まさかの……。

もちごめ

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ミリーがなぜ悪役令嬢のような性格にならなかったのは、実は原因は俺にある。

意図的に変えたつもりは無いのだが、気づけば悪役令嬢にならなかったというだけの話だ。

婚約して、定期的にミリーと会うことを義務付けられた俺は、その義務を果たすべく侯爵家へ足を運んだ。

最初はただの義務だと、仮面を被りミリーとの時間を過ごしていた。

しかし彼女と話していくうちに、その純粋さに、そのどこまでも愛を求めている秘めた瞳に、俺は魅了されていた。

義務的に通っていたあの頃が嘘のように、俺は時間を作ってはミリーに会いに行った。

しかし、それで公務を怠るわけではない。

むしろ、将来ミリーを嫁にもらうのならと、俺がしっかりしなければと気合をいれてこなしていたくらいだ。

俺の愛が信じられなかったのか、最初は戸惑いを隠せていなかったミリー。

あの愛を求める瞳をもっていながら、愛を向けられると戸惑ういじらしさに、また俺は彼女に惹かれていく。

そして月日が経ち、学園にミリーも入学したころには俺達は誰もが羨む理想の婚約カップルだと言わるほど、お互いを受け入れていた。


俺の愛を受け入れ、愛を送ってくれるミリーは、どんな時でも美しかった。

俺が公務で時間を作れずミリーとの約束を断った時だって、急な家の用事で3日間もミリーと顔を合わせられない時だって、いつも彼女は凛と前を向き、その心の美しさのまま俺の帰りを待ってくれていた。

そんな一途で真っ直ぐな彼女だからこそ、俺はミリーしか愛せないのだろう。




……だからこそだ、絶対にお前を愛することはできないんだよ。

誰に対しても無礼な振る舞いをしていると噂では知っていたが、そもそもあの世界とはすでに設定が違っている俺達に近寄ってくるバカはいるのか??

あぁ、いたなここに。

「フリード様、私……!」

「……アルヘイド嬢……、先程も申しましたがお断りした筈です。」

「で、でも……!私は貴方が好きなのです……!どうか……!」

レイア・アルヘイド男爵令嬢。

その女性はこの乙女ゲームの世界のヒロインだった。

彼女も転生者らしく、実は俺が思い通りの行動をとらなかったことに対して「シナリオはどうなってんのよ!」と言っているのを聞いたことがある。
どうやら目指すルートはハーレムエンドらしく、攻略対象である名家の子息たちに、無遠慮でべたべたとくっつき、しつこく言い寄っているらしい。現実的にハーレムってあるか? 普通に考えて恐ろしい。

しかし、だ。

この世界は乙女ゲームの世界であろうと、“俺達”にとっては紛れもない現実だ。

いくらゲームではその通りにすれば結ばれたからと言って、この現実世界でも通用するとは限らないではないのか?

どうやら頭がお花畑のアルヘイド嬢は、それをわかっていないらしい。

ゲームの設定通りのセリフと仕草で言い寄る。

しかし、上手く行かないと、焦ってストーリーの順番を無視してさっきのようなセリフを言ってくるようになった。

それもそうだ、だって俺達“攻略対象”はゲームのキャラクターではない。

この世界に生きている人間だから。

作り話の中では許された逆ハーレムや略奪愛などは現実ではそう簡単には起こり得ないだろう。

むしろ可能性は限りなくゼロに近い。

それなのに、彼女は今日も俺達をキャラクターだと信じて疑わず、言い寄ってくる。

そのまま続ければ、彼女自身きっと破滅の道しかないというのに。

だからこそ、彼女自身に気づいてもらい、現実を見て歩んでもらいたいのに。

いい加減目を覚ましてくれ。君のためにも自分自身の人生を生きて行ってくれ。
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