男性保護特務警護官~あべこべな異世界は男性が貴重です。美少年の警護任務は婚活です!

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最終章 愛するあなたへ

第九十五話 愛しさと切なさと任務遂行と

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 ――曙区総合医学研究所。建物の老朽化を理由に、半年前に閉鎖となったこの施設。地下一階には不要な機械の物置部屋となっていた一室がある。今から約十ヶ月前、朝日が日本からこのヒノワ国へと転移してきた場所だ。

 そして、今。その時に朝日が通ってきたものと同じ――淡黄色に発光する霧が渦巻くトンネルの入り口が姿を現していた。ちょうど乗用車が一台通れる程度の広さで、奥はどこまで続いているのか全く見通せない。

 朝日は部屋の引き戸を開け放ち、つかつかと光のトンネルの前へと進みでる。

「朝日様っ、お、お待ちくださいっ! 一体、これは、どういうことですのっ?」

 突然の事態に動きが止まっていた三人。真っ先に我を取り戻した五月が、あわてて声をかける。先ほどまでの喜びはどこへやら、真っ青な表情で朝日を後を追う。

「――ふあっ? 朝日君!」「――ハッ、おい朝日。ちょっと待てよ!」

 あわてふためく五月の姿に、遅れて反応した深夜子と梅が我先にと駆け出す。その後ろで、弥生と新月は朝焼子に付き添い見守っている。

あね様……これは?」
 立て続けて目の当たりにする超常現象。朝焼子は戸惑いながら弥生に確認をする。
「ふむ。いざこの目で見ても信じ難いが、あれが坊やの国と繋がる道……とのことじゃよ」
「いやいや……聞かされとってもこりゃあ肝がつぶれる光景じゃのう」

 二日前、弥生は朝日と二人で話をして事前に知っていた。実際は半信半疑ではあったが、新月にも事情は伝えてある。それでも驚きを隠せない二人だ。

 そして、弥生が朝焼子に経緯の説明をする。朝日から頼まれた、この時に対するいくつかの準備。麻昼から伝えられたという言葉を――。


『えっ……麻昼さん、それって?』
『そうだよ。俺が君にしてあげられるお礼さ。君がこの世界にやってきたあの道を、少しの時間だけ繋げてあげよう。俺には、そんな大した力があるわけじゃない。そう……ほんの三十分間ほど。偶然・・をそこに持ってくるだけさ』
『……僕に、日本に帰れ……と?』
『そうじゃない。言っただろ? ちゃんとした人生の選択を、未来の選択を、君たち若者にして欲しい。それとはっきり言っておくよ。これ・・を逃したら、多分、君が日本に戻れる偶然に出会う確率は……』
『――無いっ、てことですね』 
『そう、それにあの道は君しか通れない。どちらにしても君には辛い選択肢だと思う。別れて戻る。別れて戻らない。……だ』

 深夜子たちと別れて戻るか、家族と別れて戻らないか。朝日に究極の選択が突きつけられる。

『でも……僕は……深夜子さんが……』
『今の君は戻れない・・・・から、それを選んでいるにすぎない。辛くても、自分の意思で未来を進んで欲しいんだ……神崎君。俺には選択肢すらなかった。いや……今思えば、選択をせず流されていた。それこそ最悪の選択肢がやってくるまで、ね』
『麻昼さん……』
『だから、君には、深夜子には、どちらに進んでも未来のある選択肢をプレゼントしたい』


「――なんと……麻昼さんがそのようなことを……」
 朝焼子は胸の前できゅっと手を握り、麻昼を想って天井をあおぐ。
「そうよのう……果たして、坊やにとってはどうかは知れん。わしからすれば、おのれが故郷へ帰るも良しじゃろうて。じゃが、それを決めるのは坊や自身じゃ。何も言えぬさ――」
「おっと、ねえさん。そろそろじゃ、……ワシらも見届けにゃあならんじゃろ?」
「おお、そうじゃったな。……それでは参ろうか」

 弥生ら三人も少し遅れて、部屋へと足を踏み入れる。すると、朝日も深夜子たちに事情の説明を終えるところであった。

「麻昼さんにそう言われたんだ……幸せの形は一つじゃない。だからこそ、僕が選ぶべきだって――」
 そこに五月が、もう我慢ならないといったていで駆け寄った。
「朝日様っ、何故っ、どうしてですの? そのような大事だいじを、こんなに急に……なんの相談もなく。そ、そんな、ことをいきなり言われ……まし……ひっ、五月、さつ、ひぐっ、五月は……」
 おおよその真意がつかめた五月。嗚咽おえつ交じりで、朝日に言い寄る。
「五月さん、ごめんなさい。でも、自分で決めなきゃって思ったんだ。それに、深夜子さんがいない時に相談しても――って、うわ?」
 鬼気迫る表情の五月が、朝日にすがりつく。
「朝日様! 何か、ご不満なことでもっ、ご不便なことでもっ、ご不足なものでもっ! 言ってくだされば五月はなんでもします。朝日様のためなら、どんなことでもしますからっ!」
「おい五月。落ち着けっての、ンなこと言ってる場合じゃねえのはわかってんだろ」

 混乱気味な五月を、梅が引き剥がしながら言い含める。

「……あっ、わたくしとしたことが……申し訳ありません。取り……乱しましたわ」
 
 梅に後ろから羽交いじめにされたところで、五月が冷静さを取り戻す。残る深夜子はきゅっと下唇を噛んで押し黙り、ここまで微動だにしていない。

「ごめんなさい、五月さん。それに深夜子さんも、梅ちゃんも……もう時間も少ないし、聞いてくれるかな?」

 朝日は光のトンネルに目をやる。残された時間は、もう二十分は切っているだろう。察した五月と梅がうなずく。深夜子は無言のままだ。

「まず、僕の気持ちを正直に言うよ。僕は……深夜子さんが好き。五月さんと梅ちゃんも好き。三人となら、この国でもきっと大丈夫だと、やっていけると思った。この世界で……みんなと家族になって、それでいいやって……」
「朝日……」「朝日様」「…………」

 朝日は自分の思いを語る。この世界に来てからのこれまで、少しづつ変わっていった気持ち。様々な出来事をともにして、深夜子ら三人に愛情が産まれた。さらに深夜子には恋愛感情も抱いている自分。このまま三人といっしょになれば、きっと幸せに暮らしていける……気がしていた。だが、日本に帰れると聞いた時、迷ってしまった自分も確かにいたのだ、と。

「僕の中に……そう、ここに残ろうって自分と、日本に帰りたいって自分。情けないけど、別々の自分がいて……迷ってるんだ。だから、深夜子さん、五月さん、梅ちゃん、みんなの本当の気持ちも知りたい。教えて欲しい! 僕もはっきりと、自分の気持ちに決着をつけるから!」

 しばらくの沈黙。深夜子らそれぞれの脳裏に、この十ヶ月の日々がめぐるましく浮かんでは消える。朝日に対しての気持ちを、正直な気持ちを三人は自問自答する。

 ――数分の静寂が経過したのち。まず、口火を切ったのは五月であった。

「朝日様……」
「はい、五月さん……」
「五月は、朝日様のことを愛しておりますわ。誰よりもお優しくて、常に人を思いやる心を持たれた素敵な殿方。お恥ずかしい話……五月はどんな手段を使っても、朝日様を失いたくないと思ってしまいますの……」

 朝日を手放したくない。少し自嘲気味な含み笑いを見せ、五月が告げる。過去の思い出を、果ては未来を、二人の理想的な将来像すらも語る。最初はにこやかに話していた五月だが、だんだんと表情は崩れ、涙まじりになっていく。

「――それで、朝日様がご家族に……二度と……会えなく……。でも……きっと、力ずくで、帰れないように……そうです……わ。ふふ、五月はひどい女ですわね。……それでも。……それでも……朝日様を……、すみま……せん。五月は選べ……ませんわ。こんな、こんなっ……ひっく……ううっ、うわあああああああっ!」

 号泣する五月。本心は朝日を手放したくない。だが、それを断言することもできない。愛しているから、離したくない。愛しているから、離れなければならない。答えを出すことが出来ない不甲斐なさに、五月は両手で顔を伏せ、その場に崩れるようにうずくまった。

「五月、別にお前は間違っちゃいないさ。決められ無いってのも立派な答えだと思うぜ……」
 そんな五月の背を、梅が軽くぽんっと叩いてから前に進みでる。
「梅ちゃん……」
「ああ、朝日。昨日の夜は悪かったな、お前もすげえ悩んで……それで俺ンとこに来たんだな」
「うん。自分でこうしようって思っても……不安でたまらなくて、あんな変な話して……ごめんね。でも、梅ちゃんのおかげで昨日は凄く気が楽になったよ」
「へへへ、そうかよ」

 指で鼻元をこすりながら面映おもはゆそうにする梅。だが、すぐに気を入れなおして朝日へと向きなおす。

「朝日! 俺の気持ちは簡単だ。お前が好きに選びゃいい! だけど、お前がどっちを選んだって俺の気持ちは変わらねえからよ!」
「変わら……ない?」
「そうだ。お前が、その……自分の国に帰ったら、そりゃあ寂しいかも知れねえけどよ。自分の家族とまた暮らせるんだったら幸せじゃねえか、幸せに決まってる。だから、俺はよ。朝日が幸せになったんだって笑っていられるぜ。そんで、もしお前がここに残るなら、何があろうと俺が幸せにしてやるし、お前を守ってやる。絶対にだ。だから、心配すんな、どっちを……選んだって……ぐすっ……気に…………気にするこたぁねえんだよっ、わかったかああああ! 好きだあああっ、朝日ぃ! ちっきしょおおおおおお! ふぐうううっ――」

 真っ赤な顔で涙と鼻水を垂れながし、梅、渾身の叫び声が部屋に響き渡った。肩を上下させ、ふうふうと息を荒げながら涙をぬぐっている。

「ありがとう梅ちゃん。それに五月さん。もう泣かないで……」
「ううっ、あさびさまぁ……」
「あざひぃ……」

 五月と梅、へたり込んでいる二人を朝日が優しく抱きしめる。

「後は……」

 ゆっくりと立ち上がって、朝日は深夜子へと視線を移す。すると、ここまで一言も発っせず微動だにしていなかった深夜子が、朝日の前まで静かな足取りで近寄ってきた。口を真一文字に結んだまま、猛禽類のような目をまっすぐ朝日に向ける。だが、その表情は能面のように固まっていて、感情が読み取れない。

「深夜子さ――」

【パシッ】

 深夜子へ声をかけたと同時に、軽い音が朝日の頬を鳴らす。
「えっ……?」
 深夜子の震える手のひらが、朝日の頬を打ちつけていた。それは恐ろしく頼りない。力の無い。弱々しい平手打ちだった。

「おい、深夜子! てめえ、なんのつもりだっ!?」
「深夜子さんっ、貴女っ! 殿方に、朝日様に暴力をふるうなど、気でも違われたのですかっ?」

 梅、五月は言うまでもない。ここまで静かに見守っていた弥生たちも、驚きに目を見開いている。それも当然。この世界基準ならば、男性への暴力行為は重罪も重罪。即、現行犯逮捕からの長期懲役刑まっしぐらである。

 しかし、その場で誰よりも驚いていたのは朝日であった。痛みなどない。力など、まったくこもっていなかった。なのに、とても重い、胸の底に響くような衝撃が頬から伝ってきたのだ。

「……らい」
「え? ……深夜子……さん」
 深夜子の口が動き、小さく言葉が漏れる。それを聞き取れずに朝日が戸惑っていると、今度ははっきりとその単語・・・・を口にした。
嫌い・・
「えっ……?」
「朝日君なんか嫌い。帰れば、帰ればいい」
 朝日が深夜子と出会ってから、初めて聞く拒絶の言葉であった。

「おいこら、てっめええええ――」「深夜子さん貴女と言う人はあああ――」
「おっと、お主等はおとなしゅうしとれ」
 あわや深夜子に飛び掛かるところだった梅と五月を、弥生と新月が寸前で食い止める。

 
 ――朝日と深夜子、真っ直ぐにお互いを見つめ合う。一呼吸置いて、深夜子が再び淡々と語り始めた。

「あたし、朝日君のこと嫌い。ご飯の時にあたしの嫌いな野菜食べろって言った」

 【でもいつか、絶対、元の世界に……ニッポンて国に、帰す――】深夜子は朝日と出会って間もない頃、約束をした。

「ゲームした時も全然手加減なしで、あたしをボコボコにしたから嫌い」

 自分が寂しいのは我慢できる。自分が辛いのも我慢できる。でも、朝日が不幸なのは我慢できない。今、約束を果たす時がやって来たのだ。
 
「お部屋掃除した時。あたしの……その、エ、エッチなコレクションをチェックしてたし。きらい、きらい」

 見た目で男性から怖がられ続けていた自分をカッコイイと、好きと言ってくれた、ただ一人の男性。

「きらい、きらい、朝日君のことなんかだいっきらい!!」

 だから、愛する君は自分の国に戻って、家族の元に戻って、幸せになって欲しい。――ああ、貴方を愛しています。

「帰って……帰ったほうが……いいよ。あたし、朝日君のこときらい……だから――」
「ねえ、深夜子さん」

 深夜子の肩に、ふいに朝日がそっと手を添え声をかける。その瞬間、深夜子はびくりと身体を震わせた。動揺が走る。

「あ……だ……から、あたし……は……」
「ねえ……じゃあ、どうして深夜子さんは……、涙を流してるの?」

 その猛禽類を思わす瞳から、こぼれ落ちる大粒の涙。ついには感情を押さえ切れず、悲しみでくしゃくしゃになった愛しい女性の顔を、朝日は優しく見つめる。

「それは……ちがっ、あたしは……あっ……あた――」
「そんな悲しい顔をしないでよ。そんなくしゃくしゃな表情じゃ、せっかくの深夜子さんのカッコイイ目・・・・・・も台無しだよ?」
「あ、ああああああ……、うえ゛え゛、ええええええ……あ、あしゃひくぅん……ひっ、ひいいいいいいいいいん」
「ありがとう深夜子さん。これで、僕の気持ちは……決まったよ!!」

 朝日がそう告げた瞬間。トンネルに渦巻いていた光が、まるで蛍がいっせいに飛び立ったかのように霧散し始めた。その決意にに呼応したのか、それともただ時間が経過したのかはわからない。
 
「あっ、ダメッ! あしゃひく……、が、かえれなくなる」
 泣きながら、霧散していく光のトンネルに駆け寄ろうとする深夜子。それを今までで最も力強く、朝日が抱き止める。
「あしゃひ……くん?」

「深夜子さん。君を、愛してる」

 舞い散る光は、さらにその数と明るさを増す。まるで、唇を重ね、愛を確かめ合う二人を祝福するかのように。その周囲を飛び交いながらトンネルと共に消えていった――。


「朝日様……道が、光のトンネルが……」
「朝日、お前……じゃあ」
「朝日君……本当にいいの?」

 朝日から離れた深夜子の元に、五月と梅が駆け寄る。朝日は目元の涙をふき取り、その場にいる全員に笑顔を向け、ぐっと拳を握り締めて声をあげた。

「深夜子さん、五月さん、梅ちゃん。僕の国ではね……男ってのは女の子を泣かせちゃいけない。幸せにしなきゃいけないんだ! だから僕は、自分のやり方でみんなを幸せにしてみせる!」

 高らかにそう宣言すると、朝日は深夜子らにそれぞれ視線を向けて声をかける。

「深夜子さん!」
「うん。朝日君」
「五月さん!」
「はい、朝日様」
「梅ちゃん!」
「おうよ! 朝日」

「みんな、僕と結婚してくださいっ!!!!」
「「「けっ――――――――!?」」」
 
 朝日からの、実にストレートなプロポーズに硬直する三人。もちろん、あまりの衝撃しあわせにだ。

 この男性比率が人口の5%を切ってしまう世界。男性側からの求婚など、歴史上類をみない奇跡とも呼べる行為。のちに男性保護特務警護官たちの間で、伝説として語り継がれることになる一幕である。

 そんなことなど露知らず。朝日は深夜子たちの反応に、何か失敗でもしたのかと困惑中だ。

「あ、あれ……その、あの、みんな僕と結婚を――――うわあっ?」
「あさひくううううううううううん!」
「うあさひさまあああああああああ!」
「あさひいいいいいいいいいいいい!」

 恐る恐る聞きなおそうとした朝日へ、三人が一斉に飛びかかった。プロポーズだけではない。朝日が自分たちを選び、故郷を捨ててまで残ってくれたこと。何よりこれからもずっといっしょにいられること。純粋に喜びを四人で分かち合う。
 

「――あっ、そうだ。みんな。まだ少し続きがあるから、や、弥生おばあちゃん、新月ママ。よろしくお願いします」

 あれこれと深夜子らにもみくちゃにされながら、朝日が弥生たちに頼んでいた件を思い返し、合図の言葉を送る。

「はいよ。ほっほっほ、それにしても自らが嫁取りとは、まさに前代未聞の男子おのこよのう。さて、坊や。きっちりと改正法案は通してあるよ。安心おし」
「はーい。それからー、朝日ちゃーん。十八歳のお誕生日おめでとー。今日からヒノワ国では立派な成人だよねー。なのでー帰化申請も承認が取れてまーす。ママがー、えらい人たちにバッチリお願いしてきたのでー今日から有効でーす! 朝日ちゃんはーもう立派なこの国の成人男性でーす。うふふ」
「神崎さん……いえ、婿殿むこどの。深夜子さんを選んでくれた貴方の未来、寝待の一門が必ず支えましょうや」
 
 朝日が弥生に頼んでいたこと。それは自分がこの国に残る選択をした場合。その場で深夜子たちに結婚を申し込みたいと伝えた。まだ、保護されて一年未満の朝日。特殊保護男性がその条件をクリアするには、手続きに時間がかかる。詳細は割愛するが、弥生が強引にそれが可能になるよう法改正。さらに新月が裏で動いて、これまた時間のかかる帰化申請を短縮した。

 などと言っても、実際の現場はもちろん矢地亮子である。デスマーチにつぐデスマーチ、よくぞやりきった。

「ふえっ? 朝日君が……帰化?」
「でも、朝日様は特殊保護男性。いくら成人年齢と言えど、昨日今日でそう簡単には……」
「つーことは、ババア……やりやがったな?」

 これで時間的なハードルは消え去り、深夜子ら三人と結婚することは可能になるはずなのだが……。

「あの、朝日様。さすがに殿方にそこまでさせてしまって”はいお願いします”では、女の沽券こけんに関わりますわ。そ、その改めて……わたくしたちからも……け、けけけ結婚の申し込みをさせ―――ん? 申し……込み……ハッ!? 確か……Mapsの業務規定が……か、閣下!!」
 五月が顔を青くして弥生に話を振る。
「おう……そういや……そうじゃったのう」

 そう、朝日に問題がなくてもMapsには・・・・・・業務規定なるものが存在する。『原則として任務期間が継続して一年間以上のMapsが、警護対象男性の同意を得ることができた場合。婚姻ないし婚約することが許可される』とある。

「そう言えばそんなのあった。あああああ……せっかくの朝日君のプロポーズがががが」
「おいおい台無しかよ。どうすんだこれ?」
「弥生おばあちゃん……どうしよ?」

 円満ムードに突然の陰りが差し、朝日が弥生に助けを求める。が、すでに弥生はスマホで何処かに連絡を始めていた。

「おっ、亮子かい? ん、寝ておったか。いや、すまんのう。それで実はのう……もう一働きを――」
 もうやめて! 矢地のライフはゼロよ!


 ――結果、暫定的ではあるが、男性の意志が優先となるように規約改正される流れとなった。まずは朝日と深夜子、五月、梅の婚約はここで成立。

 ただ、三人と同時に結婚することは『男性権利保護法』で禁止されているため、まずは深夜子と結婚。その後三ヶ月の期間を取って五月、梅と続けて結婚する計画が、弥生を立会人として朝焼子、新月の同意の元、無事決定した。

 SランクMaps寝待ねまち深夜子みやこ
 AランクMaps五月雨さみだれ五月さつき
 SランクMaps大和やまとうめ

 ここに見事、美少年あさひとの警護任務こんかつ成功である。
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