4 / 15
1章 平民の意地
第4話
しおりを挟む
僕が首を振った直後、ヘイヤルさんはニコニコと笑いながらアベルに接近していく。
笑いながら近づいてくるヘイヤルさんを見て笑みを深め、触れられる距離まで来たヘイヤルさんの腰に手を回した。
しかし、次の瞬間アベルは間抜けな面を晒しながら上空に吹き飛んでいった。
それを呆然とした顔で見上げる取り巻きとクロイツ様。
数秒してグシャッという音と共にアベルが石畳に叩きつけられる。
ピクピクと痙攣しているのを見ていると、不思議なほど気持ちがスッキリするのと同時にこの痙攣しているのをどうしようか悩む。
下手したら上空に飛んでいったアベルを誰かが目撃していて、憲兵を呼ばれてしまうかもしれない。
僕がそんなことを思っているとは露知らずにヘイヤルさんはアベルの頭を踏みつけ、取り巻き達に宣言する。
「そこのホンを粗末にするゴミクズに言っておきなさい。次本を傷つけるようなことをしたら、その本と同じようにして殺すって」
「ひ、ひいいぃぃぃぃぃ!!」
取り巻き達は情けない悲鳴を上げると蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。
ヘイヤルさんに足蹴にされ、顔が地面にめり込んでいるアベルを取り残して。
「ふー、少しスッキリしたわ。さてロゴシュ君。中に入りなさい。早速始めるわよああ。ついでにそっちの女の子も来なさい」
「ちょっと待てやコラ」
書店の扉を開けて僕を中へ促すヘイヤルさんへ怒りの篭った声がかけられる。
いつの間に復活したのか、顔に砂や石を貼り付けたアベルが魔法の補助具である杖をヘイヤルさんに突きつけていた。
「平民ごときがこの僕を足蹴にするとは、万死に値する!【火の精霊に我が意を伝える。槍よ、敵を貫け】今すぐ頭を地に擦り付けて命乞いをすれば助けてやろう」
魔法の詠唱を終え、自分が有利であることを信じて疑っていないのか、ヘイヤルさんを見る目が再び欲望に濁っていく。
そんなアベルを見かねたのか、クロイツ様も魔法の詠唱を始めた。
しかし、すぐさま杖の先を向けられてしまい、詠唱を止めざるを得ない状況に陥る。
呆れた顔をしたヘイヤルさんが掌を前に差し出すと、アベルが急に吹き飛んで壁に叩きつけられた。
「補助具を使わなきゃ魔法を使えない初心者以下の魔法使いが大きな口を叩くじゃない。あなた程度の実力だったら一週間後にはロゴシュ君の方が強くなってるわね」
「ゲホッ、誰が誰よゲホッゲホッ強くなるって?おい」
壁に叩きつけられてグッタリとしていたアベルは、ヘイヤルさんの最後の言葉に反応して咳き込みながらも立ち上がる。
目に憎悪の光を宿しながら。
「あら、意外と根性あったのね。何度でも言ってあげるわ。あなたは一週間後にはバカにしているロゴシュ君に勝てなくなる」
「ふざけんな。そんな魔力を全く扱えない雑魚に俺が負けるわけないだろうが!」
「・・・私は実現不可能なことは言わないことにしているの」
「じゃあ一週間後この平民に俺が勝ったらどうするよ」
「何でもしてあげるわ。這いつくばって靴を舐めろと言われたら丁寧に舐めてあげるわ」
「奴隷になれと言ったら」
「素直に首輪を付けてあげる」
「・・・その言葉忘れないからな。平民、一週間後に俺と戦う権利をくれてやる」
そう言うとふら付きながらも一人でこの場から立ち去っていく。
何で僕は巻き込まれているのだろうか。
一週間であのアベルに勝つ?性格はともかく、成績は上から数えたほうが早いあいつに?
僕がアベルに勝つ光景が全く浮かばない。
「さあさあロゴシュ君。ウジウジ悩んだりする時間は無くなったわよ。これは意地でも勝たないといけないわね」
「あ、ハイ。じゃなくて、何で僕を巻き込んだんですか!たった一週間であいつに勝てるようになるわけがないじゃないですか!」
僕とアベルが勝負する流れを作ったヘイヤルさんのことを、怒りを込めた目で睨みつける。
ヘイヤルさんは浮かべていた笑みを消すと、真剣な顔で話し始めた。
「ねえ、確かに私は嘘は吐く、結構いい加減なことも言う。けどね、さっきも言ったけど実現が不可能なことは決して言わない。これを破ったら私を構成している支柱を全部へし折る。私が私でいられなくなるということなのよ」
「そんなのヘイヤルさんの中での話しでしょ!落ちこぼれの僕が成績優秀者に勝てるわけが無いって言ってるんです」
「ロゴシュ君。あなたはそれでいいの?」
僕の目とヘイヤルさんの目があう。付き合いがほとんどない僕でもなんとなく判ってしまった。
そこには何も、何の感情もこもっていなかった。
きっと答えを求めても答えて貰えないだろう。
僕は・・・どうするべきなんだ。
「何を迷っているんですの?あなたは。たとえ勝てなくても自分の力を伸ばせるいい機会を投げ捨てるというのかしら」
・・・悔しい。ただ言われるがままになっていたのが。それを許容していた自分にも腹が立つ。
今すぐが無理でも、一週間後が無理でも、あいつの鼻をへし折ってやる。
「ヘイヤルさん。僕に魔術を、あいつに勝てるだけの力を身につけるために協力してください!」
思いっきり頭を下げる。
下げた頭に軽く手を乗せられ、
「いいわよ。では改めましてロゴシュ君。ようこそ私の店に。私はあなたを歓迎するわ」
笑いながら近づいてくるヘイヤルさんを見て笑みを深め、触れられる距離まで来たヘイヤルさんの腰に手を回した。
しかし、次の瞬間アベルは間抜けな面を晒しながら上空に吹き飛んでいった。
それを呆然とした顔で見上げる取り巻きとクロイツ様。
数秒してグシャッという音と共にアベルが石畳に叩きつけられる。
ピクピクと痙攣しているのを見ていると、不思議なほど気持ちがスッキリするのと同時にこの痙攣しているのをどうしようか悩む。
下手したら上空に飛んでいったアベルを誰かが目撃していて、憲兵を呼ばれてしまうかもしれない。
僕がそんなことを思っているとは露知らずにヘイヤルさんはアベルの頭を踏みつけ、取り巻き達に宣言する。
「そこのホンを粗末にするゴミクズに言っておきなさい。次本を傷つけるようなことをしたら、その本と同じようにして殺すって」
「ひ、ひいいぃぃぃぃぃ!!」
取り巻き達は情けない悲鳴を上げると蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。
ヘイヤルさんに足蹴にされ、顔が地面にめり込んでいるアベルを取り残して。
「ふー、少しスッキリしたわ。さてロゴシュ君。中に入りなさい。早速始めるわよああ。ついでにそっちの女の子も来なさい」
「ちょっと待てやコラ」
書店の扉を開けて僕を中へ促すヘイヤルさんへ怒りの篭った声がかけられる。
いつの間に復活したのか、顔に砂や石を貼り付けたアベルが魔法の補助具である杖をヘイヤルさんに突きつけていた。
「平民ごときがこの僕を足蹴にするとは、万死に値する!【火の精霊に我が意を伝える。槍よ、敵を貫け】今すぐ頭を地に擦り付けて命乞いをすれば助けてやろう」
魔法の詠唱を終え、自分が有利であることを信じて疑っていないのか、ヘイヤルさんを見る目が再び欲望に濁っていく。
そんなアベルを見かねたのか、クロイツ様も魔法の詠唱を始めた。
しかし、すぐさま杖の先を向けられてしまい、詠唱を止めざるを得ない状況に陥る。
呆れた顔をしたヘイヤルさんが掌を前に差し出すと、アベルが急に吹き飛んで壁に叩きつけられた。
「補助具を使わなきゃ魔法を使えない初心者以下の魔法使いが大きな口を叩くじゃない。あなた程度の実力だったら一週間後にはロゴシュ君の方が強くなってるわね」
「ゲホッ、誰が誰よゲホッゲホッ強くなるって?おい」
壁に叩きつけられてグッタリとしていたアベルは、ヘイヤルさんの最後の言葉に反応して咳き込みながらも立ち上がる。
目に憎悪の光を宿しながら。
「あら、意外と根性あったのね。何度でも言ってあげるわ。あなたは一週間後にはバカにしているロゴシュ君に勝てなくなる」
「ふざけんな。そんな魔力を全く扱えない雑魚に俺が負けるわけないだろうが!」
「・・・私は実現不可能なことは言わないことにしているの」
「じゃあ一週間後この平民に俺が勝ったらどうするよ」
「何でもしてあげるわ。這いつくばって靴を舐めろと言われたら丁寧に舐めてあげるわ」
「奴隷になれと言ったら」
「素直に首輪を付けてあげる」
「・・・その言葉忘れないからな。平民、一週間後に俺と戦う権利をくれてやる」
そう言うとふら付きながらも一人でこの場から立ち去っていく。
何で僕は巻き込まれているのだろうか。
一週間であのアベルに勝つ?性格はともかく、成績は上から数えたほうが早いあいつに?
僕がアベルに勝つ光景が全く浮かばない。
「さあさあロゴシュ君。ウジウジ悩んだりする時間は無くなったわよ。これは意地でも勝たないといけないわね」
「あ、ハイ。じゃなくて、何で僕を巻き込んだんですか!たった一週間であいつに勝てるようになるわけがないじゃないですか!」
僕とアベルが勝負する流れを作ったヘイヤルさんのことを、怒りを込めた目で睨みつける。
ヘイヤルさんは浮かべていた笑みを消すと、真剣な顔で話し始めた。
「ねえ、確かに私は嘘は吐く、結構いい加減なことも言う。けどね、さっきも言ったけど実現が不可能なことは決して言わない。これを破ったら私を構成している支柱を全部へし折る。私が私でいられなくなるということなのよ」
「そんなのヘイヤルさんの中での話しでしょ!落ちこぼれの僕が成績優秀者に勝てるわけが無いって言ってるんです」
「ロゴシュ君。あなたはそれでいいの?」
僕の目とヘイヤルさんの目があう。付き合いがほとんどない僕でもなんとなく判ってしまった。
そこには何も、何の感情もこもっていなかった。
きっと答えを求めても答えて貰えないだろう。
僕は・・・どうするべきなんだ。
「何を迷っているんですの?あなたは。たとえ勝てなくても自分の力を伸ばせるいい機会を投げ捨てるというのかしら」
・・・悔しい。ただ言われるがままになっていたのが。それを許容していた自分にも腹が立つ。
今すぐが無理でも、一週間後が無理でも、あいつの鼻をへし折ってやる。
「ヘイヤルさん。僕に魔術を、あいつに勝てるだけの力を身につけるために協力してください!」
思いっきり頭を下げる。
下げた頭に軽く手を乗せられ、
「いいわよ。では改めましてロゴシュ君。ようこそ私の店に。私はあなたを歓迎するわ」
0
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる