召喚魔王様がんばる

雑草弁士

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第78話 ロケット兵器を造ろう

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 基地施設屋外の演習場で、部下の戦闘ドロイドに対戦車ロケットランチャー……いわゆるバズーカ砲を持たせて、構えさせる。実は今から、ロケット兵器の運用実験を行う所なのだ。

 ちなみに本当なら、わたしが自分で射手をやっても良かったのだが、少しばかり身体の大きさが規格外だったので断念した。身長3mだしなあ……。そのため、身体のサイズが一般人サイズである、戦闘ドロイドに実験を任せたのだよね。

 今回の実験用に用意した機材は、常人のサイズに合わせて創っている。目標物は、生産する際に不良品として出た、戦車の装甲板だ。不良品とは言っても、強度的には問題は無い。

 おっと、アオイとミズホが射手の後ろに立っている。わたしは慌ててその襟首を掴んでこちらに引っ張りよせた。

「「!!」」

「急にごめんよ。だけどバズーカ砲の後ろに立っちゃ、いけない。命が危ないから。」

「あ、そうだった。ごめんなさい。」

 アオイは即座に謝る。ただ、ミズホはきょとんとしている。これは頭脳に焼き付けてある軍事知識を引き出し慣れているか否かの違いだろう。わたしは射手の戦闘ドロイドに、命令を下す。

「よし、第1次発射実験、開始。」

『了解イタシマシタ。目標確認、発射実験開始イタシマス。』

 対戦車ロケット弾が、発射器より射出される。同時にその後方へ、高熱高圧のガスが物凄い勢いで放出された。ロケット弾は目標の不良品装甲板を大きく外れ、盛り土に着弾して大爆発を起こす。

 ……外れたのは機械的な問題じゃ無く、射手が慣れていないためだろう。

『第1射……。目標01ヨリ左方向ニ22単位、手前方向ニ4単位ノずれヲ生ズ。照準修正ノ要アリ……。』

「ロケット弾も発射器の予備も、数はたくさんあるから、貴様は遠慮せずに撃ちまくれ。わたしたちはミサイル実験の方に行く。後で報告書を上げておけよ。」

『了解。次弾ヲ装填、第2射ヲ準備イタシマス。』

 わたしたちはその場を後にし、ミサイル発射実験の準備をしている場所へ向かう。その途中、アオイが今回の実験について訊ねて来る。

「魔王様。ロケット兵器、ひいては宇宙ロケットの研究のために今回のロケット弾やミサイルの実験をしてるのはわかる。けど、なんで『対戦車』なの?戦車を実用化してるのは、うちの軍隊だけだけど。」

「うん、『対戦車』と言うのはちょっと語弊があるかも知れない。厳密には、『対装甲』なんだよ。要塞やら城塞やらの壁面とか。
 あとはコンザウ大陸の内陸部にある陸軍国だと、装甲を着せた地竜タイプの竜に牽かせた、重装甲の竜車とかあるんだよね。まあ戦力価値は微妙だけど。攻撃力も、銃眼からのいしゆみ射撃しか無いし。」

 わたしは頭の中で、竜戦車……地竜にかせた装甲車両の絵図面を描く。うん、戦力価値はそんなでもない。

「まあ必要性は低いって言えば低いけどねえ……。対物ライフルも今じゃ歩兵部隊に行きわたってるし、この世界レベルでの『重装甲』なんて、魔法かけてなければ容易に撃ち抜けるけどさ。
 まあでも、魔法防御を併用した重装甲が相手ならば、あれば便利だよ。うん。」

「この間出回り始めた汎用機関銃、大口径重機関銃、分隊支援火器や軽支援火器の配備を急いだ方が、魔王軍の陸軍戦力を向上させるにはいいと思うけど。」

「うう……。話についていけません……。」

 ミズホが泣き言を言う。アオイはそれをたしなめた。

「色々勉強しないと、駄目。知識だけはもう頭脳に直接転写されてるんだから、あとはそれを引き出して応用する方法を学ぶだけ。学校では数学や物理の公式なんかを題材に、その方法を習うけど、それと同じ。」

「うう、鋭意努力します……。」

「まあ、無理しない程度に頑張ってね。さて、着いたよ。」

 こちらでは対戦車ミサイルランチャーの発射実験を、これもまた戦闘ドロイドたちが準備している。軽装甲トラックの荷台に発射器を搭載して、発射準備態勢を整えていた。これは元の世界で使われていたミサイルランチャーのコピーだったりする。まあ先ほどのバズーカ砲もそうなのだが。

 長年にわたり改良を施されてきた品なので、実際のところ失敗の心配はさほどしていない。心配があるとすれば、これを創るのに使った錬金術系魔法の精度ぐらいな物だ。しかしこれもわたしの何年にもわたる研鑽により、相当なレベルまで達しているので、まず問題は無いだろう。

 戦闘ドロイドの1体が、こちらに向かい報告してくる。

『魔王様、みさいるらんちゃー発射実験、イツデモ開始デキマス。』

「よろしい。実験開始せよ。」

『ハッ。』

 軽装甲トラックの荷台の発射器から、ミサイルが発射される。有線誘導のそのミサイルは、あやまたず目標となっている不良品装甲板へ着弾し、想定通りの破壊力を見せて目標を破砕、その後ろの盛り土を吹き飛ばした。

「うん、順調だね。まあでも、そのうちに大型のロケット兵器も開発しなきゃなあ。大陸間弾道ミサイルとか中距離弾道ミサイルとか。潜水艦発射弾道ミサイルも要るなあ。ああ、それ用の潜水艦も欲しいね。」

「魔王様、横道にズレてる。それと載せる兵器は?」

「ん?ああ、確かに。元々宇宙ロケットに転用できる技術を、技術者たちに習得させることが目的だもんね。潜水艦発射弾道ミサイルは、たしかに横道か。
 載せる兵器は、基本的に通常弾頭の予定。核兵器と化学兵器は、開発だけしておくけど使うつもりは無いよ。生物兵器は作るつもりも無いけど、敵が使って来た時に備えて対策する部署だけは近いうちに創設するよ。」

 アオイとミズホが、妙な顔になる。おそらくは生物兵器を敵が使う可能性について、だろう。ミズホが訊ねて来る。

「魔王様、敵に生物兵器を使う能力なんて、あるんでしょうか?科学知識に、乏しいのに。」

「地球でも、既にある病気を兵器転用した例はあるんだよ。死んだ家畜を川に投げ込んで、下流にある敵の都市に病気を流行らせようとしたり。アメリカ先住民に、天然痘患者の使った毛布を友好の証と称して贈呈したり。
 それにこの世界には、魔法があるからね。BC兵器に値する何かを持っている可能性は、排除すべきじゃあないね。死霊系魔法や土系魔法、他にも幾つかの魔法系統に、腐敗の魔法や病毒の魔法がちゃんと存在しているし。」

 アオイとミズホが、酢を飲んだ様な顔つきになる。しかしそれは一時のこと。彼女たちは直に表情を引き締める。

「まあこの世界には、ハーグ陸戦条約も無いし、核拡散防止条約も包括的核実験禁止条約も化学兵器禁止条約も生物兵器禁止条約も無いからねえ。相手は汚い手段を用いてくる物として考えなきゃならない。
 増してや我々は、邪悪な魔物とそれに率いられた人類の裏切者、だからねえ。そう言う相手には、どんな卑劣な手段を取ったって、正当化されるだろうさ。」

「うん。それには同意する。」

「ええ、ところでさっきの言葉、この間バルゾラ大陸とアーカル大陸への演説で言ってましたね。コンザウ大陸諸国家に対する警戒心を煽り、国民の団結を促す目的、でしたか。」

「ああ、『邪悪な魔物と人類の裏切者』ってやつかい?うん、あれはこちらの間諜が拾って来た、『リューム・ナアド神聖国』国王の演説からの抜粋だよ。『リューム・ナアド神聖国』の神聖で偉大なる国王陛下サマは、どんな手段を取っても我々を打ち倒して正義のなんたるかを示さねばならない、んだそうだ。
 やれやれ、だ。」

 わたしは肩を竦めると、話題を転換する。

「コンザウ大陸諸国家と言えば、ある国で面白く無い動きが出て来てるね。これまでこの世界で、銃砲は魔法に押されてあまり発展しなかったんだけどさ。初期のマッチロック式マスケット銃や、極一部でホイールロック式、フリントロック式が急速に普及してきてる。
 間違いなく、ウチの軍隊の真似をしてるね。魔法の使えない、一般から徴兵された兵士に銃を持たせて、今まで軍の盾でしかなかったそれらを有効に戦力化して活用しようとしてるんだ。」

「威力も射程も不充分。そこまで警戒しなくても良く無い?」

「まあ、そうなんだけど。でも、魔法がこれに加わると、少し心配なんだよね。以前ザウエルが言ってたろう?拳銃弾でも、魔力付与すれば魔族の魔道士の防御魔法を貫けるし、強大な生命力を誇る巨鬼族をも殺せるって。
 そして武器に一時的に魔力を付与する魔法は、さほど難易度の高い物ではないからね。森妖精族の魔道士はおろか、人間族の魔道士でも使いこなすことができる。試算してみたんだけどね、威力と射程、どちらもウチの歩兵が持ってる自動小銃に迫る物があった。」

 わたしの懸念を、どうやら理解してくれたらしい。アオイもミズホも、眉を顰める。わたしは話を続けた。

「戦場での弓兵部隊と魔道士部隊の組み合わせは、歴史的に無かったみたいだけどね。少数のグループでなら、あったみたいなんだよ。悪竜……。魔竜では無かったらしいけど、それの討伐隊で前例があったらしい。
 アーカル大陸で、ラジオ放送の題材集めを兼ねて、人類種族の吟遊詩人の歌を編纂させたんだけどさ。人間の英雄を称えた歌に、こう言うのがあってね。」

 わたしは吟遊詩人の歌を思い出し、簡単に要約して話す。

「弓兵の弓矢に、同行する魔道士が魔力を付与して、悪竜の翼の被膜を貫いて地上に落としたって歌われてる。その後は人間の騎士がランス突撃して、剣を振るって獅子奮迅の働きをして……ってお約束の展開なんだけどさ。
 前例があるなら、考え付く奴もいるんじゃないかと思ってね。弓と銃の違いはあってもさ。」

「……初期の銃なら、先込め式で次弾発射までに相当かかるはず。」

「なら、戦車や装甲兵員輸送車で突入して初弾を撃たせてしまいましょう。そうしてから兵力を展開、連射が効いて弾倉交換も楽なこちらの銃で圧倒すればいいんです。」

 2人の言葉にわたしは頷いて、付け加える様に言う。

「ただ、銃による戦訓を与えないために、その国は開戦後早急に潰した方がいいかな。しかもわずかな苦戦も無しで。幸い海に面している国だ。圧倒的な戦力で叩き潰してしまおうか。」

「なんていう国?」

 アオイの問いに、わたしは今も続いているミサイルの試射の様子を眺めつつ、答えた。

「うん、『ヴィザー・ル新王国』って言ってね。隣の『ヴィザー・ク王国』から分かれてできた国。だけど元は分家だったのが、今では勢力は逆転して、本家を食らいかねない。歴史が無い分、新しい物を取り入れるのに抵抗が少ないお国柄だよ。
 ちなみに今、うちの間諜スパイが『リューム・ナアド神聖国』の次ぐらいに集中して調べてる国だね。地理的にはコンザウ大陸の南海岸線やや東寄り。先代魔王の時代に占領してた土地からは随分離れてる。」

「わかった。ありがとう。」

 その後わたしたちは、対戦車ロケットランチャーと対戦車ミサイルランチャーの発射実験が終わるまで、その様子を眺め続けた。
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