召喚勇者は怪人でした

丸八

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一章 変身

15話

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「よっと」

 襲ってきた大モグラを二体続けて切り捨てる。

 毛皮と爪が素材として売れるらしいので、なるべく傷が少ないように首をはねる。

 それをリコラがすかさず解体する。

 なかなかの連携っぷりだ。

 ダンジョンに入って小一時間、今はリコラの指示に従ってマッドゴーレムの出現ポイントに向かっている。

 その間、牙ミミズや大モグラを数匹ずつ倒している。

 それぞれの役割り分担は決まってしまったようだ。

「そろそろマッドゴーレムが出てくる場所よ」

  素材をウマコの籠に投げ入れて、リコラはお手製のマップで現在位置を確認する。

 そこにはおおまかな魔物の出現情報も書きこまれていた。

 なかなかのマメさだな。

「いよいよ本命だね。気を引き締めていこうか」

「はい」

 幾つかの別れ道を曲がり、更に数匹の魔物を倒した頃、前方に広間のような場所が目に入った。

 そこには五体の泥人形が彷徨いていた。

「あれがマッドゴーレム?」

「ええ、そうよ。動きは速くないけど、力は強いから気を抜かないでね」

「気を付けるよ」

 未知の敵を相手に、いきなり複数とやりあうのは危険なので、近くにいるマッドゴーレムを呼び寄せる事にしよう。

「ちょっと後に下がってて」

「え?あ、はい」

「いくよ《魔力弾》」

  リコラが数歩下がったところで、俺は魔力弾を放つ。

 魔力弾はマッドゴーレムの肩口にヒットし、泥で出来た体表を抉った。

 最初にファミリアスパイダーに使った時よりも、発動がスムーズになったし、威力も増してる気がする。

 やっぱり何事も練習は必要だな。

 狙い通り、撃たれたマッドゴーレムが一体だけこっちに襲い掛かってきた。

 一斉に来なくて良かった。

「それにしても、傷がもう治ってるぞ。なんて回復力だ」

 抉ったはずの肩口は、既に塞がっていた。

 なかなか一筋縄じゃいかないようだな。

「マッドゴーレムのコアは胸の中央にあります。コアを壊すか抜くかしないと倒せません!」

「了解」

  背後からリコラのアドバイスが飛ぶ。

 今回はコアの採取が目的だから壊す訳にはいかないから、抜くしかないのか。

 マッドゴーレムを充分引き付けてから、俺も魔力刃を展開した短剣を片手に駆け出した。

 魔力刃を纏わせておけば刃こぼれも無いし、血脂も付かないから便利だ。

 勿論、切れ味も向上するしね。

 「シッ」

 マッドゴーレムの力一杯振り回すようなパンチをかいくぐり、俺は逆袈裟に斬って捨てる。

 切り裂かれた胸が頭や腕ごとなくなり、コアと思しき塊が露呈する。

 既に再生は始まっていたが、俺は焦ることなくゴーレムコアを引き抜くのだった。
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