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第17話 緊急会議
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その日わたしたちは、司令室で緊急の会議を開いていた。参加人員は、わたし、アオイ、ザウエルのいつものメンバーの他、オルトラムゥ、ガウルグルク、そして勉強のためにゼロもいる。
更に議事録を取らせるために書記として、魔道士アンブローズも同席させた。だが幹部連中がずらりと揃っている中で、一介の魔道士でしかない彼には少し酷だったかも知れない。
ちなみに体長40m強の魔竜である魔竜将オルトラムゥは建物の中に入れない。そのため、『パペット』の魔法を使って体長1mほどの魔竜の像に意識を宿らせて、会議に参加している。
ザウエルが、魔道軍団や邪鬼、邪妖精が集めてきた情報の報告を始めた。
「旧魔王軍勢力は、現在その2割が人類勢力との戦いや内輪もめで喪失、5割が既に我々新生魔王軍の麾下に属しています。ちなみに魔王様が創造なさったゴーレム、生きた鎧、彫像怪物などの魔像兵団がありますので、総兵力は旧魔王軍の7割に達していますね。
で、残り3割の旧魔王軍勢力ですが、2割は粘菌類や獣類に代表される知性を持たない魔物です。これらは元々バルゾラ大陸の固有種でしたが、先代魔王の命によりアーカル大陸とコンザウ大陸にも放されて、そこで大繁殖しました。
旧魔王軍の2割という数は、その大繁殖した数から人類勢力により駆除された数を差し引いて、それだけ残っているだろうという予測値です」
「あ。わたしも赤粘菌やら黒粘菌やら、化け烏やら黄金虎とかと戦ったことある。コンザウ大陸で」
アオイの言葉に、ガウルグルクが溜息を吐く。
「ふう……。赤粘菌はともかく、黒粘菌はしぶとい上にしつこい……。黄金虎も下手をすると並の魔獣だと遅れを取りかねん強敵ですな」
「うわぁ、向こうからすれば外来種問題だなあ。侵略する先の生態系を破壊して、どうするつもりだったんだろね?人類種族にダメージを与えようとしたのかな。だけど征服予定地を痩せさせるのは、魔王軍にとっても損失だと思うんだが」
「まあ、生態系とかの概念すら持っていなかったんですよ、先代は。先代魔王も先代大魔導師も。はっきり言えば脳が足りてなかったんです」
わたしの疑念に、辛辣な言葉で答えるザウエル。彼は頭を振りつつ続けた。
「まあ、この問題は後回しにしましょう。今我々にとって最大の問題なのは、残りの1割です。緊急会議を提案したのも、これが問題だったからです」
『何がそこまで問題なのだ? ほんの1割なのだろう? いざとなれば、数で圧し潰してしまえばよかろう?』
「魔竜将殿、そうもいかないのです。相手は死にぞこないなのです。いえ、言い直しましょう。相手は不死怪物なのですよ」
「「「「『!!』」」」」
全員が目を見開く。あ、いや。人工知能を持ってはいても、戦闘ドロイドでしかないゼロは反応しなかったが。ザウエルは言葉を続ける。
「かつて先代魔王は不死怪物の軍団を組織していました。ですが他の軍団の様に軍団長を置いてはいません。単に本能的に動く不死怪物の群れを飼っていただけです。そして先代魔王が斃れた後は、その不死怪物の群れは統制を失い、散り散りばらばらになって四方八方へ拡散しました。
ですが最近、その不死怪物が再度群れを作ったのですよ。何者かに操られているかのごとく。そして、未だわれら新生魔王軍に対し反発していた、あるいは加わることを決めかねていた小規模な独立勢力を次々に襲い、潰してしまいました。
その様子を偵察していた邪鬼の報告によれば、潰された勢力の死んだ兵員を何らかの手段で不死怪物化して吸収してしまった様です」
「それは……。ぞっとしませんな……。我が部下が、不死怪物にさせられて操られたりしたらと思うと……」
ガウルグルクが、顔を顰める。ザウエルは続けた。
「そして不死怪物の群れは、今なお生きとし生ける者を殺しては不死怪物化させ、その規模を拡大しつつあります。この行動には、明らかに知性の働きが伺えます。この不死怪物の群れを操っている何者かは確実に、死体を材料にして不死怪物を創る術を心得ていると思われます。
……まあ趣味じゃないだけで、僕にもできますが」
「なるほど。今その群れは、どこら辺にいるんだね?」
「我々の勢力圏のぎりぎり外を移動するように動き、今はカルトゥン山脈の南に向かっています」
『なんだと!?』
オルトラムゥが叫び声を上げた。全員の視線が、彼の意思が宿った魔竜の像に向く。彼はそれを気にせずに声を上げる。その声音からは、彼の余裕の無さが伺えた。
『まずい!! カルトゥン山脈の南には、『魔竜の墓場』がある!! その不死怪物の群れを操っている者がいるとすれば……。その狙いはそこにある魔竜の骸だ!!
あそこにある魔竜の骸は、100や200どころではない! 少なく見積もっても1,000体分は軽い! しかもほとんどが老竜以上の超大型の死骸ばかりだ!』
「1,000体を超える魔竜の不死怪物が加われば、おそるべき戦力になるな。魔王様なら勝てるであろうが、魔王様は御一人しかおられぬ。二手に分かれて半数が新生魔王軍本隊とぶつかるなりすれば、その損害は計り知れん。
いや、損害を出せばそれが不死怪物化して、相手に加わるやも……」
「予想以上にまずい事態でしたね……。あらかじめ『魔竜の墓場』がそこにあると知っていれば……。緊急会議を提案して正解でしたか」
ガウルグルク、ザウエルが、オルトラムゥの言葉に苦い表情を浮かべる。と、ここで突然ゼロが右手を挙げた。
「発言ヲ、ヨロシイデショウカ」
「許可しよう」
「モシモ迎撃作戦ヲ行ウノデアレバ、我ラ魔像兵団ヲ充テテイタダキタク、存ジマス」
「……理由は何だ?ゼロ」
わたしはゼロに発言を促す。
「ハッ。我ラ魔像兵団ハ、ごーれむ、生キタ鎧、彫像怪物、そして戦闘どろいど及ビろぼっと、あんどろいどノ集団デアリマス。魂ヲ持タナイ存在デス。デアルカラニハ、斃サレテモ不死怪物化スル恐レハアリマセン。
マタ我ラ魔像兵団ハ、大量生産品デハアルモノノ魔法ノ武器ヲ与エラレテオリ、不死怪物ト互角以上ニ戦エルモノト思ワレマス」
「……よくそこまで考えられるほど成長したな、ゼロ。素晴らしい」
「オ褒メニアズカリ、光栄デス」
全員の顔を見遣りつつ、わたしははっきりとした声で告げた。
「これより我が新生魔王軍は、問題になっている不死怪物の群れを攻撃する! やつらに魔竜の骸を渡してはならん! 主力はゼロ率いる魔像兵団! その支援に、魔竜軍団および魔道軍団を充てる!
魔竜将オルトラムゥ!」
『はっ!』
「半刻後までに訓練成績が上位の精鋭40体を選び出し、出陣の準備をさせよ! 今回は上空よりの航空支援に専念させる! 敵には強力な死霊術師がいると思われる! 敵の魔法には厳重に注意させよ!
魔像兵団指揮官ゼロ!」
「ハッ。」
「半刻後までに全魔像兵団に出陣の準備をさせよ! 今回の主役は貴様たちだ!
大魔導師ザウエル!」
「はっ!」
「魔道軍団は転移の魔法が使える魔道士を動員せよ! 半刻後にわたしと魔竜軍団精鋭部隊および魔像兵団をカルトゥン山脈の結界南端まで転移させる! では総員、行動開始だ!」
わたしは椅子から立ち上がった。と、アオイがこちらを見つめているのに、わたしは気が付く。
「どうかしたかね?」
「魔王様、わたしも連れていって。わたしは光魔法が得意。不死怪物相手に足手まといにはならない」
「……わかった。一緒に来なさい」
本音を言えば、アオイにはガウルグルクと共に本部基地を守ってほしかったんだが。だけどまあ、親衛隊長だしなあ。魔王親征には付いてくるのが普通か。それに、なんか置いて行ったら恨まれそうな予感がする。
ガウルグルクを新生魔王軍に迎え入れたときも、バウガウドを始末するのに連れて行かなかったら、その後でちょっと不機嫌になったんだよなあ。たぶん連れて行くのが吉、だ。
わたしは長衣を翻し、アオイを引き連れて基地本部棟の外へと向かった。
更に議事録を取らせるために書記として、魔道士アンブローズも同席させた。だが幹部連中がずらりと揃っている中で、一介の魔道士でしかない彼には少し酷だったかも知れない。
ちなみに体長40m強の魔竜である魔竜将オルトラムゥは建物の中に入れない。そのため、『パペット』の魔法を使って体長1mほどの魔竜の像に意識を宿らせて、会議に参加している。
ザウエルが、魔道軍団や邪鬼、邪妖精が集めてきた情報の報告を始めた。
「旧魔王軍勢力は、現在その2割が人類勢力との戦いや内輪もめで喪失、5割が既に我々新生魔王軍の麾下に属しています。ちなみに魔王様が創造なさったゴーレム、生きた鎧、彫像怪物などの魔像兵団がありますので、総兵力は旧魔王軍の7割に達していますね。
で、残り3割の旧魔王軍勢力ですが、2割は粘菌類や獣類に代表される知性を持たない魔物です。これらは元々バルゾラ大陸の固有種でしたが、先代魔王の命によりアーカル大陸とコンザウ大陸にも放されて、そこで大繁殖しました。
旧魔王軍の2割という数は、その大繁殖した数から人類勢力により駆除された数を差し引いて、それだけ残っているだろうという予測値です」
「あ。わたしも赤粘菌やら黒粘菌やら、化け烏やら黄金虎とかと戦ったことある。コンザウ大陸で」
アオイの言葉に、ガウルグルクが溜息を吐く。
「ふう……。赤粘菌はともかく、黒粘菌はしぶとい上にしつこい……。黄金虎も下手をすると並の魔獣だと遅れを取りかねん強敵ですな」
「うわぁ、向こうからすれば外来種問題だなあ。侵略する先の生態系を破壊して、どうするつもりだったんだろね?人類種族にダメージを与えようとしたのかな。だけど征服予定地を痩せさせるのは、魔王軍にとっても損失だと思うんだが」
「まあ、生態系とかの概念すら持っていなかったんですよ、先代は。先代魔王も先代大魔導師も。はっきり言えば脳が足りてなかったんです」
わたしの疑念に、辛辣な言葉で答えるザウエル。彼は頭を振りつつ続けた。
「まあ、この問題は後回しにしましょう。今我々にとって最大の問題なのは、残りの1割です。緊急会議を提案したのも、これが問題だったからです」
『何がそこまで問題なのだ? ほんの1割なのだろう? いざとなれば、数で圧し潰してしまえばよかろう?』
「魔竜将殿、そうもいかないのです。相手は死にぞこないなのです。いえ、言い直しましょう。相手は不死怪物なのですよ」
「「「「『!!』」」」」
全員が目を見開く。あ、いや。人工知能を持ってはいても、戦闘ドロイドでしかないゼロは反応しなかったが。ザウエルは言葉を続ける。
「かつて先代魔王は不死怪物の軍団を組織していました。ですが他の軍団の様に軍団長を置いてはいません。単に本能的に動く不死怪物の群れを飼っていただけです。そして先代魔王が斃れた後は、その不死怪物の群れは統制を失い、散り散りばらばらになって四方八方へ拡散しました。
ですが最近、その不死怪物が再度群れを作ったのですよ。何者かに操られているかのごとく。そして、未だわれら新生魔王軍に対し反発していた、あるいは加わることを決めかねていた小規模な独立勢力を次々に襲い、潰してしまいました。
その様子を偵察していた邪鬼の報告によれば、潰された勢力の死んだ兵員を何らかの手段で不死怪物化して吸収してしまった様です」
「それは……。ぞっとしませんな……。我が部下が、不死怪物にさせられて操られたりしたらと思うと……」
ガウルグルクが、顔を顰める。ザウエルは続けた。
「そして不死怪物の群れは、今なお生きとし生ける者を殺しては不死怪物化させ、その規模を拡大しつつあります。この行動には、明らかに知性の働きが伺えます。この不死怪物の群れを操っている何者かは確実に、死体を材料にして不死怪物を創る術を心得ていると思われます。
……まあ趣味じゃないだけで、僕にもできますが」
「なるほど。今その群れは、どこら辺にいるんだね?」
「我々の勢力圏のぎりぎり外を移動するように動き、今はカルトゥン山脈の南に向かっています」
『なんだと!?』
オルトラムゥが叫び声を上げた。全員の視線が、彼の意思が宿った魔竜の像に向く。彼はそれを気にせずに声を上げる。その声音からは、彼の余裕の無さが伺えた。
『まずい!! カルトゥン山脈の南には、『魔竜の墓場』がある!! その不死怪物の群れを操っている者がいるとすれば……。その狙いはそこにある魔竜の骸だ!!
あそこにある魔竜の骸は、100や200どころではない! 少なく見積もっても1,000体分は軽い! しかもほとんどが老竜以上の超大型の死骸ばかりだ!』
「1,000体を超える魔竜の不死怪物が加われば、おそるべき戦力になるな。魔王様なら勝てるであろうが、魔王様は御一人しかおられぬ。二手に分かれて半数が新生魔王軍本隊とぶつかるなりすれば、その損害は計り知れん。
いや、損害を出せばそれが不死怪物化して、相手に加わるやも……」
「予想以上にまずい事態でしたね……。あらかじめ『魔竜の墓場』がそこにあると知っていれば……。緊急会議を提案して正解でしたか」
ガウルグルク、ザウエルが、オルトラムゥの言葉に苦い表情を浮かべる。と、ここで突然ゼロが右手を挙げた。
「発言ヲ、ヨロシイデショウカ」
「許可しよう」
「モシモ迎撃作戦ヲ行ウノデアレバ、我ラ魔像兵団ヲ充テテイタダキタク、存ジマス」
「……理由は何だ?ゼロ」
わたしはゼロに発言を促す。
「ハッ。我ラ魔像兵団ハ、ごーれむ、生キタ鎧、彫像怪物、そして戦闘どろいど及ビろぼっと、あんどろいどノ集団デアリマス。魂ヲ持タナイ存在デス。デアルカラニハ、斃サレテモ不死怪物化スル恐レハアリマセン。
マタ我ラ魔像兵団ハ、大量生産品デハアルモノノ魔法ノ武器ヲ与エラレテオリ、不死怪物ト互角以上ニ戦エルモノト思ワレマス」
「……よくそこまで考えられるほど成長したな、ゼロ。素晴らしい」
「オ褒メニアズカリ、光栄デス」
全員の顔を見遣りつつ、わたしははっきりとした声で告げた。
「これより我が新生魔王軍は、問題になっている不死怪物の群れを攻撃する! やつらに魔竜の骸を渡してはならん! 主力はゼロ率いる魔像兵団! その支援に、魔竜軍団および魔道軍団を充てる!
魔竜将オルトラムゥ!」
『はっ!』
「半刻後までに訓練成績が上位の精鋭40体を選び出し、出陣の準備をさせよ! 今回は上空よりの航空支援に専念させる! 敵には強力な死霊術師がいると思われる! 敵の魔法には厳重に注意させよ!
魔像兵団指揮官ゼロ!」
「ハッ。」
「半刻後までに全魔像兵団に出陣の準備をさせよ! 今回の主役は貴様たちだ!
大魔導師ザウエル!」
「はっ!」
「魔道軍団は転移の魔法が使える魔道士を動員せよ! 半刻後にわたしと魔竜軍団精鋭部隊および魔像兵団をカルトゥン山脈の結界南端まで転移させる! では総員、行動開始だ!」
わたしは椅子から立ち上がった。と、アオイがこちらを見つめているのに、わたしは気が付く。
「どうかしたかね?」
「魔王様、わたしも連れていって。わたしは光魔法が得意。不死怪物相手に足手まといにはならない」
「……わかった。一緒に来なさい」
本音を言えば、アオイにはガウルグルクと共に本部基地を守ってほしかったんだが。だけどまあ、親衛隊長だしなあ。魔王親征には付いてくるのが普通か。それに、なんか置いて行ったら恨まれそうな予感がする。
ガウルグルクを新生魔王軍に迎え入れたときも、バウガウドを始末するのに連れて行かなかったら、その後でちょっと不機嫌になったんだよなあ。たぶん連れて行くのが吉、だ。
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
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