そこは、私の世界でした

桃青

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12.孤独と思索と

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 ジリリリリリリリ……。
 手を伸ばして、ゴンと叩いて目覚まし時計を止めてから、時計の表示板を眺めた。
「朝の……、八時……」
 さらに独り言を言った。
「ネコと鹿……」
 枕に顔をうずめたまましばらく布団にもぐりこんでいたが、今日は仕事が休みであることをようやく思い出し、寝てばかりではつまらないと布団から出ることに決めた。
 台所に行って、まずコーヒーメーカーでコーヒーを淹れ、パンにきゅうりとハムとマヨネーズを挟んだ簡単なサンドウィッチを作ってから、テーブルに運んだ。コーヒーをちびちび啜りつつ、夢の世界を思い出し、椅子に座り込んでしばし頭の中を駆け抜けていく思考とたわむれた。
(私の世界って……、変な世界だったな。しかもしょっちゅう争いが起こって、今はかなり混乱した状態にあるらしい)
「それはきっと、私が混乱していることと同意義なんだ」
(何もかもが普通に見えるのに、実のところは普通でなく、戸惑いに満ち満ちている。私は何を求めてさまよっているのだろう)
「……。考えてもよく分からないな」
「私は働いて」「お金をもらって」「生きている、でも」
「本質的には満たされていない」
「なぜだろう」「なぜだろうか」
 朝食を口に押し込み、コーヒーを飲み干した私は、頬杖をついてしばらく気難しく考えてみたが、自分の脳みその限界を感じ、頭を冷やすために外へ出掛けることに決めた。
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