異世界帰りの邪神の息子~ざまあの化身が過ごす、裏でコソコソ悪巧みと異能学園イチャイチャ生活怨怨怨恩怨怨怨呪呪祝呪呪呪~

福郎

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悍ましき眷属達

強き強き強き猿3

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 戦いが始まった。

『ゴオオオオオオオオオオオ!』

「超力断絶障壁!」

「祓い給い清め給い」

「不動金剛力士よ現れ給え!」

『風よ切り裂け!』

『神よ我が手に聖なる剣を!』

 流石は全員プロフェッショナルだ。全員がそれぞれ役割をこなしていく。即ち、単独者達が一塊の要塞となって猿君の正面に聳え立ち、教官殿達が散開して猿君の足と顔を徹底的に攻撃しているのだ。

 超能力で作られた通常の空間とは断絶された障壁と、猿君と同じほどの大きさになった不動金剛力士の影絵が浄力で強化され、教官殿達がありとあらゆる手を使って削ろうとする。

 一方猿君のやる事は単純明快。

『ゴオオオオオオオオオオオ!』

「超力最大っっっ!」

「ぬううううううううう!」

 ただ近付いて殴る。

 それだけで墨で形作られた様な金剛力士は後ろに吹き飛び、超能力で作られた壁に激突して軋みを上げる。

「まるっきり怪獣映画ね」

「本当ですね」

 お姉さまの言う通り、20メートル同士の肉弾戦に加えて、教官殿達が放ち続ける攻撃で猿君の足と顔が光り続けているのだ。まさに怪獣映画。

「ぜりゃああああああ!」

 お、金剛力士が体勢を立て直して殴り掛かった。ん? その金剛力士の肩に誰かいるな。武器を持った女か、ありゃ眼を狙ってるな。

「煌めけ光雷独鈷杵!」

 うへ、ありゃかなりの逸品だな。インドラ由来の雷がバチバチ光ってる。

 ただまあ

 体が強いってのはどこもかしこもなんだわ。
 猿君に柔らかい部分、弱点なんてない。

「ちいいいいいい!」

『オオオオオオオオオオオ!』

 金剛力士の肩から猿君の目に飛び掛かった女の独鈷杵は確かに目を直撃したが、猿君はなんの痛痒を感じた風もなく、そのまま蠅でも追い払うかのように手を振り回し女も慌てて離脱する。

『聖なる鎖よ!』

 猿君に碌なダメージが入ってないと判断した教官殿達が、地面から光り輝く鎖を召喚して猿君の体に巻き付ける。
 狙いは時間稼ぎ。

「極風よ 凍える風よ 凍てつく風よ 冷たき風よ 北の風よ」

 訓練開始からずーっと呪文をブツブツ唱えてる単独者の魔法が完成するまでのだ。これ威力ヤバくないか?
 特別強力な遮断結界が訓練場に張られてるけど、完成に近づくにつれて魔法の心得がありそうな人達が青ざめるくらいの魔力が迸ってるんだけど。これは教官殿達が時間稼ぎだけすればいいと思うはずだ。

「掛けまくも畏き伊邪那岐大神筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原に禊ぎ祓へ給ひし時に生り坐せる祓戸の大神等」

 しかもその上、巫女さんも祓詞でずっと猿君にデバフかけまくってる。この前蜘蛛君に食われた奴が唱えてたのよりもさらに厄介で、完成してないにも関わらず一言一言に力が宿って効果が出ているほどだ。

 こりゃ相乗効果でとんでもない威力になるな。普通に猿君でも死ぬわ。

『ゴオオオオオオオオアアアアアアア!』

「馬鹿力め!」

『俺達の鎖を壊すなんてどうなってる!?』

 猿君の体と纏っている黒い筋繊維がより隆起して、教官殿達の鎖を粉々に破壊する。

「だがもう遅い!」

 あ、単独者の皆さん。魔法は完成間近だから今から何をしようがもう遅いって思いましたね? 自分達の勝ちだって。そう思うのはちょっと早いかなって。

 だ か ら

「いざ我求むるはこの世全てを止める永劫の」

『ウキッ!』

 猿君、皆さんに唱えるの止めて貰おうか。

『!』

「!?」
「!?」

 おやどうしました魔法使いと巫女さん? 詠唱止まっちゃいましたよ?

 ただ猿君は両手で自分の口を塞いでるだけなのに。

「!?」
『!?』

「おい何が起こってるんだ?」
「どうして急に黙って……」
『教官殿達に何が!?』

 生徒の皆さん不思議ですよね。訓練場にいる方々が誰も喋って無いんですから。

「!」
「!」

 だけどやっぱり経験が凄いな。魔法使いさんはそのまま無詠唱で放ち、巫女さんは舞で補完して猿君を仕留めようとする。
 でもちょっと耳の方は特殊なんですよ。

『ウキッ!』

 猿君が今度は耳に自分の手を当てる。

 すると迸った冷気の極限魔法は猿君の肌に霜を付けるだけに終わった。

 唱えて世界に干渉し望む現象を引き起こす。

 耳が特殊と言ったのはただ聞こえなくなるだけじゃない。

 その言葉によって引き起こされた神秘を、そんなモノ自分は聞こえてないと無理矢理拒絶する。それが不完全なモノなら猶更だ。

 それがどうしたとそのまま殴り掛かった学園長は正しかった。猿君を打倒する手段はただ一つ。その暴力を真正面から力で粉砕することだけなのだ。

「三猿だ! 絶対に目を閉じさせるなあああああああああああ!」

 自分の声も聞こえてないだろうが、それでも超能力の兄ちゃんが叫んだ。まあそりゃ気付くよね。

 その通り。

 猿君は

 強き見ざる強き言わざる強き聞かざる猿なのだ。

『ウキッ!』

「断絶障壁最大いいい!」

『心の目で見ろ! 神よ我に大いなる力を与え給う!』

 でもやっぱりすごいな。猿君が目を隠したことによって、全員目が見えない筈なのに、ある程度猿君の場所を捉えている。まあ猿君が20メートルなんていうバカげたサイズだから、適当にやってても攻撃が当たるって言うのはあるが。ただ逆に言うとですよ。

『オオオオオオオあああああああああああああ!』

 目を閉じたからこそ無茶苦茶に暴れる20メートルの巨人を、殆ど見えない状態で防げますかね?

 ハリケーンの一番やばい所でもまだましな嵐が吹き荒れる。目を塞いだまま時には蹴り、時には地面に寝転がり、癇癪を爆発させた子供の様に暴れ回る。

『ぐあっ!?』
『マーカスやられたか!?』
『がはっ!?』

 最初は躱すという戦闘スタイルの都合上、視力に頼っていた教官殿達が。

「俺の障壁がもう持たないぞ!」
「そんなこと言ってもどう動いてるか分からないのよ!」
「金剛力士でも抑えつけれん!」

 そして残るは単独者達。

 猿君猿君。聞こえますか猿君? そうです主席の四葉貴明です。残った皆さんはお姉さまが危険だの危ないだの、力を封印するだの言ってた連中です。つまりキッツいお仕置きが必要なのです。1人につき50発は殴るのです。なあに、箪笥の角に小指を50回ぶつけても人は死にません。という訳でよろしくね。

『ウキッ!』

 猿君がついに目から手を放して、渾身の力で超能力の障壁に拳を叩きつける。

「やばっ!?」

「へ!? 私!?」

 障壁を完全に叩き壊した猿君が目指すのはまずは巫女さん。巫女さんよ、何故一番後ろの私がって顔してますね? そこらのちんけな妖異と猿君を同じにしないでくれたまえ。そりゃバフデバフ要員は真っ先に潰すのがお約束でしょう。それくらい猿君だって分かってますよ。

『ゴオオオオオオアアアアアアアアアアア!』

「いだだだだだっ!? ちょっと待って!? いっだああああああああああああああああああ!? いっだああああああああああああああああああああああ!? いでででででででで!?」

「ね、ねえさあああああああん!?」

 ぷぷぷぷ。巫女さんよ、乙女がしちゃいけない顔になってますよ。だが猿君の高速ラッシュでミンチになって無いだけありがたいと思いたまえ。しかし同じクラスの女子生徒が叫んでいる。お姉さんだったのか。それは悪い事をした。だが悪いのは君の姉上なのだよ。

「ぷふ。ぷふ。いでででって。ぷふ。いでででって。ぷふふ」

 またお姉様が俯いて、長い髪に隠れながら笑いを必死にこらえている。
 素晴らしいぞ猿君。お姉さまを笑顔にしている君こそまさにワールドアイドルだ。え? なんか違うくないかって? 1にお姉さま、2にお姉さま、3,4が無くて、5に世界なのだ。つまりこれでよし。

 では残りも速やかに刑を執行してくれたまえ。

 ◆

 ◆

 ◆

「ぐわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
「いっでえええええええええええええ!? いっでええええええええええええええ!?」
「ちょっとまって!?あんぎゃああああああああああああああああああああああああ!?」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!?」

「ふはっ。あはは。あははははは。ふははははっ。もうだめ。あははははは」

 ヒーラー兼バフデバフ要因がいなくなったら後はじり貧よ。残り全員の刑は執行された。そして死屍累々の単独者達にドン引きしている生徒達と、これこそが特鬼だと言っている学園長の声に背を向けながら、ついに笑いを我慢しきれなくなったお姉さまと一緒に訓練場を去るのであった。猿だけに。
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