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025 番外編 ツガイシステムと第六感3
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エスメルダ王国主催の舞踏会は、盛大な盛り上がりを見せていた。独身の男女はもちろんのこと、既婚者である夫婦も着飾って参加している。
今日の私は、夫であるオリヴァー殿下の瞳の色に合わせた淡い青いシフォン素材のものだ。
襟ぐりには繊細なレースが施され、腰元のリボンは控えめな花柄の刺繍があしらわれているもの。
「やっぱり君が一番美しい。君を妻にと感じた僕の第六感は間違ってなかったようだ」
黒い夜会服に身を包んだオリヴァー殿下は得意げに私に告げる。
「ありがとうございます。殿下も誰よりも素敵です。でもツガイシステムだって、私たちの未来を示していた事をお忘れなく」
さりげなくツガイシステムの正当性をアピールしてしまうのは、もはや職業病だと言える。
なんとなく文化の違いによる、わだかまりを抱えた私たちは、出席者からの挨拶を受ける。
そして一通り公式的な用事を済ませた私は、今日のメインイベント。クリスティナとトム様を引き合わせるべく、一旦オリヴァー殿下と別行動を開始する事にした。
「トム様と、クリスティナ様はどこかしら……」
私はかつてないほど賑わう会場の中をキョロキョロと見渡す。
「きゃぁ!!」
突然、会場の隅で小さな悲鳴が上がった。私は反射的にその声の方へ視線を向ける。
そこにはトム様の胸の中に倒れこむ、クリスティナ様の姿があった。
「え、なにがあったの?」
私は慌てて、二人の元へと急ぐ。
「怪我はない?」
トム様がクリスティナ様を庇うように抱えたまま、優しく問いかけている。
「ええ、私は大丈夫ですわ」
彼女はトム様の胸に手を当て、恥ずかしそうに答えた。真っ赤な顔で恥じらうクリスティナ様は、どこかポーツとした様子でトム様を見つめている。
(まるで今まさに、恋に落ちた人のように見えるんだけど)
以前、騎士団の訓練場で「運命を感じる」とオリヴァー殿下を名指ししていた時よりずっと、クリスティナ様は乙女全開な表情になっているように見えた。
「それは良かった。怪我がなくて何よりだ」
トム様は安心したように微笑むと、クリスティナ様を支えながらその場に立たせる。
「では、私はこれで失礼する」
紳士的なのか、それとも少し鈍感なのか。
クリスティナ様の向ける、明らかに熱のこもる視線を完全に無視したトム様が、その場を颯爽と、それこそ何事もなかったかのように離れようとした。
(行かせてなるものか!)
私は一歩足を踏み出した。
ところが。
「あのっ! あなたのお名前をお聞かせくださいませんか」
クリスティナ様は勇気を振り絞ったように、トム様の背中に声をかける。
「これは失礼しました。私はグランジ伯爵家のトムです」
「トム様……素敵な響きですね。私はトンプソン伯爵家のクリスティナと申します。その、で、出来たら私と一曲踊っていただけませんか?」
クリスティナ様の誘いに、今まで遠巻きに様子をうかがっていた周囲からどよめきの声があがる。
それもそのはず。通常ダンスに誘っていいのは、男性からというのが我が国における社交界のセオリーだからだ。
「君のような美しい女性に誘って頂けるなんて、これは夢かな?私で良ければ、是非喜んで」
トム様は優しく微笑み、クリスティナ様の手を取る。
「ありがとうございます」
二人は見つめ合い、お互いに幸せそうな笑みを浮かべていた。
「一体なにが起きたの?」
「まさに今のが、第六感に従った者が恋に落ちる瞬間だろうね」
背後から私の耳元にささやくように、オリヴァー殿下の声が届いた。
「殿下!」
私が振り返ると、彼はいつの間にやら私の背後に立っていた。
「懐かしいよ。なぜならば、僕が君を特別だと感じた瞬間もあんな感じだったからね」
オリヴァー殿下は愉快そうな顔で告げると、私の腰に手を回す。
「実際に人が恋に落ちる瞬間を目の当たりにした感想を、ぜひ聞かせて欲しいな」
「それは」
混乱した頭のまま私が言いかけると、オリヴァー殿下が私の口に人差し指をあてた。
「ゆっくり話せる場所に行こうか」
オリヴァー殿下は意味ありげな笑顔を見せると、私の腰を抱き寄せて歩き出す。私は訳もわからず、引きずられるようにして、その場を後にするのであった。
***
エスメルダ王国の王城の中庭。
噴水のある小道をゆっくりと歩むオリヴァー殿下と私。
夜風が火照った体を冷まし、私の混乱する思考も状況を捉えてきた。
何が原因かわからない。けれどトム様とクリスティナ様は、とてもいい雰囲気だった。
私は今日まで、少しでもツガイシステムに認識される確率をあげるために、初対面となる二人の会話がスムーズに行くよう、二人にまつわるデーターを収集する事に時間を割いていた。引き合わせた私が二人の共通点などをさりげなく知らせれば、少なくとも好意を持つと思ったのだ。
それに完璧な仲人になるための本だって何冊も読破した。
「けど、全部無駄だったってこと?」
私はポツリと呟く。
「そうとも言えないんじゃないかな」
「でも、二人は私が紹介する前に、何だかいい雰囲気に勝手になっていました」
(まるで一目惚れをしたみたいに)
誰かに仕組まれたかのように、あまりに出来過ぎているような気がしてならない。けれどあの二人が出会ったことに、私は一切関与していない。
関与する前に、勝手にあの状態になっていたのである。
「確かにトムとクリスティナ嬢は出会ってすぐに惹かれ合っていたようだね。あの二人がツガイシステムに示されなかったら、どうするんだろうって、こっちがヒヤヒヤするくらいに」
オリヴァー殿下は落ち着いた口調で告げる。
(ツガイシステムがあの二人を示さない可能性)
そんなことありえない。ふと私はそう感じた。
(あぁ、そうか)
私の中に、この状況に納得できる言葉がストンと落ちてくる。
「たぶん週明け、ツガイシステムはあの二人を示すと思うんです」
「どうしてそう思うんだ?」
「理由は……私がそうなって欲しいと願う気持ちもありますけど」
私は浮かんだ言葉を口にするのに、とても緊張する。それでも、これはいまこの瞬間だからこそ伝えなければと勇気を出して口を開く。
「第六感です」
オリヴァー殿下が満足げな表情になる。
「そもそもツガイシステムは、好きな人とマッチングされてきた歴史があるかも知れないんです」
私はクリスティナ様が独自に導き出した、あながち間違っていないと思われる仮説を彼に説明する。
「あとはさっきの二人を見て、人が恋に落ちる瞬間って、たぶんわかりやすく他人に提示出来る理由なんかないんだなって、そう思いました」
それはもはや第六感と同じようなもの。
私はそう認めざるを得ない。
「そういう事だったんですね」
私は一人納得する。
オリヴァー殿下に出会うまで、私はツガイシステム至上主義だった。だから寄り道をする恋なんて無駄だと思い込んでいた。けれど、実際は寄り道こそ本筋で、大事だったようだ。
「そもそも私と殿下が出会った事は偶然じゃない」
「うん、必然だ。同盟締結百七年を記念して、政略結婚の話が上がっていたわけだし、僕たちは出会うべくして出会った」
「そんなふうに、あっさりと認められると、何だか私たちの関係が、味気ないものに思えてきちゃいます」
私は少しだけ拗ねた声をあげる。
「だけどさ、僕らが運命だと思えばそれが真実になるわけで。結局のところ、この世界に数えきれないほどいる人の中、たった一組として結ばれて夫婦になったこと。それってやっぱりすごい奇跡みたいなことだと思うし、運命だ」
オリヴァー殿下がふわりと微笑む。
「はい。私は運命も奇跡も、そして第六感も信じることにします」
私はついに、負けを認める。
「あんなにシステム至上主義だった子の口から飛び出すと、なんか感慨深いなぁ。しかもそうさせたのは少なからず僕の影響もあるという事実に、なんだろう。こうグッとくるものがある」
オリヴァー殿下はしみじみと告げる。
「すみません」
私はバツが悪くなり、つい謝ってしまう。するとオリヴァー殿下はポンと私の頭に大きな手のひらを乗せた。
「別に責めてる訳じゃないよ。むしろ感謝しているんだ」
「え?」
「君が第六感を認めてくれたおかげで、僕らは歩み寄る準備が出来たってこと。もちろん僕だってツガイシステムを全否定するのはやめるつもりだ」
私の頭から手を離したオリヴァー殿下は、私を真っ直ぐ見据えて言う。
「勝ち負けはなしの引き分け。これからもずっと僕たちの勝負は引き分けだ」
「ずっと、ですか?」
「そう。夫婦なんだし、もう勝ち負けにこだわるのはなし。これからは協力して、それでずっと僕の隣を歩いてくれるといいんだけど。だめかな?」
オリヴァー殿下の真剣さが伝わり、私は胸を高鳴らせる。
「私で良ければ喜んで。というか、殿下が嫌って言ったって、まとわりつくことにします」
私は大好きな夫の腕にしがみつく。
「ねぇ、アリシア」
オリヴァー殿下に甘い声で名を呼ばれ私は顔をあげる。
「キスしてもいい?」
私は返事の代わりにゆっくりと目を閉じた。するとオリヴァー殿下が指先で私の顎を上にあげる。それから私の唇に柔らかなものが触れた。
ツガイシステムに第六感。
本人が幸せなら、たぶんどっちも正しい。
そして引き分け。
共に生活する夫婦にとっては、これ以上ないくらい、平和な解決方法だ。
私は今、オリヴァー殿下を愛おしく思う。そして彼と共に進む未来は、私が待ち望んだぶん、幸福に満ち溢れているものだ。
(色々あったけど、やっぱり行き遅れ令嬢で良かった)
私は心の底から、結婚式の時と同じ。
再度そう感じたのであった。
***ツガイシステムと第六感。おしまい***
今日の私は、夫であるオリヴァー殿下の瞳の色に合わせた淡い青いシフォン素材のものだ。
襟ぐりには繊細なレースが施され、腰元のリボンは控えめな花柄の刺繍があしらわれているもの。
「やっぱり君が一番美しい。君を妻にと感じた僕の第六感は間違ってなかったようだ」
黒い夜会服に身を包んだオリヴァー殿下は得意げに私に告げる。
「ありがとうございます。殿下も誰よりも素敵です。でもツガイシステムだって、私たちの未来を示していた事をお忘れなく」
さりげなくツガイシステムの正当性をアピールしてしまうのは、もはや職業病だと言える。
なんとなく文化の違いによる、わだかまりを抱えた私たちは、出席者からの挨拶を受ける。
そして一通り公式的な用事を済ませた私は、今日のメインイベント。クリスティナとトム様を引き合わせるべく、一旦オリヴァー殿下と別行動を開始する事にした。
「トム様と、クリスティナ様はどこかしら……」
私はかつてないほど賑わう会場の中をキョロキョロと見渡す。
「きゃぁ!!」
突然、会場の隅で小さな悲鳴が上がった。私は反射的にその声の方へ視線を向ける。
そこにはトム様の胸の中に倒れこむ、クリスティナ様の姿があった。
「え、なにがあったの?」
私は慌てて、二人の元へと急ぐ。
「怪我はない?」
トム様がクリスティナ様を庇うように抱えたまま、優しく問いかけている。
「ええ、私は大丈夫ですわ」
彼女はトム様の胸に手を当て、恥ずかしそうに答えた。真っ赤な顔で恥じらうクリスティナ様は、どこかポーツとした様子でトム様を見つめている。
(まるで今まさに、恋に落ちた人のように見えるんだけど)
以前、騎士団の訓練場で「運命を感じる」とオリヴァー殿下を名指ししていた時よりずっと、クリスティナ様は乙女全開な表情になっているように見えた。
「それは良かった。怪我がなくて何よりだ」
トム様は安心したように微笑むと、クリスティナ様を支えながらその場に立たせる。
「では、私はこれで失礼する」
紳士的なのか、それとも少し鈍感なのか。
クリスティナ様の向ける、明らかに熱のこもる視線を完全に無視したトム様が、その場を颯爽と、それこそ何事もなかったかのように離れようとした。
(行かせてなるものか!)
私は一歩足を踏み出した。
ところが。
「あのっ! あなたのお名前をお聞かせくださいませんか」
クリスティナ様は勇気を振り絞ったように、トム様の背中に声をかける。
「これは失礼しました。私はグランジ伯爵家のトムです」
「トム様……素敵な響きですね。私はトンプソン伯爵家のクリスティナと申します。その、で、出来たら私と一曲踊っていただけませんか?」
クリスティナ様の誘いに、今まで遠巻きに様子をうかがっていた周囲からどよめきの声があがる。
それもそのはず。通常ダンスに誘っていいのは、男性からというのが我が国における社交界のセオリーだからだ。
「君のような美しい女性に誘って頂けるなんて、これは夢かな?私で良ければ、是非喜んで」
トム様は優しく微笑み、クリスティナ様の手を取る。
「ありがとうございます」
二人は見つめ合い、お互いに幸せそうな笑みを浮かべていた。
「一体なにが起きたの?」
「まさに今のが、第六感に従った者が恋に落ちる瞬間だろうね」
背後から私の耳元にささやくように、オリヴァー殿下の声が届いた。
「殿下!」
私が振り返ると、彼はいつの間にやら私の背後に立っていた。
「懐かしいよ。なぜならば、僕が君を特別だと感じた瞬間もあんな感じだったからね」
オリヴァー殿下は愉快そうな顔で告げると、私の腰に手を回す。
「実際に人が恋に落ちる瞬間を目の当たりにした感想を、ぜひ聞かせて欲しいな」
「それは」
混乱した頭のまま私が言いかけると、オリヴァー殿下が私の口に人差し指をあてた。
「ゆっくり話せる場所に行こうか」
オリヴァー殿下は意味ありげな笑顔を見せると、私の腰を抱き寄せて歩き出す。私は訳もわからず、引きずられるようにして、その場を後にするのであった。
***
エスメルダ王国の王城の中庭。
噴水のある小道をゆっくりと歩むオリヴァー殿下と私。
夜風が火照った体を冷まし、私の混乱する思考も状況を捉えてきた。
何が原因かわからない。けれどトム様とクリスティナ様は、とてもいい雰囲気だった。
私は今日まで、少しでもツガイシステムに認識される確率をあげるために、初対面となる二人の会話がスムーズに行くよう、二人にまつわるデーターを収集する事に時間を割いていた。引き合わせた私が二人の共通点などをさりげなく知らせれば、少なくとも好意を持つと思ったのだ。
それに完璧な仲人になるための本だって何冊も読破した。
「けど、全部無駄だったってこと?」
私はポツリと呟く。
「そうとも言えないんじゃないかな」
「でも、二人は私が紹介する前に、何だかいい雰囲気に勝手になっていました」
(まるで一目惚れをしたみたいに)
誰かに仕組まれたかのように、あまりに出来過ぎているような気がしてならない。けれどあの二人が出会ったことに、私は一切関与していない。
関与する前に、勝手にあの状態になっていたのである。
「確かにトムとクリスティナ嬢は出会ってすぐに惹かれ合っていたようだね。あの二人がツガイシステムに示されなかったら、どうするんだろうって、こっちがヒヤヒヤするくらいに」
オリヴァー殿下は落ち着いた口調で告げる。
(ツガイシステムがあの二人を示さない可能性)
そんなことありえない。ふと私はそう感じた。
(あぁ、そうか)
私の中に、この状況に納得できる言葉がストンと落ちてくる。
「たぶん週明け、ツガイシステムはあの二人を示すと思うんです」
「どうしてそう思うんだ?」
「理由は……私がそうなって欲しいと願う気持ちもありますけど」
私は浮かんだ言葉を口にするのに、とても緊張する。それでも、これはいまこの瞬間だからこそ伝えなければと勇気を出して口を開く。
「第六感です」
オリヴァー殿下が満足げな表情になる。
「そもそもツガイシステムは、好きな人とマッチングされてきた歴史があるかも知れないんです」
私はクリスティナ様が独自に導き出した、あながち間違っていないと思われる仮説を彼に説明する。
「あとはさっきの二人を見て、人が恋に落ちる瞬間って、たぶんわかりやすく他人に提示出来る理由なんかないんだなって、そう思いました」
それはもはや第六感と同じようなもの。
私はそう認めざるを得ない。
「そういう事だったんですね」
私は一人納得する。
オリヴァー殿下に出会うまで、私はツガイシステム至上主義だった。だから寄り道をする恋なんて無駄だと思い込んでいた。けれど、実際は寄り道こそ本筋で、大事だったようだ。
「そもそも私と殿下が出会った事は偶然じゃない」
「うん、必然だ。同盟締結百七年を記念して、政略結婚の話が上がっていたわけだし、僕たちは出会うべくして出会った」
「そんなふうに、あっさりと認められると、何だか私たちの関係が、味気ないものに思えてきちゃいます」
私は少しだけ拗ねた声をあげる。
「だけどさ、僕らが運命だと思えばそれが真実になるわけで。結局のところ、この世界に数えきれないほどいる人の中、たった一組として結ばれて夫婦になったこと。それってやっぱりすごい奇跡みたいなことだと思うし、運命だ」
オリヴァー殿下がふわりと微笑む。
「はい。私は運命も奇跡も、そして第六感も信じることにします」
私はついに、負けを認める。
「あんなにシステム至上主義だった子の口から飛び出すと、なんか感慨深いなぁ。しかもそうさせたのは少なからず僕の影響もあるという事実に、なんだろう。こうグッとくるものがある」
オリヴァー殿下はしみじみと告げる。
「すみません」
私はバツが悪くなり、つい謝ってしまう。するとオリヴァー殿下はポンと私の頭に大きな手のひらを乗せた。
「別に責めてる訳じゃないよ。むしろ感謝しているんだ」
「え?」
「君が第六感を認めてくれたおかげで、僕らは歩み寄る準備が出来たってこと。もちろん僕だってツガイシステムを全否定するのはやめるつもりだ」
私の頭から手を離したオリヴァー殿下は、私を真っ直ぐ見据えて言う。
「勝ち負けはなしの引き分け。これからもずっと僕たちの勝負は引き分けだ」
「ずっと、ですか?」
「そう。夫婦なんだし、もう勝ち負けにこだわるのはなし。これからは協力して、それでずっと僕の隣を歩いてくれるといいんだけど。だめかな?」
オリヴァー殿下の真剣さが伝わり、私は胸を高鳴らせる。
「私で良ければ喜んで。というか、殿下が嫌って言ったって、まとわりつくことにします」
私は大好きな夫の腕にしがみつく。
「ねぇ、アリシア」
オリヴァー殿下に甘い声で名を呼ばれ私は顔をあげる。
「キスしてもいい?」
私は返事の代わりにゆっくりと目を閉じた。するとオリヴァー殿下が指先で私の顎を上にあげる。それから私の唇に柔らかなものが触れた。
ツガイシステムに第六感。
本人が幸せなら、たぶんどっちも正しい。
そして引き分け。
共に生活する夫婦にとっては、これ以上ないくらい、平和な解決方法だ。
私は今、オリヴァー殿下を愛おしく思う。そして彼と共に進む未来は、私が待ち望んだぶん、幸福に満ち溢れているものだ。
(色々あったけど、やっぱり行き遅れ令嬢で良かった)
私は心の底から、結婚式の時と同じ。
再度そう感じたのであった。
***ツガイシステムと第六感。おしまい***
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