武者修行の仕上げは異世界で

丸八

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第6章

孵化

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 お父さんがどんどん強くなっている。
 このままでは追い付けないどころか、どんどん引き離されてしまう。

 そんな焦りにも似た気持ちが彼女の中にはあった。
 だから、父親と慕う男の鍛練には欠かさずに参加した。
 例え、それが邪魔にならない場所から見学するだけだとしてもだ。
 所謂見取り稽古は、彼女の動きを洗練させた。

 そして身に付けた動きで、魔獣を狩り続けた。
 狩り、そして食らった。
 それは彼女の血肉となり、身体には膨大な魔力が蓄えられた。

 しかし、それでも父親と慕う男には届かない。
 戦えば、剣の一振りで真っ二つにされてしまうに違いない。
 それが、彼女の焦りに繋がるのだが、また誇らしい気持ちにもなった。

 そんな関係に変化が訪れたのはある魔獣との戦いだ。

 その魔獣の力は強く、男と互角の勝負をした。

 結果、男は勝負を制したが、何日か床に伏すことになった。
 
 魔獣はなに食わぬ顔で自分達の仲間になった。
 そればかりか、男の鍛練の相手をすることになったのだ。
 嫉妬した。
 自分とは異なる次元の力を持つ魔獣に強い嫉妬を覚えた。

 それから、一家揃って棲み処を変え、新しく二体の魔獣を仲間にした。

 新しい棲み処では、精霊がたくさんいる樹に自分の部屋を作った。
 そこで、精霊達とたくさん話をした。

 精霊達は自分の力になってくれると言ってくれた。
 だけど、今のままだとダメなんだそうだ。

 小さな自分の身体では、精霊達の力を受け入れるだけの器が足りないみたいだ。
 その解決方法も精霊達は教えてくれた。

 教えに従い、持てる技術で自分の身体を覆う繭を作った。
 彼女がした事はそれだけだ。
 後は精霊に全てを任せた。

 身体が変わっていくのが分かる。

 持てる力を十全に発揮できるようにも

 精霊達の力を受け入れる事が出来るように。

 何より、更に強くなって男の隣にいられるように。

 その変化は一週間ほどの時間をかけて行われた。
 その間、彼女の意識は微睡みの中にあった。

 微睡みから目覚めると、繭を突き破って飛び出した。

 身体が数倍も大きくなった。

 今までの翼の他に、硬い羽を持つもう一対の翼が生えた。

 脚も後二対増え、その内の一対はまるで男の持つ刃物のようだった。

 見に纏う魔力もそれまでとは段違いだ。
 精霊の加護を示す紋様が、緑一色だった身体のあちこちに描かれていた。

 まるで生まれ変わったみたいだ。
 これなら、あの黒い魔獣にも力負けしないだろう。

 そう確信すると、彼女は声高々に鳴いた。

「ケーン」
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