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第120話 縁談
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さて、ミズホと改造人間兵団には一時帰還命令を出した。彼女らが戻って来るまで、大体1ヶ月弱か。それまでにミズホの改造手術、準備を整えないといけないな。彼女は最高位の特別な改造人間になるから、人間形態と戦闘形態の変身能力を持たせる事になる。
人間形態は、今のミズホと外見上はなんら変わらない物になる予定だ。ただし戦闘能力とかそう言った面では、人間形態のままでも能力がけっこう向上する事になる。まあそれでも今現在のアオイに届かないのだが。
おそらくは戦闘形態での能力が、現在のアオイとだいたい拮抗する事になると思う。そう考えると、アオイは随分と頑張ったなあ。初めて出会った頃よりも、数倍どころじゃなく強くなっている。
わたしの補佐として、書類を捌いている姿が印象にあるが、彼女は暇を見つけては自身の鍛錬を欠かしていない。今も司令室の仕事に余裕が出来たので、配下の親衛隊員を相手に、外の演習場で鍛錬に勤しんでいる。
「さて、それじゃあわたしはお菓子でも作ろうかね」
冷蔵庫から卵と牛乳、生クリームなどを取り出し、棚から砂糖他を引っ張り出す。今日はカスタードプリンの予定だ。ボウルに卵を割り入れて、丁寧にほぐして砂糖をそれに溶かす。沸騰しない様に牛乳を温めて、それを少しずつボウルに流し込み、丁寧に丁寧に混ぜる。
そうやって作ったプリン液を、木綿布で濾す。そして、別口であらかじめ作っておいたカラメルソースをプリン容器に入れて、その上にプリン液を丁寧に流し入れる。そしてオーブンの天板にお湯を張って、150度に設定して蒸し焼きにする。
焼き上がったら、粗熱を取って冷蔵庫で冷やす。ちなみに焼いている間の時間を使って、プリンに載せる生クリームも作って置く。
……と。司令室の外に、おなじみの気配が。そして卓上の端末が、インターホンモードで鳴る。誰だか分かってるけど、ちゃんと誰何しないと不用心だってアオイに怒られるから、誰何しよう。
「こちらは魔王ブレイド。誰か?」
『こちら親衛隊長アオイ。入室許可、願います』
「入室を許可する」
丁度良く帰って来たか。んじゃあ紅茶でも淹れて、今作ったプリンでお茶にしようか。
そして相変わらず、お茶の時間になるとザウエルが報告書を持ってやって来る。うん、彼はもうお菓子を楽しみに来ている事を隠しもしない。いや、仕事はしっかりやってくれてるから、お菓子ぐらいで喜んでくれるなら全然構わないんだけどね。
「カスタードプリン、美味しいですねえ。あ、魔王様。明日はシュークリームを希望します」
「シュークリームか。あれは手間がかかるから、早目にタネを仕込んでおかないとな」
「……美味しい」
アオイも満面の笑みで、プリンを食べ、紅茶を飲んでいる。と、ここでザウエルが爆弾発言をぶっ放した。
「ところで魔王様。前々から考えていたんですが、ご結婚はなさらないので?」
「ぶふぉっ!? げほっ、ごほっ……。き、気管に入った……」
「……大丈夫かい? アオイ」
わたしはプリンが気管に入って、むせたアオイの背中を叩いてやる。
「あ、ありがとう魔王様……」
「ところでザウエル、なんでいきなりそんな話を?」
「いえ、真面目な話です。魔王様に、形だけでもお后様やお妃様がおられないのは、少々……」
あー……。そう言えば、以前ザウエルが愚痴ってたっけなあ。なんで魔王様の縁談が、僕を介して持ち込まれるんですかー!? って。
「またザウエルのところに、わたしの縁談が持ち込まれたのかい?」
「と言いますか、『JOKER剣魔国』内のある程度の実力者たちは、魔王様と縁続きになりたいと願ってますからね。魔王様が未だ独身であるのも、広く知れ渡ってますから。と言いますか、政治的にもお后様や、せめてお妃様が居ないのは、隙になりますし」
ちなみに后は正室で、妃は側室を表す。読みはどっちも『きさき』なんだけどね。わたしは大きく溜息を吐く。
「だけどなあ……。正直、中途半端な立場の妻は要らないんだよなあ。大体にして、『JOKER剣魔国』の最高幹部たちとは良好な関係を築いてるし。ここで外戚が政権内で幅を利かせる様になったりしたら、それは国の乱れの原因にもなる」
「ですよねえ……。それは分かるんですがね。最近突き上げが激しいんですよね。僕の一族からも『魔王様の正室とは言わない。側室をウチの一族から出して、より一層魔王様の信任を得るべきだ』って。
元帥魔獣大将殿も、親類縁者から『この娘は魔王様の側室にどうでしょ?』とか色々言われてるらしいですよ? 種族的に違い過ぎる元帥魔竜大将殿や、不死怪物である元帥怨霊大将殿、生き物ですらない元帥魔像大将ゼロなんかが、羨ましいです」
「あー……」
あ。アオイの目がちょっと泳いでる。うん、そうなんだよなあ……。
「それについては、後ろ向きに検討するから、今のところはあしらっておいてくれないかい?」
「前向きに検討、じゃ無いんですね」
「うん。後ろ向き。流石にザウエルの一族から貰うと、今でさえ事実上の宰相なのにザウエルの権勢ばかりが大きくなりすぎる。ザウエルも、もう権力とかこれ以上いらないとか言ってたろ?」
「今でさえ好き放題にやらせてもらってますからね。それに権力には義務が付き物です。そしたら研究とかもできるヒマが無くなっちゃうじゃないですか。
まあ、昔はそんな事考えずに、自分で魔王になりたいとか考えた事もありましたけど。当時は権利に付随する責任とか考えて無かったですからねえ……。魔王になれば、その権力使って、好き放題に研究できるとかしか考えてませんでしたから」
なるほど、ザウエルにとっては今の状況がちょうどいいバランスだってわけか。
「何にせよ、奥さんもらうならば、国内のバランスを大きく崩しそうなところからもらうのは避けたい。と言う訳で、後ろ向きに考えるから、そう言うのは適当にあしらっておいて。断る方向性で。」
「了解です」
でも、この先もそう長くは独身ではいられそうにないなあ。わたしは力なく、頭を左右に振る。どうしたもんかなあ……。
思い悩んでいると、ふとアオイが挙動不審になっているのが目に映った。……うん。今のままが続くのなら、それでも良いとずっと思ってたんだが。少し考えないといけないね。
人間形態は、今のミズホと外見上はなんら変わらない物になる予定だ。ただし戦闘能力とかそう言った面では、人間形態のままでも能力がけっこう向上する事になる。まあそれでも今現在のアオイに届かないのだが。
おそらくは戦闘形態での能力が、現在のアオイとだいたい拮抗する事になると思う。そう考えると、アオイは随分と頑張ったなあ。初めて出会った頃よりも、数倍どころじゃなく強くなっている。
わたしの補佐として、書類を捌いている姿が印象にあるが、彼女は暇を見つけては自身の鍛錬を欠かしていない。今も司令室の仕事に余裕が出来たので、配下の親衛隊員を相手に、外の演習場で鍛錬に勤しんでいる。
「さて、それじゃあわたしはお菓子でも作ろうかね」
冷蔵庫から卵と牛乳、生クリームなどを取り出し、棚から砂糖他を引っ張り出す。今日はカスタードプリンの予定だ。ボウルに卵を割り入れて、丁寧にほぐして砂糖をそれに溶かす。沸騰しない様に牛乳を温めて、それを少しずつボウルに流し込み、丁寧に丁寧に混ぜる。
そうやって作ったプリン液を、木綿布で濾す。そして、別口であらかじめ作っておいたカラメルソースをプリン容器に入れて、その上にプリン液を丁寧に流し入れる。そしてオーブンの天板にお湯を張って、150度に設定して蒸し焼きにする。
焼き上がったら、粗熱を取って冷蔵庫で冷やす。ちなみに焼いている間の時間を使って、プリンに載せる生クリームも作って置く。
……と。司令室の外に、おなじみの気配が。そして卓上の端末が、インターホンモードで鳴る。誰だか分かってるけど、ちゃんと誰何しないと不用心だってアオイに怒られるから、誰何しよう。
「こちらは魔王ブレイド。誰か?」
『こちら親衛隊長アオイ。入室許可、願います』
「入室を許可する」
丁度良く帰って来たか。んじゃあ紅茶でも淹れて、今作ったプリンでお茶にしようか。
そして相変わらず、お茶の時間になるとザウエルが報告書を持ってやって来る。うん、彼はもうお菓子を楽しみに来ている事を隠しもしない。いや、仕事はしっかりやってくれてるから、お菓子ぐらいで喜んでくれるなら全然構わないんだけどね。
「カスタードプリン、美味しいですねえ。あ、魔王様。明日はシュークリームを希望します」
「シュークリームか。あれは手間がかかるから、早目にタネを仕込んでおかないとな」
「……美味しい」
アオイも満面の笑みで、プリンを食べ、紅茶を飲んでいる。と、ここでザウエルが爆弾発言をぶっ放した。
「ところで魔王様。前々から考えていたんですが、ご結婚はなさらないので?」
「ぶふぉっ!? げほっ、ごほっ……。き、気管に入った……」
「……大丈夫かい? アオイ」
わたしはプリンが気管に入って、むせたアオイの背中を叩いてやる。
「あ、ありがとう魔王様……」
「ところでザウエル、なんでいきなりそんな話を?」
「いえ、真面目な話です。魔王様に、形だけでもお后様やお妃様がおられないのは、少々……」
あー……。そう言えば、以前ザウエルが愚痴ってたっけなあ。なんで魔王様の縁談が、僕を介して持ち込まれるんですかー!? って。
「またザウエルのところに、わたしの縁談が持ち込まれたのかい?」
「と言いますか、『JOKER剣魔国』内のある程度の実力者たちは、魔王様と縁続きになりたいと願ってますからね。魔王様が未だ独身であるのも、広く知れ渡ってますから。と言いますか、政治的にもお后様や、せめてお妃様が居ないのは、隙になりますし」
ちなみに后は正室で、妃は側室を表す。読みはどっちも『きさき』なんだけどね。わたしは大きく溜息を吐く。
「だけどなあ……。正直、中途半端な立場の妻は要らないんだよなあ。大体にして、『JOKER剣魔国』の最高幹部たちとは良好な関係を築いてるし。ここで外戚が政権内で幅を利かせる様になったりしたら、それは国の乱れの原因にもなる」
「ですよねえ……。それは分かるんですがね。最近突き上げが激しいんですよね。僕の一族からも『魔王様の正室とは言わない。側室をウチの一族から出して、より一層魔王様の信任を得るべきだ』って。
元帥魔獣大将殿も、親類縁者から『この娘は魔王様の側室にどうでしょ?』とか色々言われてるらしいですよ? 種族的に違い過ぎる元帥魔竜大将殿や、不死怪物である元帥怨霊大将殿、生き物ですらない元帥魔像大将ゼロなんかが、羨ましいです」
「あー……」
あ。アオイの目がちょっと泳いでる。うん、そうなんだよなあ……。
「それについては、後ろ向きに検討するから、今のところはあしらっておいてくれないかい?」
「前向きに検討、じゃ無いんですね」
「うん。後ろ向き。流石にザウエルの一族から貰うと、今でさえ事実上の宰相なのにザウエルの権勢ばかりが大きくなりすぎる。ザウエルも、もう権力とかこれ以上いらないとか言ってたろ?」
「今でさえ好き放題にやらせてもらってますからね。それに権力には義務が付き物です。そしたら研究とかもできるヒマが無くなっちゃうじゃないですか。
まあ、昔はそんな事考えずに、自分で魔王になりたいとか考えた事もありましたけど。当時は権利に付随する責任とか考えて無かったですからねえ……。魔王になれば、その権力使って、好き放題に研究できるとかしか考えてませんでしたから」
なるほど、ザウエルにとっては今の状況がちょうどいいバランスだってわけか。
「何にせよ、奥さんもらうならば、国内のバランスを大きく崩しそうなところからもらうのは避けたい。と言う訳で、後ろ向きに考えるから、そう言うのは適当にあしらっておいて。断る方向性で。」
「了解です」
でも、この先もそう長くは独身ではいられそうにないなあ。わたしは力なく、頭を左右に振る。どうしたもんかなあ……。
思い悩んでいると、ふとアオイが挙動不審になっているのが目に映った。……うん。今のままが続くのなら、それでも良いとずっと思ってたんだが。少し考えないといけないね。
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本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
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