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ちょっとしたサプライズ
侍女は聞いた
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未来の坊ちゃまとお嬢様が帰られて早数日、昨夜はソフィアお嬢様がドロテア様と共にお母様に会いに行き、屋敷を留守にしていたため、久方ぶりに夜の営みがあった。あったのだが……。
「今日から凜ちゃんの事、むっつ凜ちゃんって呼びますね」
「なんだとルー!? どういう意味だ!?」
「自分の胸に手を当てたら、答えは自ずと分かるはずなのです」
「うぐっ!?」
最初に目を覚ました私が、身を清め終わって朝食の準備をしていると、浴室へ向かうルー様とリン様の声が聞こえてきた。
そう。他でもないむっつ、じゃなかった、リン様の……。いや、これ以上は止めておこう。リン様の名誉に関わる。ですがご安心くださいリン様。例え10つ子でも、お子様はこのアレクシアが立派に育てて見せますので。
◆
しかし、ソフィアお嬢様とそのお母様の会う頻度が最近多いという事は、それだけ小大陸での仕事に余裕が出来始めたという事で、ソフィアお嬢様との別れが近づいてきているのだろう。ご家族の下へ帰れるのは祝福すべきなのだが……。
「ママ!」
「ママ!ママ!」
キッチンで考え事をしながら食材の在庫を確認していると、足元で自分を呼ぶ坊ちゃまとお嬢様の声で我に返る。いけない。全く気が付かなかった。しかし、ソフィア様とのお別れの時の坊ちゃま達のことを思うと……。
「どうされました?」
「あのねあのね」
「えっへ。だいすき!」
「だいすき!」
「クリス坊ちゃま!? コレットお嬢様!?」
しゃがんで坊ちゃま達に視線を合わせて何事か伺うと、その可愛らしいお口から飛び出した言葉に、雷を受けたような衝撃が全身を走り抜ける。
「坊ちゃま……お嬢様……ぐすっ」
恐らく未来のコレットお嬢様の別れの言葉を真似されているのだろうが、感極まって思わずしゃがんだままお坊ちゃま達を抱きしめてしまった。
「ママ?」
いけない。どうやら不安にさせてしまったようだ。坊ちゃま達が私の顔を覗き込んで呼びかけて来る。
「嬉しくて嬉しくて……ありがとうございます」
「えへへ!」
「えっへ!」
意識しないと動かない表情筋を全力で動かして笑顔を作ると、坊ちゃま達も同じく笑顔になられた。
「よかったねアリー」
「ユーゴ様!?」
「パパ!」
「パパ!」
少しの間坊ちゃま達を抱きしめたままでいると、キッチンの扉から顔だけを出しているユーゴ様に声を掛けられた。普段屋敷の中では気配を消していない、ユーゴ様に気が付かない程感激していたらしい。恥ずかしくて、ほんのり頬が赤くなるのが自分でもわかった。
「はい、コレット、クリス。パパはもう準備万端です」
「パパ?」
そのままユーゴ様はキッチンの中へ入ると、両手を大きく広げて、まるで何かを待っているような仕草をされるが、坊ちゃま達もよく分からないと首を傾げていた。
「パパの事大好きって言って欲しいなー。うっかり心臓止まっちゃうかもしれないけど、大丈夫ってことは実証済みだから、いつでも言っていいよ!」
なるほど。坊ちゃま達が、私に大好きと仰られたから、次は御自分の番だと主張されているようだった。
「だいすき?」
「だいすきー」
「ぐはっ!? へへっ……。へっへっへっ……。パパも大好きだよおおおおおおおお!そおれ大回転ーーーー!」
「えへへ!」
「えっへえっへ!」
坊ちゃま達に大好きといわれたユーゴ様は、体をぐらりと崩してしまったが、すぐさま体勢を立て直すと、坊ちゃま達を抱き上げてその場でぐるぐると回転し始め、坊ちゃま達も大喜びで笑い声をあげられている。
以前ユーゴ様は、回転して喜ばない子供は居ないと力説されていたが、坊ちゃま達もその例に洩れないらしい。
「もちろんアリーも大好き!」
「きゃあ!?」
微笑ましくユーゴ様達を見ていると、坊ちゃま達を降ろしたユーゴ様が私を抱き上げて、同じように回転されてしまった。完全に不意を突かれて悲鳴を上げてしまったが、ユーゴ様は笑顔で私を見ており、胸がときめいてしまった。
「パパ!もっと!」
「もっと!」
「よーしパパと遊ぼうねー!」
まだまだ足りないとばかりに、坊ちゃま達がユーゴ様の足に抱き着くと、ユーゴ様は坊ちゃま達を抱き上げて、スキップをしながらキッチンを出て行かれてしまった。
「ふんふん。およ?アレクシアどうしたんじゃ?顔が真っ赤じゃが」
「……いえ。何でもありません」
……ただ、胸板が逞しかったです。
◆
「だいすき!」
「だいすきー!」
恐らく大好きという意味自体はまだよく分かっていない坊ちゃま達だが、こういうと皆が喜んでくれて遊んでくれると思われたようで、屋敷の皆様にそう言われていた。
「コレット、クリス……。私も、ママも大好きよ」
「あはは!ルーも大好きですよ!さあさあ、ルーお姉ちゃんと遊びましょうね!」
「まあまあ。まあまあまあまあ。うふふ。うふふ。クリス、コレットちゃん。ママも大好きよ」
「ぬおおお!? アレクシア!聞いたかの!? わしのこと大好きって!」
「少し待っててくれ。凜お姉ちゃんが、お菓子とジュースを買ってくるから」
「わん!」
(ボクもボクも!撫でて撫でて!)
「にゃあ」
(私も)
「ただいまー!わあ!クリスくん、コレットちゃん!私も大好きだよ!」
「フェッフェッフェッ。フェッフェッフェッ」
坊ちゃま達が大好きという度に、お屋敷の中に喜びと笑い声が溢れる。
私はこのご家族に仕える事が出来て本当に果報者だ。
「今日から凜ちゃんの事、むっつ凜ちゃんって呼びますね」
「なんだとルー!? どういう意味だ!?」
「自分の胸に手を当てたら、答えは自ずと分かるはずなのです」
「うぐっ!?」
最初に目を覚ました私が、身を清め終わって朝食の準備をしていると、浴室へ向かうルー様とリン様の声が聞こえてきた。
そう。他でもないむっつ、じゃなかった、リン様の……。いや、これ以上は止めておこう。リン様の名誉に関わる。ですがご安心くださいリン様。例え10つ子でも、お子様はこのアレクシアが立派に育てて見せますので。
◆
しかし、ソフィアお嬢様とそのお母様の会う頻度が最近多いという事は、それだけ小大陸での仕事に余裕が出来始めたという事で、ソフィアお嬢様との別れが近づいてきているのだろう。ご家族の下へ帰れるのは祝福すべきなのだが……。
「ママ!」
「ママ!ママ!」
キッチンで考え事をしながら食材の在庫を確認していると、足元で自分を呼ぶ坊ちゃまとお嬢様の声で我に返る。いけない。全く気が付かなかった。しかし、ソフィア様とのお別れの時の坊ちゃま達のことを思うと……。
「どうされました?」
「あのねあのね」
「えっへ。だいすき!」
「だいすき!」
「クリス坊ちゃま!? コレットお嬢様!?」
しゃがんで坊ちゃま達に視線を合わせて何事か伺うと、その可愛らしいお口から飛び出した言葉に、雷を受けたような衝撃が全身を走り抜ける。
「坊ちゃま……お嬢様……ぐすっ」
恐らく未来のコレットお嬢様の別れの言葉を真似されているのだろうが、感極まって思わずしゃがんだままお坊ちゃま達を抱きしめてしまった。
「ママ?」
いけない。どうやら不安にさせてしまったようだ。坊ちゃま達が私の顔を覗き込んで呼びかけて来る。
「嬉しくて嬉しくて……ありがとうございます」
「えへへ!」
「えっへ!」
意識しないと動かない表情筋を全力で動かして笑顔を作ると、坊ちゃま達も同じく笑顔になられた。
「よかったねアリー」
「ユーゴ様!?」
「パパ!」
「パパ!」
少しの間坊ちゃま達を抱きしめたままでいると、キッチンの扉から顔だけを出しているユーゴ様に声を掛けられた。普段屋敷の中では気配を消していない、ユーゴ様に気が付かない程感激していたらしい。恥ずかしくて、ほんのり頬が赤くなるのが自分でもわかった。
「はい、コレット、クリス。パパはもう準備万端です」
「パパ?」
そのままユーゴ様はキッチンの中へ入ると、両手を大きく広げて、まるで何かを待っているような仕草をされるが、坊ちゃま達もよく分からないと首を傾げていた。
「パパの事大好きって言って欲しいなー。うっかり心臓止まっちゃうかもしれないけど、大丈夫ってことは実証済みだから、いつでも言っていいよ!」
なるほど。坊ちゃま達が、私に大好きと仰られたから、次は御自分の番だと主張されているようだった。
「だいすき?」
「だいすきー」
「ぐはっ!? へへっ……。へっへっへっ……。パパも大好きだよおおおおおおおお!そおれ大回転ーーーー!」
「えへへ!」
「えっへえっへ!」
坊ちゃま達に大好きといわれたユーゴ様は、体をぐらりと崩してしまったが、すぐさま体勢を立て直すと、坊ちゃま達を抱き上げてその場でぐるぐると回転し始め、坊ちゃま達も大喜びで笑い声をあげられている。
以前ユーゴ様は、回転して喜ばない子供は居ないと力説されていたが、坊ちゃま達もその例に洩れないらしい。
「もちろんアリーも大好き!」
「きゃあ!?」
微笑ましくユーゴ様達を見ていると、坊ちゃま達を降ろしたユーゴ様が私を抱き上げて、同じように回転されてしまった。完全に不意を突かれて悲鳴を上げてしまったが、ユーゴ様は笑顔で私を見ており、胸がときめいてしまった。
「パパ!もっと!」
「もっと!」
「よーしパパと遊ぼうねー!」
まだまだ足りないとばかりに、坊ちゃま達がユーゴ様の足に抱き着くと、ユーゴ様は坊ちゃま達を抱き上げて、スキップをしながらキッチンを出て行かれてしまった。
「ふんふん。およ?アレクシアどうしたんじゃ?顔が真っ赤じゃが」
「……いえ。何でもありません」
……ただ、胸板が逞しかったです。
◆
「だいすき!」
「だいすきー!」
恐らく大好きという意味自体はまだよく分かっていない坊ちゃま達だが、こういうと皆が喜んでくれて遊んでくれると思われたようで、屋敷の皆様にそう言われていた。
「コレット、クリス……。私も、ママも大好きよ」
「あはは!ルーも大好きですよ!さあさあ、ルーお姉ちゃんと遊びましょうね!」
「まあまあ。まあまあまあまあ。うふふ。うふふ。クリス、コレットちゃん。ママも大好きよ」
「ぬおおお!? アレクシア!聞いたかの!? わしのこと大好きって!」
「少し待っててくれ。凜お姉ちゃんが、お菓子とジュースを買ってくるから」
「わん!」
(ボクもボクも!撫でて撫でて!)
「にゃあ」
(私も)
「ただいまー!わあ!クリスくん、コレットちゃん!私も大好きだよ!」
「フェッフェッフェッ。フェッフェッフェッ」
坊ちゃま達が大好きという度に、お屋敷の中に喜びと笑い声が溢れる。
私はこのご家族に仕える事が出来て本当に果報者だ。
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