男性保護特務警護官~あべこべな異世界は男性が貴重です。美少年の警護任務は婚活です!

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第一章 着任します!男性保護特務警護官

プロローグ 男性保護特務警護官

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 ここはとある宇宙のとある惑星のとある国。

 ――そして、男性の比率が人口の五%未満というヘンテコな世界である。

 はっきり言って、女性にとってたまったものじゃない世の中だ。周りを見渡しても、女、女、女! と女性だらけ。なんせ単純計算で人が百人集まっても男性は五人以下となる。

 彼氏は? 旦那は? いやいや、なんですかそのアルティメットレア? とまあ、男一人をゲットしたいと思っても、冗談にならない悪夢の競争率を誇る世界なのだ。

 そんな世の女性にとって貴重で大切な男性は、種の存続上を理由に保護対象となっている。女性が守護まもらねばならぬ存在なのである。

 保護と言えば聞こえはいいが、『このままだと人類滅んじゃうよ』と理由が理由なので、男性には多くの義務が設けられていたりする。

 例えば、強制一夫多妻制――最低三人の女性と二十五歳までに結婚しなければらない。であったり、遺伝子提供――遺伝子バンクへの精液提供を一定年齢まで続けなければならない。などだ。

 当然、男女の立場も違う。一言で表すなら極端な男女逆転現象。男性は狩られる側なのである(性的に)……うん、もう色々ダメなんじゃないかな? この世界。


 ――さて、日本で言えば都市部にあたるであろう街並みの中を黒のセダン車が走っている。いや、たまに蛇行して怪しい動きをしている。運転しているのは女性、助手席に乗っているのは男性だ。

「うーん。やっぱ、街並みは僕の世界とほとんど変わらないですね」
「そっか、うん。それは良かった」 
「えっ、良かった? どうい――って、み、深夜子みやこさん!? なんで僕を見てるんですかっ!? う、運転。前っ、前を見て運転してください! はみ出ます! このままだと対向車線にはみ出ちゃいますよ!」

 運転中にも関わらず、深夜子と呼ばれた女性の視線は男性へと向いていた。学生服姿の男性はあたふたしながら注意をする。見たところ年齢は高校生くらい。少し幼げで、中性的な顔立ちの美少年だ。彼の名前は『神崎かんざき朝日あさひ』偶然にもこの世界に迷い込んでしまった日本人である。

「ふああああっ!? し、失礼っ! 話しかけて貰うと嬉しくて、無意識に意識が朝日君に釘付け。むう、反省。頑張れあたし」
「えええええ……だ、大丈夫ですか?」
 さすがは男性比率五%以下の世界の女性。美少年との会話は優先度マックスなのだ。もちろん大丈夫な訳が無いので運転には集中していただきたい。

 気を取り直してハンドルを握りしめ、独特な口調で返事をする彼女の名前は『寝待ねまち深夜子みやこ』。服装はダークグレーのスーツ。ミディアムストレートの黒髪、整った顔立ちだが、目つきがきつくて怖い美人。そんな雰囲気の女性だ。現在、神崎朝日の身辺警護を担当をしている警護官である。
 
「集中。運転に集中。……あっ、え、えーと。まあ、朝日君に違和感がないのは重要。精神的負担が少くてすむ」
「あー、そうですね。確かにそうかも知れません。ところで、あの……深夜子さん。ちょっと僕、のどが渇いてしまって……」
「ふえっ、それは大変! うん。じゃ、近くのコンビニにすぐよる。むしろ大至急!」

 そんなに大した事を言ったつもりでは無かった朝日だが、深夜子は過剰な反応を見せた。

「いや……そんなに急がなくても大丈夫ですけど……はは」

 そう、やはりここは男性比率五%以下の世界。とにかく何かにつけて男性には甘いのだ。

 数百メートル進んだところでコンビニを見つけて駐車場へと入る。都市部だけあって客の出入りも多い。しかし、店員も、客も、行き来する通行人すらも女性のみ・・・・で男性は一人も見当たらない。

 車の窓越しの風景に、朝日は自分が異世界にいるのだと言うことを少しだけ自覚する。

「じゃあ僕、先に店で飲み物選んでますね」
「らじゃ」
 実に自然体で車を降りた朝日はコンビニへと向かう。深夜子もついつい流れで返事をして、彼を見送っ――てはいけない!!
「はうあっ!? んのおおおおおおおお! あっ、あああ朝日君!? ダッ、ダメええええええ! ここ特区・・じゃないから。こっ、ここここれはやばばば――――ぐへえっ!?」

 えらいこっちゃ! その殺し屋のような外見からは、想像もできない残念な焦り方を見せる深夜子。店内へと入って行く朝日の姿に、シートベルトを外すのすら忘れて運手席から飛び出そうする。

 この世界で美少年がコンビニに一人で入る行為が何を意味するのか。


 ――朝日が店内に入った途端に一人の女性が「こんな美少年見たことない!」と騒ぎ始めたが最後であった。

「飲み物が欲しいの? じゃあ、お姉さんが買ってあげるからちょっといっしょにお茶しない? いや、しよ? ね、しちゃおう? むしろシちゃおう!」
「ねえねえ、君どこから来たの? 一人? めちゃくちゃかわいいね、というか天使だよね? 抱きしめていい? いいよね?」
「ヤバいよ。これはヤバいよ。この子ほんとヤバいよ。何でもしてあげるからお姉さんの家に来ない? いや、そうだ連れて帰ろう! うん。そうしよう!」 

 次から次へと女性たちに囲まれ、あれやこれやとアプローチを受ける。逃げようにも人数は増え、さもすれば襲われかねない勢いになる。

「え? その……ぼ、僕は……あの――」
 朝日はなんとも言えない恐怖を覚えた。

 次の瞬間。
 一番目の前にいた二人の女性が突然白目をいて、糸が切れた操り人形のように崩れ落ちる。その後ろから現れたのは、無理やり引きちぎったらしきシートベルトを身体に巻き付け、手刀を放ったポーズで息を切らせている深夜子であった。ところでシートベルトは人の力で引きちぎれるものでしたっけ? と考える余裕は朝日にない。

「はぁっ、はぁっ……ふうっ、ふうっ……あ、あたしは男性保護だんせいほご特務警護官とくむけいごかんの寝待深夜子。朝ひ――この男性に手を出したらダメ。対暴女法の適用で排除確定」
 右の手刀を伸ばし、右足を軽く上げてビシリとポーズを決める。構え自体は堂に入ったものだが、シートベルトがぶら下がっているのでなんか残念!

「ちいっ! やっぱり警護官がついてたのね?」
「いや、一人でしょ? コイツ一人ならなんとかなるんじゃないの?」
「そうよね……こんな可愛い男の子を前に対暴女法が――――なんぼのもんじゃーい!」

 数人の女性が数を頼りに深夜子に襲いかかる。しかし一閃! 超速の蹴りが彼女らのあごを的確に捉えた。朝日には深夜子がいつ蹴りを放ったかすらわからなかった。この世界の女性たちの身体能力は朝日の常識を遥かに超えているようだ。

 意識を手放しバタバタと倒れ行く暴女たちを深夜子が見下ろす。その視線はチラリと朝日へ向う。これは……決まったな――。
『み、深夜子さんカッコイイ! 素敵! っちゃう!(ぽっ)』
『ふっ……朝日君。男の子がそんなはしたないことをいっちゃダメ(キラリーン)』
『結婚しよ!』
『いいですとも!』
 ――処女特有の妄想。コンマ数秒で病的な妄想を描いた深夜子が現実に帰還する。

「ふっ……大丈夫だった? 朝日君。あたしがカッコよすぎて――あれ?」
「あっ……ああ……ご、ごめんなさい。深夜子さん……僕、僕」
 目の前の美少年は顔を真っ青にして涙目。おまけに腰も抜かしていた。あらら。
「ちょおおおおおおっ!? あ、朝日君? あ、あああああたしは淑女! それはもう伝説のスーパー淑女! うえっ!? その姿勢で後ずさらないで、泣かないで……こ、怖くないよ。あたし怖くない! あっ、そうだ、かくし芸! あたしかくし芸するから――」

 圧倒的な女性比率が原因となり、男性を対象としたストーカー行為に性的暴行。果ては拉致、監禁など。女性たちによる性犯罪が社会問題の一つとなっている。
 
 ――ご覧の通り、この世界で男性に身辺警護は必須である。

 男性保護特務警護官【Male protective special guard officer】通称Mapsマップス

 Mapsは国家行政機関の一つ『男性保護省』の直下組織。つまるところ国家公務員の身で男性警護が任務の(女性的に)パーフェクトにしてエクセレントな職業である。公務員ゆえの法的な制限はあれど、任務内容は男性と生活を共にすることが多い。自然と彼らの信頼を得ることが可能だ。

 男日照りという言葉すら生ぬるいこの世界で、たくましく生き抜いている女性たちがその好機を逃すはずがない。男性の同意が得られたならば、それすなわち生涯男性警護ゴールインとなるのだ。


 ――これは男性警護こんかつにいそしむ寝待深夜子ら男性保護特務警護官たちと。この世界に迷い込んでしまった美少年、神崎朝日の物語である。
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