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「プロローグ・モーゼの墓」
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「プロローグ・モーゼの墓」
8月20日午前11時50分、ニコニコ商店街の九人と「MK」と呼ばれる男は石川県羽咋郡宝達志水町の河原三ツ子塚古墳群の丘の上にいた。真夏の太陽は南中し、じりじりと3歳から75歳までの十人を焦がしていく。小高い古墳の上に立つ十人の額にはうっすらと汗が滲んでいるが誰も拭き取ろうとはしない。白い墓標の前で両手を広げ呟き続ける24歳の黒髪の女性の言葉に七人が聞き入り二人がスマホでその様子を録画している。
宝達志水町と言えば、石川県の能登半島の地峡部にあたり、「朝陽と夕陽のふたつの絶景に会えるスポット」として有名な宝達山がある。能登半島最高峰の標高637メートルの山頂は加賀、能登、越中の三州を望むことができる。早朝の頂上からの景色は、夏には富山湾、冬は立山連峰からの朝陽が望め、夕方には日本海に沈む美しい夕陽を見ることができる。夜には街の灯りが輝き、イカ釣りシーズンには黒い日本海の沖合に漁火が幻想的に浮かび上がる。
秋には日本列島を2000キロに渡り旅をすることで有名な美しい蝶「アサギマダラ」が飛来する。ブナ林を散策する「こぶしの路」では春の「タニウツギ」、初夏の「ヤマブキショウマ」、秋の「紅葉」を楽しめる登山道であるが、車で山頂まで上がれるルートもある。
江戸時代から宝達山に伝わった隠れた名産品の「紋平柿」や石川県内一の生産量を誇る「イチジク」に、山に自生している「宝達葛」などの山の幸に恵まれた「山の竜宮城」として地元民だけでなく旅行者にとっても憩いの場所であり、格好のデートスポットとして愛されている。
しかし、ニコニコ商店街のメンバーたちは、人気のある宝達山ではなく、そこから少し離れた無人の三ツ子塚古墳群の2号墳の前に揃っている。
突拍子もない話だとほとんどの人が感じるであろうと思うが、宝達志水町の商工観光課のリーフレットに「いにしえのロマンと、モーゼ伝説が眠る森モーゼパーク」というものがある。
海を割り道を作るシーンが有名な映画「十戒」で登場する聖者モーゼが四十年の歳月をかけ、ユダヤの民衆をイスラエルの地に導いた後「シナイ山」に登り、そこから天浮舟に乗り、能登宝達山に到着したという事が書かれている。そしてモーゼは583歳まで超人的な余生を宝達山で過ごし、三ツ子塚古墳に埋葬されたという。聖者モーゼが眠る伝説の森として紹介されているが、夏休み中の日曜日にもかかわらず、全く人気は無い。
三つ並んだ円墳の2号墳の裏に「モーゼの墓」とされる墓標がひっそりと建っている。その墓の向かいに黒髪ショートカットで白いブラウスを着た夏子が両手を天に広げトランス状態で呟き続ける状況を親友の陽菜とMKがスマホで動画撮影を続けている。
夏子は、モーゼの墓の前で「天岩戸伝説」について語り始めだした。すでにトランス状態で既に約50分語り続けている。
「天岩戸に隠れたとされる天照大神は実在しない。それは、聖徳太子の右腕と言われた秦河勝による創作なのだ。「太陽」をトーテムとするルベン族を先祖に持つ秦河勝が日本に於いて旧約聖書の教えを神道に置き換えて伝えるために書き残し、後の秦一族により、日本書紀や古事記にその説を残したのだ…。
しかも、この地に隠した我らの「アーク」と「三種の神器」を越前忌部と物部の者より奪い去った。
大和朝廷にとって不都合なユダヤの「三種の神器」を朝廷が奉る天皇にとって都合の良いものに置き換え、天皇家に伝わる秘宝として新たな「三種の神器」と伝授し続けたのだ。その中の一つ、「モーゼの十戒」の石板と対になる八咫鏡の裏に、69の文字でソロモン王朝の秘宝の隠し場所を記しているのだ。秘宝は、我らユダヤの民の物である。
モーゼ・コーケンよ、我の子孫であるならば、伊勢神宮に秘匿されている八咫鏡を見つけ出し、ユダヤの民とエルサレムの為に秘宝を活かすのだ。その隠し場所は暗号化され記されている。古代ヘブライ文字のアルファベットで…」
と聞きなれない発音の言葉を25文字分伝えたところで夏子は意識を失いその場で倒れた。
「なっちゃん!大丈夫か?」
その場にいた稀世が夏子を支えて声をかけるが、息が上がり消耗しきった夏子の意識は戻りそうにない。
MKが「陽菜ちゃん、敵の移動状況は?」と尋ねた。陽菜はスマホのカメラを止めると、GPS追跡アプリに切り替えた。「MK君、北陸道でもうすぐ金沢に入るとこまで迫ってきてる!」と返すと、MKが叫んだ。
「急いで移動しましょう。この場も「Nシステム」で特定されている可能性が高いです。さあ、皆さん、急いで山を下りてバスで移動です!」
「MK君、移動ってどこに行くんや?」
と最年長者の74歳の直が問う。
「そりゃ、伊勢神宮でしょ!なっちゃんのお告げに「筋」は通ってますよね。ここまで来たら「毒を食らえば皿まで」ですよ。やつらに追いつかれるまでに、先回りしてお宝ゲットでしょう!」
とMKは答えると稀世に言った。
「稀世姉さん、なっちゃんは僕が下まで連れて行きますから背負わせてください。」
MKは稀世に倒れた夏子を背負わせてもらうと、早歩きで「聖の小路」を来た時と逆の手順で戻り始めた。それに六人が続いた。最後までモーゼの墓の前に立って見つめ続けている稀世の娘のひまわりに
「ひまちゃん、出発や!なっちゃんを追いかけてきてる悪いやつらが迫ってきてる!銃を持ってるような奴やから居合わせる訳にいけへんからな。今すぐ移動やで。さあ、行こか!」
と声をかけると、片手でひまわりを抱っこして前を進む八人を追いかけた。
(それにしても、なっちゃんの話したお告げがほんまもんやとすると、えらいことになりそうやな…。)稀世は心の中で思い、武者震いした。
8月20日午前11時50分、ニコニコ商店街の九人と「MK」と呼ばれる男は石川県羽咋郡宝達志水町の河原三ツ子塚古墳群の丘の上にいた。真夏の太陽は南中し、じりじりと3歳から75歳までの十人を焦がしていく。小高い古墳の上に立つ十人の額にはうっすらと汗が滲んでいるが誰も拭き取ろうとはしない。白い墓標の前で両手を広げ呟き続ける24歳の黒髪の女性の言葉に七人が聞き入り二人がスマホでその様子を録画している。
宝達志水町と言えば、石川県の能登半島の地峡部にあたり、「朝陽と夕陽のふたつの絶景に会えるスポット」として有名な宝達山がある。能登半島最高峰の標高637メートルの山頂は加賀、能登、越中の三州を望むことができる。早朝の頂上からの景色は、夏には富山湾、冬は立山連峰からの朝陽が望め、夕方には日本海に沈む美しい夕陽を見ることができる。夜には街の灯りが輝き、イカ釣りシーズンには黒い日本海の沖合に漁火が幻想的に浮かび上がる。
秋には日本列島を2000キロに渡り旅をすることで有名な美しい蝶「アサギマダラ」が飛来する。ブナ林を散策する「こぶしの路」では春の「タニウツギ」、初夏の「ヤマブキショウマ」、秋の「紅葉」を楽しめる登山道であるが、車で山頂まで上がれるルートもある。
江戸時代から宝達山に伝わった隠れた名産品の「紋平柿」や石川県内一の生産量を誇る「イチジク」に、山に自生している「宝達葛」などの山の幸に恵まれた「山の竜宮城」として地元民だけでなく旅行者にとっても憩いの場所であり、格好のデートスポットとして愛されている。
しかし、ニコニコ商店街のメンバーたちは、人気のある宝達山ではなく、そこから少し離れた無人の三ツ子塚古墳群の2号墳の前に揃っている。
突拍子もない話だとほとんどの人が感じるであろうと思うが、宝達志水町の商工観光課のリーフレットに「いにしえのロマンと、モーゼ伝説が眠る森モーゼパーク」というものがある。
海を割り道を作るシーンが有名な映画「十戒」で登場する聖者モーゼが四十年の歳月をかけ、ユダヤの民衆をイスラエルの地に導いた後「シナイ山」に登り、そこから天浮舟に乗り、能登宝達山に到着したという事が書かれている。そしてモーゼは583歳まで超人的な余生を宝達山で過ごし、三ツ子塚古墳に埋葬されたという。聖者モーゼが眠る伝説の森として紹介されているが、夏休み中の日曜日にもかかわらず、全く人気は無い。
三つ並んだ円墳の2号墳の裏に「モーゼの墓」とされる墓標がひっそりと建っている。その墓の向かいに黒髪ショートカットで白いブラウスを着た夏子が両手を天に広げトランス状態で呟き続ける状況を親友の陽菜とMKがスマホで動画撮影を続けている。
夏子は、モーゼの墓の前で「天岩戸伝説」について語り始めだした。すでにトランス状態で既に約50分語り続けている。
「天岩戸に隠れたとされる天照大神は実在しない。それは、聖徳太子の右腕と言われた秦河勝による創作なのだ。「太陽」をトーテムとするルベン族を先祖に持つ秦河勝が日本に於いて旧約聖書の教えを神道に置き換えて伝えるために書き残し、後の秦一族により、日本書紀や古事記にその説を残したのだ…。
しかも、この地に隠した我らの「アーク」と「三種の神器」を越前忌部と物部の者より奪い去った。
大和朝廷にとって不都合なユダヤの「三種の神器」を朝廷が奉る天皇にとって都合の良いものに置き換え、天皇家に伝わる秘宝として新たな「三種の神器」と伝授し続けたのだ。その中の一つ、「モーゼの十戒」の石板と対になる八咫鏡の裏に、69の文字でソロモン王朝の秘宝の隠し場所を記しているのだ。秘宝は、我らユダヤの民の物である。
モーゼ・コーケンよ、我の子孫であるならば、伊勢神宮に秘匿されている八咫鏡を見つけ出し、ユダヤの民とエルサレムの為に秘宝を活かすのだ。その隠し場所は暗号化され記されている。古代ヘブライ文字のアルファベットで…」
と聞きなれない発音の言葉を25文字分伝えたところで夏子は意識を失いその場で倒れた。
「なっちゃん!大丈夫か?」
その場にいた稀世が夏子を支えて声をかけるが、息が上がり消耗しきった夏子の意識は戻りそうにない。
MKが「陽菜ちゃん、敵の移動状況は?」と尋ねた。陽菜はスマホのカメラを止めると、GPS追跡アプリに切り替えた。「MK君、北陸道でもうすぐ金沢に入るとこまで迫ってきてる!」と返すと、MKが叫んだ。
「急いで移動しましょう。この場も「Nシステム」で特定されている可能性が高いです。さあ、皆さん、急いで山を下りてバスで移動です!」
「MK君、移動ってどこに行くんや?」
と最年長者の74歳の直が問う。
「そりゃ、伊勢神宮でしょ!なっちゃんのお告げに「筋」は通ってますよね。ここまで来たら「毒を食らえば皿まで」ですよ。やつらに追いつかれるまでに、先回りしてお宝ゲットでしょう!」
とMKは答えると稀世に言った。
「稀世姉さん、なっちゃんは僕が下まで連れて行きますから背負わせてください。」
MKは稀世に倒れた夏子を背負わせてもらうと、早歩きで「聖の小路」を来た時と逆の手順で戻り始めた。それに六人が続いた。最後までモーゼの墓の前に立って見つめ続けている稀世の娘のひまわりに
「ひまちゃん、出発や!なっちゃんを追いかけてきてる悪いやつらが迫ってきてる!銃を持ってるような奴やから居合わせる訳にいけへんからな。今すぐ移動やで。さあ、行こか!」
と声をかけると、片手でひまわりを抱っこして前を進む八人を追いかけた。
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