始まりから詰んでいる鬼ごっこ

もちごめ

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 幼子の様に、安心しきった様子で、すやすやと眠る姿に自然と頬が緩む。
 柔らかいふわふわの髪を手で梳き、ひと房口元に持っていき、軽くキスを落とす。

「ほんと、昔から頑固だからなぁ、ミアは」しばらく起きる気配のないミアの眠る姿を存分に堪能し、顔にかかる髪を後ろへと流し、まだあどけなさの少し残る顔に手を滑らせた。



 長いまつ毛、薄く色づく頬、熟した果実のような唇。ほんと、昔から何一つ変わらない……。





***

 
 ミアと自分の家は隣同士で、歳も自分のほうが三つ上ということもあったが、この近所では他に歳の近い子供たちはいなかった。自然といつも二人で一緒にいるようになり、まるで兄妹のように年頃になるまで育った。

 あれはまだ自分が五歳、ミアが二歳のころだったかな。
 いつも自分の後ろを、てくてくと必死に付いてくる姿はひな鳥のようで可愛くて可愛くて、我慢が出来ずに振り向きざまに抱きしめて頬ずりをしたな。


 クリックリの大きな瞳をキラキラさせて、「キーチュ、だっこ」と舌足らずに両手を挙げて抱っこを求めてくる姿は、思わず頭からかぶり付きたくなるほどに可愛かった。
 もちろん、ほっぺにチューをしてから大切に大切に抱っこをして、離さなかった。


 ミアが四歳のころ、「キース、絵本読んで」とお願いされた時には、いつも決まって動物の本を読んであげた。
 鳥の本を読むときには、母鳥とひな鳥の『刷り込み』について教えてあげた。
 それからはいつだって僕の後ろをついて歩くようになった。ほんっと可愛い。


 また、オオカミの絵本も何度も読んであげ、『外には危険なオオカミ(男)がいて、いつでも食らいつこうと涎をたらして狙っているから、必ず僕以外の男には近寄ってはいけない、目を合わせてはいけない、声を聴いてはいけないんだよ』と何度も繰り返し読んで聞かせてあげた。

 後日、父から聞いたのだが、伯爵が『しばらく娘が目を合わせてくれなくなった』と嘆いていたと聞いた。ほんと素直でいい子だよなぁ。

 
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