異世界帰りの邪神の息子~ざまあの化身が過ごす、裏でコソコソ悪巧みと異能学園イチャイチャ生活怨怨怨恩怨怨怨呪呪祝呪呪呪~

福郎

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半人半神性

悍ましき蜘蛛。またの名を

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 彼等にはまだ余裕があった。なるほど、唐突に表れた泥の圧力はすさまじい。しかし、どんなに凄まじかろうが、訓練用の式符には弱点は2つ存在していた。1つは特殊な結界内でしか活動できない事。そしてもう1つは

「訓練中止!」

 緊迫した状況で馬鹿みたいな言葉であったが、訓練用の式符に必ず刻まれている安全装置を作動させると、元の式符に戻るためこれで片付くのだ。後は式符を回収してこの場にいる人間を始末するだけ。その筈であった。

『キイイイイイイイイイイアアアアアアアア!』

「なに!? 訓練用の式符じゃないのか!?」

 ところがである。泥は戻るどころか元気一杯に耳障りな叫び声を上げて、彼等の精神を蝕もうと呪力を辺りに撒き散らす。

 予想外の事態であったが、彼等5人はいずれも単独者に劣らぬ達人ばかり。それ故導き出した結論は全員同じであった。

「六根清浄大祓」

 即座に全員が浄力で身を包み、呪力を弾きながら泥と相対する。

「空間殺!」

『ギギッ!?』

「掛けまくも畏き伊邪那岐大神」

 泥の第一撃である突進は超能力の壁に阻まれ、ならば再びと加速しようとするが何かがおかしい。前だけではない。後ろも、左右も、上すらも見えない壁で阻まれている。地面はどうだと泥から生えた足で地を叩くも同じだ。完全に囲まれている。

 単なる非鬼では脱出不可能な不可視の檻に閉じ込められる泥呪。

 だが単なる非鬼ではない。

「あら、蜘蛛ちゃん大変ね。囲まれちゃったわ」

「蜘蛛君がんばえー」

「こいつ、本当に非鬼か!? ぐっ維持できんかもしれん!」

「筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原に禊ぎ祓へ給ひし時に生り坐せる祓戸大神等」

 隅では地面に座った男と、その膝の間に座っている女が暢気な声を上げているが、進歩の階段の5人はそれどころでない。閉じた空間の中で滅茶苦茶に暴れ出した泥が、囲いを今にも突き破りそうなのだ。

『カアアアアアアカカッカッカカッカカカ火火火火火火火火』

「そんな馬鹿な!?」
「浄力を上げろ!呪われるぞ!」

 燃える泥の下から現れたる。8つの髑髏の赤い眼。鋭き針毛。滴る爛れ涎。鎌の死足。

『キキキアアアアアアアアアアアアギャアアアアア!』

 檻を一瞬で粉砕した蜘蛛は全方位に体毛を発射しながら、その眼の髑髏の隙間から無尽蔵とも思える程の毒蛇を垂れ落とす。

「つっ!?」
(なぜセーフティーが作動していない!? まさか!?)

 超能力によって檻を展開していた術者が、それを破壊された衝撃にひるみ防御がほんの一瞬遅れ、一本。たった一本だけ足に刺さってしまった。それだけで十分な針が。

 目眩、嘔吐、視界のぼやけ、頭が割れそうな頭痛、思うように動かぬ四肢。明らかに訓練用に調整されている筈の効果ではない。
 そこで彼は一つの結論を下した。式符に戻らない。調整されていると思えない攻撃。つまりは

(訓練用でない、本物の式符だ!)

 本来なら喜んでいたであろう。なにせ戦略兵器として運用できるように改良するため、非鬼の訓練用式符を欲したのだ。だからこそ、態々そんな事をする必要がない本物の式符を目の前にして喜んでいいはずだ。今自分達に襲い掛かっていなければ。

(マズい! 蛇がこちらに!)

 しかしそんな事を考えている間、蜘蛛から零れ落ちた蛇の大群が弱った得物を貪ろうと体をくねらせていた。

「蛇を食い尽くし給え!」

 仲間の危機に男が、ある存在の影絵をこの場に呼び出す。現れたのは薄っすらとした鷹の様な顔。意味は飲み込む。願われたるは軍神インドラの100倍強くあれ。そして蛇の絶対なる天敵。

「ガルダよ聞き届け給え!」

 鳥の顔が嘴を広げると、蛇の大群がまるで吸い取られたかのように次々と宙を舞い、嘴の中へと納まりどこかへ消えていく。

「諸々の禍罪穢有らむをば祓え給ひ清め給へと白すことを」

『キキャッ!』

 黒き呪蜘蛛は未だ祓詞を止めぬ術者を、赤い髑髏全てを強烈に光らせて睨みつける。

「大地の壁よ我が身を守れ!」

 間一髪。術者が作り出した大地の防壁は、祓詞を唱える術者を完全に守った。防げなかった場合は……石になった服の端が物語っている。

『キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!』

「ぐあああっ!?」

「聞こし食せと」

 恐るべき魔眼を防いだ防壁であったが、呪蜘蛛という破城槌には全くの無力で吹き飛ばされる術者。

「阿修羅大力!」

「悪鬼退散!」

 天敵たる術者は最早目の前、だが仲間達がそれを阻む。

 足が神仏の加護で掴まれ、霊刀で切り落とされ、ほんの少し、後ほんの少しだけ間に合わなかった。

「恐み恐みも白す」

 達人が完璧にとなえた祓詞。

『きいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?』

 何かがほんの少しだけ光っただけであったが、効果は絶大であった。

 クモは絶叫を上げながら悶え狂い、ついにはひっくり返ってその足を縮めて痙攣し、どんどんと干からびて小さくなっていった。

「ありゃあ、蜘蛛君負けちゃいましたね」

「もう、折角会いに来たのにこれじゃあ期待外れね。でもデートは出来たからよしとしましょうか」

「そうですねお姉さま!」

 最大の障害は排除したが、仲間1人が毒に侵され、もう1人は蜘蛛の体当たりをもろに食らったのだ。一刻も早く未だ暢気な男と女を始末してこの場を離れる必要があった。

「ではこの不肖四葉貴明、さっさとこいつらを片付け……」

 立ち上がり四葉貴明と名乗った男が、首を傾げながら進歩の階段、をではなくその周りを注視していた。

「ほうほうほう。皆さん結構殺してますね。老若男女問わず。ああ、劣った存在、手駒にしようと強化したけど失敗、実験、煩い猿、醜い命乞い、乳幼児も、洗脳、綺麗になった。ほうほうほうほうほうほうほうなるほどなるほどなるほどなるほど。いやそうでしょうそうでしょう。妻の、夫の、恋人の、父の、母の。ええそうでしょうそうでしょう。そうでしょうとも。では最後に皆さんの正当性を。とりゃ。出目は?」

 止めなければならない。しかし体が思うように動かないのだ。そして指から弾かれたオセロが地面に……。

 蜘蛛は一つある望みがあった。与えられた凄まじき、恐ろしき、真の力を、真の姿を持って……。

 正当なる……。

 出目は黒。

 望みは叶えられた。

「ごぶっ!?」

 異変は祝詞を唱えた女から始まった。せき込むと口から何か泥の様な物が溢れ始めたのだ。

「ごぼごほっ!?」

「何があった!?」

「祓い給い清め給え」

「ごぼおおおおおおおおっ!?」

 まさか先程の蜘蛛の呪いを受けたのかと、仲間が浄化を試みるも効果が無く、まるで滝の様に口から泥を吐き続ける。

「ごっ!?」

 そしてついに

 女の体から8本の何かが飛び出した。

「なんだ!? 何が起こっている!?」

 女はそのショックで既に絶命していた。しかし異変は終わらない。体の下から、何か窮屈な物から抜け出そうと……抜け出しはしなかった。一気に膨張して弾けたのだ。

『キイアアアアアアアアアアアアアアアキャッアアアアアアアアアア!』

「馬鹿な!? さっきの蜘蛛!?」

 表れたのは確かに先程打倒したはずの蜘蛛であった。いや違った。造形が少し変わっていたのだ。胴も足も変わりない。だが頭が、頭から何かが生えていた。角だ。巨大な角。敢えて何の角かというと。

「まさか!? まさかあああああああああ!? そんな事がああああああああ!?」

 絶叫が上がるがもう遅い。

 その角は…………牛の角であった。

「ああああ。あああああああ。ああああああああ」

 しかも変化がもう一つ。目の部分にあった赤い骸骨が一つ変わっていた。

 虚ろな表情をしていたが……先程絶命したはずの仲間の顔だ。

「少し親父の真似でもしてみるか。おっほん。お前達は永遠に苦しみ続ける。その蜘蛛、





 牛鬼





 の中で永遠に。なに、ちゃんと反省したら永遠じゃなくて有限にしてやるよ」

「おい、あいつはなんだ!?」

「ひいいいいいいいいいいいい!?」

 それを知らない進歩の階段のメンバーは恐らく日本の生まれではないのだろう。金切り声を上げる仲間を問いただすも答えが返ってくるはずが無い。

 答えられるはずが無い。


 あれを殺した者が


 次の牛鬼に変貌するなど。


「では蜘蛛君。第二ラウンドだ」

「あら逃げちゃだめよ? 悪いけれど私の霊力の壁を壊すか、蜘蛛ちゃんの相手かを選んでね」

『キッキヤアアアアアアアアアアアキャアアアアアア!』

 負けると死

 勝ったら死

 ただ絶望が……

 ◆

 ◆

 ◆

「ああ。ああああああ。ああああああ」

「これなら少しは楽しめそうね」

 5、小夜子はにっこりと笑って牛鬼と相対していた。

 元々蜘蛛と遊びに行くためにデートをしていたのだ。進歩の階段との戦いで期待外れを感じたが、今なら遊び相手にはなるかもしれないと霊力を高めていく。

「えーそれではお姉さま対蜘蛛君の試合を始めます。試合開始! わかっ」

『キッキャアアアアアアアアアアア!』

 貴明が何かを言い出す前に突進する牛鬼。自分のある意味作成者の言葉を聞くどころでは無かった。ただ命の危機に突き動かされて真っ直ぐ突き進む。

『グギイイイイイイッ!? ググググッギイイイイイイイイイ!?』

「はあ、やっぱりダメね」

 だが無意味であった。ただただ圧倒的で強大な霊力が、何の神仏の加護も宿っていない霊力が牛鬼をひっくり返すと、そのまま地面に押し付けたのだ。

『ギイイイイイイイイッ!?』

「ほらほら。このまま畳んで封印しちゃうわよ?」

 牛鬼は全く、全く抵抗できなかった。巨人に踏み潰されたってまだ動けただろう。こうなれば針と蛇、そして新たに変えた眼に唱えさせて……。

『ギッ!?』

「ふふ。あなた今ぎゅうぎゅうに圧迫されてるのよ? 外に発射する圧が足りないわね」

 針と蛇を体外に飛ばせないのはまだわかる。現に今も圧倒的な圧力が自分を押さえつけているのだ。しかし、体から術が、術が発せられないのだ。そんな事あるはずが無かった。いったいどれ程、どれ程力に差があればこんなことが……!

「蜘蛛君! またお姉さまに仰向けにひっくり返されて羞恥プレーを! お姉さま僕にやって下さい! あ、違った蜘蛛君の負け!」

「それじゃあ帰りましょうか。勿論手を繋いでね」

「はいお姉さま! じゃあ蜘蛛君明日からも頑張ってね!」

 負けが宣言されて式符に戻った牛鬼の頭に浮かんだのは、ストライキの5文字であった。
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