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日常編
最強対最強 おやぢのにちじょう
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(なんだ?街中をこの速度で?)
ユーゴは自分の索敵網に引っかかった存在を感知していたが、どうも変な存在だった。
街中をとてつもない速度で縦横無尽に移動しているが、何か被害が発生している感じでは無かったのだ。しかも動きに全く規則性が見えず、常に一直線でしか動いていなかった。
(光の精霊か?だが街中の人に慌てた様子が無い)
光の精霊ならこの速度と直線でしか動いていない説明がつくが、この精霊はかなり眩しく目立つ存在であった。だが感知している人の動きに特に騒いでいる様子は無い。
(見て来るか)
自分の感知内でこうも動き回られる事に鬱陶さを感じたため、ユーゴは様子を見に行くことを決めた。
「コレットー。パパ少しお仕事行ってくるからねー」
「あなた?」
「個人的なお客さんじゃなさそうだけどどうも変でね」
急に抱いていたコレットを渡されたジネットが、困惑したような声を出す。ユーゴが抱っこされて笑っている娘を手放す事などそうそう無かった。
「お気を付けて」
「うん。子供達をお願い」
(ポチ、タマ。家の事をお願い)
⦅はい!⦆
⦅了解⦆
念のためポチとタマに連絡を取ったユーゴは、未だ動き続ける謎の正体を突き止めるため外へと出かけた。
◆
(いたはいたが、なんじゃありゃ)
住宅街に移動していた謎の存在を見つけたユーゴであったが、ユーゴの目は鏡の様な物体があちこちに動き回っているのを捉えていた。
(ははあ。光が反射する物を介して移動しているのか)
見ると鏡は金属や水溜まりなど、光の反射を介して移動していた。
(どうするかね。敵意は無いが。お、目が合った)
鏡に映った自分と目が合った瞬間である。
ユーゴの姿は住宅街から消えてしまった。
◆
(連れ去られたな)
ユーゴが辺りを見渡すと、そこは上下前後左右全てが鏡となっている広い空間であり、そんな空間の真ん中で彼は立っていた。
(よく分からんな。転移で帰るか?お?)
不思議な空間であったが、突如前の鏡に映っていたユーゴが勝手に動き出し、鏡から出て来るように現れる。
「死ね」
「そいつは勘弁」
(俺にしては遅すぎるぞ)
鏡から現れたユーゴはそう言うなり殴りかかって来るが、その速さは本人からすれば、まさに虫も止まる様な遅さであった。
「そら。はん?」
偽物を殴り奥の鏡を割ると、今度は他の鏡からも次々と偽のユーゴが現れ、これまたユーゴに襲い掛かって来る。しかも一つの鏡から何人もだ。
「死ね」 「死ね」 「死ね」 「死ね」
「うるせえ!それと真似るならもっとマシなの出せよ!」
殴る殴る殴る
出来の悪い模造品達を、次々と不良品としながら鏡ごと叩き潰していく。しかし、その割れた破片からも次々と劣化品は生産され続け、ユーゴに襲い掛かり続ける。
「鬱陶しいわ!」
単なる物理手段では埒が明かないと見たユーゴは、己の密度を高めて劣化品ごと鏡に拳を打ち付ける。すると鏡はその圧倒的な重さに負け、割れるのではなく存在ごと押し潰され消失する。
いよいよ自分の死を感じたのか、鏡は狂ったように大量の廃品を作り出すもどうしようもない。
消失した鏡の一面を見て効果ありと判断したユーゴは、全ての鏡を叩き割り、後に残った己と全く違うゴミを処理して自分の世界に帰還を果たした。
◆
「坊や、妙なのとやりあってただろ」
「ああ。やっぱり分かった?」
外に出たついでとばかり、ドロテアの薬屋で子供達の汗疹用の塗り薬を買いに来たユーゴは、ドロテアに会うなりそう言われる。
「転移とは違う変な消え方をしたからね」
「飛び回る鏡に連れ去られたら、俺がいっぱい出て来て襲われた」
「フェッフェッ。この世の終わりだね。おお怖い怖い」
「うるせえぞ婆。あんたが2人に増えた時に俺もそう思ったよ」
お互いそう言いあうが、知る人がこの会話を聞けばどちらも嫌だと答えるだろう。
「私のはちゃんとした魔法だよ。それでその様子を見るに、似ても似つかない劣化品だったかね?」
「パパ力が足りんね。あの脆さを見るに」
「はいはい。これが塗り薬だよ。早く帰って安心させてあげな」
どうでもいい自慢話を聞かされそうだと判断したドロテアは、注文された塗り薬を渡してさっさと追い出そうとする。
「そうだった!婆さんありがとな!まっててね妻達子供達!今帰るよ!」
「毎度あり。全く、落ち着いたと思ったら、別の意味で酷くなってるねありゃ」
殆ど消え去る様に帰っていったユーゴを見ながら、ドロテアは苦笑しながら首を振るのであった。
何の脈絡も無く、自然現象の様な精霊に突然別世界に連れ去られようが、襲われようが、それもまたユーゴにとっての日常であった。
◆
精霊辞典
"鏡合わせ"
突然変異した水の精霊で鏡の様な姿をしていた。
光に反射する物を介してまさに光速で移動しており、その姿を捉えることはほぼ不可能。しかし、何らかの原因で鏡に映った自分の姿を見てしまった場合、"鏡合わせ"は己を認識されて危機が迫っていると判断し、その相手を鏡面世界に連れ去る。
その後連れ去った鏡面世界で、相手と同じ姿、能力、強さを再現したコピーを生成して対処する。通常は一体だけの生成で片が付くが、必要とあらば複数体生成し数で押す事が出来る。
しかし、"怪物"をコピーするのには全く能力が足りず、最後は鏡面世界ごと消滅した。
ー最強対最強の言葉遊びが成立するはずが無いだろう!強さのコピー?数で押す?誰もがどうしようもないから"最も強い"のだ!-
ユーゴは自分の索敵網に引っかかった存在を感知していたが、どうも変な存在だった。
街中をとてつもない速度で縦横無尽に移動しているが、何か被害が発生している感じでは無かったのだ。しかも動きに全く規則性が見えず、常に一直線でしか動いていなかった。
(光の精霊か?だが街中の人に慌てた様子が無い)
光の精霊ならこの速度と直線でしか動いていない説明がつくが、この精霊はかなり眩しく目立つ存在であった。だが感知している人の動きに特に騒いでいる様子は無い。
(見て来るか)
自分の感知内でこうも動き回られる事に鬱陶さを感じたため、ユーゴは様子を見に行くことを決めた。
「コレットー。パパ少しお仕事行ってくるからねー」
「あなた?」
「個人的なお客さんじゃなさそうだけどどうも変でね」
急に抱いていたコレットを渡されたジネットが、困惑したような声を出す。ユーゴが抱っこされて笑っている娘を手放す事などそうそう無かった。
「お気を付けて」
「うん。子供達をお願い」
(ポチ、タマ。家の事をお願い)
⦅はい!⦆
⦅了解⦆
念のためポチとタマに連絡を取ったユーゴは、未だ動き続ける謎の正体を突き止めるため外へと出かけた。
◆
(いたはいたが、なんじゃありゃ)
住宅街に移動していた謎の存在を見つけたユーゴであったが、ユーゴの目は鏡の様な物体があちこちに動き回っているのを捉えていた。
(ははあ。光が反射する物を介して移動しているのか)
見ると鏡は金属や水溜まりなど、光の反射を介して移動していた。
(どうするかね。敵意は無いが。お、目が合った)
鏡に映った自分と目が合った瞬間である。
ユーゴの姿は住宅街から消えてしまった。
◆
(連れ去られたな)
ユーゴが辺りを見渡すと、そこは上下前後左右全てが鏡となっている広い空間であり、そんな空間の真ん中で彼は立っていた。
(よく分からんな。転移で帰るか?お?)
不思議な空間であったが、突如前の鏡に映っていたユーゴが勝手に動き出し、鏡から出て来るように現れる。
「死ね」
「そいつは勘弁」
(俺にしては遅すぎるぞ)
鏡から現れたユーゴはそう言うなり殴りかかって来るが、その速さは本人からすれば、まさに虫も止まる様な遅さであった。
「そら。はん?」
偽物を殴り奥の鏡を割ると、今度は他の鏡からも次々と偽のユーゴが現れ、これまたユーゴに襲い掛かって来る。しかも一つの鏡から何人もだ。
「死ね」 「死ね」 「死ね」 「死ね」
「うるせえ!それと真似るならもっとマシなの出せよ!」
殴る殴る殴る
出来の悪い模造品達を、次々と不良品としながら鏡ごと叩き潰していく。しかし、その割れた破片からも次々と劣化品は生産され続け、ユーゴに襲い掛かり続ける。
「鬱陶しいわ!」
単なる物理手段では埒が明かないと見たユーゴは、己の密度を高めて劣化品ごと鏡に拳を打ち付ける。すると鏡はその圧倒的な重さに負け、割れるのではなく存在ごと押し潰され消失する。
いよいよ自分の死を感じたのか、鏡は狂ったように大量の廃品を作り出すもどうしようもない。
消失した鏡の一面を見て効果ありと判断したユーゴは、全ての鏡を叩き割り、後に残った己と全く違うゴミを処理して自分の世界に帰還を果たした。
◆
「坊や、妙なのとやりあってただろ」
「ああ。やっぱり分かった?」
外に出たついでとばかり、ドロテアの薬屋で子供達の汗疹用の塗り薬を買いに来たユーゴは、ドロテアに会うなりそう言われる。
「転移とは違う変な消え方をしたからね」
「飛び回る鏡に連れ去られたら、俺がいっぱい出て来て襲われた」
「フェッフェッ。この世の終わりだね。おお怖い怖い」
「うるせえぞ婆。あんたが2人に増えた時に俺もそう思ったよ」
お互いそう言いあうが、知る人がこの会話を聞けばどちらも嫌だと答えるだろう。
「私のはちゃんとした魔法だよ。それでその様子を見るに、似ても似つかない劣化品だったかね?」
「パパ力が足りんね。あの脆さを見るに」
「はいはい。これが塗り薬だよ。早く帰って安心させてあげな」
どうでもいい自慢話を聞かされそうだと判断したドロテアは、注文された塗り薬を渡してさっさと追い出そうとする。
「そうだった!婆さんありがとな!まっててね妻達子供達!今帰るよ!」
「毎度あり。全く、落ち着いたと思ったら、別の意味で酷くなってるねありゃ」
殆ど消え去る様に帰っていったユーゴを見ながら、ドロテアは苦笑しながら首を振るのであった。
何の脈絡も無く、自然現象の様な精霊に突然別世界に連れ去られようが、襲われようが、それもまたユーゴにとっての日常であった。
◆
精霊辞典
"鏡合わせ"
突然変異した水の精霊で鏡の様な姿をしていた。
光に反射する物を介してまさに光速で移動しており、その姿を捉えることはほぼ不可能。しかし、何らかの原因で鏡に映った自分の姿を見てしまった場合、"鏡合わせ"は己を認識されて危機が迫っていると判断し、その相手を鏡面世界に連れ去る。
その後連れ去った鏡面世界で、相手と同じ姿、能力、強さを再現したコピーを生成して対処する。通常は一体だけの生成で片が付くが、必要とあらば複数体生成し数で押す事が出来る。
しかし、"怪物"をコピーするのには全く能力が足りず、最後は鏡面世界ごと消滅した。
ー最強対最強の言葉遊びが成立するはずが無いだろう!強さのコピー?数で押す?誰もがどうしようもないから"最も強い"のだ!-
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そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
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