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その商人は私なの

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ノビッシュのギルドの会議室。
タイリーとバン、それに俺たちだ。

テーブルに”依頼”が表示された。

依頼:商人の護衛 (護衛職)
場所:ノビッシュ
概要:境界域内 
達成:- 期間:1ヵ月間 費用:* 買取価格:-
違約金:- 闘技等級:B チーム:指定あり** 
注記: *ギルド案件 **チーム名指定(ハルホレ)

「この商人は内陸部に入る」とバン。

そういえば、ノビッシュから箱車で十数日の距離にフィラーという町がある。
そこから“深い森”を抜けて、砂漠に沿って1月程歩くと、湖がある。
湖周辺の一番近い町が交易所。
と以前に言っていたな。

「フィラーに住む特定の一族を魔族は受け入れるらしいけど、この人がそう?」と俺。
「そういう人でもし護衛が必要なら、今更依頼なんかだす?」とジーヌ。

「その商人は私なの」とタイリー。
さすがに驚いた。

タイリーが説明してくれた。
一族は政治には関わらない。
タイリーは一族の出身だが、ノビッシュの首長なので一族として内陸部には行かない。
交易所にも行かないし、途中にある砂漠の村で魔族に合う。

一族のひとりが案内と言葉のために同行するが、それ以外には関与しない。
だから一族の護衛も付かない。

「それにしても、護衛くらいノビッシュにいくらもいるだろう?」と俺。
「だってお風呂入りたいでしょ?」とタイリー。
「からかうな」とバン。

実際は、浄化しないと死ぬから。
ひと月近くだとキューブでは持たない。

一族は特別な薬を飲むそうだ。
だが、薬自体に依存性があるし副作用もあるらしい。
首長であるタイリーが薬を飲むわけにはいかない。

フィラーから南に箱車で3日の距離にロッタという町がある。
ノビッシュとベランの中間の町で、共同管理されている。
ノビッシュとベランにしか繋がっていないが、“通路”がある。

「“通路”でロッタに入って、箱車でフィラーに向かう。その途中から“深い森”に入る」とバン。
「“深い森”を抜けるのに2日、そこから7日くらいで砂漠の村がある」とタイリー。

「往復で20数日というところか」とエルネス。
「そんなに空けても大丈夫なの?」とリリアナ。
「2週間程の外遊予定で結局伸びたことにするけど、それは問題では無い」
とタイリー。

「人族と魔族は相互不干渉が鉄則。それが破られることはなかった」とタイリー。
「だが今は魔族が人族と亜人族の争いに関与している。聖騎士団同士の殺し合いは関与の証拠だ」とバン。

「恐らくは、森の民」とタイリー。
「森の民?」とジーヌ。
「森人みたい」とリリアナ。
「たぶん似た部分が多いと思う」とタイリー。
「わかってないの?」とジーヌ。
「私たちと接触があるのは湖の民だけ」とタイリー。

「魔族については、図書館でじっくりと調べてみたいわね」とリリアナ。
「それは別件として、カミロに伝えてチーム名指定の“依頼”をだしてもらう」とバン。

チーム名指定で図書館?
エルネスと顔を見合わせた。

「出発は5日後になる」とタイリー。

内陸部を旅するのか。
どんな準備が必要なんだろうか?

***

第2部完、次回から第3部。
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