男性保護特務警護官~あべこべな異世界は男性が貴重です。美少年の警護任務は婚活です!

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第四章 やはり美少年との日常は甘くて危険らしい

第四十三話 朝日を救え!看病大作戦!(後編)

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 明かりは常夜灯に切り替え、限界まで光量を落とす。さらに深夜子と五月はサングラスを装着して、視界をギリギリの状態で確保。二人に梅が指示を出すという段取りである。 

 朝日を起こさないように、小声で確認をとりながら作業を開始する。

(よし、じゃあ上着から行くぜ。最初は深夜子からだな、俺が朝日をささえっからよ。うまく脱がせてくれ)
(らじゃ。それでは)

 どうやら策があるらしく、五月は待機して、深夜子が上着を脱がしはじめる。暗がりでプチプチと朝日の上着のボタンをはすず行為、手に伝わってくる胸の感触、それはもう情欲が煽られないはずがない。だが、それすらも折り込み済みなのがこの作戦なのだ!!

(ぬっ、ぬげたぁ! さっ、五月さっきータッチ!)
(りょ、了解ですわっ!)

 上着を脱がした瞬間に深夜子がすばやく五月と交代する。そのまま音を立てずに転がるように部屋から廊下へ離脱! そこから一気に猛ダッシュである場所・・・・へと駆けだす。

「ぬおおおおっ! そいやっ!」
 目指すは本作戦の要『煩悩冷却用氷風呂』である。氷風呂深夜子飛び込む水の音。同時に悲鳴も廊下に響き渡る。
「あぴゃああああ! ちっ、ちべたいいいっ! でも回復! 回復ゥ!」
 煩悩退散《かいふく》と同時に氷風呂から飛び出て、再び朝日の部屋へとリターン。当然、廊下では鼻血を滴らせつつ、おなじく猛ダッシュの五月とすれ違う。
「ひいいいいっ! つつつめたいですわぁ! でも朝日様ぁああのためにいいっ!」

 ――まあ、こんな調子で上着とシャツは交換完了。ズボンを脱がして、最後の砦『トランクス』まで到達した。担当の深夜子はしっかりと目を閉じて、梅の誘導で朝日のトランクスに手をかける。

 しかし手に伝わる腰の感触、これを下ろせば……下ろすと? 朝日の下? 尋常でない緊張に、無駄な妄想が深夜子の頭を駆けめぐる。もしも、もしも、朝日がこの事実を知ったら? どうなる――。

『深夜子さん……深夜子さんは僕のことを辱しめたんだね』
『何を言ってるの朝日君? 病気だから仕方なく』
『でも、見たんだよね……僕の産まれたままの姿を、薬で寝てる間にそれはもう、ねぶるようにたっぷりねっとりと見たんだよね……』
『ちっ、ちが――!? 朝日君!! その先は崖。だ、ダメだよ? 何で?』
『サヨナラ深夜子さん。こんな辱しめを受けて僕は……もう……』
『いやあぁあああーーーっ!!!』

(無理。五月さっきー代わって)
(何事ですのーーっ!? と言うか貴女がご希望されましたわよねっ! 朝日様のさ、ささ最後の一枚をっ!)
(おいっ! だから静かにしろっつってんだろうがっ!!)

 突如、深夜子のギブアップ宣言に五月がキレる。そこに梅も加わり、朝日のトランクスを脱がす役割の押しつけあいが始まったところで――。

「ん……んん? ……あ、あれ……僕……なんで……みんな……ど、どしたの?」
「「「ひぎゃあああああっ!!??」」」

 結局、目が覚めてしまった朝日が――このくらいの体調なら着替えはできるから……。と見事な回復力を見せつけ、氷風呂コントを披露しただけに終わった深夜子たちであった。

 ――二日が経過し、朝日の体調は予想よりも早く回復に向かっていた。微熱が残る程度で、嘔吐もほぼおさまっており、本人は食欲を訴えている。なので、消化に良い軽めの食事を昼から食べさせることになったのだが……。

「朝日君のご飯はあたしが作る」
「深夜子さん……貴女お料理はできまして? それにこんなこともあろうかと、わたくしはすでに食材を準備済みですわ。貴女方の出番はありませんことよ」
「おいおい、おまえらじゃロクなことになんねーだろ? 俺が作ってやっから引っ込んでな」

 三人が三人とも、自分が朝日の食事を作ると主張して激突する。

 さらに、何故かはわからないが、それぞれが朝日の食事を作り、柊と鳴四場が審査する料理バトル漫画のごとき流れとなってしまった。朝日がある程度回復したとたんにコレである。

 審査員柊たちの待つ客間に、先陣を切ってきたのは深夜子であった。何やら料理を乗せた、広めの丸皿をテーブルに置く。丸皿・・の時点で、すでに不穏な空気が流れる。それに乗ってるモノを見た柊が、こめかみを押さえながら口を開く。

「君たちMapsは確かに優秀だ……。そして医療に関しては、我々医師に患者を受け渡す・・・・までに特化している。それはわかっている。……だが、だがね。これは一体なんなのかね?」
「ふ、生地はご飯をやわらくして作った!」

 ふふん! と自信満々に右手をサムズアップの深夜子。確かに米が元であろう白い円形の生地が、こんがりと香ばしい匂いを漂よわせ、皿に乗っている。

「ほう……で、その生地とやらに乗っている具材は何かな?」
「有機栽培のトマトソースと三種のチーズ。身体にいい!」
「……ピザだな」
「……ピザですね」
「「胃腸炎から回復中の患者がピザを食べれるかーーっ!!」」
 深夜子落選。
「えー? ピザは総合栄養食……」
「そう思う君は自身の食生活を見直したまえ」

 まあ、予定通りに深夜子が撃沈する。

 次は何やら厚手の手袋をはめ、アツアツの土鍋を持った五月が登場した。

「土鍋……ですか? これは……」
「もちろん。朝日様に食べていただく『雑炊』ですわ!」
 雑炊と聞いて、少し安心する鳴四場だが――さあ、ご覧あれ! とこちらも自信満々の五月が蓋を開けた瞬間。柊たちの表情が凍りつく。
「ほう……で、この具材は一体なんのつもりかな」
「それはもう、朝日様に栄養をつけていただく為に取り寄せた、フグとアワビと今が旬のイワガキ。さらに北海区から直送のウニとイクラをお好みで……あっ、もちろん、出汁は精のつくスッポン! 五月特製『愛の海の幸まる雑炊』ですわ!!」
「正気かね?」

 五月落選。
 
 がっくりと落ち込む五月を横目に、最後は梅が少し小さめの鍋をもって現れた。すでに疑いの眼差しの柊が、気だるそうに確認をする。

「はぁ……次はなんだね? プロテイン入り煮込みうどんでも持ってき――」
「あん? 何言ってんだ? 普通、病人にゃお粥だろ。朝日もまだ本調子じゃねぇしよ……つっても二日も食べてねぇからな。少しは塩っ気のあるもんがいいと思ってよ。雑炊風に出汁が取ってあんぜ」
「「「「えええええっ!?」」」」

 意外ッ!

 日頃は怠けてそんなそぶりは全く見せていないが、実は梅はいわゆる下町育ち。三人いる妹の面倒をよく見ていたので、この手のスキルは深夜子たちの中で群を抜いてたのだった。味見をして全員がその完成度に驚愕する。

 結果は梅の圧勝、副賞に『朝日にご飯を食べさせてあげる権』もまとめてゲットである。茶番も終了したことで、やれやれと皆で朝日の部屋に向かおうとした時、鳴四場が柊の肩に手を添えて軽く声をかける。

「ところで隊長」
「なんだね?」
「ついつい言い忘れて・・・・・ましたが、今日の早朝に立花たちばな総隊長からお怒りのメールが入ってましたよ」
「なん……だと……!?」
 しれっと梅たちについて、朝日の部屋に向かおうとしていた柊が、ぎこちなく振り向く。
「まあ、隊長が三日も空ければそうなりますね」
 実にいい笑顔である。
「ぬっ、くっ……わかった…………寝待君、五月雨君、大和君、済まないが我々はこれで失礼させてもらおう。朝日君にもよろ――」
「「「「朝日君!?」」」」
「おっと、いや失礼、か、神崎君にもよろしく。ほら鳴四場、出るぞ、帰るぞ!」

 実は経過観察中に朝日と仲良くなり、ちゃっかりメアド交換までしている柊であった。無論この事実は後日、看護十三隊内にて発覚。しっかりと吊るし上げを食らうことになるので、ご安心いただきたい。

 それはさて置き。柊たちを見送ってから朝日の昼食を梅が担当する。病人の世話も妹たちで経験済みか、さすがに手馴れたものでベッドに腰掛け、お粥を適度に冷ましながら朝日に食べさせ世話を焼く梅であった。

「ほら朝日、食べさせてやっから」
「ありがと、梅ちゃん。あっ、そういえば……僕がトイレで倒れてた時に梅ちゃん泣いてなかった?」
「んなぁ!? な、泣いてねぇし! お、俺が泣くわけねえだろ。俺を泣かせたらたいしたもんだぜ」
「あはは。だよね。梅ちゃん強いもんね」
「あ、当たり前だっつーの」
 そんな二人の心温まるやりとりを、土偶と埴輪のごとき能面で見つめるのは深夜子と五月である。
「あの二人の世界……ぐぬぬ」
「勝負の世界は厳しい。無念……ところで五月さっきーの雑炊うまし」
「はぁ、朝日様……はぐっ、このピザ意外とおいしいですわね……でも、残念、もぐっ……でしたわ」

 お互いの料理を交換して、やけ食いながら満足する二人。とりあえずは一段落の朝日家であった。
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