その男に触れるべからず ~過去にやらかし過ぎた最強男の結婚生活 反省しているので化け物呼ばわりは勘弁してください~

福郎

文字の大きさ
71 / 172
日常

二段落

しおりを挟む
ユーゴ邸 ユーゴ

よし、とりあえずこんなものか。一通り出来上がったマクシム像を見て満足する。
そろそろ夕方の買い物に行かないとな。

「あ、ルー、凜。買い物行かない?」

「あ、ご主人様!行きます!」

「はい!」

作業場から出ると、ちょうど2人と出会ったから誘う。どうも洗濯物を取り終えたらしい。
マイバックよし!必要なものを書いたメモ帳よし!では出発!



今の家は大いに気に入っているが、商店街から少し離れているのは難点だな。まあ、商店街の近辺にそんなデカい家を建てれるわけも無いが。

「よう、ユーゴ。ルーちゃんもいらっしゃい」

「こんにちは!」

どうも肉屋の旦那、相変わらず逞しい腕っすな。肉切るのが大変なのは分かるが、そこらの冒険者よりもよっぽど逞しい。駆け出しの冒険者よりも強いんじゃなかろうか?すんごい偏見だが魔物切るのも躊躇しなさそう。

「えーと、これとこれを」

「はいよルーちゃん。ところでそっちの娘さんは親戚の子かい?」

ルーの注文を聞きながら、凜に目線を向けて聞いてくる。ふふふ、聞いて驚け腰抜かせ。

「紹介しますね。昨日結婚しました、妻の凜です」

「新島凜です。この度、勇吾様と結婚いたしました。どうぞよろしくお願いします」

「はあ…これはどうもご丁寧に…」

気の抜けた返事が返ってくるが、言葉の意味を理解できていないな?野菜も取らないから脳みその回転が衰えるのだ。

「お会計お願いします!」

「あ、ああルーちゃん。ルーちゃんはユーゴの…」

「奥さんです!」

馬鹿め。助けを求めようとこの場に味方は居ないぞ。

「確かお姉ちゃんも…」

「奥さんです!」

「聖女様と、金髪の嬢ちゃんと、侍女さんは…」

「奥さんです!」

大丈夫か肉屋の旦那?やっぱ肉の食い過ぎはダメだな。

「えーっと、はいお釣り?」

「ありがとうございます!」

帰りに野菜を買って帰ろう。緑黄色野菜だ。


side凜

業魔の件でご厄介になっていた頃は、商店街の方には来なかったから、行く先々で妻と自己紹介することになったが、その度に顔がにやけそうになってしまった。
最後に八百屋に寄ることになったが、なかなか立派だ。色とりどりの野菜が売っている。

「おやまあ、エリーちゃんおめでたなのかい!?」

「はい!これからも旦那のトーマス共々よろしくお願いします!」

若い女性と八百屋の女将さんらしい人が話しているが、そうかおめでたか…。私もいつかは…。
ん?勇吾様の顔が引き攣っている。なんと珍しい。何かあったのだろうか?

「おやいらっしゃい。ルーちゃんと…親戚の子かい?」

「ユーゴさんお久しぶりです!」

「え、ええ。実は結婚しまして。名前は凜と言います」

「新島凜です。よろしくお願いします」

気のせいか、女将さんの目が細まり勇吾様を見ている気がした。

「そ、それよりも結婚しておめでたなのかい?」

「はい!雑貨屋のトーマスと結婚して赤ちゃんも授かりました!」

どうやら彼女とも知り合いらしい。しかし、彼女の方は満面の笑みを浮かべているが、勇吾様の顔は引き攣るばかりだ。何かあったのだろうか?

「そ、それはよかった。今度何かお祝いを送らせてもらうよ」

「え?いいんですか!?ありがとうございます!」

「あんたの所と言い、いい事が続くねえ」

「は、はははは」

そうだ、子供が大きくなったら父母のお墓参りに行こう。今はまだ一族が煩くするだろうからだめだ。うふふ。私と勇吾様の子供か。


sideユーゴ

なんてことだ…あの若夫婦、実は俺の事殺しに来てるんじゃなかろうか…。俺の失われた若い頃を見せつけられている。
酒場の店主と一緒に墓場に入りそうだ。いや、霊体の店主は孫の顔を見たら、墓石を押し退けて飛び起きるだろう。リュドヴィックと骸骨もびっくりなフレッシュゾンビの出来上がりだ。
お祝いは何にしようか。マクシム像のついでに安産祈願の神の像でも作って送ろうかな?白石製は恐縮されそうだから木製か。

「ただいまー」

「ただいまです!」

「只今帰りました」

「皆様お帰りなさいませ」

カタカタカタ

玄関の扉を開けるとアリーが出迎えてくれたが、足元には例の箒が震えている。サボりを黙っていたのに見つかってしまったのか…。スペシャルブートキャンプ行きだな。哀れな。

「私、少々このブラウニーとお話がありますので」

「お構いなくー」

一応、魔力という形で給金を払っているから、大人しく連行されてくれ。この箒も他のブラウニーと同様、以前よりも道具の体は色艶がいいくらいだ。

「だんな様、お帰りなさいなのじゃ」

「ただいまセラ」

台所にセラがいたが…。
んん?そのコップの中にあるのはまさか!?

「それトマトジュース?」

「うむ!アレクシアが作ってくれての!これなら大丈夫じゃ」

そう言ってチビチビとトマトジュースを飲むセラ。ちょっと違うような気がするが可愛いからよし!

「凜。ちょっと卵焼きに挑戦してみようか?」

「は、はい!喜んで!」

凜が来てから故郷の味が懐かしくなってしまった。いつの間にか米の味も忘れてパン生活だしなあ。それで凜と一緒に卵焼きを作ることにした。卵焼きくらい多分大丈夫だよな?

「それではやりましょう。味付けは…適量で」

「はい!」


side凜

「あれ?砂糖と塩ってどれくらい?」

勇吾様と一緒に卵焼きを作っているが、家族と一緒に料理をするのがこんなに幸せだなんて思いもしなかった。
母上、父上。凜はこの方と一緒に生きていきます。どうか見守っていてください。

「醤油は港の国から入って来るから持ってるけど、一体分量は…」

母上、母上の言った通りでした。幸せはどこに転がっているか分からないものです。
きっと顔を見せに行きます。


sideユーゴ

うーん。味はぎりぎり及第点!


人物事典
水草凜改め、新島凜
東の国の名門、水草家に生を受けた少女で、名前の通り凛とした美少女。しかし、父方の鬼の血のせいか、時折、傾国と表現できるような妖しい色気を出すことがある。

母は水草家の宗家の生まれであったが、人間種ではない人種の鬼の男性と結婚。凜を授かる。
しかし、父を業魔に殺害されてしまい、母は女で一つで凜を育てるも生来体が丈夫ではなく、体調の悪い時は1人寂しく暮らしていた。その上、実家の水草の一族は鬼との間に生まれた凜の事を忌避しており、肩身の狭い思いをしていた。

母が亡くなったことが切っ掛けとなり、凜を忌々しく思っていた叔父の命により、業魔討伐のために大陸に来訪。これは実際には追放と同じであった。
その際にユーゴと出会い、敵討ちの手助けをしてもらっているうちに、恩から次第に恋心へと変わっていく。

業魔討伐後はユーゴと結婚。姓も彼のものに改める。父母の墓参りをしたいと思っているが、東の国を発ってすぐに戻ると一族が煩いと判断。自分に子供が生まれ、大きくなったら顔見せも兼ねて訪れようと考えている。

ー忌避され続けた鈴の音はようやく安住の地を見つけ出した 故あって再び東の国に訪れた時も変わらず清廉な音であったが、忌避していた者達にとっては地獄の鐘の音となっていたー
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

辺境の最強魔導師   ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~

日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。 アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。 その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。

処理中です...