異世界帰りの邪神の息子~ざまあの化身が過ごす、裏でコソコソ悪巧みと異能学園イチャイチャ生活怨怨怨恩怨怨怨呪呪祝呪呪呪~

福郎

文字の大きさ
37 / 51
悍ましき眷属達

四葉貴明という男

しおりを挟む
「朝のホームルームを始める。今日でアメリカ校は母国に帰る事になる。もし交流を計画している者がいれば、この後すぐ私のところへ来てくれ。それと今日も第一訓練場は開放されているため、空いたコマの時間は特に許可なく見学に行っていい」

 推薦組である一年A組の朝の最初は、学園長であり担任の竹崎重吾によるホームルームから始まる。
 かつての最強、竹崎重吾の教えを受けている事は、クラスのほぼ全員が望外の境遇だと感じ、それと同時に自分の名を上げるためのチャンスだと考えていた。

 これは勿論自分の実力を高めるという至極純粋な思いと、日本各地に伝手がある竹崎の目に留まればそれだけ家の家格を上げられるという、これまた名家の者として当然で純粋な思いがあった。

 その上、どうしても外せない用がある時以外は、出来るだけ担任として授業を受け持つという竹崎の言葉に嘘は無く、むしろ今まで多忙であるのは間違いないのに、一度も臨時の教員が来た事ないこともあって、自分達がそれだけ期待されているという思い、そしてその期待に応える、応えなければならないという、いい意味での緊張感も感じていた。

 だがそんな生徒達も、入学してそこそこ経つと竹崎が特に注意を向けている生徒達がいる事に気が付く。

 1人は当然四葉小夜子。尤もクラスの生徒達にとっては未だに桔梗小夜子だが。鬼子、怪物、化け物。様々な異名を持つ、人を超えているのではないかと思わされる、いや確信出来る魔人だ。そして入学前は噂程度に聞いていた彼女の逸脱っぷりは、同じ授業を受けていて完全な事実として認識させられ、彼女に向けられている感情は、当初混じっていた嫉妬や侮りは完全に消え失せ、今では殆ど畏怖だけであった。例外は闘志といった感情だが、それは本当に極一部である。
 その為竹崎が彼女に注意を向けているのはある意味当然だと彼等は理解している。問題なのは。

「ただ貴明」

「はい?」

「君は先方から直接依頼があって、出来れば空いている時間は来て欲しいそうだ。アメリカの生徒達の対応と連携が上達するにつれて、非鬼の方も多種多様な呪詛を使い始めたらしい。その対応のレクチャーを受けたいそうだ。主席としてやってくれるか?」

「分かりました! 四葉貴明、空き時間に第一訓練場に向かいます!」

「うむ礼を言う。私から伝えておこう」

(一体アイツは何なんだ?)

 そしてもう1人。小夜子以外全員が、未だにどう扱ったらいいか掴み切れていないのが四葉貴明という男であった。

 明らかに推薦組の異能者としては落第にも関わらず、何故か自分達どころか、橘、佐伯、更には桔梗まで差し置いて主席となったこの男。今でも裏口入学と思われている上、四葉なんて苗字は誰も聞いた事が無いため、名家サロンでもあるA組の中で完全に村八分。つまり事実上の追放状態であった。

 これには訳があり、貴明の父を知っている名家中の名家の生徒の親はいるのだが、問題なのは父が四葉という姓を名乗り始めたのは、貴明がお腹に出来るちょっと前の時期であったため、それ以前に会っていた彼等には四葉と邪神が結びつかなかったのだ。しかもこの邪神、入学式では号泣してハンカチで顔を隠していたため、顔が確認できていなかったという事も重なり、貴明は本当に一般庶民扱いであった。つまりある意味初代がうん億年の歴史を持つ四葉家は、名家というカテゴリーからも追放されてしまっているのだ。

 そんな貴明が一般クラスに物理的に追放されていないのは、その追放する権限を持った竹崎重吾が、彼ら視点からすると非常に気を使っている。あるいは親しそうなためであった。出来るだけクラス全員と話している竹崎だが、それでも一番話しているのは貴明で、しかも既に数度学園長室から一人で出てくる姿も目撃されており、ひょっとして竹崎の隠し子ではないかと思っている者すらいた。

「私の式神どうしましょうかね。同じなのはつまらないし」

「お姉さまが作る式神なら、何でもカッコよくて可愛くて強いに決まってます!」

 その上扱いの難しさに拍車をかけているのが、彼等にとって畏怖の象徴である小夜子が、何故か貴明と結婚しているという事だ。彼等にしてみれば全く理解不能状態であったが、貴明が劣等生だと下に見て突っかかったり、焼きそばパンを買ってこさせようものなら小夜子が出て来るのは明白で、とてもでないが直接手を出せないのだ。

『失礼します教官殿! 学園長殿から連絡があり、本日はご参加いただけるという事なので、ご予定の方をお伺いに参りました!』

『あ、分かりました』

 しかもしかもしかも、更に更に更に扱いに困るのは、貴明がたまにであるが妙に博識な事だ。今もやって来たアメリカ校の生徒と英語で話しているのは勿論だが、霊力に始まり浄力の方も非常に詳しく、特に呪的なモノに関しては彼等が全く知らない知識を持っているのだ。尤も超能力や魔法の方に関してはかなり怪しいが。

 つまり四葉貴明という男に関して彼等のスタンスは

(よく分からないから関わらないでおこう)

 というものに尽きる。

 憐れ四葉貴明。

 彼はクラスから事実上追放されているにも関わらず、今日も学園の為、生徒達の為、設備の充実に涙ぐましい努力で励むのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

処理中です...