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第三章 男事不介入案件~闘え!男性保護特務警護官
第二十八話 大和梅の激闘
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現在、海土路造船倉庫F号倉庫では、梅と万里たちが激突の真っ最中である。
「うらぁっ!」
万里はその巨躯を活かし、梅のリーチ外から左回し蹴りを仕掛ける。
さすがの梅といえど、ノーガードで受けれるレベルは超えている一撃だ。
「んなろぉ!」
ならば、と蹴り足にあわせて左拳で迎撃をする。梅の腕力ならではの常識外の対応である。
まさに力と力のぶつかり合い!
互いの蹴りと拳が重なった瞬間に、弾けるように反発する。
「痛っ! 蹴ったあたいの足が痛いとか……プロテクターもつけてんのに、なんの冗談かねぇ」
「ちいっ! 本当は足をへし折ってやるつもりだったんだが……よっと――」
そう言い放った梅の右手に、鉄製の鉤爪が握られていた。花美が隙を狙って、万里の股下からくぐるようにして突きだしてきたものである。
「こっ、これを止めるでござるかっ!?」
「へっ、たりめぇだ。おらぁっ!」
鉤爪をつけた花美を一気に引き寄せるべく、つかむ右手に力をこめる。
「ぬおっ!?」
その凄まじい腕力に、花美は梅の間合いへと一気に引きずり込まれる。
「貰ったぜ!」
梅は左拳を握り、引き寄せた花美のボディへと拳を放つ。
「くっ!?」
危険を察知した花美は鉤爪を右腕から即座にはずし、すばやく離脱。――だけに留めず懐から吹き矢を取り出す。
「おらあっ!」「ぷっ!」
乱暴に振られた梅の左拳が、花美のわき腹にわずかにかする。同時に梅の肩には吹き矢が刺さっていた。
バックステップで間合いを取りながら花美はニヤリと笑みを浮かべる。が、突然体中に電気でも走ったかの衝撃に崩れ落ちた。
「ぐはああああっ!? こ、これはぁ!?」
「ちっ、吹き矢のせいで狙いがずれちまった。かすっただけかよ」
梅はそう愚痴りながら吹き矢を抜き、手に残された鉤爪はタオルをしぼるかの如くひん曲げて床に投げ捨てる。
「あ、姉者!?」
「いや、妹者大事ない。いやはや、かすってコレとは……とんでもない剛力でござるのう……じゃが――」
かすっただけで、内臓が飛び出るかのバカげた威力。しかし、花美は充分な成果を出したと余裕の笑みは崩さない。
「先程の吹き矢には熊用の麻酔薬を塗ってある故に。悪いがこれで勝負ありにござる……万里氏、もう十秒かからんでござるぞ」
「そうかい。まあ、面白くないけどしょうがないかねぇ」
「ああん? 熊用の麻酔だあ? クソくだらねえマネしてんじゃねえぞ!」
お構いなし。そんな態度で梅が再び万里たちへと突撃してきた。最後の悪あがきかと、花美、月美も迎撃体勢をとる。
――しばらく梅と三人の攻防は続き、すでに十秒どころか一分以上が経過している。いまだに梅はピンピンとしていた。
「バ、バカな……ありえん。大型の羆ですら三十秒もたずに動けなくなる麻酔薬でござるぞ!?」
「ど、どうなってるですよ?」
「あん? バカはてめえらだろ。そんな麻酔薬が俺に効くかよ」
「何!? どういうことでござるか。お主、何か特別な――」
「熊用が人間に効くワケねえだろうがっ!!」
「「「効くわあああああああっ!!」」」
その通り。梅が異常なだけである。
「あっははは、参った参った。やってらんないんねぇ、こりゃあ」
「理屈はともかく、とんでもない奴でござるのう……」
「はっ! んで……眼鏡チビに狐ノッポ。てめえらの手品もそろそろ品切れか? たいしたもんがねぇな?」
梅の足元には先ほどの鉤爪を始めとして、苦無、鎖分銅、手裏剣、短刀などなど、多数の武器が破壊され散乱している。
「あ、ありえないですよ……なんで素手で鋼鉄製の武器を破壊できるですよ……それに殴ったこっちの手甲がボコボコとか意味わかんないですよ」
手甲を武器として近接格闘を得意する月美とは違い。花美は投擲武器や刀剣類を扱い中・遠距離戦に長けている。と言っても、そろそろ手詰まりの様子である。
「それに、いちいちちょこまか小細工しやがって……てめえら、やる気あんのか? 女なら足止めて殴り合いくらいしろってんだ! 面白くねぇ!」
「お前みたいな馬鹿力相手に冗談じゃないですよっ!!」
「ふぅ……万里氏。こりゃあどうしたものでござるかのう?」
思考が完全に戦闘民族の梅はともかく、花美と月美はすでに息も荒い。かわしきれずに受けた攻撃で、それなりのダメージも負っている。残る万里が今のところほぼ無傷ではあるが、スタミナの消耗は否めない状況にあった。
「こりゃあ、予想外の化物だったねぇ……(この強さ、Sランクでも確実に上位の括り……どうなってやがる?)」
梅の規格外加減にそれぞれが苦言を漏らす。それを傍目に聞いて主が声を張りあげる。
「ばっ、万里! お前らいつまでそんなチビに苦戦してるんだよ? は、はやくなんとかしろよっ、お前たちがやられたら……きっとソイツは……一人になったボクに乱暴する気だぞ! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」
「するかああああっ!!」
さすがにそれは心外の梅である。
「はぁ……主殿もああ言っておられる。仕方ないでござろう……例のをやるぞ妹者。後は任せたでござるぞ万里氏」
「ああ、下ごしらえは頼んだよぉ。あたいがきっちりぶっ潰すさぁ!」
爬虫類を思わす瞳をギロリと梅に向け、静かに歩みを進めて間合いをはかる万里。その後ろからは花美と月美が同時に飛び出してくる。
「ゆくでござるぞ妹者!」
「了解ですよ。姉者!」
「「流石寺朧月花!!」」
『朧月花』花美の飛び道具にあわせ、月美が死角に潜んで渾身の一撃を加える隙をうかがう。二人が得意とするコンビネーション攻撃である。
「けっ! 数が多けりゃいいと思うなよっ!」
大量に飛んでくる手裏剣や苦無。だが、銃弾すら見切る梅の目にはスローモーションに等しい。グローブをはめた両手を振るい、次々と叩き落としていく。
――しかし。
「何っ!?」
その内の一本。手裏剣の死角に重なって飛んできた苦無にぶら下がる小型の火薬玉。苦無を弾くと火薬玉はふっとはずれ、梅の眼前で炸裂する。無論、これは殺傷目的では無い。わずかの間だが、相手の視覚と聴覚に影響を及ぼす。『朧月花』狙いの一手である。
「ちぃっ!」
梅の視界が光にふさがれ、炸裂音も鼓膜に響き渡る。
「貰ったですよ!」
その隙に花美の影から飛び出した月美が攻撃を繰りだす。
「奥義螺旋双竜撃! 内臓をぶち撒けろですよっチビ猫っ!!」
回転を加えた特殊な踏み込みが床を鳴らす。捻りを込めた両手甲突きが、通常の数倍以上の破壊力を産みだす。
普段は出が遅く使えない。コンビネーション専用の必殺技だ。
ずどんっ!! 鈍い音が響き渡り、梅の左脇腹に月美の両手甲拳が突き刺さる。
手応えも充分。並みの相手なら、これで内臓破裂してもおかしくない。――だが!
「ちっ、痛ってぇなあ、おい?」
月美が凍りつく。
そこには必殺の打撃を、無防備な状態で受けながら『ちょっと痛かった』と言わんばかりに少し口元を歪めた梅。さらにその左手が、月美の右手甲をすでに握りしめている。
「なあっ!?」
――ありえない!? あの手応えで無傷などありえない!! 驚愕する月美に対して、梅の無慈悲な宣告がなされた。
「そうだな、まあ三十点ってトコか?」
「ひいいいいっ!? そんな、う、うそ、嘘なのですよ……」
梅の真の恐ろしさは、その常軌を逸した耐久力にある。過去、強敵と呼べた相手、大人数で挑んできた相手。最終的には防御を捨て、驚異的身体能力の全てを攻撃に集中した梅の前にことごとく葬り去られている。
「本気でぶん投げるぜ……覚悟しな!」
梅の眼光が鋭さをまし、鋼鉄製の手甲がメキメキと音を立て始めた。
「ひっ……ぐあっ!」
「くっ、妹者!」
「はっ、もう遅えっ!」
投手を思わせる挙動で床に足がめり込まんばかりに踏みこむ! 梅の全力投げ、後輩命名『死の特急列車』である。
月美がまるで投げ槍にでもなったかの様に花美に向って飛んでいく。
「うきゃあああっ!!」
「うぐわあああっ!!」
かわす間もなく凄まじい勢いで花美に激突! 二人もろともコンテナの山へと突っ込む。さらに衝撃で崩れた落ちた複数のコンテナに埋まってしまった。
「へっ! これで一丁あがりってか! ――あん?」
ところが梅の視界の上から、ふと数個の火薬玉が現れた。
「何いっ、またか!?」
花美が月美と衝突した瞬間、梅に向かって火薬玉を投げていた。最後の意地ともいうべき絶妙なタイミングの投擲で、梅も反応ができず再び視覚と聴覚を奪われる。
「はっはぁっ! よくやったよ花美! おらあっ、本命を喰らいなぁ!」
その隙を逃さず控えていた万里が襲いかかる。
巨躯に似合わぬ素早さで、まるで三段跳びでもするかの走りで加速し、間合いを詰める。その勢いを利用して全身を弓のようにしならせ、渾身の蹴りを梅の腹にヒットさせた。
「ぐふうっ!」
初めて苦痛らしい声をあげた梅が、ゴールに突き刺さるサッカーボールのようにコンテナの山へと飛ばされて激突する!
凄まじい衝撃音と共に積まれていたコンテナが次々と崩れ落ち、月美たち同様その下敷きとなった。
万里はその光景をながめ、勝利を確信するのであった。
「うらぁっ!」
万里はその巨躯を活かし、梅のリーチ外から左回し蹴りを仕掛ける。
さすがの梅といえど、ノーガードで受けれるレベルは超えている一撃だ。
「んなろぉ!」
ならば、と蹴り足にあわせて左拳で迎撃をする。梅の腕力ならではの常識外の対応である。
まさに力と力のぶつかり合い!
互いの蹴りと拳が重なった瞬間に、弾けるように反発する。
「痛っ! 蹴ったあたいの足が痛いとか……プロテクターもつけてんのに、なんの冗談かねぇ」
「ちいっ! 本当は足をへし折ってやるつもりだったんだが……よっと――」
そう言い放った梅の右手に、鉄製の鉤爪が握られていた。花美が隙を狙って、万里の股下からくぐるようにして突きだしてきたものである。
「こっ、これを止めるでござるかっ!?」
「へっ、たりめぇだ。おらぁっ!」
鉤爪をつけた花美を一気に引き寄せるべく、つかむ右手に力をこめる。
「ぬおっ!?」
その凄まじい腕力に、花美は梅の間合いへと一気に引きずり込まれる。
「貰ったぜ!」
梅は左拳を握り、引き寄せた花美のボディへと拳を放つ。
「くっ!?」
危険を察知した花美は鉤爪を右腕から即座にはずし、すばやく離脱。――だけに留めず懐から吹き矢を取り出す。
「おらあっ!」「ぷっ!」
乱暴に振られた梅の左拳が、花美のわき腹にわずかにかする。同時に梅の肩には吹き矢が刺さっていた。
バックステップで間合いを取りながら花美はニヤリと笑みを浮かべる。が、突然体中に電気でも走ったかの衝撃に崩れ落ちた。
「ぐはああああっ!? こ、これはぁ!?」
「ちっ、吹き矢のせいで狙いがずれちまった。かすっただけかよ」
梅はそう愚痴りながら吹き矢を抜き、手に残された鉤爪はタオルをしぼるかの如くひん曲げて床に投げ捨てる。
「あ、姉者!?」
「いや、妹者大事ない。いやはや、かすってコレとは……とんでもない剛力でござるのう……じゃが――」
かすっただけで、内臓が飛び出るかのバカげた威力。しかし、花美は充分な成果を出したと余裕の笑みは崩さない。
「先程の吹き矢には熊用の麻酔薬を塗ってある故に。悪いがこれで勝負ありにござる……万里氏、もう十秒かからんでござるぞ」
「そうかい。まあ、面白くないけどしょうがないかねぇ」
「ああん? 熊用の麻酔だあ? クソくだらねえマネしてんじゃねえぞ!」
お構いなし。そんな態度で梅が再び万里たちへと突撃してきた。最後の悪あがきかと、花美、月美も迎撃体勢をとる。
――しばらく梅と三人の攻防は続き、すでに十秒どころか一分以上が経過している。いまだに梅はピンピンとしていた。
「バ、バカな……ありえん。大型の羆ですら三十秒もたずに動けなくなる麻酔薬でござるぞ!?」
「ど、どうなってるですよ?」
「あん? バカはてめえらだろ。そんな麻酔薬が俺に効くかよ」
「何!? どういうことでござるか。お主、何か特別な――」
「熊用が人間に効くワケねえだろうがっ!!」
「「「効くわあああああああっ!!」」」
その通り。梅が異常なだけである。
「あっははは、参った参った。やってらんないんねぇ、こりゃあ」
「理屈はともかく、とんでもない奴でござるのう……」
「はっ! んで……眼鏡チビに狐ノッポ。てめえらの手品もそろそろ品切れか? たいしたもんがねぇな?」
梅の足元には先ほどの鉤爪を始めとして、苦無、鎖分銅、手裏剣、短刀などなど、多数の武器が破壊され散乱している。
「あ、ありえないですよ……なんで素手で鋼鉄製の武器を破壊できるですよ……それに殴ったこっちの手甲がボコボコとか意味わかんないですよ」
手甲を武器として近接格闘を得意する月美とは違い。花美は投擲武器や刀剣類を扱い中・遠距離戦に長けている。と言っても、そろそろ手詰まりの様子である。
「それに、いちいちちょこまか小細工しやがって……てめえら、やる気あんのか? 女なら足止めて殴り合いくらいしろってんだ! 面白くねぇ!」
「お前みたいな馬鹿力相手に冗談じゃないですよっ!!」
「ふぅ……万里氏。こりゃあどうしたものでござるかのう?」
思考が完全に戦闘民族の梅はともかく、花美と月美はすでに息も荒い。かわしきれずに受けた攻撃で、それなりのダメージも負っている。残る万里が今のところほぼ無傷ではあるが、スタミナの消耗は否めない状況にあった。
「こりゃあ、予想外の化物だったねぇ……(この強さ、Sランクでも確実に上位の括り……どうなってやがる?)」
梅の規格外加減にそれぞれが苦言を漏らす。それを傍目に聞いて主が声を張りあげる。
「ばっ、万里! お前らいつまでそんなチビに苦戦してるんだよ? は、はやくなんとかしろよっ、お前たちがやられたら……きっとソイツは……一人になったボクに乱暴する気だぞ! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」
「するかああああっ!!」
さすがにそれは心外の梅である。
「はぁ……主殿もああ言っておられる。仕方ないでござろう……例のをやるぞ妹者。後は任せたでござるぞ万里氏」
「ああ、下ごしらえは頼んだよぉ。あたいがきっちりぶっ潰すさぁ!」
爬虫類を思わす瞳をギロリと梅に向け、静かに歩みを進めて間合いをはかる万里。その後ろからは花美と月美が同時に飛び出してくる。
「ゆくでござるぞ妹者!」
「了解ですよ。姉者!」
「「流石寺朧月花!!」」
『朧月花』花美の飛び道具にあわせ、月美が死角に潜んで渾身の一撃を加える隙をうかがう。二人が得意とするコンビネーション攻撃である。
「けっ! 数が多けりゃいいと思うなよっ!」
大量に飛んでくる手裏剣や苦無。だが、銃弾すら見切る梅の目にはスローモーションに等しい。グローブをはめた両手を振るい、次々と叩き落としていく。
――しかし。
「何っ!?」
その内の一本。手裏剣の死角に重なって飛んできた苦無にぶら下がる小型の火薬玉。苦無を弾くと火薬玉はふっとはずれ、梅の眼前で炸裂する。無論、これは殺傷目的では無い。わずかの間だが、相手の視覚と聴覚に影響を及ぼす。『朧月花』狙いの一手である。
「ちぃっ!」
梅の視界が光にふさがれ、炸裂音も鼓膜に響き渡る。
「貰ったですよ!」
その隙に花美の影から飛び出した月美が攻撃を繰りだす。
「奥義螺旋双竜撃! 内臓をぶち撒けろですよっチビ猫っ!!」
回転を加えた特殊な踏み込みが床を鳴らす。捻りを込めた両手甲突きが、通常の数倍以上の破壊力を産みだす。
普段は出が遅く使えない。コンビネーション専用の必殺技だ。
ずどんっ!! 鈍い音が響き渡り、梅の左脇腹に月美の両手甲拳が突き刺さる。
手応えも充分。並みの相手なら、これで内臓破裂してもおかしくない。――だが!
「ちっ、痛ってぇなあ、おい?」
月美が凍りつく。
そこには必殺の打撃を、無防備な状態で受けながら『ちょっと痛かった』と言わんばかりに少し口元を歪めた梅。さらにその左手が、月美の右手甲をすでに握りしめている。
「なあっ!?」
――ありえない!? あの手応えで無傷などありえない!! 驚愕する月美に対して、梅の無慈悲な宣告がなされた。
「そうだな、まあ三十点ってトコか?」
「ひいいいいっ!? そんな、う、うそ、嘘なのですよ……」
梅の真の恐ろしさは、その常軌を逸した耐久力にある。過去、強敵と呼べた相手、大人数で挑んできた相手。最終的には防御を捨て、驚異的身体能力の全てを攻撃に集中した梅の前にことごとく葬り去られている。
「本気でぶん投げるぜ……覚悟しな!」
梅の眼光が鋭さをまし、鋼鉄製の手甲がメキメキと音を立て始めた。
「ひっ……ぐあっ!」
「くっ、妹者!」
「はっ、もう遅えっ!」
投手を思わせる挙動で床に足がめり込まんばかりに踏みこむ! 梅の全力投げ、後輩命名『死の特急列車』である。
月美がまるで投げ槍にでもなったかの様に花美に向って飛んでいく。
「うきゃあああっ!!」
「うぐわあああっ!!」
かわす間もなく凄まじい勢いで花美に激突! 二人もろともコンテナの山へと突っ込む。さらに衝撃で崩れた落ちた複数のコンテナに埋まってしまった。
「へっ! これで一丁あがりってか! ――あん?」
ところが梅の視界の上から、ふと数個の火薬玉が現れた。
「何いっ、またか!?」
花美が月美と衝突した瞬間、梅に向かって火薬玉を投げていた。最後の意地ともいうべき絶妙なタイミングの投擲で、梅も反応ができず再び視覚と聴覚を奪われる。
「はっはぁっ! よくやったよ花美! おらあっ、本命を喰らいなぁ!」
その隙を逃さず控えていた万里が襲いかかる。
巨躯に似合わぬ素早さで、まるで三段跳びでもするかの走りで加速し、間合いを詰める。その勢いを利用して全身を弓のようにしならせ、渾身の蹴りを梅の腹にヒットさせた。
「ぐふうっ!」
初めて苦痛らしい声をあげた梅が、ゴールに突き刺さるサッカーボールのようにコンテナの山へと飛ばされて激突する!
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万里はその光景をながめ、勝利を確信するのであった。
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