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俺たちも偉くなったものだ

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中央広場から少し離れた、こぢんまりとしたバルにいる。

「たまには外で何か食べましょう」とマリタが言ったのでこの店に全員で来た。
マリタのお気に入りの店らしい。

料理をガンガン注文してから、とりあえず乾杯。

「調査チームが、術式らしき石板を見つけた話は知ってるわね?」とマリタ。
「解読中って聞いたけど」とエルネス。

「どうやら解読不能らしいの」
「それはいつの話?」とリリアナ。
「今日、フィネが店に来たの」

フィネはギルド長カミロの秘書だ。

「でも研究所で解読していたんじゃ?」とエルネス。
「そこで無理だって」
じゃあどうしようもない?

「術式で結界を破るならどんな事を石板に書く?と聞いてきたの」

「書いてあることを推測して、解読するつもり?」とジーヌ。
「話ぶりからして、解読にはあまり期待していないみたい。それよりもどうやって防ぐかを知りたいらしい」

「ノビッシュの中央図書館の正会員証をもらったから、一度行ってみる?」とリリアナ。
「すごい数の蔵書があるらしいわね」とマリタ。
「行ったことないの?」
「だって通行制限があるでしょ」
「他と交流してないだけで、問題無いと思う。マリタとリリアナで行ってくれば?俺が店番してるから」

「正会員証をバンに作ってもらえるように、カミロにお願いしてみる?」とジーヌ。
「そうね、実際ギルドから訊ねられているから。いいんじゃない」とリリアナ。
2人ともグイグイ行きますね。

翌朝、ギルド。
マリタは店があるので、俺たち4人で訪問。

受付でカミロを呼んでもらう。
俺たちも偉くなったものだ。

会議室。
フィネも混じっている。

「マリタの正会員証はバンに連絡して中央図書館で受け取れるようにしてもらう」とカミロ。
「ただ・・・」
「?」
「ギルド案件で行った方が良いのでは?」

「でも、すぐに答えが見つかるとは思えない」と俺。
「学術調査枠の依頼なら報酬が低い代わりに違約金は無い」とフィネ。
「良くわかりませんでしたでもいいの?」とジーヌ。
「好ましくはないけど、それは仕方無い。今回も依頼がいくつかでていたはず」とフィネ。

一同、えっ?!

「あなたたち、特定の条件でしか検索してないでしょう」とフィネが笑った。

そういえば最近は闘技等級“有り”でしか検索していなかった。
学術調査に闘技等級は関係しないようだ。
というか学術調査って何?

カミロが呆れて、フィネに手伝ってやってくれと言って会議室を出て行った。

フィネがテーブルにリングをかざして、学術調査一覧を呼びだした。
そこから結界関係を検索した。
テーブルに依頼の検索結果が表示された。

「これがいいわね。自由に調査できるわよ」とフィネ。

依頼:学術調査 (研究員)
場所:- 
概要:結界に関する調査。形成条件または破壊条件を含むこと。
達成:報告書(様式“3”) 期間:3ヵ月 費用:*
違約金:- 闘技等級:- チーム:指定なし 
注記: *ギルド案件

「様式“3”って?」とリリアナ。
「様式は自由ってことよ」
「ギルド案件だから、“通路”を使える?」とジーヌ。
「期間中は何度でも」

「すごく、良い条件」とリリアナ。
「よく残ってたわね」とジーヌ。
「ジーヌ、ギルド案件は誰でもOKじゃないのよ」とフィネ。

一同、えっ?!

「こちらが驚くわ。誰でもOKだと思ってたの?」とフィネが笑った。

「だって、ギルド案件多いし。費用安いし。人気無いかと」と俺。
「確かに費用は安いけれど重要だからギルド案件なの。人気あるのよ」とフィネ。

「私達はいいの?」とリリアナ
「マリタもリリアナも術式に詳しいでしょう。内容にあった人ならOKよ」

そういうことならマリタとリリアナが行って、店のことがあるからマリタは時々帰ってくるというのはどうだろう?

「ジーヌも行けば?」とフィネ。
「私は術式詳しくないけど」
「でもハルホレの誇る結界師でしょう?」

確かに。
でもそれって実技枠ですか?

「実際にいろいろ試した方が話は早いわ」とフィネ。
なんかフィネって結構大胆だ。

では3人でお願いします。
俺とエルネスは図書館に通わなくていいので内心ホッとしている。

「そうだ、バンにお土産でアンジェルケーキを買って行くと良い」と俺。
お世話になったし、ケーキ好きだし。
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