おとぎの世界で

桃青

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フララ

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 私がシュリのいるソファーの側に椅子を持ってきて、腰を落ち着けたとき、いきなり部屋の扉が開き、さっき私を案内してくれた少年が中に入ってきて、真剣な様子で言いました。
「シュリ様」
「何ですか、ボウイ。何が起きたのですか」
「はい。花の乙女が落ち着きを無くし、部屋中を飛び回って、皆さんを混乱させています」
「そうですか。今すぐ、その子を連れてきてください」
「はい」
 そう返事して、少年が部屋を飛び出し、何か叫ぶ声が聞こえた気がした時、再びバタンと扉が開き、部屋の中に空飛ぶ何かが飛び込んできて、前後左右をバタバタと飛び回りながら、
「ああどうしよう」
「本当にどうしよう」
 と一人で叫んでいるのでした。よく見るとその正体は若い女の人で、羽をばたつかせるたびに、右から左から強風が巻き起こり、家の中は嵐がやってきたようになっていました。シュリは叫びました。
「花の乙女よ、私の前に立ちなさい! そして名を名乗りなさい」
 その言葉で我に返り、ようやく落ち着いた様子の花の乙女は、シュリの前に立ち、プルプルッと体を震わせながら言いました。
「私はっ、花の乙女のフララです。シュリ様に、は、はっ、話をしたいのです」
「話しなさい。心の向くままに」
「は、は、花は、滅ぶ運命にあるのでしょうか? 」
「……。誰がそんなことを」
「私、知っています! オレンジ黄花も、空草の花も、猫華も、毒々草の花も……。もっともっと! 花が枯れ始めています」
「トイ、本当ですか? 」
「全部がそうだとは言えないけれど、ある種の花が枯れているのは事実だよ」
「私、私、花が滅ぶのなら、自分も滅ぶんじゃないかって、心配して。ああ、どうしよう。ああ、どうしたら……。花の乙女たちは、皆私と同じ心配をしています。シュリ様、どうしたらいいのですか?」
 思わず私は口を挟みました。
「フララさん、花が滅ぶことはないよ」
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