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第一章 着任します!男性保護特務警護官
第三話 神崎朝日との出会い
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「すぅーはぁー、ひっひっふー……よし!」
深夜子は心を落ち着けながら、必死に深呼吸をする。そして――。
「あたし、寝待深夜子。あなたの身辺警護と生活補助をまかされた。よろしく」
うん。これでいつものペースだ。
「寝待深夜子さんですね。これからよろしくお願いします。僕のことは朝日と呼んでくださいね」
よし挨拶成立! しかし、まだ序盤も序盤。将棋で言うなれば駒組みの段階だろう。ここから――ち、ょ、っ、と、ま、て、!?
今、なんと言った? 『朝日と呼んでくださいね』……だと!?
男の子から、自分を下の名前で呼んでいいよ。なんて……何その最初からクライマックスの激アツイベント!? 妄想じゃね? 夢見てる? 深夜子は自分が現実の世界にいるか疑ってしまう――が、舌を噛んでみたら現実だった。ひゃっふう。
現実ならば呼ばない理由がない。むしろ呼ばせてください。さあ呼ぶぞ!
「んふぅん、ひんむははくひつにこなひゅ。あんひんひてあはひきゅうん(うん、任務は確実にこなす。安心して朝日君)」
「もう何を言っているのかまったくわからんぞ?」
深夜子にとって、こんなことは初めてだった。普通に、いや、好意的に接して貰えるとはこんなにも違うことなのか。
今までに出会った男性たちとは全く違う。中身も、外見も。実物を見れば、はっきりとわかる。健康的な肌、適度に筋肉がついて引きしまっている身体。ああ、なんと情欲を煽り立てる――――っ!? やってしまった。
ついつい朝日の足元から顔まで、全身をくまなく、下から上まで舐めるようにガン見してしまった。深夜子は焦って目をそらす。過去に同じような失敗を何度もしていたのだ。
だが、朝日はニコニコとした表情のままだ。自分の目つきが怖くないのだろうか? やせ我慢をしているようにも見えない。しかし、今までが今までなのでどうにも確信が持てない。
悩んだ挙句、深夜子は勇気をふりしぼり直接聞いてみることにした。
「あの……あたしの……目。その、こ、怖くない?」
「えっ、目? ああ、そうですね。少しキツイ感じはしますけど、僕はそんなに気にならないかな。んー、なんていうのか……うん! それよりもカッコイイ目だなって思います。凛々しい感じがしますよ」
「んなあっ!?」
絶句。朝日からいともたやすく素敵すぎる感想が返ってきた。しかも、さわやかな笑みのサービス付きである。深夜子にかつてない衝撃が走った。
――かっこいい? かっこいい!? かっこいい!! 凛々しい? 凛々しい!? 凛々しい!! 深夜子さん素敵っ! 抱いてっ! ……頭の中で甘美な言葉がこだまする。もう、顔中の穴という穴から蒸気が噴出寸前だ。ついでに言うと、下の穴も別の意味で大ピンチ。
これは、女殺しなどというレベルではない『対女性無差別大量殺戮兵器』と呼んでしかるべき存在である。
こんな、このような素敵な男性がこの世に存在するなんて!? 心の底から感動を禁じえない。深夜子の鼻や耳から蒸気が吹き出す。口からは『げへっふえうぇへへへ!』と感激のいななきが漏れかけた――おっと、危ない。ギリギリで踏みとどまる。危うく再度の失態を犯すところであった。セーフ!
さあ、それではお礼を言わなければなるまい。この愛らしい天使に! 自分を受け入れてくれて『ありがとう』と! 口べたで、目つきの怖い自分だけど、精一杯を伝えよう! 深夜子は”頭”でなく”心”で決めた。
「あっ、ああっ、ありが――――ぷっしゅー」
轟沈。
「おい、深夜子? 深夜子!?」
まるで電池でも切れたかのように、深夜子の視界はそこで暗転した。なんたる失態。
「あはは。寝待さんは面白い人なんですね」
――それでも朝日は笑ってくれていた。
――薄れゆく意識の中で『なんて言いますか、もう宇宙は常に膨張して新しく産まれ続けているんですよね』と、悟りの境地に達した気がする深夜子であった。
こんなやり取りを何度か繰り返し、朝日とまともにコミュニケーションが取れるようになるまでに丸一日を費やした。翌日。二人は朝日の生活拠点となる場所へ向け、国より支給された黒のセダン車に乗って任務開始となったのである。
「――朝日君、本当に反省。あたしの説明不足」
「いや、僕も矢地さんから聞いてたことの認識が甘かったです。こちらこそごめんなさい」
出発からしばらくして、コンビニで暴女たちの襲撃を受ける事となる。その後、朝日の精神的負担を考慮して寄り道は考えず、目的地への移動を最優先に深夜子は切り替えた。
「ところで、深夜子さんって凄く強いんですね。びっくりしました」
「あっ、いやっ、その……朝日君。もう……怖くない?」
「えっ? あっ! あの時は少し驚いただけで、その……深夜子さんは怖くないですよ。強くてカッコイイと思いました」
「はうあっ!? えへっ、そそそそそうかな!? むへっ、ふはっ、でへ――」
頬を手で挟んで照れる深夜子。必然的にハンドルから手は離れている。
「うわあああっ!? みっ、深夜子さん前っ、前! 車線からはみ出てますよ!!」
「ほああっ? うわったああああ!?」
まるでコントだな。と言いたくなる朝日と深夜子の道中であった。
そう言えば、いつの間にか二人は下の名前で呼びあっていた。実はこの世界の女性にとって、男性と下の名前で呼び合うことは一生のうちに実現したいシチュエーションベスト10に入るイベントだ。ちゃっかり朝日にお願いして、攻略済みの抜け目無い深夜子である。
――車中で二人の会話は続く。
「そうだ。僕、生活する場所のことってあまり詳しく聞いてないのですけど」
「えーと。この曙区の南に位置してる春日湊という街。男性特区だから治安はとてもいい。男性福祉も充実してる。男性人口も一割近いよ」
コンビニであったようなことはここでは起きない。と深夜子が付け加える。
「男性が一割……それって、この世界では凄いことなんですよね?」
「うん。男性は保護の意味でこういった地域に集められてる」
「うっ……なんか微妙に闇を感じますね」
『曙区春日湊』
男性福祉対応型都市としてデザインされた国の重要管轄区――男性福祉特別区域。人口は約三十万人で、その一割が男性という通称『男性特区』だ。このような地域が国のあちらこちらに点在している。春日湊はその中でも最大級の一つである。
街の中心部にある大通りを抜けて郊外へ、すると周りは閑静な住宅街になった。その一部はゲーテッドタウンとなっており、深夜子の運転する車はそこを目指して進んでいた。
住宅街の中にある、壁に囲まれたもう一つの住宅街。検問所を車に乗ったまま通り抜ける。壁の内側には、外と比べ物にならない豪華な一軒家が建ち並んでいた。贅沢に土地を使い、一軒ごとに数十メートルの距離が取ってある。
深夜子はナビを確認し、その内の一軒に入って駐車場に車を止めた。
「到着。お疲れ様、ここが朝日君のお家」
「ちょっ!? ここって、めちゃくちゃな豪邸じゃないですか!」
日本の一般的な住宅の五倍はあろう敷地に、これまた二倍以上あろうサイズの二階建ての豪邸が建っている。
「このくらい当然。朝日君は特殊案件での保護男性だから余裕」
「いやいや……僕一人にいくらなんでも……これは……」
何が余裕かわからない。
「んー、資料で見たけど、朝日君の今までの生活環境。あたしたちからすれば虐待レベル」
「え???」
豊かな日本の一般家庭に育った自分の生活が虐待? これは常識の根本が違う。ふと、朝日は思い返した。そう言えば、自分の生活環境の聞き取りをしていた女性調査員。途中、目頭を押さえて嗚咽を漏らしていた気がする……。
それはともかく、この豪邸は男性が警護官と生活できるように、二世帯住宅に近い造りになっていた。さらに中に入ってから、朝日には驚きの連続である。
「なんだこれ……ひろっ!」
朝日一人が使う部分ですら5LDKの間取り。
「お風呂場も凄かったけど……キッチンもめちゃくちゃ充実してる。……この家、一体いくらかかってるんだろ?」
高校生の金銭感覚ではさっぱり計り知れない。家具や家電製品も、高級品や最新型と思われるものが遠慮なく揃っている。
さらに、この世界らしいと言うべきか。一部の部屋や出入口には生体キーも設置されており、ブライベートセキュリティも万全。果ては風呂、トイレは男女別など、徹底した作りとなっている。もう、朝日の口からはため息しか出てこなかった。
一方、こちらは個人の持ち物をせっせと積み込み中の深夜子。
「ふおあああっ!? こ、これはGRAVIA最新の65v型液晶テレビ! いいの? 使っていいの? いやっふぅ! ありがたやありがたや」
朝日の恩恵に預りまくり、最新家電の数々に歓喜の雄たけびを響かせていたのだった。
――小一時間ほどで荷物(主に深夜子のもの)の積み込みは終了。
現在、二人はリビングでソファーに腰掛けている。机の上にはお茶とお菓子に街の地図。その他、何枚かの書類が広げられていた。深夜子がその中の一枚を手に取り、これからの生活に向けて説明を開始する。
「朝日君。文字読むのは大丈夫?」
「はい。何故か会話と文字は日本語――えと、僕の国の言葉で見えたり聞こえたりします。ただ、書くのは無理で……僕が字を書いたら、深夜子さんたちに読めない字になりますね」
「らじゃ。んじゃ地図を見て、今いる場所はここ。外出するときは最低一人、基本二人はMapsたちが同行が必要。まだ全員着任してないから、お出かけは少し待って」
「わかりました……ところで僕、学生なんですけど……学校ってどうなるんですか? 男性保護省で話題に全く出なかったですけど」
「学校? んー、ここで義務教育は十二歳まで。男性は危ないから、以降学校に行く人はほとんどいない」
危ない? 聞き捨てならないキーワードが深夜子から放たれた。
「え? それって――」
この世界の義務教育は、第二次性徴が始まるであろう十三歳まで、日本基準の小学校卒業で完了だ。男女共学もそこで終る。上流階級の家庭のみで構成された地区に例外的な学区はあるが、義務教育後、ほとんどの女性は専攻に合わせた学校を選んで進学。それから社会に進出する。逆に男性は社会的に管理され始め、家から出ることが少なくなる。
仮に二次性徴の終わった女性たちの中に、同年代男性が混ざるなど、バターを体中に塗りたくって、雌犬の群れに飛び込むのと同義である。――あまりの内容に朝日は自然と指でこめかみを押さえた。
男性に生活力は求められない。
求められるのは性活力なのだ!
深夜子は心を落ち着けながら、必死に深呼吸をする。そして――。
「あたし、寝待深夜子。あなたの身辺警護と生活補助をまかされた。よろしく」
うん。これでいつものペースだ。
「寝待深夜子さんですね。これからよろしくお願いします。僕のことは朝日と呼んでくださいね」
よし挨拶成立! しかし、まだ序盤も序盤。将棋で言うなれば駒組みの段階だろう。ここから――ち、ょ、っ、と、ま、て、!?
今、なんと言った? 『朝日と呼んでくださいね』……だと!?
男の子から、自分を下の名前で呼んでいいよ。なんて……何その最初からクライマックスの激アツイベント!? 妄想じゃね? 夢見てる? 深夜子は自分が現実の世界にいるか疑ってしまう――が、舌を噛んでみたら現実だった。ひゃっふう。
現実ならば呼ばない理由がない。むしろ呼ばせてください。さあ呼ぶぞ!
「んふぅん、ひんむははくひつにこなひゅ。あんひんひてあはひきゅうん(うん、任務は確実にこなす。安心して朝日君)」
「もう何を言っているのかまったくわからんぞ?」
深夜子にとって、こんなことは初めてだった。普通に、いや、好意的に接して貰えるとはこんなにも違うことなのか。
今までに出会った男性たちとは全く違う。中身も、外見も。実物を見れば、はっきりとわかる。健康的な肌、適度に筋肉がついて引きしまっている身体。ああ、なんと情欲を煽り立てる――――っ!? やってしまった。
ついつい朝日の足元から顔まで、全身をくまなく、下から上まで舐めるようにガン見してしまった。深夜子は焦って目をそらす。過去に同じような失敗を何度もしていたのだ。
だが、朝日はニコニコとした表情のままだ。自分の目つきが怖くないのだろうか? やせ我慢をしているようにも見えない。しかし、今までが今までなのでどうにも確信が持てない。
悩んだ挙句、深夜子は勇気をふりしぼり直接聞いてみることにした。
「あの……あたしの……目。その、こ、怖くない?」
「えっ、目? ああ、そうですね。少しキツイ感じはしますけど、僕はそんなに気にならないかな。んー、なんていうのか……うん! それよりもカッコイイ目だなって思います。凛々しい感じがしますよ」
「んなあっ!?」
絶句。朝日からいともたやすく素敵すぎる感想が返ってきた。しかも、さわやかな笑みのサービス付きである。深夜子にかつてない衝撃が走った。
――かっこいい? かっこいい!? かっこいい!! 凛々しい? 凛々しい!? 凛々しい!! 深夜子さん素敵っ! 抱いてっ! ……頭の中で甘美な言葉がこだまする。もう、顔中の穴という穴から蒸気が噴出寸前だ。ついでに言うと、下の穴も別の意味で大ピンチ。
これは、女殺しなどというレベルではない『対女性無差別大量殺戮兵器』と呼んでしかるべき存在である。
こんな、このような素敵な男性がこの世に存在するなんて!? 心の底から感動を禁じえない。深夜子の鼻や耳から蒸気が吹き出す。口からは『げへっふえうぇへへへ!』と感激のいななきが漏れかけた――おっと、危ない。ギリギリで踏みとどまる。危うく再度の失態を犯すところであった。セーフ!
さあ、それではお礼を言わなければなるまい。この愛らしい天使に! 自分を受け入れてくれて『ありがとう』と! 口べたで、目つきの怖い自分だけど、精一杯を伝えよう! 深夜子は”頭”でなく”心”で決めた。
「あっ、ああっ、ありが――――ぷっしゅー」
轟沈。
「おい、深夜子? 深夜子!?」
まるで電池でも切れたかのように、深夜子の視界はそこで暗転した。なんたる失態。
「あはは。寝待さんは面白い人なんですね」
――それでも朝日は笑ってくれていた。
――薄れゆく意識の中で『なんて言いますか、もう宇宙は常に膨張して新しく産まれ続けているんですよね』と、悟りの境地に達した気がする深夜子であった。
こんなやり取りを何度か繰り返し、朝日とまともにコミュニケーションが取れるようになるまでに丸一日を費やした。翌日。二人は朝日の生活拠点となる場所へ向け、国より支給された黒のセダン車に乗って任務開始となったのである。
「――朝日君、本当に反省。あたしの説明不足」
「いや、僕も矢地さんから聞いてたことの認識が甘かったです。こちらこそごめんなさい」
出発からしばらくして、コンビニで暴女たちの襲撃を受ける事となる。その後、朝日の精神的負担を考慮して寄り道は考えず、目的地への移動を最優先に深夜子は切り替えた。
「ところで、深夜子さんって凄く強いんですね。びっくりしました」
「あっ、いやっ、その……朝日君。もう……怖くない?」
「えっ? あっ! あの時は少し驚いただけで、その……深夜子さんは怖くないですよ。強くてカッコイイと思いました」
「はうあっ!? えへっ、そそそそそうかな!? むへっ、ふはっ、でへ――」
頬を手で挟んで照れる深夜子。必然的にハンドルから手は離れている。
「うわあああっ!? みっ、深夜子さん前っ、前! 車線からはみ出てますよ!!」
「ほああっ? うわったああああ!?」
まるでコントだな。と言いたくなる朝日と深夜子の道中であった。
そう言えば、いつの間にか二人は下の名前で呼びあっていた。実はこの世界の女性にとって、男性と下の名前で呼び合うことは一生のうちに実現したいシチュエーションベスト10に入るイベントだ。ちゃっかり朝日にお願いして、攻略済みの抜け目無い深夜子である。
――車中で二人の会話は続く。
「そうだ。僕、生活する場所のことってあまり詳しく聞いてないのですけど」
「えーと。この曙区の南に位置してる春日湊という街。男性特区だから治安はとてもいい。男性福祉も充実してる。男性人口も一割近いよ」
コンビニであったようなことはここでは起きない。と深夜子が付け加える。
「男性が一割……それって、この世界では凄いことなんですよね?」
「うん。男性は保護の意味でこういった地域に集められてる」
「うっ……なんか微妙に闇を感じますね」
『曙区春日湊』
男性福祉対応型都市としてデザインされた国の重要管轄区――男性福祉特別区域。人口は約三十万人で、その一割が男性という通称『男性特区』だ。このような地域が国のあちらこちらに点在している。春日湊はその中でも最大級の一つである。
街の中心部にある大通りを抜けて郊外へ、すると周りは閑静な住宅街になった。その一部はゲーテッドタウンとなっており、深夜子の運転する車はそこを目指して進んでいた。
住宅街の中にある、壁に囲まれたもう一つの住宅街。検問所を車に乗ったまま通り抜ける。壁の内側には、外と比べ物にならない豪華な一軒家が建ち並んでいた。贅沢に土地を使い、一軒ごとに数十メートルの距離が取ってある。
深夜子はナビを確認し、その内の一軒に入って駐車場に車を止めた。
「到着。お疲れ様、ここが朝日君のお家」
「ちょっ!? ここって、めちゃくちゃな豪邸じゃないですか!」
日本の一般的な住宅の五倍はあろう敷地に、これまた二倍以上あろうサイズの二階建ての豪邸が建っている。
「このくらい当然。朝日君は特殊案件での保護男性だから余裕」
「いやいや……僕一人にいくらなんでも……これは……」
何が余裕かわからない。
「んー、資料で見たけど、朝日君の今までの生活環境。あたしたちからすれば虐待レベル」
「え???」
豊かな日本の一般家庭に育った自分の生活が虐待? これは常識の根本が違う。ふと、朝日は思い返した。そう言えば、自分の生活環境の聞き取りをしていた女性調査員。途中、目頭を押さえて嗚咽を漏らしていた気がする……。
それはともかく、この豪邸は男性が警護官と生活できるように、二世帯住宅に近い造りになっていた。さらに中に入ってから、朝日には驚きの連続である。
「なんだこれ……ひろっ!」
朝日一人が使う部分ですら5LDKの間取り。
「お風呂場も凄かったけど……キッチンもめちゃくちゃ充実してる。……この家、一体いくらかかってるんだろ?」
高校生の金銭感覚ではさっぱり計り知れない。家具や家電製品も、高級品や最新型と思われるものが遠慮なく揃っている。
さらに、この世界らしいと言うべきか。一部の部屋や出入口には生体キーも設置されており、ブライベートセキュリティも万全。果ては風呂、トイレは男女別など、徹底した作りとなっている。もう、朝日の口からはため息しか出てこなかった。
一方、こちらは個人の持ち物をせっせと積み込み中の深夜子。
「ふおあああっ!? こ、これはGRAVIA最新の65v型液晶テレビ! いいの? 使っていいの? いやっふぅ! ありがたやありがたや」
朝日の恩恵に預りまくり、最新家電の数々に歓喜の雄たけびを響かせていたのだった。
――小一時間ほどで荷物(主に深夜子のもの)の積み込みは終了。
現在、二人はリビングでソファーに腰掛けている。机の上にはお茶とお菓子に街の地図。その他、何枚かの書類が広げられていた。深夜子がその中の一枚を手に取り、これからの生活に向けて説明を開始する。
「朝日君。文字読むのは大丈夫?」
「はい。何故か会話と文字は日本語――えと、僕の国の言葉で見えたり聞こえたりします。ただ、書くのは無理で……僕が字を書いたら、深夜子さんたちに読めない字になりますね」
「らじゃ。んじゃ地図を見て、今いる場所はここ。外出するときは最低一人、基本二人はMapsたちが同行が必要。まだ全員着任してないから、お出かけは少し待って」
「わかりました……ところで僕、学生なんですけど……学校ってどうなるんですか? 男性保護省で話題に全く出なかったですけど」
「学校? んー、ここで義務教育は十二歳まで。男性は危ないから、以降学校に行く人はほとんどいない」
危ない? 聞き捨てならないキーワードが深夜子から放たれた。
「え? それって――」
この世界の義務教育は、第二次性徴が始まるであろう十三歳まで、日本基準の小学校卒業で完了だ。男女共学もそこで終る。上流階級の家庭のみで構成された地区に例外的な学区はあるが、義務教育後、ほとんどの女性は専攻に合わせた学校を選んで進学。それから社会に進出する。逆に男性は社会的に管理され始め、家から出ることが少なくなる。
仮に二次性徴の終わった女性たちの中に、同年代男性が混ざるなど、バターを体中に塗りたくって、雌犬の群れに飛び込むのと同義である。――あまりの内容に朝日は自然と指でこめかみを押さえた。
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