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触れてはいけない男
地響き
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地下深くに集結する鱗のある者達、リザードマン。
「皆の者!もうすぐだ!もうすぐ偉大な竜が目を覚まされる!」
祭壇の前で大声を上げる竜司祭。
彼らリザードマンはかつて地上で生活していたが、竜を信奉していたため神々と竜の戦争が終わった当時にエルフ達と敵対。エルフに敗北後地上から姿を消し、絶滅したかに思われていた。しかし、生き残った集団が複数あり、その一つが今熱狂を上げていた。
「確かに祖先はあの腐った木に敗れた!しかし、それは過去の事になる!偉大なる竜が目覚めたら、戦争時の目標、すなわち腐った木共の生みの親である世界樹を目指すだろう!」
竜とある程度の交信が可能であるリザードマンは、この地に眠る竜の僅かな思念を感じ取っていた。
それは
目標、神々の最終拠点であるエルフの森の世界樹。
という単純な思念である。
偶然竜を発見したリザードマンの祖先たちは、打倒エルフを掲げ献身的に竜へ魔力を注ぎ込み続けた。会話をすることは出来なかったが、エルフに敗れた彼等にとってこの地に眠る竜は希望であったのだ。
そしてついにその日を迎えようとしていた。
騎士の国と魔法の国を壊滅に追いやった蛇、"バジリスク"の魔力に当てられた竜が、当初のリザードマンの予想よりも早く目覚めようとしていたのだ。
「おお!動いたぞ!」
祭壇奥から地響きが起きる。竜が目覚め始め、ほんの少し動いただけで周りの岩盤を巻き込みながら地震を起こす。
「皆の者、武器を取れ!腐った木に復讐し、人種共から地上を取り戻すのだ!」
次々と武器を取り叫び声を上げるリザードマン達。かつてエルフに敗れたとはいえ、太古から受け継がれてきた鱗は、並の武器を通さず魔法を防ぐ。そんな者達がかつて神々を追い詰めた竜と共に戦おうとしていた。
だが
オオオオオオオオオおおおおおおおooooo!!!!!
「竜よお待ちください!まだ我々が!」
「ぎゃあ!?」 「揺れがどんどん!?」 「落石に押しつぶされたぞ!」
当初リザードマンの竜に対する信仰は、強さに対した憧れに端を発しており、加護や庇護を得られていたわけでは無いのだ。それが数百年の間に誤って伝わり、リザードマンを守護する神となってしまっていた。
そして当の竜達は、我々こそが至高であると神々に対して戦争を仕掛けた者達なのだ。自分の目覚めを待っていたとか、長年魔力を捧げてきたとかそんな物は関係ないのだ。敵と定めた神々以外、他は全て餌か小石程度でしかない。
リザードマンを押しつぶしながら、ゆっくりと地表を目指す竜。
体が地表に出て日の光を浴びる。かつて竜が眠りについた山地の中であった。
巨大であった。まるで一つの街が動き出したかのような巨体。4足で足はそれほど長くなくまるで亀の様な体つきであったが、その顔はまさに竜であり、かつて破壊しそこなった世界樹が存在する森を憎々しげに睨みながら、ゆっくりとその足を一歩踏み出…
ヒュボッ!
「今忙しいんだよ!寝てろ!」
音の壁を超える拳が竜の下から頭部に叩き込まれる。その威力は生物が耐えられるものでは無かった。
しかし。
ガッ!
「硬えな!?」
かつて神々ですら対処することを諦め放置した、ただ動くだけの竜、"大陸竜"クイ。
クイは頭部に生じた衝撃をものともせずにその一歩を踏み出した。
◆
少し前 リガの街 ユーゴ
「婆さん助けて!」
娘が反抗期なの!
「坊や…まだ産まれてないだろう」
そうだった。
「いや、正夢の日に娘が俺を捨てて結婚するって」
「はん?坊やが正夢の日に夢?」
不思議そうな顔をする婆さん。俺も不思議だ。運命とか予言とかは俺には関係ないはずなのに。
「さんざん結婚に反対して鬱陶しがられてんだよ」
「ぐっ!?」
だが世の男親とはそういうもののはずだ!
「んなこたあ無い」
嘘だ!娘が欲しかったら、俺を殴り倒して行けと言うのが伝統のはず!
「そんなんだからコレットは事後報告なんだよ」
「がはっ!?」
そんな…。
「まあ真面目な話をすると、その夢で変なことはなかったかい?」
変?そういやあ…。
「知り合いの酒場の親父が、墓穴から俺の足を掴んでた」
夢にまで出てきやがって、道連れが欲しかったのだろう。そうに違いない。
「なんでそんなことになってるんだい…」
俺が聞きたい。
「まあいいよ。それで、それが正夢になると思うかい?」
いやあ、それは無いでしょう。
「だろう?ああ、坊や。夢で喋ったかい?」
うん?そういやあ…。
「いや、喋ってない」
「それで意思疎通は?」
「出来てた」
不思議な話だ。
うん?何か引っかかるような。
「夢の時、隣にリリアーナとジネットは居て、2人とも夢を見たんだね?」
「うん」
いたいた。そんでもって子供の名前も一致してた。
それにしてもすんげえ引っ掛かるがまあいい。今は夢の事だ。
「なるほどね。多分2人が見た方は正夢に近いだろう。坊やの子供だが、自分の子でもある。母親なんだ」
なるほど。で俺は?
と言うか妙に俺がダメ親父みたいに聞こえたような。
「心配せんでもその兆候はある。話を戻すけど2人との繋がりが強いんだろうね。理由は詳しく分からんが、どういう子供かまではお互い共有したんだろう」
「ふむふむ」
「そんでもって、坊やはそこからイメージを飛躍させた。子供はいずれ結婚して巣立つってね」
そういうものだろう。寂しいが。
「そう考えれてどうしてコレットの事は…」
ええい!話の続きを!
「もう答えは言ったようなもんだろう。ほとんど坊やの妄想だよ。どうしてそんなイメージがこびり付いてるかねえ」
「間違いない!?」
「今のままじゃ本当になるかもね」
「ぐえ!?」
故郷のドラマとかが悪いんだ!俺にそういうイメージを植え付けている!そっからドロドロするんだ!
ガキの頃に見たが、もうそんなのは廃れているはず!
「大体、坊や単身じゃ死神にだって予言を外させただろうに。まあ、普通の人種じゃ正夢になるが、今さら坊やが正夢の日を信じるとはね」
「まあ…。でも子供の名前が一致してたから…」
あれは傑作だった。お前は今すぐ死ぬ運命だ。とか言ったすまし顔にパンチを叩き込んだら、ビビりまくってたからな。
「そんで酒場の店主と一緒に墓穴で仲良く暮らすと」
うるせえ!
絶対嫌だからな!
「ともかく、坊やの方の夢は当てにならんから、リリアーナとジネットが悪夢を見たら心配しな。坊やならなんとか出来るよ」
お父さん頑張ります。ええ、それはもう。
「穴を増やすんじゃないよ」
「ぐう!?」
大陸にいくつあるかなあ…。
はん?これは…。
「増えるかもねえ」
「そうかも」
婆さんも気が付いたか。
これはこの前のアオダイショウよりよっぽどだぞ。
騎士の国だと思うが、ここまで感じさせるか…。
「遅くなりそうだったら私の方で家に連絡しておくよ」
お願い婆さん。
しかし、騎士の国は厄年だな。好都合だが、転移阻害に回す予算がない様だし。国王が祈りの国に行って八十八ヵ所巡りでも行った方がいいんじゃないか?そんなにあるか知らんけど。
さて、本格的にベビー用品を見繕ってて忙しいんだ。とっとと片付けよう。
地下深くに集結する鱗のある者達、リザードマン。
「皆の者!もうすぐだ!もうすぐ偉大な竜が目を覚まされる!」
祭壇の前で大声を上げる竜司祭。
彼らリザードマンはかつて地上で生活していたが、竜を信奉していたため神々と竜の戦争が終わった当時にエルフ達と敵対。エルフに敗北後地上から姿を消し、絶滅したかに思われていた。しかし、生き残った集団が複数あり、その一つが今熱狂を上げていた。
「確かに祖先はあの腐った木に敗れた!しかし、それは過去の事になる!偉大なる竜が目覚めたら、戦争時の目標、すなわち腐った木共の生みの親である世界樹を目指すだろう!」
竜とある程度の交信が可能であるリザードマンは、この地に眠る竜の僅かな思念を感じ取っていた。
それは
目標、神々の最終拠点であるエルフの森の世界樹。
という単純な思念である。
偶然竜を発見したリザードマンの祖先たちは、打倒エルフを掲げ献身的に竜へ魔力を注ぎ込み続けた。会話をすることは出来なかったが、エルフに敗れた彼等にとってこの地に眠る竜は希望であったのだ。
そしてついにその日を迎えようとしていた。
騎士の国と魔法の国を壊滅に追いやった蛇、"バジリスク"の魔力に当てられた竜が、当初のリザードマンの予想よりも早く目覚めようとしていたのだ。
「おお!動いたぞ!」
祭壇奥から地響きが起きる。竜が目覚め始め、ほんの少し動いただけで周りの岩盤を巻き込みながら地震を起こす。
「皆の者、武器を取れ!腐った木に復讐し、人種共から地上を取り戻すのだ!」
次々と武器を取り叫び声を上げるリザードマン達。かつてエルフに敗れたとはいえ、太古から受け継がれてきた鱗は、並の武器を通さず魔法を防ぐ。そんな者達がかつて神々を追い詰めた竜と共に戦おうとしていた。
だが
オオオオオオオオオおおおおおおおooooo!!!!!
「竜よお待ちください!まだ我々が!」
「ぎゃあ!?」 「揺れがどんどん!?」 「落石に押しつぶされたぞ!」
当初リザードマンの竜に対する信仰は、強さに対した憧れに端を発しており、加護や庇護を得られていたわけでは無いのだ。それが数百年の間に誤って伝わり、リザードマンを守護する神となってしまっていた。
そして当の竜達は、我々こそが至高であると神々に対して戦争を仕掛けた者達なのだ。自分の目覚めを待っていたとか、長年魔力を捧げてきたとかそんな物は関係ないのだ。敵と定めた神々以外、他は全て餌か小石程度でしかない。
リザードマンを押しつぶしながら、ゆっくりと地表を目指す竜。
体が地表に出て日の光を浴びる。かつて竜が眠りについた山地の中であった。
巨大であった。まるで一つの街が動き出したかのような巨体。4足で足はそれほど長くなくまるで亀の様な体つきであったが、その顔はまさに竜であり、かつて破壊しそこなった世界樹が存在する森を憎々しげに睨みながら、ゆっくりとその足を一歩踏み出…
ヒュボッ!
「今忙しいんだよ!寝てろ!」
音の壁を超える拳が竜の下から頭部に叩き込まれる。その威力は生物が耐えられるものでは無かった。
しかし。
ガッ!
「硬えな!?」
かつて神々ですら対処することを諦め放置した、ただ動くだけの竜、"大陸竜"クイ。
クイは頭部に生じた衝撃をものともせずにその一歩を踏み出した。
◆
少し前 リガの街 ユーゴ
「婆さん助けて!」
娘が反抗期なの!
「坊や…まだ産まれてないだろう」
そうだった。
「いや、正夢の日に娘が俺を捨てて結婚するって」
「はん?坊やが正夢の日に夢?」
不思議そうな顔をする婆さん。俺も不思議だ。運命とか予言とかは俺には関係ないはずなのに。
「さんざん結婚に反対して鬱陶しがられてんだよ」
「ぐっ!?」
だが世の男親とはそういうもののはずだ!
「んなこたあ無い」
嘘だ!娘が欲しかったら、俺を殴り倒して行けと言うのが伝統のはず!
「そんなんだからコレットは事後報告なんだよ」
「がはっ!?」
そんな…。
「まあ真面目な話をすると、その夢で変なことはなかったかい?」
変?そういやあ…。
「知り合いの酒場の親父が、墓穴から俺の足を掴んでた」
夢にまで出てきやがって、道連れが欲しかったのだろう。そうに違いない。
「なんでそんなことになってるんだい…」
俺が聞きたい。
「まあいいよ。それで、それが正夢になると思うかい?」
いやあ、それは無いでしょう。
「だろう?ああ、坊や。夢で喋ったかい?」
うん?そういやあ…。
「いや、喋ってない」
「それで意思疎通は?」
「出来てた」
不思議な話だ。
うん?何か引っかかるような。
「夢の時、隣にリリアーナとジネットは居て、2人とも夢を見たんだね?」
「うん」
いたいた。そんでもって子供の名前も一致してた。
それにしてもすんげえ引っ掛かるがまあいい。今は夢の事だ。
「なるほどね。多分2人が見た方は正夢に近いだろう。坊やの子供だが、自分の子でもある。母親なんだ」
なるほど。で俺は?
と言うか妙に俺がダメ親父みたいに聞こえたような。
「心配せんでもその兆候はある。話を戻すけど2人との繋がりが強いんだろうね。理由は詳しく分からんが、どういう子供かまではお互い共有したんだろう」
「ふむふむ」
「そんでもって、坊やはそこからイメージを飛躍させた。子供はいずれ結婚して巣立つってね」
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ガキの頃に見たが、もうそんなのは廃れているはず!
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しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
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