が発したものだ。わたしは肩をすくめて見せた。

「で?」

「……正直に申し上げましょう。僕は魔法の天才を自負しています」

「だろうね。魔法の運用については、わたしは君の足元にも及ばないだろう」

「ええ。貴方がゴーレムや生きた鎧リビングアーマー、それに彫像怪物リビングスタチューを創るのを拝見させていただきましたが、まあ凡庸な腕前だと思います。
 ですので最初僕は、貴方が前の魔王と同じく膨大な魔力に胡坐をかいただけの盆暗ぼんくらだと思っていました。だったら僕が貴方をしいして、魔王の座を奪っても別にかまわないだろうと。ですが……」

 ザウエルの様子が変わった。いきなり頭をぐしゃぐしゃと掻き乱し、狂乱したかの様に叫ぶ。

「なんですかアレは!! あんたがゼロと名付けた生きた鎧リビングアーマー!! いや、生きた鎧リビングアーマーなんかじゃない! あれを創り上げるのにこそ魔法の類を使っていたみたいですが!! 完成したアレからは、一欠片ひとかけらの魔力も感じない!!
 それだけじゃない!! なんであんなに簡単に、無生物に知性を植え付けることができるんですか!? 魔力は普通の生きた鎧リビングアーマー創るよりも倍近くかかってるみたいですけど!!
 でも本来、知性体の魔物創るんだったら、あの30~50倍は魔力が必要ですってば!!魂を与えなきゃ、知性は発生しないはずなんですから!!」

 なるほど、なまじ魔法に絶対的な自信があるから……。自分が知る魔法関係の常識の、埒外らちがいの存在を見せつけられて混乱してるのか。

「……あー、うん。積み重ねられた知識の差、かな。わたしは先達が積み重ねた莫大な知識を受け継いでるからね。それをちょっとばかり応用してみただけさ」

「ちょっとの応用!? 僕だって、師匠の持ってた魔法知識を師匠に気付かれないように、こっそり全部自分の記憶野にコピーして見せましたよ!? もう魔法の腕でも魔法知識でも、師匠を超えてますよ!!
 でもその魔法知識使っても、あんなちょっとの魔力で同じこと出来ませんてば!!」

 なんかわたしはこのザウエルという青年が、気の毒になってきた。なので、とりあえずゼロを創った理屈について、できるだけ簡単に説明してやる。

「うん。魔法じゃないからね、元の知識は。人工知能って言って、機械……じゃわからんか。物を考える事ができる、からくり仕掛けの作り方なんだよ。魂は基本的に持ってない。長く使ってれば自然に魂宿るかもしれないけどね。付喪神みたいに」

「魂が……無い?」

「うん」

「なのに……物を考えられる? 魔法じゃない、からくり仕掛けで?そんな技術……が?」

「うん」

 ザウエルは茫然自失状態で、その場にへたり込む。ザウエルに剣を向けていたアオイが、戸惑ったように視線をわたしに向けた。

「魔王様。この人どうする?」

「んー、とりあえず魔王城……一部無くなってるけど、その中に運ぼう。なんか魔法を絶対視してるみたいだけど、それだけに魔法方面では是非ともウチの陣営に欲しい人材だ。……と思う。たぶん。きっと」

「ちょっと、ためらったわね」

 わたしはザウエルの手を引いて立ち上がらせ、そのまま魔王城城内へと誘う。彼は茫洋としたまま、抵抗もせずに付いてきた。
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