『私たち、JKプロレスラーズ 外伝 「三人のおっさん副業レスラーズ~謎の連続殺人事件を解決せよ~」』

あらお☆ひろ

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「伝説のヒーロー」

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「伝説のヒーロー」

 二日後、セシルとユジンが、LA市内のインディーズプロレス(※プロレス地方中小独立団体)であるLALWEの興行のプロレスの試合を終え、近くのステーキハウスで食事をとりながら話している。
 2人は、そろって2ポンドのステーキとジョッキでビールを頼んだ。ウエイトレスが、オーダーをとり終わると、セシルは、デビッドから内密に送ってもらったデータと写真を並べて、ユジンが真剣な表情でレントゲン写真に見入っている。

「こりゃ、おそらく、東洋武術だな。全く持って、酷でぇもんだなぁ。この外し方と折り方は柔術系と拳法系かな?最初に肩と股関節を外し、動けなくなったところを左右からボキボキってな。一人は左利きだな。」
「そんなことまでわかるのか!さすが、体術マニアの整体師だな!ファイト中に肩、脱臼した時以外にも役に立つんだなぁ。今回ばかりは感心したぜ。」
「おう、任せとけ!これで、犯人逮捕まで行って、セシルが特ダネとって、デビッドが逮捕につながる仕事をすりゃ、お前ら2人で俺様のご接待決定!期待してるぜ!」
とユジンがいきんでセシルに成功報酬を要求した時、ウエイトレスが、まずビールを、続いてステーキとパンとサラダを持ってきた。

「おう、デスクにしっかり話して予算取っといてやるよ。デビッドの方は、俺にはわからんがな。とりあえず、第一歩に乾杯!」
 セシルが自分のビールジョッキをユジンのジョッキにぶつけて一気に大ジョッキを開けていると、背後に大きな黒い影が。
(ん!)2人が振り返ると、2人以上に大きな巨体の初老の男が立っていた。
「あっ、チャックさん!お邪魔しています!」
「ご無沙汰しています、チャックさん!」
2人が挨拶した男は、元地元のインディーズ団体から、メジャーに転向し活躍した、ロスのインディーズプロレスラーの「伝説のヒーロー」、あこがれのチャック・イェーガー(75歳)だった。15年ほど前に、引退して今はこのステーキハウスのオーナーになっている。

「よう、セシルにユジン!今日はデビッドはいないのか?お前ら3人組はいつも一緒と思っていたがなぁ。今日は、久しぶりの再会を祝って俺のおごりだ。ジャンジャン飲んでいってくれ!」
「ありがとうございます。こんな下っ端の俺たちにもいつも優しくしてくれるチャックさんは、やっぱりロスのレスラーの神様ですよ!」
とユジンがチャックを「よいしょ・・・・」した。
「よせやいユジン!照れくさいわい。(と、テーブルに並べられた資料を覗き込んだ。)ん?これは?」
とチャックが、テーブルに並べた、3人の被害者の顔写真をつまみ上げて、胸のポケットから、老眼鏡を出して覗き込んだ。(何か知っているのか?もしかして、知り合い?)とセシルはチャックの反応を待った。
「こりゃ、ブランジス社長にプロモーターのジェラルド、こいつはレフリーのニールじゃねえか?俺がまだ、LALWAの前身の団体でやってた時のメンバーだよ。懐かしいなぁ、みんな年くいやがって!12,3年ほど前にブランジス社長の勇退パーティーで会って以来だなぁ。こいつら、どうかしたのかい?」

 チャックの問いかけに「共通点」を見出したセシルが一瞬で食いついた。
「チャックさん、3人とも知合いですか?この5日の間に3人とも殺されたんですよ!ニュースでやってたでしょ!」
「何!?すまん、俺、ニュースや新聞の類は全く見ないんで・・・。この三人に何があったんだ。」
「いや、実は・・・」
とテーブルの席に着いたチャックに、セシルが事の次第を説明した。チャックは腕を組み、黙って頷いて聞いていた。

セシルのチャックと3人の関係やその頃の背景についての質問にチャックは答え、セシルはボイスレコーダーを回し、必死でメモを取った。(よし!繋がってきたぞ。今、20時半。デビッドの勤務も終わる時間だし、ユジン連れて、デビッドの所に寄っていこう。)とセシルが時計で時間を確認した。チャックは、セシルの思惑とは全く別の話をふってきた。
「ちなみに、3日後の、総合体育館の大会は、お前ら出るのかい?俺はOBとして、ゲストで呼ばれてるから、試合終わったら、一緒に飲みに行こうや。その時は、デビッドも呼んで来いよ!今のLALWAを支える3人の副業マスクマンの頑張りに、俺ができるのは、おごってやるくらいしかないからな。カラカラカラ。」
「もちろん出ます。今日はたくさんのビールありがとうございました。3日後の再会を楽しみにしていますね。では、チャックさん、また来ますね!」
とお礼を言い、セシルとユジンは店を出た。事前にデビッドの携帯に電話は入れたが、ずっと留守番電話のままだ。

「とりあえず、市警に行って待つとするか・・・。」
と二人はタクシーに乗り込んだ。市警に着く直前、デビッドからセシルの携帯に電話がかかってきた。
「すまない、電話に出れなくて。まだ、発表はないが、今晩、4件目の事件が起こった。詳しくは合流してから話すわ。市警の2本北の通りに、「ナンバーテン」って腐れた名前のバーがあるからそこでな!俺も後5分程でむかう。遺体が午前0時ころには帰ってくるだろうから、2時間ほどしかないがな。じゃあ。」
と一方的に言って、電話は切れた。
 
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