その男に触れるべからず ~過去にやらかし過ぎた最強男の結婚生活 反省しているので化け物呼ばわりは勘弁してください~

福郎

文字の大きさ
69 / 172
敵討ち編

蜘蛛 またの名を

しおりを挟む
騎士の国 凜

刀を大上段に構え業魔を見やる。どうやら未だに混乱しているようで、私ではなく女の遺体とユーゴ様を交互に見ている。
これは好機だ!

一気に間合いを詰める。
数々の退魔士を退けてきた妖魔なのだ。この機、この一振りに全てを賭ける!

「いやああああ!!」

「こ、小娘!?がはっ!?」

ようやく私の姿を捉えたようだが、構うものか!そのまま上から刀を振り落とす!
今姿勢が崩れた!?このまま首に!

「ぎぎっ!?」

殺った!
業魔の首筋から胸にかけて断ち切った!

「ぎごぼっ」

断ち切った断面からは血ではなく、なにか黒く濁った粘液の様なモノが流れ出が、構うものか!このまま止めを刺す!
なんだ!?
刀を引き抜こうとしたとき、業魔の肉体があちこち瘤のように盛り上がり始めた!?
早く止めを!?

「ユーゴ様!?」

「ごめんね凜ちゃん。ちょーっとマズい感じだったから」

幾らか業魔から離れたところにユーゴ様に抱きかかえられていた。思わず赤面してしまうが業魔は!?

「あ、ああ!?そんな!?」

蜘蛛の様な体に牛の顔!?
ま、まさか牛鬼!?そんな!東方の都で封印されているはず!まさか業魔の正体は牛鬼だったのか!?

こうなれば、私の命を使う水草の秘術で奴を封印するしか…
ユーゴ様、凜は短い間でしたが幸せ者でした。

「ユーゴさむぐ!?」

命を捨てる覚悟を決め、今生の別れの挨拶をしようとした時、口を塞がれてしまった。
し、しかもユーゴ様の口で!?嫁入り前なのに接吻をしてしまった!いやもう嫁入りしてたから大丈夫だ!

「今なんか嫌な事言いそうになったでしょ?」

「ぷはっ。し、しかし牛鬼は殺した相手に憑りつき、その者も牛鬼となってしまうのです!」

牛鬼は封印するしかない。それにユーゴ様の御命だけでも!

「大丈夫。お任せあれ」

あう!抱き抱えられたままだったから降ろされたが、また接吻されてしまった!
ユーゴ様、一体どうやって…。


sideユーゴ

危なくなったら助けるとは言ったが、最初から手助けしないとも言ってはないと思いながら業魔の膝を砕いたが、奴さんの止めを凜ちゃんが刺そうとした時に、嫌な感じがしたから凜ちゃんを下げたが案の定だ。

蜘蛛の体に牛の頭だぁ?見た瞬間、頭の海馬が電気を発したぞ。

『やっぱ最強の妖怪は牛鬼だって!殺せても殺したそいつが牛鬼になるんだぜ!?』

中学の時の友人、大輝よ。今俺の目の前にいるんだけど、お前のうんちくのおかげで下手に手を出さずに済んだぞ。中学特有の最強とか無敵とかに妙に惹かれた時期に、何故かお前は妖怪の最強に惹かれたみたいだが。
まさかお前も、俺が本物と出くわすとは思うまい。

凜ちゃんの前に出る。出来れば直接させてあげたかったけどそうもいくまい。

「ぎぎぎ貴様ああああ」

変身というより元に戻ったのかね?でけえな。普通に一軒家くらいだ。
というか膝砕いた事バレてるな。すんげえ表情で睨んでくるんだが、ほんとに屏風で書かれてるみたいな曲線の多い目なんだな。許せ。あと、牛の表情は分かりにくいぞ。

「ししし死ねえええ!!」

「お前が死ね」

「ややややってみるがいいいいい」

それこそ中学の時のやり取りをしながら牛鬼がにたりと笑う。まあ、その能力とんでもないからなあ。気持ちは分かるよ。

でもお前さん、存在そのものを消されたことはあるかい?



ーミシリと世界が歪んだ音がした ただ拳を握りこんだだけなのにー

「オオオオオオ!!!」

ー牛鬼が足を上げていたが遅すぎる。その間にも既にユーゴの拳は引き絞られており、後は必殺の矢を解き放つのみー

「死ね」

ー解放されたは世界の法則を超え、光となってちっぽけな蜘蛛の飲み込んだ。肉も骨も命も必殺の呪詛も魂も、そしてその存在その物が、ほんの一瞬だけ輝いた光に消されていく。一筋の光が夜空に昇り消えていくと、そこに牛鬼の存在はどこにもなかったー


大陸の地上で水平に殴るわけにはいかないから上に向けたが、逆流れ星になっちゃったな…。川は消えなかったがベルトルド総長許してくれるかなあ。そうだ、東方から持ってきた打ち上げ花火という事に…。

「ユ、ユーゴ様」

「終わったよ凜ちゃん」

ぺたりと座り込んでいた凜ちゃんを抱きかかえて、腰ほどの岩に座らせる。

「牛鬼は…?」

「死んだよ。間違いなく。俺も何も起こってない」

「うっ…ひっく…」

事態が呑み込めたのだろう、目に涙を浮かべながら俺の胸元に頭を寄せてくる。

「ありがとうございます!これで父母も…ひっく」

「うんうん」

凜ちゃんが泣き止むまで背を摩る。重しが無くなったんだ、今は泣くと言い。

「ぐす。ユーゴ様ありがとうございました」

「いえいえ」

泣き止んだ凜ちゃんだが、どこかさっぱりした表情だ。うん、いい顔だ。

「さあ、我が家に帰ろうか」

「は、はい!」

あ、そういえば随分故郷を思い出して、忘れていることに気がついた事がある。

「そういえば凜ちゃんに、俺の名前の書き方教えてなかったね」

「あ、実は少し気になってて」

少し恥ずかしそうに言う凜ちゃんだったが、許してほしい。なんせ何十年もユーゴで通してるんだ。

「ふふ。俺の名前はね、新島 勇吾 って書くんだ」

「新島、勇吾様…」

フルネームを枝で地面に書くが、書くなんて本当にいつぶりくらいだろうか?こっちに来てから殆ど名乗りもしていない。

「それでは私も今日から新島 凜です!勇吾様!」

その言葉にポカンとして、じわじわと喜びが込み上げてくる。俺の姓まで名乗ってくれるなんて。

「あう」

「ありがとう凜」

つい抱きしめてしまう。
凜は恥ずかしがっているが、見てるのはお月さまだけだ。許してほしい。


リガの街 ユーゴ邸 ユーゴ

我が家に帰ってきたが、ギリギリ日付は変わってないかな?屋敷のあちこちに明かりが灯っているが、アリーとブラウニー達には頭が下がる。

「ただいまー」

「た、ただいま帰りました」

改めて家に帰ると緊張しているらしい。

「もう凜の家でもあるんだよ?」

「は、はい!」

うん、いい笑顔。

「お帰りなさい旦那様!」

「ただいまルー。起きてくれてたのね。ありがとう」

「た、ただいま!」

わざわざ起きてくれていたらしい、ルーが出迎えてくれる。凜も仲のいいルーが迎えてくれて嬉しそうだ。

「その様子だと敵討ちも無事終わってみたいですね!今日から凜ちゃんも家族ですね!」

「う、うん」

ルーの言葉に、凜が顔を真っ赤にしながらも俺の傍に寄って来る。すんごく可愛い。

「さあ、早く中へどうぞ!お夕食温めますね!」

「ちょ!?ルー!?」

凜の手を取り中へ入るよう促すルー。
仲良きことはいい事だ。
うんうん。


うん?
ルーと凜どうしたの?
初夜!?
ちょ、ちょっと落ち着こう!
あ、ちょっとルー!?
凜、お待ちになって!?
ぬあああああああ



「先手必勝、相手に何もさせない、急がばぶち破れ。いい言葉だ」
ー"来訪者" 新島 勇吾ー


人物事典
ミリア:最優先抹殺対象 国家脅威度最大 【個人戦闘力特別評価】
身長160㎝ 毛髪赤色 瞳の色赤色 鮮やかな赤色の髪が特徴的、似顔絵は別紙。
"7つ"のミリアを発見または、それに準ずる有力な情報を入手した場合、即座に帰還し総長に報告すること。万が一戦闘に発展した場合、すぐさま撤退。不可能な場合情報を残す事。

"7つ"のミリアは魔法の国出身で、若くして才能を認められ自分の研究室を与えられるほどであったが、唱える魔法の数を増やすために人体実験や禁忌の研究にのめりこむ様になり、魔法の国を追放される。
どうやら実験は成功していたようで、現在大陸で確認される唯一の7つの呪文を唱えれる人物であり、戦闘能力は計り知れない。
特に炎の魔法に関しては他の追随を許さず、対処する場合には備えが必要である。

現在は"蜘蛛"、【死亡済み】、【死亡済み】、【死亡済み】、と行動を共にしており、最優先での対処が必要である。


総長の追記
殺害済み
すまんがあの怪物に、騎士の国で発生した、光が夜空に打ちあがった事に心当たりがないか聞いてくれないか?

検死官からの報告
ー膝の上からが無くなっている。一体何があったんだ?ー

副総長からの通達
ユーゴ殿から"蜘蛛"の詳細を聞いた総長が倒れられたので、臨時に私が職の一部を代行する。


魔物辞典

業魔、またの名を"牛鬼"
かつて東の国に存在した最強の妖魔の一体で、蜘蛛の胴体に牛の頭を持ち、一つの家ほどの巨体さを誇る。
恐るべき点はその身に宿した呪詛で、自らを殺した者に憑りつき、その者も牛鬼と化してしまう事である。
討伐することが不可能であると判断した当時の退魔士たちは、封印するしかないと判断。多大な犠牲を払いながらも牛鬼の封印に成功する。
しかし、時が経つにつれて結界が弱まり、また牛鬼の存在が風化し結界の維持も怠ってしまったため、密かに脱出に成功。再び東の国で暴れだすも、自分を封印した退魔士の子孫達がある程度勢力を維持していると分かると、人に化けて船に乗り大陸へと渡る。
まさしく最強の妖魔名を冠するに足る存在であったが、最後は存在そのものを消し飛ばされた。

ーおっと踏んづけてしまった。毒蜘蛛だったかな?ー

















よかったね凜ちゃん
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...