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「「お疲れぇ!」」
店内の騒音に負けない大声で乾杯とさけびながら、景気よくビールのジョッキをガルドとぶつけ合う。
四人掛けのテーブルには、肉の串焼き、フリッターの甘酢餡かけ、もつ煮、根野菜の煮付け等々、所狭しと料理が並んでいる。
ここ、木漏れ日の安楽亭は安い、旨い、ボリューミーと三拍子揃っていて、俺たちみたいな冒険者に人気の酒場だ。
今日はここで、一ヶ月にも及ぶダンジョン探索の打ち上げをしていた。うちのパーティーメンバーは斧使いのガルドと、俺の従魔である羽毛玉のピコのみ。
ガルドはとにかく見た目に違わぬ大食漢で、肉の串焼きを頬張り続けている。
ピコは黒に近い濃紺の体毛を震わせながら、静かにミルワームとナッツの甘辛炒めを食べていた。
「おぉーい、お代わりをくれ!」
「あいよ!」
小気味の良い返事と共に、片手でジョッキを二つ持ってきた来たのは、女給のマリッサだ。彼女はここのオーナーシェフの娘だ。確か、俺の3歳下って言っていたので、22歳だったはず。肉感的な肢体は、妙齢の女性特有の色気を醸し出している。
「二杯で600クリードだったな」
「毎度あり!」
ここはよく酔い潰れて記憶を無くす客がいたとかで、その都度払いの精算システムになっている。俺は財布から千クリード紙幣を取り出すと、マリッサに手渡した。
「千クリードだね。えーと、お釣りお釣り………」
「あぁ釣りは良いよ。息子に菓子でも買ってあげな」
お釣りを取り出そうと、エプロンのポケットを探るのを手で制す。
「おや、どうしたんだい?今日はえらく気前が良いね。珍しい事もあるもんだ」
「人をケチみたいに言うなよ。なに、今回の探索は当たりだったんだ。な、ガルド」
「おぉ、そうだ。なんとコモンスキルの宝珠が三つも出たんだぞ」
本来なら鍛練を重ねて習得するスキル。それを簡単に習得出来る宝珠は、冒険者にとって垂涎の的だ。
よく発見されるコモンスキルでさえ、一つ10万クリードは下らない。
その他、魔石や毛皮等の魔物素材の売却益を足すと、今回のダンジョン探索は大幅に黒字だ。気も大きくなろうってもんだ。
「そうかい、それは良かったね。そんじゃ遠慮なくもらっておくよ」
「そうしな」
軽くウィンクしながら厨房へと去っていくマリッサを見送って、俺も食事を再開する。
箸で摘まんだのはフリッターの甘酢餡かけだ。これはダンジョンの浅層にいる迷宮鯰を揚げたものに、野菜たっぷりの甘酢餡が掛かっている。
迷宮鯰は特筆するようなスキルが無い雑魚だが、とにかくデカイのでボリューミーで食べごたえがある。しかも安いから冒険者になりたての頃から、お世話になっている料理だ。
「相変わらずふわふわ食感で旨いな。地上に戻ったら真っ先に食べたくなる」
「トールはそれ好きだよな。いつも食べてるイメージだぜ」
「あぁ、旨いし栄養バランスも良い。おまけに飯も進むしな」
山盛りの丼ご飯をかきこんでいく。この甘酸っぱさはビールとも合うけど、それ以上に白米ともよく合う。旨すぎて箸が止まらないくらいだ。
ここのオーナーの腕は本当に確かだ。安い食材が絶品料理に変わるんだからな。
「ちょっと、手を離しな!」
俺たちが料理と酒を堪能していると、急にマリッサの怒鳴り声が響いてきた。途端にさっきまで騒がしかった店内が静けさに包まれた。
俺とガルドは互いに顔を見合わせると、軽くため息を吐いた。
店内の騒音に負けない大声で乾杯とさけびながら、景気よくビールのジョッキをガルドとぶつけ合う。
四人掛けのテーブルには、肉の串焼き、フリッターの甘酢餡かけ、もつ煮、根野菜の煮付け等々、所狭しと料理が並んでいる。
ここ、木漏れ日の安楽亭は安い、旨い、ボリューミーと三拍子揃っていて、俺たちみたいな冒険者に人気の酒場だ。
今日はここで、一ヶ月にも及ぶダンジョン探索の打ち上げをしていた。うちのパーティーメンバーは斧使いのガルドと、俺の従魔である羽毛玉のピコのみ。
ガルドはとにかく見た目に違わぬ大食漢で、肉の串焼きを頬張り続けている。
ピコは黒に近い濃紺の体毛を震わせながら、静かにミルワームとナッツの甘辛炒めを食べていた。
「おぉーい、お代わりをくれ!」
「あいよ!」
小気味の良い返事と共に、片手でジョッキを二つ持ってきた来たのは、女給のマリッサだ。彼女はここのオーナーシェフの娘だ。確か、俺の3歳下って言っていたので、22歳だったはず。肉感的な肢体は、妙齢の女性特有の色気を醸し出している。
「二杯で600クリードだったな」
「毎度あり!」
ここはよく酔い潰れて記憶を無くす客がいたとかで、その都度払いの精算システムになっている。俺は財布から千クリード紙幣を取り出すと、マリッサに手渡した。
「千クリードだね。えーと、お釣りお釣り………」
「あぁ釣りは良いよ。息子に菓子でも買ってあげな」
お釣りを取り出そうと、エプロンのポケットを探るのを手で制す。
「おや、どうしたんだい?今日はえらく気前が良いね。珍しい事もあるもんだ」
「人をケチみたいに言うなよ。なに、今回の探索は当たりだったんだ。な、ガルド」
「おぉ、そうだ。なんとコモンスキルの宝珠が三つも出たんだぞ」
本来なら鍛練を重ねて習得するスキル。それを簡単に習得出来る宝珠は、冒険者にとって垂涎の的だ。
よく発見されるコモンスキルでさえ、一つ10万クリードは下らない。
その他、魔石や毛皮等の魔物素材の売却益を足すと、今回のダンジョン探索は大幅に黒字だ。気も大きくなろうってもんだ。
「そうかい、それは良かったね。そんじゃ遠慮なくもらっておくよ」
「そうしな」
軽くウィンクしながら厨房へと去っていくマリッサを見送って、俺も食事を再開する。
箸で摘まんだのはフリッターの甘酢餡かけだ。これはダンジョンの浅層にいる迷宮鯰を揚げたものに、野菜たっぷりの甘酢餡が掛かっている。
迷宮鯰は特筆するようなスキルが無い雑魚だが、とにかくデカイのでボリューミーで食べごたえがある。しかも安いから冒険者になりたての頃から、お世話になっている料理だ。
「相変わらずふわふわ食感で旨いな。地上に戻ったら真っ先に食べたくなる」
「トールはそれ好きだよな。いつも食べてるイメージだぜ」
「あぁ、旨いし栄養バランスも良い。おまけに飯も進むしな」
山盛りの丼ご飯をかきこんでいく。この甘酸っぱさはビールとも合うけど、それ以上に白米ともよく合う。旨すぎて箸が止まらないくらいだ。
ここのオーナーの腕は本当に確かだ。安い食材が絶品料理に変わるんだからな。
「ちょっと、手を離しな!」
俺たちが料理と酒を堪能していると、急にマリッサの怒鳴り声が響いてきた。途端にさっきまで騒がしかった店内が静けさに包まれた。
俺とガルドは互いに顔を見合わせると、軽くため息を吐いた。
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